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ミラティブがIPO承認。評価額4分の1のダウンラウンド上場のリスクとリターン、価格は割安かを検証

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ミラティブがIPO承認。評価額4分の1のダウンラウンド上場のリスクとリターン、価格は割安かを検証

2025年11月14日、スマホだけでゲーム配信ができるライブ配信アプリ「Mirrativ」を運営する株式会社ミラティブが東京証券取引所グロース市場への上場承認を受けました。

2025年11月14日に東証グロース市場への上場が承認され、上場予定日は2025年12月18日です。

大きな話題となっているのが評価額4分の1のダウンラウンド上場であるという点です。

今回はそのあたりも含めてミラティブのIPOについてみていきたいと思います。

目次

ミラティブとは|顔出し不要のゲーム配信プラットフォーム

ミラティブは「わかりあう願いをつなごう」をミッションに掲げ、スマートフォンから簡単にライブ配信ができるプラットフォーム「Mirrativ」を運営しています。

2018年2月に株式会社DeNAからのMBOにより独立し、代表取締役CEOの赤川隼一氏が経営を率いています。

ライブ配信サービスはたくさんありますが、他と比べたときのポイントを、言葉で整理すると次のようになります。

ゲーム配信に特化している

大きな特徴が「ライブゲーミング」です。

ゲームとゲーム実況が融合した新しい体験で、視聴者が配信中のゲームに介入できる仕組みを提供しています。

2025年9月末現在、9本のライブゲーミングタイトルが運営されており、外注開発コストの平均は約29百万円と、既存スマホゲームの平均開発コスト4.92億円の約17分の1という低コストを実現しています。

そのため、他のライブ配信サービスと違い、軸はソーシャルゲームやコンシューマーゲームの配信です。

ゲーム内ガチャを引く様子を配信したり、一緒にマルチプレイを楽しんだりと、「ゲームを媒介にした交流」が中心になっています。

顔出し不要のエモモ

もう一つの特徴は、3Dアバター「エモモ」による顔出し不要の配信システムです。

エモモは配信者の声に反応してリアルタイムにアニメーションするため、顔を出さずに感情豊かな配信が可能となります。

この仕組みにより配信のハードルが大幅に下がり、2025年9月末時点で累計配信者数は570万人を突破しました。

月間アクティブユーザーの約3割が配信を行っているという数字は、一般的なライブ配信プラットフォームと比較して際立って高い水準です。

プロ配信者より“アマチュア中心”のコミュニティ

YouTubeやTikTok、VTuber事務所系のライブ配信は「タレント・インフルエンサーを見る場」の色が濃いですが、ミラティブは顔出し不要なのエモモの効果が大きく、アマチュアの配信者同士がゆるくつながる居場所としての色合いが強いのも特徴です。

相互ギフト率74.8%が示す独自の経済圏

また、ミラティブの収益構造には特徴があります。

2024年12月期の売上構成は、Mirrativアプリ課金収入が95.2%、広告収入が4.8%です。

課金収入の内訳は、エモモ・ランキングが71.6%、ライブゲーミングが23.6%となっています。

注目すべきは、プラットフォーム内の相互ギフト率が74.8%(2025年9月時点)に達している点です。

視聴者から配信者に贈られたギフトが、配信者から他の配信者へと再度ギフトとして消費される傾向が強く、プラットフォーム内での経済循環が実現されています。

配信者における相互視聴割合も58.9%と高く、相互扶助的なエコシステムが形成されています。

ミラティブ IPO 価格とスケジュール

次にIPOの情報を確認しておきましょう。

上場スケジュールの整理

ミラティブのIPOスケジュールは以下の通りです(※日付はいずれも2025年)。

  • 仮条件決定日:12月2日
  • ブックビルディング(抽選申込)期間:12月3日〜12月9日
  • 公募価格決定日:12月10日
  • 購入申込期間:12月11日〜12月16日
  • 上場日:12月18日
  • 想定価格:850円

現時点(11月16日)では、ミラティブ IPO 価格(公募価格)はまだ決まっていません。投資家が目安とするのは、想定価格850円と、今後決まる仮条件のレンジになります。

