2026年度から健康保険料に上乗せされる「子ども・子育て支援金」が、俗に 「独身税」「子なし税」「DINKs税」と呼ばれています。
名称こそ刺激的ですが、実態は “独身者だけに課される追加税” ではなく、健康保険に加入するすべての被保険者・事業主が月額数百円~1,000円超を拠出し、その財源で児童手当拡充や大学授業料無償化などを賄う仕組みです。
少子化対策としては海外にも前例(旧ソ連の6%「子なし税」ほか)があるものの、負担の公平性や効果の検証が課題。
この記事では制度の背景、国際比較、日本版の詳細、そして年収別の影響シミュレーションを社会保険の視点で解説します。
独身税・子なし税、DINKs税とは?
まずは前提となる「子ども・子育て支援金」(独身税、子なし税)について経緯、詳細を見ていきましょう。
「子ども・子育て支援金」(独身税、子なし税)の概要
「子ども・子育て支援金」(独身税、子なし税)は健康保険に上乗せされる形となります。
ですから企業と従業員が労使折半で負担となります。
独身税、子なし税となっていますが、基本的にすべての人が負担をする仕組みです。
扶養家族の有無を問わず被保険者全員が負担する形なので、独身や子なしを狙い撃ちというわけではありません。
ただし、恩恵を受けるのは子育て世帯だけとなりますので、独身、子なし夫婦(DINKs)への罰金という意味合いでネットでも炎上して独身税、子なし税と呼ばれています。
また、「独身税、子なし税」と言われていますが、税金ではなく社会保険料(健康保険)への上乗せです。
金額はその人の所得等で決まります。
平均だと下記の金額程度とのこと。年々上がっていく予定なんですよ・・・※詳しい金額はシュミレーションを後述します。
年度 | 被保険者一人あたり月額(協会けんぽの目安) | 段階的引上げ |
---|---|---|
2026 | 約400円 | 制度開始 |
2027 | 約550円 | |
2028 | 約700円 |
なお、サラリーマンだけでなく自営業者などの国民健康保険の世帯もかかります。
国保世帯は世帯単位で月額350~600円と予想されています。
また、高齢者も月200〜350円負担となる予定です。
独身税、子なし税、DINKs税の用途
なお、独身税、子なし税の用途は
です。
さらに高校無償化なんて話もありますのでそちらにも回されそうです。
内容的に独身、子なし夫婦(DINKs)、子供がすでに成人している方からすると負担は増えるのに恩恵を受けられないということです
日本での議論の経緯
実はこの話かなり前から話題になっていたんですよ。
はじめに話題になったのは2017年、石川県かほく市の意見交換会で「独身税」案が報道され炎上 したときでしょう。
しかし、2024年の通常国会で改正子ども・子育て支援法が成立し、2026年度から支援金徴収を段階的に開始 することが決定しました。
ネット上では「実質的な独身税、子なし税」と批判する記事や SNS 投稿が拡散 されています。
少子化と財源不足から考え出された
子ども・子育て支援金は出生数は2024年に72万0,988人と過去最低を更新 、合計特殊出生率は1.20 台へ低下、婚姻減少も響く状況を打破するために国の「こども未来戦略加速化プラン」の総額3.6兆円のうち1兆円を支援金で賄う計画 から出てきたものとなります。
海外ではバチェラー税などの失敗も
実はこの同様な政策は海外でも実例があります。
効果があまりなくどこも途中でやめているんですよ。
国・制度 | 期間 | 内容 | 主な影響 |
---|---|---|---|
ソ連「子なし税」 | 1941–1990 | 25–50歳男性・20–45歳既婚女性に給与6%加算 | 出生率押上げ効果は限定的/所得が低い層に重い |
ルーマニア Decree 770 | 1977–1989 | 独身者に8–10%追加所得税 | 強権的人口政策で社会不安 |
ブルガリア・ポーランド | 1940–70年代 | 所得税加算「バチェラー税」 | 家計負担増→出生率は長期的に反落 |
そのことから罰則型よりも「子育てコストを下げる支援型」の方が持続的という評価が主流となっています。
バチェラー税って名前はかっこよいですね笑
ちなみにバチェラーはAmazonプライムの番組で有名ですが、「独身男性」という意味です。
Amazonプライムには女性版の「バチェラロッテ」という番組もありますが、こちらは未婚女性という意味です。
参考:Amazonプライム:バチェラー・ジャパン 、バチェラロッテ
影響シミュレーション(被用者保険・2028年度想定)
それではこの子ども・子育て支援金の影響はどのくらいあるのかをシュミレーションしてみましょう。
年収 (万円) |
月額負担 (円) |
年額負担 (円) |
負担率 (年収比%) |
---|---|---|---|
200 | 350 | 4,200 | 0.210 |
400 | 650 | 7,800 | 0.195 |
600 | 1,000 | 12,000 | 0.200 |
800 | 1,350 | 16,200 | 0.202 |
1,000 | 1,650 | 19,800 | 0.198 |
上表は年収別に負担額と実質負担率を試算したものです(協会けんぽの目安を使用)。
年収は万円表記、負担率=年額負担÷年収
年収600万円層でも 0.20%前後 と、税率を見ると小さいですが実質手取りを押し下げる点は要注意ですね・・・
独身男性は寿命も短い
ちなみに独身男性の寿命の中央値は66歳。
年金の面でも損なんですよ・・・

独身税、子なし税のメリット・デメリットを整理
この制度はメリット、デメリット両方ありますので整理しておきましょう。
メリット
デメリット/懸念
よくある質問 Q&A
最後によくありそうなQ&Aを見ておきましょう。
Q. 独身者だけが多く払うの?
A. いいえ。扶養の有無にかかわらず被保険者全員が同じ料率で負担します。
ですから独身や子なしの人だけを狙い撃ちする仕組みではありません。
独身、子なし夫婦(DINKs)、子供がすでに成人している方からすると、負担は増えるのに恩恵を受けられないということで不満がでているのです。
Q. 結婚・出産したら返ってくる?
A. 支援金は税控除ではなく保険料。
今のところ払い戻し制度はありません。
ただし、出産以降は恩恵を受けられる形となります。
Q. 将来さらに上がる?
A. 法律では2028年度までの総額と上限が明記されているだけです。
出生率や財源状況次第で見直しの可能性は高いでしょう。
まとめ
今回は「独身税(子なし税)は本当に導入? 子ども・子育て支援金の負担額と年収別シミュレーション【2026年開始・2028年まで完全解説】」と題して子ども・子育て支援金について詳しく見てきました。
「独身税」「子なし税」という呼称が独り歩きしていますが、実態は社会保険方式の子育て支援拠出金です。
月数百円~千円超の負担で出生支援を社会全体で行うという方向性は理解できるものの、負担と給付のバランス、若年層の可処分所得の減少、そして出生率への実効性など課題は山積。
独身・子なし世帯の方は、制度の正しい理解と家計シミュレーションで備え、同時に「子育てしやすい社会づくり」への議論に参加していきましょう。



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