ニュース等で「日本人の貯蓄額の平均値は1,729万円である」や「30代の金融資産平均は735万円である」といったようなのを見かけたことがあると思います。
出てきている数字と自分たちの周りをみて違和感を感じる方もいるでしょう。
実はこれ、統計の嘘、ごまかしが入っているケースが多いんですよ。
統計の世界に有名な言葉があります。
「数字は嘘をつかない。嘘つきが数字を嘘に使うのだ」
って言葉です。
最近、この手のニュースや記事がとても目についたので今回は記事にしたいと思います。
統計情報の正しい見方について今回は考えて見たいと思います。
※追記しました。
統計データにだまされないためには
テレビのニュース、ネットの記事それらにだまされないためにはしっかりデータを見極める必要があります。
まずはそのポイントをご紹介しましょう。
調査の前提を理解する
まず、重要なことは調査の前提を確認した上で、平均値、中央値、最頻値などの用語をしっかり理解することです。
例えば、家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](日本銀行)によると30歳代の方の金融資産保有額の平均値は735万円とでています。
しかし、もう一つデータがあります。30歳代の方の金融資産保有額の平均値は470万円といったものです。
これ両方共日本銀行が調査をした結果です。
この違いは後者は「金融資産を保有していない世帯を含む」の平均なのに対して、前者は「金融資産を保有している世帯」の平均なのです。
つまり、平均でもそもそも金融資産を持ってない人を除いて計算したものと全体でみたものでは全然違って当然なのです。
同じような数字をだしてもこのような違いが生じてきちゃうんですね。
また、この調査、2人以上の世帯を調査したものになります。
単身世帯を含めていません。(おそらく単身世帯を含めれば平均値は下がるでしょう)
ですからまずは調査の前提を確認することが大事です。
テレビのニュース、ネットの記事ではその点についてちょっろっと小さくしか触れてなかったり、そもそもまったく触れていないケースもありますので基本的に自分で確認するしかありませんが・・・
平均値とは
また、平均値で見るのがそもそも良いのかという話があります。
平均値とはデータの合計値をデータ数で割った値のことです。
小学校で習いましたよね。
この数字の問題は実態をうまく反映出来ないケースが多いことにあります。
例えばこんなケースが考えられます。
金融資産1億円もっている人が1人
まったく金融資産をもっていない人が9人いたとします。
この10名で平均すると金融資産の平均値は1,000万円となります。
計算は間違えていませんが、なんだか実態を把握できているような感じはありませんよね。
今の日本は格差社会と言われますがこれと同じ現象が起きています。
しかし、テレビのニュースなど出てくるこの手の統計情報はたいてい平均値だったりしますからたちが悪いのです・・・。
中央値とは
対して中央値はデータを小さい順に順番に並べたときに真ん中(中央)にくる値のことです。
これを先程の30歳代の方の金融資産保有額で考えてみましょう。
「金融資産を保有していない世帯を含む」の場合には200万円
「金融資産を保有している世帯」だと420万円となります。
だいぶ下がりましたね。
こちらの方が実情に近いと思われます。
しかし、なかなか中央値で発表されている統計はありませんよね・・・
最頻値とは
最頻値とは名前のとおりですが、もっともよく現れる数字のことです。
これを先程の統計データで見てみると結構衝撃です。
答えは0円です。
もっとも多くでてくる金融資産の額は0円なのです。
実に33.7%が0円となっています。
この調査、2人以上の世帯を調査したものになります。
もし、単身世帯を含めればさらに多くなるのは間違いありません。
これら3つの数字を見ると
平均値、中央値、最頻値の3つの数字をみればわかることがあります。
それは日本はかなりの格差になっているってことです。
平均値だけでなく、中央値、最頻値のデータがあれば見る癖をつけるとより統計データを正確に読むことができると思います。
調査方法を確認する
次に意識したい点として調査方法を確認するというのがあります。
例えば前述の日本銀行の「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査)」は層化二段無作為抽出法による調査地 点抽出(500) ・住民基本台帳、選挙人名簿を用いた標本抽出 ・住宅地図を用いた抽出法で補完。合計8000標本の調査をしています。
同じような調査で総務省が出している「家計調査報告」というものがあります。
こちらも全国で二人以上の調査世帯数を8,076人調べています。
これくらい調べれば統計調査として問題ないでしょうが、中には数人だけ調べたとか、社内調査を大々的に発表しているところもあったりしますからどのような調査が行われたのかの確認が必要なのです。
また、その調査対象がどのように選ばれたのかも見ておく必要があります。
結論ありきで統計データを作ろうとすれば調査対象をちょっと考えればある程度結論に近い数字にもっていくことも可能でしょうしね。
出所を確認する
