住宅ローンを検討するとき、多くの方が「変動金利か固定金利か」で悩みます。
しかし、もう一つ、あなたの総返済額を数百万円も左右する「隠れた選択肢」があることをご存じでしょうか。
それが「元利均等返済」と「元金均等返済」という、返済方法の選択です。
この二つの返済方法、名前が似ていてわかりにくいうえに、銀行の窓口やハウスメーカーの営業マンからは「元利均等返済でいいですよね」と、さも当然のように勧められることがほとんどです。
実際、アルヒ株式会社によると、アルヒの住宅ローン利用者のうち元利均等返済を選んだ人が約97%、元金均等返済はわずか3%に過ぎません。
でも、ちょっと立ち止まって考えてみてください。
「97%の人が選んでいるから正解」とは限りません。
とくに2024年以降、日本銀行がマイナス金利を解除し、2025年12月には政策金利が0.75%まで引き上げられた今、金利上昇局面における返済方法の選択は、かつてないほど重要な意味を持っています。
この記事では、元利均等返済と元金均等返済の違いをわかりやすく解説し、金利上昇シミュレーションを交えて「あなたにとっての最適解」を見つけるお手伝いをします。
銀行員やハウスメーカーの営業マンの言葉を鵜呑みにせず、ご自身で考えるための判断材料をお届けします。
元利均等返済と元金均等返済をわかりやすく解説
まず、二つの返済方法の仕組みを、できるだけシンプルに整理しましょう。
元利均等返済とは
元利均等返済とは、毎月の返済額(元金+利息の合計)が一定になる返済方法です。
たとえば月々10万円と決まったら、金利が変わらない限り、1回目も100回目も同じ10万円を返済します。
ただし、その内訳は毎月変わります。
返済当初は利息の割合が大きく、返済が進むにつれて元金の割合が増えていきます。
わかりやすくたとえるなら、「毎月の支払額という"器"の大きさは変わらないけれど、中身の配分が変わっていく」イメージです。
元金均等返済とは
元金均等返済とは、毎月返済する「元金」の額が一定になる返済方法です。
利息はローン残高に応じて計算されるため、借入当初の返済額が最も高く、返済が進むにつれて毎月の返済額が少しずつ減っていきます。
こちらは「元金という"骨格"はいつも同じで、利息という"肉"がだんだん痩せていく」イメージです。
両者の違いを一言でまとめると
| 項目 | 元利均等返済 | 元金均等返済 |
|---|---|---|
| 毎月の返済額 | 一定(わかりやすい) | 徐々に減少 |
| 当初の返済額 | 低い | 高い |
| 総返済額 | 多い | 少ない |
| 元金の減り方 | 遅い | 早い |
| 利用割合 | 約97% | 約3% |
ここまでは、多くの解説記事でも書かれている内容です。
しかし、この記事でお伝えしたいのは、ここから先の話です。
なぜ97%の人が元利均等返済を選ぶのか?その「本当の理由」
元利均等返済が圧倒的に多く選ばれている理由は、単に「わかりやすいから」だけではありません。
もう少し掘り下げてみましょう。
理由1:銀行にとって都合が良い
銀行や金融機関にとって、元利均等返済のほうが利息収入が多くなります。
元金の減りが遅い分、長期間にわたって利息を受け取れるためです。
意地悪な言い方をすれば、金融機関が積極的に元利均等返済を勧めるのは、顧客のためだけではなく、自社の利益のためでもあるのです。
ですから多くの銀行は元利均等返済をデフォルトの選択肢にしていますし、元金均等返済がそもそも選べない銀行もあります。
理由2:ハウスメーカーの営業マンやFPにとって都合がよい
元利均等返済は当初の返済額が低いため、同じ年収でもより多くの金額を借りることができます。
固定金利の場合、金利1.2%・返済期間35年・年収400万円以上(返済比率35%)で計算すると、元利均等返済では約3,420万円借りられるのに対し、元金均等返済では約2,950万円。
その差は約470万円です。
ハウスメーカーや不動産会社の営業マンからすれば、借入可能額が大きい=より高い物件を販売できるわけです。
ハウスメーカーの営業マンやFPから「元利均等返済でいいですよね」と勧められる背景には、こうした構造があることを知っておいてください。

