2025年11月13日、SBI新生銀行の東京証券取引所プライム市場への上場が承認されました。
証券コードは8303です。
12月17日の上場を予定しており、公募と売り出しを合わせたIPO規模はオーバーアロットメントを含めて約3676億円 と、2025年を代表する大型案件となります。
かつて日本長期信用銀行として知られ、経営破綻から公的資金の注入を経て、SBIホールディングスの傘下で立て直し、再び株式市場に戻ってくる――という、かなり“ドラマ性”のあるIPOです。
その歴史的な再上場は、投資家にとってどのような投資機会となるのでしょうか。
本記事では、IPOの詳細情報から投資判断に必要な材料まで、丁寧に解説していきます。
SBI新生銀行 IPOの基本情報を整理
まずはSBI新生銀行のIPOの基本情報を確認しておきましょう。
上場スケジュールと市場
SBI新生銀行の上場スケジュールは、現時点で次のように予定されています。
- 上場日:2025年12月17日(水)
- 市場:東証プライム
- 業種:銀行業
- 単元株数:100株
ブックビルディングや購入期間は、概ね以下の流れです。
- 仮条件決定:12月1日
- ブックビルディング期間:12月2日〜12月5日
- 公開価格決定:12月8日
- 購入申込期間:12月9日〜12月12日
なお、今回のIPOは大型案件なので、証券会社によっては締め切り時刻が微妙に違うこともあります。
実際の申込時は、使う証券会社のスケジュールを必ず確認しておきたいところです。
SBI新生銀行 IPO 価格:想定価格1,440円
有価証券届出書ベースの想定発行価格は1,440円です。
想定価格で計算した数字は次の通り。
- 想定時価総額:約1兆2,895億円
- 公募・売出・オーバーアロットメントを含む吸収金額:約3,676億円
- オファリングレシオ(上場時発行済株式数に対する売り出し比率):約28.5%
銀行株としては、かなり大きな規模のIPOです。
「規模が大きい=初値が上がりにくい」というのが一般的な傾向なので、SBI新生銀行 IPO 価格についても「高騰を狙う案件」というより中長期、「公募近辺〜やや上昇を期待する案件」と見る投資家が多そうです。
ただし、大型IPOの場合には当選確率がかなり高くなるので、その点では狙い目ですね。
なお、仮条件は12月1日、最終的なIPO価格(公募価格)は、12月8日以降に決定されます。
現時点ではあくまで「想定価格」であり、今後の株式市況や投資家の需要によって上下に振れる可能性がある点は押さえておきましょう。
SBI新生銀行 IPO 主幹事と取り扱い証券会社
SBI新生銀行の上場承認リリースでは、主幹事証券会社として複数の証券会社が並列で記載されています。
- 野村證券
- SBI証券
- みずほ証券
- ゴールドマン・サックス証券
- SMBC日興証券
- BofA証券
これほど多数の主幹事証券が名を連ねるのは、案件規模の大きさと引受リスクの分散を意図したものです。
特に注目すべきは、国内大手証券とグローバル投資銀行がバランス良く組み合わされている点です。
さらに、大和証券、松井証券、岩井コスモ証券、岡三証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券など、多くのネット証券・大手証券が幹事・取扱い証券会社として名を連ねています。
基本的に主幹事の取扱枚数が多いので、そちらをメインで狙いつつ、余裕があればその他の証券会社で申し込む形が良いでしょう。
大株主構成とロックアップ
SBI新生銀行の上位株主とロックアップ状況はざっくりいうと、
- SBI地銀ホールディングス:発行済株式の約60.75%(ロックアップ180日)
- SBIホールディングス:約38.19%(うち1億3,300万株を今回売出、残りにもロックアップ180日)
- 経営陣:ごく少数の持株。継続保有のスタンス
という構図です。
ロックアップ期間は上場後180日(2026年6月14日まで)となっており、解除条件の記載がないため、途中で大きく売り出されるリスクは限定的とみられます。
また、SBIホールディングスは親会社として、上場後も一定の株式を保有し続けると考えられます。
「第4のメガバンク構想」を掲げる北尾吉孝会長兼社長の戦略において、SBI新生銀行は中核的な存在です。
