インデックス型の投資信託でも定期的に見直しが必要な理由

インデックス投資をやっている方の中には放置でOKと思っている方が多いかもしれません。

しかし、そうでもない部分があるんですよ。

同一の販売会社、資産運用会社、同一のベンチマークの投資信託でも信託報酬水準に差異が生じてしまっているのです。

簡単に言えばより信託報酬の低い新しい投資信託出して昔から運用しているのはそのままの信託報酬というのが多いという。

つまり、釣った魚には餌あげない状態が生じているのです。

新しい投資信託に乗り換えないと比較すると損をしてしまうという・・・

金融庁が2021年6月に公開した「資産運用業高度化プログレスレポート2021」にそのあたりの話が問題視されていましたのでご紹介しましょう。

同じ運用会社で同じベンチマークなのに信託報酬が違う問題

投資信託を定期的に確認している方の中では常識的な話ですが、同一のベンチマークで同じ資産運用会社、同一の販売会社なのに信託報酬が違う商品が複数存在しています。

簡単に言えば昔からあるすでに顧客がついて資産もある投資信託の信託報酬はそのままに、新規獲得用に信託報酬が安い同じベンチマークのインデックス投資信託を発売しているということです。

新たな投資信託を作らなくても昔からある投資信託の信託報酬を下げれば済む話なのでしょうが、そうすれば利益が減ってしまいますからね。

姑息な手段といえば手段が横行しているのです。

主要運用会社が運用しているインデックスファンドの信託報酬

インデックスファンドの信託報酬

出典:金融庁「資産運用業高度化プログレスレポート2021」より

上記は主要運用会社が運用しているTOPIXと日経225のインデックスファンドの信託報酬です。

同じ運用会社で同じベンチマークの商品なのに信託報酬がバラバラなんですよ。

多くの場合は古い投資信託の信託報酬が高く、最近できた投資信託の信託報酬が低くなっています。

例えばわかり易い例でいれば日経225連動型のA社です。

20年以上前からある投資信託の信託報酬は1.6%〜1.8%くらいとなっていますが、直近5年で出た投資信託は0.2%程度となっています。

同じ日経225なのに8倍〜9倍の信託報酬となってしまっているのです。

これはA社だけに限らず今回表記されているなかではほとんどが同様の傾向にありますね。

古い投資信託は信託報酬が高い

経過年数別信託報酬平均

出典:金融庁「資産運用業高度化プログレスレポート2021」より

実際に同じベンチマークの商品なのに発売からどれだけ経っているのかで信託報酬に大きな差があるのがわかるのが上記資料です。

TOPIX連動型のインデックスファンドでは20年前以上からある投資したくは信託報酬0.8%程度の平均ですが、5年以内の場合は0.2%の平均と大きな差があることがわかりますね。



「eMAXIS」と「eMAXIS Slim」で検証

わかりやすい例で比較してみましょう。

三菱UFJ国際投信の「eMAXIS」シリーズと「eMAXIS Slim」シリーズです。

こちらは同じベンチマークの商品がいくつか存在しているんですよ。

TOPIXを例に比較してみましょう。

信託報酬は約2.8倍差

両方、東証株価指数(TOPIX)(配当込み)をベンチマークとした投資信託です。

※スマートフォンの方はスクロールしてお読みください。

信託報酬率(税込)純資産(6/29時点)
eMAXIS TOPIXインデックス0.44%以内14,959百万円
eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX)0.154%以内34,452百万円

同じベンチマーク、同じ運用会社なのに信託報酬は0.44%以内と0.154%以内と2.8倍近くの差があります。

純資産の推移を比較

純資産はeMAXIS TOPIXインデックスはどんどん減っていますね。

1年で2,241百万円減少。(6月29日時点)

それでもeMAXIS TOPIXインデックスの純資産14,959百万円もあるんですよ。

インデックス投資ですから投資信託を見直さずに放置している方も多いのかもしれませんね。

eMAXIS TOPIXインデックス純資産

出典;SBI証券 eMAXIS TOPIXインデックス月次資金流出入額

対して信託報酬の低いeMAXIS Slim 国内株式(TOPIX)が右肩あがりとなっています。

こちらは1年で15,671百万円増加(6月29日時点)

eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX)純資産

出典;SBI証券 eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX)月次資金流出入額

同じベンチマークなのに信託報酬率がこれだけ違いますから当然といえば当然ではありますが・・・

運用成績を比較

同じベンチマーク、同じ運用会社ですが信託報酬率がこれだけ違うと運用成績にも影響が及んでいます。

同時期のトータルリターンで比較してみましょう。

※スマートフォンの方はスクロールしてお読みください。

1ヶ月6ヶ月1年3年(年率)5年(年率)
eMAXIS TOPIXインデックス1.34%10.58%25.11%5.27%8.87%
eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX)1.36%10.74%25.47%5.56%