理由3:そもそも元金均等返済を取り扱っていない金融機関がある
すべての金融機関が元金均等返済に対応しているわけではありません。
選択肢として提示されなければ、検討のしようがないのです。
つまり、97%の人が元利均等返済を選んでいるのは、「比較検討した結果」というよりも、「そもそも選択肢を知らなかった」あるいは「勧められるままに決めた」ケースが少なくないのです。
元利均等返済と元金均等返済のメリット・デメリット
ここで、それぞれの返済方法のメリット・デメリットを整理します。
元利均等返済のメリット
まずは元利均等返済のメリットから
毎月の返済額が一定で家計管理がしやすい。
住宅ローンは20年、30年と長期にわたります。
毎月の出費が読めることは、家計を安定させるうえで大きな安心材料です。
当初の返済負担が軽い
引っ越し費用や家具の購入など、住宅購入時は何かと出費がかさみます。
返済の立ち上がりが穏やかなのは助かります。
5年ルール・125%ルールの恩恵を受けられる(変動金利の場合)。
多くの金融機関では、変動金利×元利均等返済の組み合わせに「5年ルール」(5年間は返済額を変えない)と「125%ルール」(返済額の増加は前回の1.25倍まで)が適用されます。
急激な返済額の増加を避けるための仕組みです。
元利均等返済のデメリット
次にデメリットです。
総返済額が元金均等返済より多くなる。
元金の減りが遅い分、利息を多く支払うことになります。金利が高いほど、この差は拡大します。
金利上昇時のダメージが大きい。
元金がなかなか減らないため、金利が上昇した場合に利息負担が大きく膨らみます。
5年ルール・125%ルールの落とし穴。
これは後ほど詳しく解説しますが、返済額を抑えているだけで、利息の発生を止めているわけではありません。
元金均等返済のメリット
次に元金均等のメリットです。ほぼ元利均等の裏返しなんですよ。
総返済額が少ない。
同じ条件で比較すると、元金均等返済のほうが支払利息が少なくなります。
元金の減りが早い。
ローン残高が早く減るため、金利上昇時の影響を受けにくくなります。
また、将来の住み替えや売却時にオーバーローン(残債が物件価格を上回る状態)のリスクも低くなります。
返済が進むほど家計が楽になる。
子どもの教育費がピークを迎える時期に、住宅ローンの返済額が自然と減っている状態をつくれます
元金均等返済のデメリット
次はデメリット
当初の返済額が大きい。
借入直後が最も返済額が多いため、家計にゆとりがない時期には厳しくなります。
住宅ローン控除の控除額が少なくなる可能性がある。
住宅ローン控除は年末のローン残高を基準に計算されます。
元金の減りが早い分、控除額も早く小さくなります。
ただし、支払利息の節約額と控除額の減少を天秤にかける必要があります。
借入可能額が下がる。
先述のとおり、当初返済額が大きいため、返済比率の審査で借りられる上限額が低くなります。
【金利上昇シミュレーション】返済総額はどれだけ変わるのか
ここからが、この記事の核心です。
2023年のころまでは「低金利だからどちらを選んでも大差ない」という結論でしたが、2024年以降の金融環境は激変しました。
日本銀行は2024年3月にマイナス金利を解除し、2025年12月には政策金利を0.75%に引き上げています。
変動金利の住宅ローンも、大手銀行で適用金利が1%前後まで上昇しています。

変動金利か固定金利かという問題だけでなく、「元利均等返済」と「元金均等返済」の問題も変わってきているのです。
今回は「元利均等返済」と「元金均等返済」は「金利が上がるとどうなるのか」を、具体的な数字で見ていきましょう。
シミュレーション条件は以下の通り。
借入額:3,000万円、返済期間:35年、ボーナス返済なし
で比較します。
ケース1:金利0.5%の場合(低金利時代の水準)
| 元利均等返済 | 元金均等返済 | |
|---|---|---|
| 当初の月額返済額 | 約77,875円 | 約83,927円(以後減少) |
| 総返済額 | 約3,271万円 | 約3,263万円 |
| 支払利息合計 | 約271万円 | 約263万円 |
利息の差は約8万円。