短期的な売却益を目的とした保有ではなく、長期的な企業価値向上を見据えた保有方針が予想されます。
これは株価の中長期的な安定要因となるでしょう。
株主優待
現時点で、SBI新生銀行が株主優待制度を導入する情報は確認できていません。
一般的に、銀行株で株主優待を実施している企業は少数派です。
地方銀行の中には、定期預金金利の優遇や自社グループのサービス割引などを優待として提供している例もありますが、メガバンクや大手金融機関では優待制度を設けていないケースが大半です。
SBI新生銀行についても、少なくとも上場時点では株主優待制度の導入は見込まれていないと考えるのが妥当でしょう。
投資判断においては、配当利回りを重視することになりますね。
ただし、SBIグループは自社商品(サプリメントなど)や暗号資産などを株主優待として提供してたりもしますので、同様な株主優待が設定される可能性もあります。
配当政策と利回り予想
2026年3月期の配当予想は1株当たり34円 となっています。
想定価格1440円での配当利回りは2.36% です。
銀行株の配当利回りとして2.36%は、決して高い水準ではありません。
メガバンク3行の配当利回りは概ね3〜4%台で推移しており、それと比較すると見劣りする数字です。
ただし、注目すべきは配当の成長性です。
同行は公的資金返済という重荷から解放され、今後は株主還元を強化できる環境が整いました。
配当性向(利益のうち配当に回す割合)を段階的に引き上げていく方針が示されれば、中長期的な配当成長が期待できます。
2025年3月期には資本剰余金を原資とする1000億円の配当を実施しており、株主還元姿勢は明確です。
今後の配当政策の方向性を、経営陣のIR説明会などで確認することが重要です。
SBI新生銀行の歴史的背景
次にSBI新生銀行の歴史も確認しておきましょう。
かなり波乱万丈な形となっています。
日本長期信用銀行〜新生銀行〜SBI新生銀行への変遷
SBI新生銀行は、戦後の「日本長期信用銀行」を源流とし、その後の金融危機と公的資金注入を経て、「新生銀行」として再スタートした歴史を持つ銀行です。
同行には当時約3700億円もの公的資金が注入され、その返済が長年の経営課題となってきました。
その新生銀行に対して、SBIホールディングスが2021年にTOB(株式公開買付)を実施し、グループ入り。
2023年には非上場化し、上場廃止となりました。
当時3500億円の公的資金を抱えており、上場を維持した状態では返済が困難という判断でした。
そして2025年7月、ついに公的資金の完済を実現し、今回の再上場へとつながります。
つまり今回のIPOは、単なる新規上場ではなく、四半世紀にわたる日本の金融システム再建の歴史に一つの区切りをつける象徴的な出来事なのです。
公的資金完済と「第4のメガバンク」構想
SBIグループは、地方銀行を束ねたSBI地銀ホールディングスとともに、「第4のメガバンク構想」を掲げています。
SBI新生銀行はその中核として、
- 法人向け融資・ストラクチャードファイナンス
- 住宅ローンやカードローン「レイク」などの個人向け金融
- 海外事業
といった事業を展開。SBI証券やSBIネット銀行など、グループ各社との連携を通じて「総合金融グループ」としての存在感を高めてきました。
元々SBIグループには住信SBIネット銀行という銀行もありましたが、NTTドコモに売却。
SBI新生銀行を中心に移行してきた感じですね。

SBI新生銀行の業績動向
次に業績と財務状況を確認しておきましょう。
直近の業績推移
連結ベースでは、直近数年で売上高(実質的な経常収益)が右肩上がりとなっています。
2025年3月期には売上高約6,140億円、経常利益約777億円、当期利益約845億円。
収益も利益もしっかりと伸びており、事業基盤の安定性が確認できます。
銀行業務における収益構造は、主に「資金利益」「手数料収益」「その他業務収益」の3つに分類されます。
SBI新生銀行の場合、グループ会社であるアプラスのクレジットカード事業や昭和リースのリース事業からの収益も重要な位置を占めます。
SBIグループとの統合により、デジタル証券やフィンテック分野での新規事業展開も期待されます。
従来の銀行業務の枠を超えた収益源の多様化が、今後の成長のカギを握るでしょう。
