沖縄の製造業として初めてオリオンビールが上場することが決定いたしました。
知名度はそれなりにある企業ですし、株主優待も魅力を感じる人が多そうなので注目度は高そうです。
今回はオリオンビールのIPO(新規上場)について見ていきます。
オリオンビールIPOの基本情報
それでは詳しく見ていきましょう
基本情報
まず基本情報からです。
- 会社:オリオンビール株式会社(沖縄県豊見城市)
- 市場/コード:東証プライム/409A
- 上場日:2025/9/25
- 想定価格:770円
- 単元:100株(最小投資額の目安:7.7万円)
- 主幹事:野村・みずほ・SMBC日興(他ネット証券も取扱見込み)
- ブックビル期間の一例:9/9〜9/11(野村オンライン)
- 受渡日:9/25
ポイント:今回は売出し中心(公募なし)。資金は主に既存株主(カーライル、野村系ファンド等)に渡る構造で、会社の新規調達は限定的です。
ビジネスモデル
オリオンビールのセグメントは「酒類清涼飲料事業」と「観光・ホテル事業」が2本柱
2025年4–6月期は売上高70.45億円のうち、酒類57.39、観光・ホテル13.06(億円)
観光需要や商品開発での回復を見込むとのこと。
大手上場ビール各社(アサヒ、キリン、サッポロ、サントリーなど)と比べ時価総額は小さめで、沖縄需要と観光が特徴。
目論見書の要点
次に新規上場時に目論見書でチェックしたい要点をみていきましょう。
売出株数
売出株数(引受人の買取引受)は21,672,400株
内訳は
野村キャピタル・パートナーズ第一号投資事業有限責任組合:11,052,900株
CJP MC Holdings, L.P.(カーライル系):10,619,500株
となります。
売出し中心(公募なし)ってことですね。
オーバーアロットメント(OA)
オーバーアロットメント(OA)は上限3,250,800株+グリーンシュー設定(行使期限2025/10/22)
ロックアップ
ロックアップは主要株主上場後180日間(〜2026/3/23)の売却等制限となっています。
ポイント:ロックアップが180日なのは既存株主の売りを当面気にしなくてよいのはありがたいですね。逆に言えば180日後には気をつける必要がある形式です。
配当政策
次に配当政策を見てみましょう。
配当性向50%とDOE7.5%の高い方を採用、年2回(中間・期末)。
状況に応じて自己株式取得等も検討とのこと。
ちなみに同じビール会社の上位2社アサヒビールの配当性向約40%、キリンビールは配当性向は約50%となっています。
なお、過去の配当実績を見ると毎年一定額ではない感じですね。
2025/3期 期末90円 等(注:分割・算定基準注記あり)
ポイント:DOE(株主資本配当率)基準を併用する点は、利益水準がぶれやすいビール事業における配当の下支えとして一定の安心材料です(もちろん業績次第で変動はあります)。
決算書のポイント
次に決算書のポイントを見ていきましょう。
通期トレンド(2025年3月期・連結)
- 売上高 288.66億円(前年260.09億円、約+11%)
- 営業利益 34.79億円(28.50億円、約+22%)/営業利益率 約12%(前年約11%)
- 経常利益 42.56億円(31.20億円)/当期純利益 56.58億円(46.34億円)
- 売上総利益率 約50.3%(14,520÷28,866)で前年(約49.6%)から改善
※いずれも有価証券届出書(新規公開時)の連結損益計算書より(単位:百万円)。
留意点:特別利益(固定資産売却益等)30.50億円を計上しており、最終利益は一部一過性要因の押し上げを含んでいます。営業段階の改善は実力ベースの伸びとして評価。
直近四半期(2025年4–6月・第1四半期)
- 売上高 70.45億円、営業利益 10.76億円(営業利益率 約15%)
- 純利益 14.88億円
※四半期連結損益計算書より。
ポイント:Q1は新年度立ち上がり+夏商戦の前段で利益率が通期より高めに出ています(季節性)。
原価構造(通期)
- 酒税 54.39億円(売上原価の大宗)
- 原材料費 36.17億円、電力費 2.57億円、減価償却費 5.64億円(いずれも製造原価内の主要項目)
- ホテル売上原価 5.00億円、賃貸不動産売上原価 3.93億円
※売上原価明細書より(単位:百万円)。
ポイント:インフレ・為替(麦芽・アル缶等)とエネルギーコストが粗利を左右。直近は売価・ミックス改善で粗利率がじわり改善。
財務健全性・レバレッジ
- 自己資本比率 24.2%(2025/3期末、主要指標表)
- 現金及び預金 97.44億円(2025/3/31)
- 長期借入金 163.61億円+1年内返済 7.05億円(合計約171億円)。リース負債は別途少額。
