日本人は世界的に見ても心配性の人種とよく言われます。そのため、生活費における生命保険の割合が他の国と比べても高くなっています。生命保険会社の営業トークが上手いからかもしれませんが、不必要なレベルまで死亡保険に入っている方も多くいますね。生命保険会社の言いなりとなってしまい20代の独身女性で1億円の生命保険に掛けていた方も見たことがあります。
確かに自分が死んだあとに残された家族の生活を考えるとたくさん残したいのはわかりますが、掛けすぎていればそれだけ普段の生活がきつくなってしまいますよね・・・
そんな方の盲点となっているのが遺族年金です。これ実はみなさんが普段納めている国民年金や厚生年金の制度でもらえるお金ですが意外と知られていないんですよ。遺族年金は基本的に生命保険と同じく遺族の方の資金がもらえますので役割は同じなんですよね。そのため遺族年金をもらえるならその金額を差し引いて生命保険でもらえる支給額を計算しておかないと余分に準備していると同じことになってしまいます。生命保険会社の担当者でも良心的でない人は残された家族に必要なお金をいうだけで遺族年金がもらえることに触れないのです。自分のところの保険をたくさんかけてもらうためです。ですから自分でもしっかりとした知識を持っておく必要があるんですね。
今回はそんな遺族年金について考えてみましょう。ちょっとややこしい制度ですが支給額の計算はそれほど難しくありません。分かりづらい方はそこだけでもチェックしておいてくださいね。
遺族年金とは
遺族年金とは国民年金や厚生年金保険料の被保険者(今入っている人)の方や被保険者であった人が亡くなったときに、その遺族が年金を受け取れる制度です。つまり、生命保険と考え方は一緒ですね。残された遺族にお金を残すことができるのです。そのため遺族年金がもらえるなら必要となる生命保険の死亡保障も少なくて済むはずなんです。
遺族年金の概要について詳しくはこちらの記事も御覧ください
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遺族年金は遺族基礎年金と遺族厚生年金がある
遺族年金は主に遺族基礎年金と遺族厚生年金の2つがあります。
自営業の方のように国民年金のみに入っている方は遺族基礎年金がもらえます。サラリーマンの方のように厚生年金に入っている方は遺族厚生年金と遺族基礎年金の両方がもらえます。
ただし、他の年金がもらえる場合は年金を選択したり、併給調整といって支給額が減らされたりする場合があります。
出所:日本年金機構「年金の併給又は選択」より
遺族基礎年金の支給要件
それではまず遺族基礎年金の対象となる方について見ていきましょう。遺族基礎年金の支給要件は以下のとおりです。
被保険者または老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上ある者が死亡したとき。(ただし、死亡した者について、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む。)が加入期間の3分の2以上あること。)ただし平成38年4月1日前の場合は死亡日に65歳未満であれば、死亡日の属する月の前々月までの1年間の保険料を納付しなければならない期間のうちに、保険料の滞納がなければ受けられます。
出所:日本年金機構「遺族基礎年金」より
遺族基礎年金はかなり広いです。被保険者とは今国民年金や厚生年金を払っている方です。現役世代の方ですね。被保険者でなくても老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上ある者ですから現役時代に普通に年金を納めていたり働いていた方なら普通に達成できる水準です。
遺族基礎年金をもらえる人(対象者)
ただし、遺族基礎年金がもらえる人(対象者)にはルールがあります。
★死亡した者によって生計を維持されていた、(1)子のある配偶者 (2)子
○子とは次の者に限ります
18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子
20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の子
出所:日本年金機構「遺族基礎年金」より
つまり、18歳になる前の子供などを残して亡くなった場合にもらえる制度ってことですね。生命保険も子供が成人するまでは高い保険を掛けるようなケースも多いですがそれと同じ意味を持ちます。
遺族基礎年金をもらえる金額
779,300円+子の加算
○子の加算 第1子・第2子 各 224,300円、第3子以降 各 74,800円
出所:日本年金機構「遺族基礎年金」より
計算は簡単ですね。基礎金額(779,300円)に子供の人数で加算をするだけです。
例えば二人子供を残して亡くなった場合には779,300円+224,300×2となり、年間で1,227,900円がもらえます。
遺族基礎年金をもらえる期間(受給できる期間)
もらえる期間は対象の条件を満たしている間です。つまり、子供が18歳到達年度の末日(3月31日)を経過するまで(障害等級(1級、2級)に該当する子は20歳まで)ってことですね。
その基準になるまで10年あるなら1,227,900円が10年もらえることになります。ってことは生命保険の保障額からその部分は省いて考えてもよいはずです。
遺族厚生年金の支給要件
次に遺族厚生年金をみてみましょう。こちらはちょっとややこしいところがあります。
被保険者が死亡したとき、または被保険者期間中の傷病がもとで初診の日から5年以内に死亡したとき。(ただし、遺族基礎年金と同様、死亡した者について、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む。)が国民年金加入期間の3分の2以上あること。)