売買単位は100株のため、最低投資金額は想定発行価格ベースで85,000円となります。

評価額4分の1のダウンラウンドIPO

想定価格850円は、同社の2024年実績および2025年の黒字化見込みを踏まえた水準です。想定価格ベースでは、

  • 時価総額:約143.9億円
  • 吸収金額:約66.7億円

と算定されています。

今回の上場が大きな話題となっているのが評価額4分の1のダウンラウンド上場であるという点です。

2022年の大型資金調達ラウンド時には、推定評価額が約624億円とされていました。

そこから見ると、今回のIPOバリュエーションは約4分の1まで圧縮された“ダウンラウンドIPO”となっているのです。

3年で評価額が約4分の1となっているのですよ。

しかし、この変化を単純に否定的に捉える必要はありません。

2022年当時は、メタバースが大きなテーマとして世界的に注目され、ミラティブもメタバースとしてのテーマ性が色濃く反映された評価でした。

その後、メタバースはほぼ聞かなくなるレベルで尻すぼみで、AI一色ですからね。

また、このラウンドに参加したのは、MIXI、丸井グループ、KDDI、バンダイナムコ、セガなどのCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)で、純粋な財務リターンだけでなく、自社事業とのシナジーや戦略的価値を重視した投資でした。

既存投資家から見れば「高値から大きく評価が削られた痛み」を感じる水準ですが、新規に参加する個人投資家から見ると「テーマ株としてはだいぶ値段がこなれてきた」とも読めるポイントです。

ちなみにnoteなども同様に評価額4分の1のダウンラウンド上場でしたね。

ミラティブの業績、財務状況|黒字転換が示す収益化の道筋

次に業績、財務状況を確認していきましょう。

売上の柱とプラットフォーム依存リスク

有価証券報告書を見ると、ミラティブの売上はほぼすべて「ミラティブ事業」から生じています。

収益源の中身は大きく分けて、

  • ユーザーの課金(有償コイン→ギフト)
  • ゲーム会社とのタイアップ広告・キャンペーン

の組み合わせです。

ここで注目したいのが「取引相手先の集中」です。2024年12月期の販売先を見ると、Apple Inc.向けが売上の約55%、Stripe Japan向けが約20%、Google向けが約19%を占めています。

つまり、

  • iOS・Androidアプリストア
  • 決済代行会社

への依存が非常に高く、手数料体系の変更や規約改定がそのまま利益に効きやすい構造である点は、投資家として押さえておきたいリスクです。

売上高は年平均成長率18%で拡大

ミラティブの売上高は着実に成長しています。2022年12月期の4,324百万円から、2023年12月期には5,438百万円(前年比25.7%増)、2024年12月期には6,096百万円(前年比12.1%増)へと拡大しました。

2020年12月期から2024年12月期までの年平均成長率は約18%となります。

この成長率は、成熟したインターネット企業と比較して十分に高い水準です。

  • 2020年12月期:約19.9億円
  • 2021年12月期:約32.2億円
  • 2022年12月期:約43.2億円
  • 2023年12月期:約54.4億円
  • 2024年12月期:約60.9億円

2025年第3四半期で黒字転換を達成

最も注目すべきは、2025年12月期第3四半期累計期間において経常利益233百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益231百万円と黒字転換を果たした点です。

先ほど触れた通り、売上は毎年増え続けてきたものの、これまでは赤字が続いていました。

それまでの損失額は、2022年12月期が1,563百万円、2023年12月期が1,190百万円、2024年12月期が257百万円と着実に縮小していました。

この傾向が継続し黒字化を達成したことは、事業モデルの健全性と収益性改善を示す重要なシグナルです。

要因としては、

  • ライブゲーミング向け開発費の減少
  • 広告宣伝費・販売促進費の効率化

などにより、売上総利益率が上がり、販管費も抑えられてきたことが挙げられています

同社は株主である丸井グループと共同で「ミラティブエポスカード」や「ミラティブ推し活カード」を導入し、クレジットカードによるWeb決済を促進しています。

また、PayPayなど多様な決済手段を導入することで、ユーザーの利便性を高めつつ、手数料率の低減を図っています。

2025年に入ってからは、1〜9月で営業利益約2.8億円・経常利益約2.3億円と、損益面でも転機を迎えつつあるタイミングでのIPOとなっています。

「テーマ先行で評価が走ったスタートアップが、ようやくビジネスとして収益を出し始めた」というフェーズと言えるでしょう。

重要KPIの推移が示す事業の健全性

ミラティブが重視する経営指標の推移を見ると、事業の健全性が確認できます。

ロイヤルユーザー数(月額課金10,001円以上)は、2021年12月期の平均4,976人から2024年12月期には8,205人へ、2025年12月期第3四半期累計期間では8,696人へと増加しています。