- 2025/6/20に自己株式 1,375万株消却(利益剰余金・自己株式各110億円減)
※連結/単体B/S、注記事項・主要指標より(単位:百万円)。
セグメントの稼ぐ力(2025年4–6月)
- 売上構成:酒類清涼飲料 57.39億円(約82%)/観光・ホテル 13.06億円(約18%)
- セグメント利益:酒類 10.33億円/ホテル 0.45億円 → 概算セグメント利益率は酒類 約18%/ホテル 約3%
※四半期セグメント情報より(単位:百万円・概算)。
ポイント:収益の主力はビール。ホテルは黒字転換・薄利で、観光回復で上積みの余地。
成長ドライバー(定性)
- 沖縄×観光回復:グループ連結で増収増益。海外(台湾・韓国)の販売好調も寄与。
- ブランド力と地域密着:地場消費+観光需要の二軸で底堅い需要。
リスク・チェックポイント
- 売出中心のIPOで新規調達は限定、上場後の売り圧(ロックアップ明け)に注意。
- 原材料・為替・エネルギー価格の上振れリスク(粗利率のボラティリティ)。
- 特別利益依存の最終利益は平準化必要(固定資産売却益など
株主優待(Tシャツ・ビール詰め合わせ)
株主優待も発表されています。
- 基準日:毎年3/31
- 保有条件:原則1年以上の継続保有(初年度取り扱いの注記あり)
- 内容(選択制):
- 1,000株:自社酒類6缶セット または オリオンTシャツ(スタンダード)
- 2,000株:自社酒類12缶セット または オリオンTシャツ(プレミアム)
なお、未成年株主の方は酒類選択不可のためTシャツが贈呈とのこと。
オリオンビールのTシャツはかなり人気なので、Tシャツがオリジナルだったりすると株主優待を目当てに買う人も多くなりそうな予感。


必要資金の目安
オリオンビール自体は100株から買えますが、株主優待を得るには最低1,000株必要です。
つまり、株主優待を得るために必要資金は想定価格で1,000株=約77万円/2,000株=約154万円。
優待狙いだけで考えると資金負担が重めです。
また、自社酒類6缶セットやオリオンTシャツが具体的にどの商品なのかがわかりませんので、優待利回りは出せませんが、それほど高くはなさそう・・・
ポイント:オリオンビールのTシャツだけが目的ならあえて株主優待を狙わず、ECサイトで購入するのも手。ただし、株主優待オリジナルのTシャツの可能性もありますので判断は難しいところ・・・
市場での評価材料
次にIPOとしての市場での評価材料を見ていきましょう。
プラス
- 知名度とブランド力(沖縄×地場ブランド)。
- 配当ポリシーの明確さ(配当性向 or DOE)。
- 観光回復の恩恵(ホテル事業の押上げ)。
- 株主優待が魅力的(オリオンTシャツが人気)
マイナス/留意
- 公募なしの売出し中心=会社の成長投資資金の直接調達は限定。
- 競争環境(大手ビール会社との競合)。
- 優待狙いは最低1,000株からで資金負担大(Tシャツ目的ならEC購入の選択肢も)
スケジュールと申し込みの実務(IPO初心者向け)
次にIPO初心者向けの方にスケジュールと申込みの実務的なお話を見ていきましょう。
- BB(需要申告):2025/9/9週(例:野村オンライン9/9〜9/11)。
- 購入申込(当選後):9/17〜9/19(野村オンライン例)
- 受渡(上場):9/25。申込株数単位は100株。
証券会社によって申し込み手順は多少違いますが、基本的に需要申告(BB)に申し込み、抽選。
抽選に当たれば購入申し込みという流れです。
それぞれ期限が決まっていますので忘れずに申し込みましょう(証券会社により多少日程が違うケースも)
どの証券会社で申し込むのが良いのか?
共同主幹事(野村證券・みずほ証券・SMBC日興証券)に加え、SBI証券/楽天証券/松井証券などネット証券の取扱もあります。
割当比率は主幹事が多いので、当選確率を上げたい方はまずは主幹事からの応募を優先しましょう。
まとめ
今回は「オリオンビールのIPOは買いか?株主優待のTシャツも魅力的」と題してオリオンビールのIPOについてみてきました。
沖縄の製造業として初のIPOであり、沖縄の地元ブランド×観光回復というストーリーは強い。
一方、既存株主のエグジット色が強い設計なので、初値一点狙いより配当+優待の総合リターンで評価したいIPO。
また、優待目的だけだと必要株数が1,000株以上と高めなのが注意。
Tシャツが本当に欲しいだけならECサイトでの購入の方ががコスパが良いかも。
優待で狙うなら1年以上の継続保有が前提なので、中長期の保有体力が必要です。

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