スルガ銀行が揺れています。
シェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営するスマートディズ関連で過剰融資を行っていたことが判明したからです。
そのスマートディズは民事再生法の申請をしていましたが、棄却され破産手続きに移行すると発表しています。
そんな中ですが、スルガ銀行が2018年3月期の決算を発表しました。
今回はこの決算発表を読み解いてみたいと思います。
なお、株式投資における決算発表の見方はこちらからどうぞ
株式投資をする上で企業の業績を把握することはとても大事です。短期的に見れば決算発表(決算短信)の内容によって株価は大きな影響を受けます。また、長期的な投資でもそのまま投資して良いのか、追加投資すべきなのか、撤退すべきなのかを[…]
スルガ銀行の2018年3月決算
まずはスルガ銀行の決算内容を読み解く前に今回のスルガ銀行のスマートディズ関連の話から見ておきましょう。
かぼちゃの馬車の投資トラブル
まずは「かぼちゃの馬車」の投資トラブルの概要からみていきます。
かぼちゃの馬車とは
「かぼちゃの馬車」は簡単に言えば女性専用のシェアハウスです。
シェアハウスとは自分の部屋と、他の入居者と共同利用スペースを持った集合賃貸住宅のことです。
共同利用スペースはシェアハウスによりますが、キッチン、お風呂場、トイレ、リビングなどがあります。
ほかと比べて賃料が安いこと、テレビ番組「テラスハウス」などの影響もあり、入居者との交流が楽しめることから人気となっています。
そんなシェアハウスを投資目的で投資家に建設させるビジネスをスマートディズが行っていたのです。
ビジネスモデルとしては賃料収入から自社の取り分を除いた金額を投資家に払う形となっています。
今回問題になった「かぼちゃの馬車」はさらに家賃保証が前提となった契約となっていました。
ほとんどの投資家は銀行からお金を借り、シェアハウスを建設しました。
銀行へ支払う利息と返済金を家賃収入が上回っていれば常にお金がまわる計算ですね。
計算上は利回り8%あったそうです。
それに家賃保証があるので安心して契約していたようですね。
入居者が少なく・・・
しかし、実際には入居が少なく同社はお金が回らなくなったのか、家賃保証はなかったものとされてしまいます。
大半の投資家は銀行からお金を借りていますのでその返済が必要で困ってしまったのです。。
そもそも利回り8%というのがかなり無理があった計画のようで・・・
過剰融資の問題
今回お金を借りていた投資家のほとんどの投資家に貸していたのがスルガ銀行です。
問題になったのが下記の危機管理委員会の調査結果にもでていますが、通帳の偽造・改ざんなどがあったようです。
通帳の偽造、改ざんをすることによって投資家の資産を多く見せ、そのまま審査した場合には貸せないレベルの金額を貸していたようです。
中には自己資金ゼロで建設している人までいるそうです・・・・
スルガ銀行株は大暴落
今回のかぼちゃの馬車事件によりスルガ銀行の株は2500円前後から1500円前後まで一気に暴落しています。
最安値は1200円くらいですから半減したことになりますね。
出所:ヤフーファイナンス スルガ銀行
スルガ銀行の決算内容
まずスルガ銀行についてはあまりイメージなかったのですが、今回決算書をじっくり読んで結構驚きました。
意外?に収益性が高い銀行だったからです。
詳しく見ていきましょう。
売上げ(業務粗利益)
一般の会社の売上げにあたる業務粗利益は1,152億円。
前年同期比43億円増となっています。
今回の決算発表3月までの実績であり、事件発覚前の話ですが順調に伸びている感じですね。
他の大手銀行はマイナス金利の影響が大きく軒並み減収減益ですから強いことがわかると思います。
営業利益(実質業務利益)
一般の会社の営業利益にあたる実質業務利益は681億円。
前年同期比48億円増となっています。
こちらも順調に推移していることがわかるとお思います。
経常利益(業務純益)
一般企業の経常利益にあたる業務純益は422億円
前年同期比214億円のマイナスとなっています。
このマイナス理由は今回の事件を踏まえてだと思いますが貸倒引当金を多額に計上したからです。
貸倒引当金とは取引先の破綻や売掛債権の未回収に備えて積んでおくものです。
当期利益
当期利益は193億円
こちらも前年同期比224億円のマイナスとなっています。
今回の決算内容で驚いたのが事件を踏まえて貸倒引当金を積んでもかなりの黒字であったことです。
つまり、巨額な損失をだしてもそれを上回る利益を確保できていたってことなのです。
スルガ銀行の収益力が高い秘密
他の銀行が軒並み減収減益の中、スルガ銀行は増収しています。
これは他の銀行と違い個人向けの貸出がほとんどであるということです。
2018年3月末では90.1%が個人向けなのです。
つまり、銀行と言いながら実質的には消費者金融的な商売をしていたということでしょうね。。
個人向けの方が高い利率で貸し出せますし、返済が滞るリスクも少ないそうです。
スルガ銀行の安全性
スルガ銀行の決算内容を見る限り安全性も大きな問題が発生しているような感じではありません。
債券内容を見ると危険債券と要管理債券が大幅に増加しています。
おそらく貸倒引当金が大幅増なのもふくめ今回のかぼちゃの馬車事件の処理でしょう。
しかし、それらを踏まえても報道にあるようなすぐにでも破綻となるような状況ではないと見て取れます。
まとめ
今回はスルガ銀行の決算についてみてきました。
事故は買い、事件は売りとよくいいます。
今回は事件が絡んでいるので売りはある意味で正しいです。
しかし、株は行き過ぎてしまうものです。
今回の決算内容を見る限り報道にあるようなすぐに破綻するようなものではありませんし、他の銀行と比較してもむしろ強いくらいの収益性です。
もちろん今回は事件なので評判が落ちてしまい利用者が減るというリスクも認識をする必要はありますけどね。
私は消費者金融というビジネスがあまり好きではありませんのでよほどのことがない限り買いませんが、報道を鵜呑みにするのではなく冷静に財務内容を見て判断することも大事ですね。
(昔の顧客が消費者金融にハマり臓器売って返せとか言われた録音を聞いてますので・・・)
決算書の読み方は下記記事をご覧ください。
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