ARPLU(ロイヤルユーザーあたり月間平均課金売上金額)は、2021年12月期の39,676円から2024年12月期には54,115円へ、2025年12月期第3四半期累計期間では57,993円へと上昇しています。

ARPPU(有償コイン購入ユーザーあたり月間平均課金売上金額)も、2020年12月期の5,411円から2024年12月期には14,088円へと2.6倍に増加し、2025年12月期第3四半期累計期間では17,528円に達しています。

これらの指標は、ユーザー数の増加だけでなく、既存ユーザーの深掘りによる収益拡大が実現されていることを示しており、事業の持続可能性を裏付けるものといえます。

ミラティブ IPO 主幹事:どの証券会社から申し込むか

次に主幹事をみていきましょう。

主幹事証券と幹事団

ミラティブ IPO 主幹事は、

  • 三菱UFJモルガン・スタンレー証券
  • 大和証券

共同主幹事です。

レポートによっては、同じグループのモルガン・スタンレーMUFG証券も主幹事に名を連ねる形で紹介されています。

そのほかの幹事(総幹事団)としては、みずほ証券、SBI証券、楽天証券、東海東京証券、岡三証券、マネックス証券、松井証券、岩井コスモ証券、丸三証券、極東証券、三菱UFJ eスマート証券など、ネット取引に強い証券会社が一通り顔を揃えています。

個人投資家が意識したいポイント

IPOは一般的に、主幹事証券が最も多くの株数を割り当てられます

そのため、「とにかく一度は当てたい」という方は、三菱UFJモルガン・スタンレー証券や大和証券に口座を持っておくと、当選確率を上げやすい構造です。

一方で、SBI証券などは「落選してもIPOチャレンジポイントが貯まる」といった仕組みがあり、長期的にIPOをコツコツ狙いたい投資家に向いています。

SBI証券

ミラティブ IPO ロックアップ:売り圧力はどうか

次にロックアップを確認してみましょう。

ロックアップ期間と条件

ミラティブ IPO ロックアップの条件は、

  • 90日(2026年3月17日まで)
  • 180日(2026年6月15日まで)

の二段構えで設定されています。

解除条件(一定株価以上になったらロックアップ解除)は付いておらず、基本的には期間満了まで売れない“堅め”のロックアップです。

上位株主の多くを占めるVC(グロービス、ANRI、ジャフコなど)や事業会社株主も、このロックアップの対象になっています。

主要株主構成は、代表取締役の赤川隼一氏が19.82%、グロービス5号ファンドが18.63%、ANRI3号ファンドが11.04%、テクノロジーベンチャーズ4号ファンドが9.47%など、VCや創業者が大半を占めています。

これらの株主に対してロックアップが適用されることで、上場後一定期間は大量の株式売却が制限されます。

ストックオプションの存在

一方で、ストックオプションの残高は約194万株とされており、上場時発行済株式総数の約12.3%に相当します。

そのうち約7割はすでに権利行使可能な状態です。

短期的にはロックアップに守られている一方、中長期ではストックオプションの行使による株式数増加(希薄化)が株価の上値を重くする可能性もある点は、投資判断の際に意識したいところです。

ミラティブの株主優待|現時点では未導入

投資家の中には株主優待制度の有無を重視する方も多いですが、ミラティブについては有価証券報告書や目論見書において株主優待制度に関する記載はなく、上場時点では導入予定がないものと考えられます。

配当についても、2024年12月期まで実施されておらず、今後の明確な方針も示されていません。

株主優待制度を導入しない背景には、成長段階にあり事業拡大への再投資を優先する方針があると推察されます。

また、デジタルサービス企業として物理的な優待品の用意が事業内容と馴染みにくい面もあります。

ただし、上場後に株主優待制度を導入する可能性はゼロではありません。

個人向けサービスを提供する企業として、自社サービス内で利用できるコインやアイテムを株主優待とすることは技術的に可能です。

個人株主比率を高めたい、長期保有株主を増やしたいという目的がある場合、将来的に導入される可能性はあるでしょう。

投資判断のポイント

次に投資判断のポイントを見ていきましょう。

ポジティブ要因

ミラティブのIPOを評価する上でのポジティブ要因は以下の通りです。

第一に、上場前に黒字化を達成した点が挙げられます。

多くのスタートアップがIPO時点でも赤字の中、収益化の道筋を示したことは高く評価できます。

第二に、独自性のある事業モデルです。

エモモという独自のアバターシステム、ライブゲーミングという新ジャンルの開拓、相互ギフト文化によるコミュニティ形成など、他社が容易に模倣できない要素を複数持っています。