正直、この水準では大きな違いとは言えません。
ケース2:金利1.5%の場合
| 元利均等返済 | 元金均等返済 | |
|---|---|---|
| 当初の月額返済額 | 約91,855円 | 約108,927円(以後減少) |
| 総返済額 | 約3,858万円 | 約3,789万円 |
| 支払利息合計 | 約858万円 | 約789万円 |
利息の差は約69万円。
無視できない金額になってきます。
ケース3:金利3%の場合(さらなる金利上昇シナリオ)
| 元利均等返済 | 元金均等返済 | |
|---|---|---|
| 当初の月額返済額 | 約115,455円 | 約146,427円(以後減少) |
| 総返済額 | 約4,849万円 | 約4,579万円 |
| 支払利息合計 | 約1,849万円 | 約1,579万円 |
利息の差は約270万円。
中古車が1台買えてしまうほどの差額です。
比較まとめ
| 金利 | 元利均等の利息 | 元金均等の利息 | 差額 |
|---|---|---|---|
| 0.5% | 約271万円 | 約263万円 | 約8万円 |
| 1.5% | 約858万円 | 約789万円 | 約69万円 |
| 3.0% | 約1,849万円 | 約1,579万円 | 約270万円 |
金利が上がれば上がるほど、元利均等返済と元金均等返済の差は指数関数的に広がります。
金利上昇局面で見落としてはいけない「5年ルール」の罠
変動金利で元利均等返済を選んでいる方に、ぜひ知っておいていただきたい話があります。
多くの金融機関には「5年ルール」と「125%ルール」があります。
「5年ルール」とは、金利が上昇しても5年間は月々の返済額を変えないというルールです。
「125%ルール」とは、5年後の返済額見直し時に、増加幅を前回の1.25倍までに抑えるというルールです。
一見すると、借り手を守る優しい仕組みに見えます。
しかし、ここに大きな落とし穴があります。
返済額を据え置いているだけで、金利上昇による利息の増加は確実に発生しています。
つまり、毎月の返済額のうち利息の占める割合が増え、元金の返済に回る分が減るのです。
極端な場合、返済額のすべてが利息に充てられ、元金が1円も減らない「未払い利息」が発生する可能性すらあります。
住宅金融支援機構の解説にもあるとおり、5年ルールは「痛み止め」であって「治療」ではありません。
痛みを感じないうちにローン残高が膨らんでいく可能性があるのです。
この5年ルールは、原則として変動金利×元利均等返済の組み合わせに適用されます。
元金均等返済の場合は、金利が上がればダイレクトに返済額が増えますが、そのぶん元金はきちんと減っていきます。
痛みを先送りにするか、早めに対処するか。
どちらが健全な家計管理かは、冷静に考えてみる価値があります。

【金利上昇シナリオ】変動金利で途中から金利が上がったらどうなるか
もう一歩踏み込んで、「最初は低金利で借りたけれど、途中から金利が上がった」というリアルなシナリオを考えてみましょう。
シナリオ設定
借入額3,000万円、返済期間35年で、当初5年間は金利0.5%、6年目以降は金利1.5%に上昇した場合を想定します。
元利均等返済の場合
当初5年間の月額返済額は約77,875円。
5年後の残債は約2,610万円です。
6年目以降は金利1.5%が適用され、残りの30年間の月額返済額は約90,073円に増加します。
月々の負担増は約12,200円。年間で約14万6,000円の負担増となります。
元金均等返済の場合
当初5年間の返済で、月額約83,927円からスタートし毎月少しずつ減少。
5年後の残債は約2,572万円です。元金の減りが約38万円早いのがポイントです。
6年目以降の月額返済額は約103,700円からスタートし、以後徐々に減少します。
ここが重要:5年後の残債の差
同じ5年間でも、元金均等返済のほうが約38万円多く元金を返済しています。
この差は、金利上昇後の利息計算の「ベース」が小さくなることを意味します。
つまり、元金均等返済は「金利が上がる前に、できるだけ元金を減らしておく」という意味で、金利上昇への"保険"の役割を果たすのです。