信託報酬率の低いeMAXIS Slim 国内株式(TOPIX)の方が1ヶ月で0.02%、6ヶ月で0.16%、1年で0.36%も成績が良いんですよ。

これだけ差があると無視できないレベルですね。



「ニッセイオープン」と「購入・換金手数料なし」で検証

次はニッセイ・アセットマネジメント「ニッセイオープン」シリーズと「購入・換金手数料なし」シリーズです。

こちらも同じベンチマークの商品がいくつか存在しているんですよ。

TOPIXを例に比較してみましょう。

信託報酬は約3.5倍差

両方、東証株価指数(TOPIX)(配当込み)をベンチマークとした投資信託です。

※スマートフォンの方はスクロールしてお読みください。

信託報酬率(税込)純資産(6/29時点)
ニッセイTOPIXオープン0.55%以内12,683百万円
<購入・換金手数料なし>ニッセイTOPIXインデックスファンド0.154%以内40,757百万円

同じベンチマーク、同じ運用会社なのに信託報酬は0.55%以内と0.154%以内と3.5倍近くの差があります。

純資産の推移を比較

純資産の傾向は前述のeMAXISと同じですね。

ニッセイTOPIXオープンはどんどん減っています。

1年で2,189百万円減少。(6月29日時点)

それでもニッセイTOPIXオープンの純資産12,683百万円もあるんですよ。

こちらもインデックス投資ですから投資信託を見直さずに放置している方も多いのでしょうね・・・

ニッセイTOPIXオープン純資産

出典;ニッセイTOPIXオープン純資産月次資金流出入額

対して信託報酬の低い<購入・換金手数料なし>ニッセイTOPIXインデックスファンドは右肩あがりとなっています。

こちらは1年で12,421百万円増加(6月29日時点)

<購入・換金手数料なし>ニッセイTOPIXインデックスファンド純資産

出典;SBI証券 <購入・換金手数料なし>ニッセイTOPIXインデックスファンド月次資金流出入額

こちらもeMAXIS Slim と傾向は全く同じですね。

運用成績を比較

同じベンチマーク、同じ運用会社ですが信託報酬率がこれだけ違うと運用成績にも影響が及んでいます。

同時期のトータルリターンで比較してみましょう。

※スマートフォンの方はスクロールしてお読みください。

1ヶ月6ヶ月1年3年(年率)5年(年率)
ニッセイTOPIXオープン1.32%10.55%25.03%5.18%8.78%
<購入・換金手数料なし>ニッセイTOPIXインデックスファンド1.35%10.74%25.46%5.53%9.10%

信託報酬率の低い<購入・換金手数料なし>ニッセイTOPIXインデックスファンドの方が1ヶ月で0.03%、6ヶ月で0.19%、1年で0.43%も成績が良いんですよ。

これだけ差があると無視できないレベルですね。

eMAXIS SlimとeMAXISよりも信託報酬率の差が大きいこともあり、トータルリターンの差も大きくなっています。



まとめ

今回は「インデックス型の投資信託でも定期的に見直しが必要な理由」と題して同じベンチマーク、同じ運用会社でも信託報酬率の違う投資信託がある問題を見てきました。

かなり差が出てしまっていることがわかっていただけたと思います。

つまり、インデックス投資をしていても定期的に投資する投資信託は見直しが必要な状況にあるということです。

運営会社等の儲けを優先すればどうしても現在みたいな状況になってしまいます。

しかし、利便性を考えればこんなややこしいことせず既存の投資信託の信託報酬率の引き下げで対応してほしいな・・・って切実に思います。

なお、「資産運用業高度化プログレスレポート2021」では他にも大手アクティブファンドのシャープレシオ平均が低い問題やクローゼットトラッカーなどを問題視していますね。

詳しくはこちらを御覧ください。

今回みてきた「資産運用業高度化プログレスレポート2021」の原本はこちらからご覧いただけます。

>>資産運用業高度化プログレスレポート2021

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