※ただし平成38年4月1日前の場合は死亡日に65歳未満であれば、死亡日の属する月の前々月までの1年間の保険料を納付しなければならない期間のうちに、保険料の滞納がなければ受けられます。
老齢厚生年金の受給資格期間が25年以上ある者が死亡したとき。
1級・2級の障害厚生(共済)年金を受けられる者が死亡したとき。
出所:日本年金機構「遺族厚生年金」より
こちらは前述の遺族基礎年金と比べて対象が少し大きくなっています。被保険者期間中の傷病がもとで初診の日から5年以内に死亡したとき、1級・2級の障害厚生(共済)年金を受けられる者が死亡したとき。というパターンが加わっています。もちろん現役で払っている被保険者の方も対象となります。
遺族厚生年金をもらえる人(対象者)
遺族厚生年金の対象者は以下のとおりです。
死亡した者によって生計を維持されていた、妻、子、孫(18歳到達年度の年度末を経過していない者または20歳未満で障害年金の障害等級1・2級の者)、55歳以上の夫、父母、祖父母(支給開始は60歳から。ただし、夫は遺族基礎年金を受給中の場合に限り、遺族厚生年金も合わせて受給できる。)
※30歳未満の子のない妻は、5年間の有期給付となります。
※子のある配偶者、子(子とは18歳到達年度の年度末を経過していない者または20歳未満で障害年金の障害等級1・2級の障害者に限ります)は、遺族基礎年金も併せて受けられます。
出所:日本年金機構「遺族厚生年金」より
こちらも遺族基礎年金より範囲が広くなっていますね。ちょっとややこしい書き方をしていますので簡単にすると妻は年齢に関わらず受給できる。子、孫は18歳の年度末まで受給できる。(障害等級1or2級の場合は20歳まで)夫、父母、祖父母については被保険者が死亡時に55歳以上であることが条件となります。
遺族厚生年金をもらえる金額
遺族厚生年金のもらえる金額は簡単に言えば老齢厚生年金額の3/4を受け取ることができるのです。ただし、ちょっと計算がややこしいですね・・・ねんきん定期便などを使えばそれほど難しくなく計算が可能です。
報酬比例部分の年金額(本来水準)
出所:日本年金機構「遺族厚生年金」より
報酬比例部分の年金額(従前額保障)
出所:日本年金機構「遺族厚生年金」より
中高齢の加算
また、中高齢加算というルールもあります。これは以下に該当する妻は金額が加算されるルールです。
次のいずれかに該当する妻が受ける遺族厚生年金には、40歳から65歳になるまでの間、584,500円(年額)が加算されます。
○夫が亡くなったとき、40歳以上65歳未満で、生計を同じくしている子がいない妻
○遺族厚生年金と遺族基礎年金を受けていた子のある妻が、子が18歳到達年度の末日に達した(障害の状態にある場合は20歳に達した)等のため、遺族基礎年金を受給できなくなったとき。
出所:日本年金機構「遺族厚生年金」より
ねんきん定期便をつかっての計算方法
上記の計算はちょっとややこしいのでねんきん定期便をつかっての計算方法をご紹介しましょう。
ねんきん定期便に「これまでの加入実績に応じた老齢厚生年金額」というのが載っていると思います。
それを元に計算が可能なのです。まず、老齢厚生年金の加入年数が25年以上の方は「これまでの加入実績に応じた老齢厚生年金額」に3/4を掛けた金額がもらえます。
25年未満加入の方の計算は以下のとおりとなります。25年(300ヶ月)分掛けたとみなして計算されます。
これまでの加入実績に応じた老齢厚生年金額÷加入月数×300ヶ月×3/4
たとえば老齢厚生年金額が50万で20年掛けていたとしましょう。
50万円÷20年(240ヶ月)×300ヶ月×3/4
となりますので468,750円がもらえることになります。さらに中高齢加算に該当していれば+で584,500円がもらえます。
前述の遺族基礎年金の例と合わせて考えてみましょう。この場合には遺族基礎年金として1,227,900円、遺族厚生年金として468,750円がもらえます。(中高齢加算は該当しない)合計で1,696,650円が年間もらえることになります。これだけでは生活に足りないかもしれませんが、子供が成人になるまでのある程度の足しにはなるはずです。生命保険ですべて賄わなくてもこの遺族年金を含めて保障額を考えることが必要ですね。
ねんきん定期便の詳しい見方はこちらの記事を御覧ください。
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遺族厚生年金をもらえる期間(受給できる期間)
遺族厚生年金を受給できるのは以下の期間です。
夫の死亡時30歳未満の妻で、子がいなければ5年間
障害等級(1級、2級)に該当しない子と孫は18歳年度末まで
障害等級(1級、2級)に該当する子と孫は20歳まで
夫と父母、祖父母は60歳から
ちなみに上記の条件を満たしていても結婚(再婚)をしたり離縁したりすると失権することになります。そのため実際は結婚状態にありながらも籍を入れなかったりする人もいて問題になってたりもします。
まとめ
今回は「あなたの生命保険高すぎかも。保障額から遺族年金の金額を差し引いて考えてますか?」と題して遺族年金について考えてみました。
遺族年金はややこしい仕組みですが、計算はそれほど難しくないです。ぜひ生命保険会社の言葉を単純に鵜呑みにして保障額を考えるのではなく遺族年金の部分も加味して保険を考えましょうね。多くの方は余分に生命保険を払っていると言われていますよ。
保険は基本的に保険会社の取り分が大きいため期待値がマイナスの商品がほとんどです。ですから掛ける際は自分でヘッジ(回避)できないリスクについてのみ掛けるのが良いでしょう。ですから死亡保険については遺族年金でもらえる金額を差し引いてなお足りない部分を生命保険でカバーするという考えが正解ですね。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
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