専業主婦の年金半額案が話題に。今後は縮小方向の第3号被保険者の問題について考える

令和になり年金問題もいろいろな報道がされるようになっています。

そのうち某週刊誌が書いてて大きな話題となったのが「専業主婦のもらえる年金を半額とする案」です。無職の専業主婦という書き方がまずかったのもあり、ツイッターを中心に炎上に近い状況となっていますね。

ただし、これまったくおかしい話でもなくもともと男女共同参画基本計画で「第3号被保険者を縮小していく」と閣議決定されていますからその一環の話ではあります。

今回は年金半額案を絡め専業主婦の第3号被保険者について解説していきます。

第3号被保険者とは

まずはその前提となる第3号被保険者について見ていきましょう。

国民年金は第1号被保険者、第2号被保険者、第3号被保険者と3種類に分かれています。

簡単にまとめると以下のとおりです。

第1号被保険者:自営業者とその家族、学生、無職など
第2号被保険者:会社員、公務員など
第3号被保険者:第2号被保険者に扶養される配偶者

第3号被保険者とは、会社員や公務員など国民年金の第2号被保険者に扶養される配偶者のことを指します。

つまり、専業主婦の方などが該当します。ちなみに主婦だけでなく主夫も対象です。

ちょっとややこしいのが自営業者などに扶養される専業主婦や主夫は第3号被保険者にならないってことです

第3号被保険者の条件

第3号被保険者の条件は以下を満たしている場合となります。

20歳以上60歳未満
第2号被保険者に扶養されている配偶者

第2号被保険者に扶養されている配偶者の収入条件は以下のとおりです。

年間収入130万円未満
同居の場合:収入が扶養者(第2号被保険者)の収入の半分未満
別居の場合:収入が扶養者(第2号被保険者)からの仕送り額未満

ちなみに年間収入とは過去ではありません。今後の年間見込みです。

例えば昨年まで働いててそれなりに給料をもらっていた方でも結婚を気に退職して専業主婦になって収入がないのなら該当することになります。

よくある第3号被保険者に該当しないケース

ただし、気をつけないといけない点がいくつかあります。以下にひっかり第3号被保険者に該当しないってことがあるのです。

まず、年間収入には、雇用保険の失業等給付、公的年金、健康保険の傷病手当金や出産手当金も含まれるってことです。失業保険や出産手当金とか結構盲点ですね。結婚退職して専業主婦となり失業保険もらっていたりしても条件を超えていると対象外となります。(働く気がないなら本来受け取れませんが。。。)

また、収入が扶養者(第2号被保険者)の収入の半分未満という条件にも引っかかる方が多いです。

例えば奥さんはパートで年間130万ギリギリ稼いでいて、旦那さんの収入が250万だったとすると収入が扶養者(第2号被保険者)の収入の半分未満という条件をクリアできません。そのため第3号被保険者に該当しなくなってしまいます。


第3号被保険者のメリット

それでは第3号被保険者は他の区分とどう違うのでしょう。

第3号被保険者には他にない大きなメリットが2つあるのです。

国民年金保険料を納付する必要がない

国民年金の納付は国民の義務となっています。

第1号被保険者の方は本人または世帯主や配偶者の方が連帯して納付する義務があります。一時期は未納の方もみえましたがかなり督促が厳しくなっていますね。

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第2号被保険者の方は加入してる厚生年金や共済組合からまとめて支払われています。厚生年金等を給料天引きで支払っていますから実質的に支払っていることになりますね。ちなみに厚生年金等は会社が半分負担してくれています。

しかし、第3号被保険者の方は国民年金保険料を納付する必要がないのです。

これは配偶者の厚生年金や共済組合が第3号被保険者の分も負担してくれるからです。

つまり、第二号の方の厚生年金や共済年金から賄われているのです。

ちなみに平成31年/令和元年の国民年金の保険料は16,410円です。年間にすると196,920円分が払う必要がなくなっているのです。

そのため後述する不公平感が生まれているとも言えます。

国民年金保険料は納付済みとして扱われる

もう一つのメリットしては前述のように第3号被保険者の方は国民年金保険料を納付していませんが、国民年金保険料を支払った人と同等に保険料の納付済み期間として考えられます。

つまり、老後に国民年金の給付を受けることができるのです。

ちなみに今現在の国民年金の支給上限額は779,300円(月額64,941円)となっています。ただし、未納期間や免除期間があったりすると減りますので平均すると以下のとおりです。