第三に、大手企業との提携関係も強みです。

株主にMIXI、丸井グループ、KDDI、バンダイナムコ、セガなどが名を連ねており、これらの企業との協業によるシナジー創出の可能性があります。

第四に、ロイヤルユーザー数やARPLU、ARPPUといったKPIが順調に成長していることも評価できます。

これは単なるユーザー数の拡大ではなく、既存ユーザーのエンゲージメントが高まっていることを示しています。

リスク要因

一方で、考慮すべきリスク要因も存在します。

最大のリスクは、Apple Inc.とGoogle LLCへの依存度の高さです。

2024年12月期の売上において、Apple経由が55.0%、Google経由が18.7%を占めており、これらのプラットフォーム事業者の方針変更や手数料率の変更が業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

また、ゲーム会社への依存リスクもあります。

配信の約75%がゲーム配信であるため、ゲーム会社の配信ガイドライン変更や許諾取り消しが発生した場合、事業への影響が大きくなります。

競争環境の激化も懸念材料です。

ライブ配信市場には国内外の多数の競合が存在し、YouTubeやTwitchといったグローバルプラットフォームとの競争は継続的な課題となります。

さらに、為替リスクがあります。

プラットフォーム事業者への手数料は通常ドル建てで設定されるため、円安が進行した場合、コストが増加し利益が圧迫される可能性があります。

バリュエーション分析

想定時価総額143.9億円を2024年12月期の売上高6,096百万円で割ると、PSR(株価売上高倍率)は約2.36倍となります。

この水準は、成長性の高いSaaS企業などと比較すると必ずしも高くありませんが、利益面での安定性を考慮すると、過度に割安とも割高とも言えない、中立的な水準と評価できます。

楽観的に見れば、黒字化を達成し今後利益率が向上していく過程にある企業として、現在の評価水準は魅力的と捉えることもできます。

慎重に見れば、競争環境の厳しさやプラットフォーム依存度の高さを考慮すると、リスクに見合った水準という見方もできるでしょう。

競合・類似銘柄との比較

ライブ配信やコンテンツIP周辺では、上場企業としてANYCOLOR(にじさんじ運営)、カバー(ホロライブ運営)などがよく比較対象に挙げられます。

あるアナリストの比較では、これら類似銘柄のPERはおおむね20〜30倍程度のレンジにあるとされています。

一方、ミラティブは、

  • VTuberなどのタレントIPではなく、アマチュア中心の配信者コミュニティ
  • ゲーム会社のキャンペーンプラットフォームとしての側面

が強く、ビジネスモデルとして完全な“横並び”ではありません。

2025年の黒字規模はまだ数億円レベルで、PERを素直に計算してもかなり高い数字が出てしまうフェーズです。

「ゲーム配信コミュニティというテーマ性」と、「数字としての割高感・ダウンラウンド」というプラス・マイナス両面をどう天秤にかけるかが、このIPOの肝と言えます。

まとめ

ミラティブのIPOは、評価額4分の1のダウンラウンドという点が大きく注目されています。

しかし、メタバースが大きな注目を浴びていた時期と、全く注目されていない今との違いが大きいです。

会社の業績が落ちているわけでもないので、逆に安く投資をできるとポジティブにとらえてもよいと思われます。

相互ギフト率74.8%という数字が示す強固なコミュニティ、ロイヤルユーザー数やARPLUの順調な成長、大手企業との提携関係など、ポジティブな要素は少なくありません。

ライブゲーミングという新市場の創出に挑戦している企業です。この挑戦が成功するかどうかは不確実性を伴いますが、新しい可能性に賭けることができる投資家にとっては、検討に値するIPO案件といえるでしょう。

※本記事は、特定の商品や投資行動を推奨するものではありません。実際の投資判断は、最新の目論見書や発行体の開示資料を必ずご確認のうえ、ご自身の責任で行ってください。

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