元利均等返済と元金均等返済、結局どっちが良いのか
「で、結局どっちを選べばいいの?」
この問いに対する正直な答えは、「あなたの家計の状況とライフプラン次第」です。
万人にとっての正解はありません。ただし、判断の「ものさし」はお伝えできます。
元利均等返済が向いている人
住宅購入直後の家計に余裕がなく、当初の返済額をできるだけ抑えたい方。
5年後、10年後に子どもの教育費のピークが来るなど、近い将来に大きな出費が控えている方。
毎月の支出を固定して、確実な家計管理をしたい方。
住宅金融支援機構でFPの高田晶子氏も指摘しているとおり、比較的近い将来に支出が多くなりそうな人には元利均等返済のほうが安心です。
元金均等返済が向いている人
共働きで当初から返済にゆとりがある方。子どもがまだ幼く、教育費のピークまで15年以上ある方。
金利上昇に備えて早めに元金を減らしておきたい方。将来的に住み替えや売却の可能性がある方。
とくに注目すべきは、教育費のピークとの兼ね合いです。
元金均等返済なら、子どもが大学に通う頃には返済額がかなり下がっているため、家計のバランスが取りやすくなります。
第三の選択肢:元利均等返済+繰り上げ返済
実は、「元利均等返済を選んで、余裕がある時期に繰り上げ返済を行う」という戦略もあります。
三井住友銀行の解説でも触れられていますが、当初の返済額が低い元利均等返済を選び、浮いた分を貯蓄に回して、金利上昇局面に入ったタイミングで繰り上げ返済するという方法です。
ただし、この戦略には一つ重要な前提があります。「繰り上げ返済のための資金を本当に貯められるか」です。
理論上は合理的でも、実行できなければ意味がありません。
人間は「使えるお金があれば使ってしまう」生き物です。
行動経済学でいう「現在バイアス」です。
元金均等返済なら、最初から仕組みとして元金を多く返済するため、意志力に頼る必要がありません。
繰り上げ返済を確実に実行できる自信がある方は元利均等返済+繰り上げ返済を、「貯めたお金に手をつけてしまいそう」という方は元金均等返済を選ぶのが現実的です。

すでに住宅ローンを組んでいる方へ:借り換えで返済方法は変えられる
すでに住宅ローンを組んでいて、「元利均等返済を選んでしまったけれど、元金均等返済に変えたい」と思った方もいらっしゃるかもしれません。
フラット35などでは元利均等返済から元金均等返済への変更も可能なようでですが、多くの銀行の取り扱い住宅ローンでは返済方法だけを変更できるケースは多くないようです。
しかし、借り換えという形であれば、新たに元金均等返済を選択することは可能です。
借り換えを検討する際のポイントは以下のとおりです。
借り換えには事務手数料や登記費用などの諸費用が数十万円かかります。
諸費用を含めても、金利差や返済方法の変更によるメリットが上回るかどうかを試算する必要があります。
また、借り換え先の金融機関が元金均等返済に対応しているかの確認も必須です。
まずはいろいろな銀行の住宅ローンを比較してみましょう。
まとめ:「なんとなく」ではなく、「自分で選ぶ」住宅ローン
この記事では、元利均等返済と元金均等返済の違いを解説し、金利上昇局面でのシミュレーションをお見せしました。
あらためて、お伝えしたいことをまとめます。
元利均等返済と元金均等返済は、金利が低いうちはそこまで大きな差になりません。
しかし、金利が上昇すれば、その差は数百万円規模にまで拡大します。
2024年のマイナス金利解除、2025年の政策金利0.75%への引き上げ。
日本はいま、約30年ぶりに「金利のある世界」に足を踏み入れています。
この流れの中で、「なんとなく元利均等返済」を選ぶのはリスクです。
大切なのは、銀行員やハウスメーカーの営業マンの言葉を鵜呑みにしないこと。
彼らには彼らのインセンティブがあります。
あなたの家計を最終的に守れるのは、あなた自身です。
住宅ローンは人生で最も大きな買い物のひとつです。
返済方法の選択ひとつで、35年後に手元に残るお金が大きく変わります。
この記事が、あなたが「自分で考え、自分で選ぶ」ためのお役に立てれば幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました