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今回この部分に見直し案がでているのです。

第3号被保険者の問題点

それではなぜ第3号被保険者が問題にされるようになってきたのでしょうか。

年金財政の圧迫

一番大きな本音の理由としては年金財政が厳しいことが挙げられるでしょう。

そこを改善するために徐々に制度変更が加わっています。

例えば下記のパートの方の厚生年金の加入義務の拡大ですね。これで少しずつ第2号被保険者に回る人を増やしいているのです。これにより37万人が新たに加入したそうです。

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その一環として今回の案がでているのでしょう。

ちなみに現在、第3号被保険者は870万人くらいいるとのことですから影響はかなり大きいです。

共働き世帯、独身、自営業者から不公平感

また、今回表にでている理由としては共働きの「働く女性」からの不公平感ということです。この制度があるために女性の社会進出が遅れているというのです。

これも一理あると思いますけどね。

表にはあまり出ていませんが、他にも不公平感というのはあります。

たとば会社員や公務員の妻は第3号被保険者となりますから国民年金を納める必要がなく、年金ももらえますが、自営業者の妻は自分で納付しないといけません。この差は大きいでしょう。

また、会社員の方でも独身の方からの不満もあります。実質的に会社員の方の集めた厚生年金の中から配偶者分を負担しているわけですから配偶者がいない方にも負担を強いられています。そこには根強い不公平感がありますね。

これら不公平感の解消という名目があるため政府も制度を変えやすいとも言えます。

今回でている案

第3号被保険者制度については社会保険審議会でいろいろな案がでています。

たとえば国民年金保険料を負担してもらうっていう案夫の厚生年金に妻の国民年金保険料分を上乗せする案です。

そして今回の年金半額案となります。まだ案の段階ですから実際どれが実施されるのかはわかりませんが、何かしらのルール変更の可能性は高いでしょう。

ちなみに今回でている年金半額案が実行されれば受け取る年金は単純計算で389,659円(月額32,470円)となります。移行期間があるでしょうからすぐに完全に半分にはされないでしょうけどね。

これでは生活厳しいですね・・・・

第3号被保険者の方はどうすればよいのか

それでは第3号被保険者の方は制度が変更になったらどうしたらよいのでしょうか?

これは基本的に自己防衛するしか方法はないでしょう。

現在の年金制度はどんどん厳しくなることはかなり高い確率となります。

そうなればどうしてもやり玉に挙がってしまう制度ですからね。

今回制度変更が加わらなかったとしてもどこかのタイミングでは変わる可能性が高いです。

年金を増やす、老後資金を用意する

まずは、国民年金は補助的なものと考えて自分自身である程度の老後資金や年金を用意することを考えましょう。基本的には対策と言ってもこれらを実行するしかないのです。

年金を増やす

まずは年金を増やす方法です。

いろいろありますので詳しくは下記の記事を御覧ください。専業主婦の方が利用できるのは限られますが、配偶者の方の年金と合わせて検討してみてください。

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次に老後資金を貯める方法です。

こちらも基本的に配偶者の方と合わせて考えましょう。詳しくは下記記事を御覧ください。

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離婚した場合

もし離婚したらどうなるのでしょう。年金389,659円(月額32,470円)では生活出来ないですよね。

実は配偶者の方の厚生年金や共済年金を分割できる方法があります。合意分割制度3号分割制度です。簡単に言えば夫婦で築き上げた年金だから分けなさいってことです。

離婚した第3号被保険者の方が損をしないように作られた制度となります。年金は給料額をベース(標準報酬月額)に支払う年金が決まります。また、もらえる年金もそこから決まりますからバリバリ働いていないほうは不利なんですね。特に第3号被保険者の方は国民年金しかもらえませんし、今回のように半額にされる話があるとなおさらです。

合意分割制度や3号分割制度は制度を知らないと実行できませんし、時効がありますので離婚を考えてらっしゃる方は事前に勉強しておきましょう。

詳しくはこちらの記事を御覧ください。

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まとめ

今回は「専業主婦の年金半額案が話題に。今後は縮小方向の第3号被保険者の問題について考える」と題して第3号被保険者について見てきました。

今後大きな制度変更がある可能性があります。

制度変更があってから慌てる前に今のうちに老後のことについて考えておきましょうね。

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