2025年5月16日、ムーディーズが米国債を AAAから AA1 へ引き下げたことで、米国は主要格付会社3社すべてで最上位の「Aaa」を喪失しました。
これにより長期金利は一時4.5%近くへ上昇し、金価格は3,200ドルを突破するなど、市場に動揺が広がりました。
もっとも、過去の格下げ時のフィッチ(2023年)・S&P(2011年)と同様、短期的な「米国債 暴落」リスクは限定的との見方が大勢です。
投資家が慌てずに済むよう、本記事では①格下げの歴史と理由、②金利・株価・為替・コモディティへの影響、③想定されるシナリオ別リスク、④実践的な対策、⑤主要国の国債格付け一覧をわかりやすく解説します。
そもそも米国債格下げとは?
まずは前提となる米国債格下げとはなにかについて見ていきましょう。
簡単に言えば米国の長期信用格付け会社のムーディーズが最上位だった米国債を Aaaから Aa1 を評価を引き下げたということです。
実はアメリカには大手3社の格付会社がありますが、すでに他の2社は下げていますので、最後の会社も最上位ではなくなったということです。
ムーディーズの「最後の砦」崩れる
具体的にはムーディーズは2025年5月16日、米国の長期信用格付けを最上位のAaaからAa1へ1段階引き下げ、アウトルックを「安定的」としました
理由は累積債務36兆ドルと金利負担増大で「財政軌道が持続不能」と判断したためです。
過去にはフィッチ・S&Pの格下げをしていた
今回の報道だとトランプ関税の影響と勘違いしてしまう方が多いと思われますが、他の2社はすでに格下げを行っているのです。
年月 | 機関 | 旧格付け | 新格付け | 主因 |
---|---|---|---|---|
2011/8 | S&P | AAA | AA+ | 政党対立による債務上限協議混迷 |
2023/8 | フィッチ | AAA | AA+ | 財政悪化とガバナンス低下 |
格下げが市場に与えた影響、インパクト
それでは格下げのインパクトはどのようなものだったのでしょう。
金利:10年債利回りは一時4.48%
まず、一番インパクトがあったのは金利です。
格下げ発表直後の時間外取引で10年債利回りは3bp上昇し4.48%に達しました。
ちなみに2023年のフィッチが格下げした時は東京時間で一旦9bp急騰後、買い戻しで4.01%へ低下するなど、過剰反応は短命でした。
株式:下落
S&P500先物は発表後0.4%安と小幅下落となりました。
専門家は「近年の格下げは織り込み済み」と指摘しています。
もともと他の2社は格下げしていますしね・・・
為替・コモディティ
ドル指数は横ばいでしたが、安全資産として金は3,200ドル台に急伸
金はに「世界情勢が不安定なとき」「株安が続くとき」「円安・ドル高のとき」「アメリカドルの信用や金利が低下したとき」などに上がる傾向がありますからね。
「米国債 暴落」が起きにくい
ちなみに過去から見ても米国債は大きな暴落は起こりにくいと言われています。
理由として挙げられるのは以下の3点
1.世界最大かつ最も流動的な債券市場で代替が少ない。
2.主要年金・中央銀行は投資ガイドラインを2011年以降に緩和し、AA+でも保有可能。
3.ドルの基軸通貨地位が即座に揺らぐ兆候は限定的
ただし、トランプ関税発動したときなどはかなり売られていましたね。
今後もその可能性は有り得そうです。
投資家が今すぐできる5つの対策
それでは投資家ができる対策はどのようなものがあるのかを見ていきましょう。
対策 | ねらい | ヒント |
---|---|---|
① デュレーション短縮 | 金利上昇リスクを抑制 | 2〜5年物ETFや個別T-Bill を活用 |
② クレジット分散 | 米国債一極集中の回避 | ドイツやカナダなどAAA債を一部組み入れ |
③ 通貨ヘッジ付き商品 | ドル安局面に備え | 為替ヘッジ付米国債ETFや外貨MMF |
④ ゴールド・コモディティ | 逆相関資産で防波堤 | 格下げ時に金が買われやすい傾向 |
⑤ インカム株・高配当ETF | 値動き耐性+配当で時間を稼ぐ | 景気鈍化でもキャッシュフローを確保 |
主要国の国債格付け(2025年5月時点)
ちなみにアメリカ以外の主要国の国債の各つけは以下の通り。
国 | Moody’s | S&P | Fitch | コメント |
---|---|---|---|---|
米国 | Aa1 (Reuters) | AA+ (S&P Global Ratings) | AA+ (Fitch Ratings) | 3社ともAAA喪失 |
ドイツ | Aaa (countryeconomy.com) | AAA (countryeconomy.com) | AAA (Fitch Ratings) | AAAの常連 |
カナダ | Aaa (ムーディーズ) | AAA (Investopedia) | AA+ (Fitch Ratings) | 財政健全だが資源価格に左右 |
日本 | A1 (countryeconomy.com) | A+ (S&P Global Ratings) | A (countryeconomy.com) | 高債務だが自国通貨建て |
英国 | Aa3 (Trading Economics) | AA (S&P Global Ratings) | AA- (Fitch Ratings) | ブレグジット後の財政が課題 |
中国 | A1 (S&P Global Ratings) | A+ (S&P Global Ratings) | A+ (ウィキペディア) | 不動産・地方政府債務が圧迫 |
実は日本はあまり高くないんですよ。
ドイツがまだ高い格付ですね。
シナリオ別のリスクとチャンス
今後のシナリオとしては以下の2つが有力視されます。
頭に入れておくといざというときに対応しやすいでしょう。
景気減速+財政悪化が進む場合
- 長期金利が5%台へ達し、米国債 暴落リスクが高まる一方、ドル安・金高が進行しやすい。
- 高配当ディフェンシブ株と短期債の組み合わせが有効。
財政再建が進む場合
- 増税や歳出削減で金利上昇が一服し、格下げの再評価(アウトルック改善)が期待される。
- 期間5〜10年の中期債・株式指数がリバウンドする可能性。
まとめ:慌てず、でも放置しない
ムーディーズの格下げで「米国債 暴落か!?」と不安が広がりました。
しかし歴史を振り返れば、米国債は流動性とドル基軸通貨の裏付けを武器に“致命的な売り”には至っていません。
それでも「金利上昇=価格下落」は事実。
ポートフォリオを点検し、デュレーションや通貨リスクを適正化する絶好のタイミングです。
本記事を参考に、ご自身のリスク許容度と投資目的に合わせて「攻めと守り」のバランスをとってくださいね。


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