想定価格1,440円とPER・PBR
想定価格1,440円ベースの指標は次のイメージです。
- 2025年3月期(実績・連結)
- EPS:112.70円
- BPS:1,151.40円
- PER:約12.8倍
- PBR:約1.25倍
これをどう見るか。
- 銀行株としてはPBR1倍超えなので、典型的な「超割安株」ではない
- ただし、総合金融グループとしての成長性や、SBIグループ内での位置づけを考えると、「地銀・地銀持株会社」とは違う評価軸もありうる
というあたりがポイントです。
ちなみに上場廃止直前の住信SBIネット銀行の予想PER:約 21.6倍、PBR:約 4.2倍でしたので、それと比較すればSBI新生銀行のほうがかなり割安となっています。
競合との比較
同じ銀行業の上場企業である楽天銀行やあおぞら銀行と比べると、
- 売上規模では楽天銀行より大きい
- 利益率(営業利益率)は楽天銀行の方が高い
- 時価総額は楽天銀行と同程度のレンジ
といった位置づけですね。
ちなみに比較されがちな元々SBIグループで、NTTドコモグループ入りしてから上場廃止になった住信SBIネット銀行との数字の違いも確認しておきましょう。
SBI新生銀行(2025年3月期/連結)
2025年3月期決算短信(連結)を見ると、以下のような水準です。
- 経常収益:約 6,140億円
- 経常利益:約 778億円
- 親会社株主に帰属する当期純利益:約 845億円
- 総資産:約 20.3兆円
- 純資産:約 9,554億円
規模は「メガバンクの一歩下」クラスで、SBIグループ入り後に収益力をかなり立て直してきた姿が数字に出ています。
住信SBIネット銀行(2025年3月期/連結)
公開買付け関連資料・決算短信を見ると、2025年3月期は次のとおり。
- 経常収益:1,465億21百万円(前年から+23.6%)
- 経常利益:381億89百万円
- 当期純利益:281億27百万円(前年から+13.2%)
- 総資産:11.24兆円
- 純資産:1,699億21百万円
と、規模感はSBI新生銀行のほうが一回り大きい感じですね。
ちなみに預金残高も同様です。
なお、SBI新生銀行がSBIハイパー預金を始めたり、改悪の動きがあることからSBI証券利用者の移行で預金残高はかなり動きそうな予感もあります。


投資戦略と初値予想
次に投資戦略と初値予想をみてみましょう。
短期投資家向けの戦略
IPOの初値を狙う短期投資家にとって、SBI新生銀行は難しい案件です。
公開株数が多く、需給が悪化しやすい環境にあります。
ただし、年内最後の大型案件という希少性、知名度の高さから一定の需要は見込めます。
仮条件の水準や、ブックビルディングでの申込倍率が重要な判断材料となるでしょう。
同業の住信SBIネット銀行や楽天銀行の値動きなんかも参考になりそうです。
中長期投資家向けの視点
配当目的の長期投資としては、現在の配当利回り2.36%は物足りない水準です。
しかし、今後の配当成長を織り込めば、投資妙味が出てくる可能性があります。
SBIグループとのシナジー効果がどの程度具現化するか、デジタル分野での新規事業がどれだけ収益貢献するかが、中長期的な株価の方向性を決めるでしょう。
上場後の四半期決算や、経営陣による中期経営計画の説明を丁寧に追いかけることが重要です。
初値から数ヶ月間は株価が乱高下する可能性もあるため、じっくりと投資タイミングを見極める姿勢が求められます
まとめ
SBI新生銀行のIPOは、想定時価総額約1兆2900億円、IPO規模約3676億円という、2025年を代表する大型案件です。
四半世紀にわたる公的資金問題に決着をつけ、SBIグループの一員として新たなステージに進む同行。
歴史的な意義は大きく、投資家の関心も高まっています。
ただし、投資判断においては冷静な視点が必要です。
公開株数の多さ、PBRの高さ、配当利回りの低さなど、慎重に見るべき要素も少なくありません。
主幹事には野村證券・SBI証券など大手・ネット証券が並び、個人投資家も参加しやすい構成となっていますし、当選確率もそれなりに高そうですので、市場環境の変化や同業他社の株価動向も注視しながら、総合的な投資判断を下すことをお勧めします。
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