次に重要なのが誰が言ってるのかってことです。
前述の調査は日本銀行だったり、総務省ですからある程度は信頼できる統計データだと思います。
しかし、どこかの企業や個人が言っていることをそのまま鵜呑みにするのは危険です。
特に企業の出す統計データはそもそも結論ありきで作られているケースもありますのでしっかり内容を精査する必要があるでしょう。
ちょっと前に働き方改革で問題のあった厚生労働省の調査もおそらく結論ありきで作ろうとしてミスった可能性が高そうな気もします。
足りないデータはないのかを確認する
例えば前述の、家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](日本銀行)によると日本人の金融資産平均額(金融資産を保有していない世帯を含む)は1,151万円です。
対して総務省「家計調査報告」をみると日本人の平均貯蓄額は1,064万円です。
微妙に違いますね。
これはそもそもの調査データの違いです。前者は金融資産、後者は貯蓄額ですから貯蓄以外の株や不動産などが前者は含まれ、後者は含まれないってことです。
調査期間も違いますので一概には言えませんが、この差があまりないのが怖いです。
つまり日本人の金融資産の大半が貯蓄であるってことですから・・・
出所:総務省「家計調査報告」
いつのデータか
いつのデータなのかもしっかり押さえておきましょう。
特に統計データ前後になにか大きなイベント等があると前提が狂ってしまい意味のない数字となってしまう可能性もあります。
必ず統計調査日を確認しておきましょう。
見せ方のトリックはないか
最後は見せ方のトリックです
見せ方のトリックとは例えば中小株系のアクティブの投資信託の業績を良く見せようと統計情報を出すとします。
ベンチマークは特にありません。
でも少しでも良く見せようと思えばTOPIXなどとの比較グラフを出せば良いでしょう。
本来は中小株系ならば中小株系のインデックスとの比較をすべきです。
しかし、見せ方をちょっと工夫するだけで頑張っている投資信託に見せることができるのです。
これよく使われているトリックですのでお気をつけください。
日本人の金融資産のリアル
それではそれらを踏まえて日本人の金融資産のリアルを見ておきましょう。
なお、データは、前述の家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](日本銀行)です。
最頻値はどの世代でも0円です・・・・
金融資産(保有してない世帯を含む) | 平均値(万円) | 中央値(万円) |
全国 | 1,151 | 380 |
20歳代 | 321 | 77 |
30歳代 | 470 | 200 |
40歳代 | 643 | 220 |
50歳代 | 1,113 | 400 |
60歳代 | 1,411 | 601 |
70歳代以上 | 1,768 | 600 |
また、年齢が行けば行くほど平均値は上がっています。
しかし、中央値は60歳代が最高となっているのも注目すべき点ですね。
単身世帯の場合
前述のデータは2人以上の世帯を調査したものになります。
それでは単身世帯はどうだったのでしょうか?
別の調査でこんなデータがあります。
出所:総務省統計局「平成26年全国実態調査 単身世帯の家計収支及び貯蓄・負債に関する結果」
男性の平均値は1118万円、女性は1279万円。女性の方が平均値高いんですね。
中央値は男性が480万円、女性が679万円となっています。
こちらも女性が高くなっています。
ただしこちらのデータ、中央値は貯蓄を保有している世帯のみの分布となりますのでご注意ください。
ですから貯蓄を保有していない世帯をいれると下記のとおり中央値は大幅に下がります。
貯蓄現在高が200万円を下回る世帯が男性は30.1%,女性は24.4%と,いずれも全体の5分の1以上を占めていますね。
貯蓄なしの方を入れると・・・
前述の調査とは別の調査で単身世帯の金融資産を調査しているものもあります。
そちらでは貯蓄なしの人をいれたデータがありました。
家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](日本銀行)
こちらによると単身世帯の金融資産(この調査は貯蓄ではなく金融資産です)平均は822万、中央値はなんと20万という結果になっています。
つまり、かなりの方が金融資産をもっていないという結果なんですよね。
ちょっと怖いデータですがまとめるとこんな感じです。
金融資産非保有 | 金融資産平均値 | 金融資産中央値 | |
全国 | 48.1% | 822万円 | 20万円 |
単身世帯を調査したものでも前者のデータは総務省統計局、後者は日本銀行ですが結果が全然違いますね。。。
どちらを出すかによっても全然印象が違うのが怖いところです。
まとめ
今回は統計データに騙されるなをテーマに見てきました。
まとめるとこんな感じです。
調査方法を確認
出所を確認
足りないデータはないか確認
いつの統計か
見せ方のトリックはないか
このあたりをしっかり確認しましょう。
読んでいただきありがとうございました。
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