「株主優待はプレゼントみたいなものだから税金は関係ない」。
「ふるさと納税は寄附だから、確定申告はワンストップで終わり」。
「株主優待、ふるさと納税とも物をもらうなら課税対象じゃない」。
国税庁がAIによる調査対象選定「KSK2」を本格稼働させた今、その「思い込み」が大きなリスクになりつつあります。
国税庁は、確定申告での「収入の申告漏れ」に注意すべき項目として、株主優待や、ふるさと納税の謝礼(返礼品)を明示しているんですよ。
つまり「漏れやすい」「あとで面倒になりやすい」論点だと、最初から位置づけているわけです。
今回は国税庁の「こんな収入の申告漏れにご注意」ページの内容について確認及び、確定申告のルールについて確認していきましょう。
こんな収入の申告漏れにご注意の内容
「こんな収入の申告漏れにご注意」の具体的な記載は以下の通り。
今までも確定申告が必要とうたわれていたものから、今までグレーゾーン扱いで多くの方が確定申告をしていないものもあります。
わざわざここに羅列しているってことは申告漏れが多い収入なのでしょう。

出典:国税庁 「こんな収入の申告漏れにご注意」
いくつかピックアップしてみてみましょう。
株主優待を受け取った方
まずは「株主優待を受け取った方」です。
ちなみに上記項目をクリックして出てくる詳細には以下の記載があるだけです笑
株主優待を受け取った場合は雑所得(その他)として確定申告が必要です。
つまり、国税庁としては確定申告が必要な雑所得という認識ということですね。
ただし、雑所得(その他)なので株主優待をもらった方の確定申告が必要というわけではありません。
年末調整で所得税の計算が完了する方は株主優待やその他雑所得合計で年20万円を超える場合に確定申告が必要となります。
クロス取引とか繰り返している方の中には超えている人が多そう・・・
本当に「20万円以下なら申告不要」なのか?
「雑所得20万円以下なら確定申告不要」というルール。
しかし、ここには重大な「但し書き」があるのです。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 年末調整を受けた給与所得者のみ |
| 適用税目 | 所得税のみ(住民税は対象外) |
| 例外 | 医療費控除や住宅ローン控除(初年度)で確定申告する場合は、20万円以下でも申告必要 |
つまり、自営業者、副業、医療費控除、ふるさと納税(年末調整でできない場合)、初回の住宅ローン控除、給与年収が2,000万円以上の場合のように、別の理由で確定申告を行う場合には、実質20万円を超えていなくても行う申告を行う必要があります。
例えば、あなたが以下の理由で確定申告を行うとします。
- 医療費控除を受けたい
- 住宅ローン控除の初年度
- 株の譲渡損失を繰り越したい
何か一つでも理由があって確定申告を行う場合、その瞬間から「20万円以下の少額所得もすべて含めて申告しなければならない」という義務が発生します。
なお、課税対象となる株主優待はクオカードのような金券だけではありません。
商品券、割引券、商品、暗号資産などいろいろなパターンがありますが、それらすべてが該当する話になります。
金額の算定が難しいものもありますけどね。。。
住民税の申告義務——見落としがちな落とし穴
また、「20万円ルール」は所得税の話です。
住民税については、1円以上の所得があれば、住民登録のある市区町村に申告が必要となります。
つまり、所得税の確定申告が不要でも、住民税の申告は別途必要なのです。
現時点で、住民税申告をオンラインで完結できる自治体はほとんどありません。
紙の申告書を郵送または窓口に提出する必要があります。
この手間を考えれば、所得税の確定申告でまとめて申告してしまう方が実務的には楽かもしれません。
NISA口座でも・・・—非課税の「範囲」を正しく理解する
「NISAで買った株の優待だから非課税」——これは誤解です。
NISAは「少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置」です。
非課税の対象は「配当所得」と「譲渡所得」であり、雑所得に分類される株主優待は含まれていません。
つまり、NISA口座で保有している株式から受け取った株主優待も、課税対象となります。
NISAの非課税メリットに安心して、株主優待の申告を忘れないようご注意ください。
有名投資家の発言
有名投資家が「株主優待には税金がかかりませんのでお得」とSNSで発言し、話題になったことがあります。
しかし、国税庁の見解では明確に「株主優待は雑所得に該当し課税対象」です。
背景には、「税務署が株主優待の受取状況を正確に把握することが今までは困難であった」という実態がありました。
しかし、それは「税金がかからない」のではなく、「今まで摘発されなかった」に過ぎません。
AI時代において、この状況は大きく変わりつつあります。
わざわざ確定申告のページに「こんな収入の申告漏れにご注意」という特集記事を設けているくらいなので今後は取り締まりが強化されそうです。
ふるさと納税の謝礼として特産品を受け取った方
次はふるさと納税の返礼品(お礼)です。
詳細をクリックすると以下の説明があります。
寄附者が特産品を受けた場合の経済的利益は、一時所得として確定申告が必要です。
一時所得の計算は、「特産品の時価」から特別控除額(最高50万円)を差し引きます。
※他に一時所得に該当するものがある場合、全ての一時所得の収入金額の合計額から当該収入を得るために支出した金額の合計額を差し引いたあと、特別控除額(最高50万円)を差し引きます。
※総所得金額に算入される一時所得の金額は、上記で計算した一時所得の金額に2分の1を乗じた金額となります。
ふるさと納税の返礼品は一時所得として扱われるということですね。
一時所得の計算方法
一時所得の計算式は以下の通りです。
一時所得 = 収入金額 - 支出金額 - 特別控除額(最高50万円)
重要なポイントは、ふるさと納税の寄附金額は「支出金額」に含まれないことです。
返礼品の時価がそのまま収入金額となります。
「167万円の壁」——課税ラインの目安
総務省の規制により、ふるさと納税の返礼品は寄附額の30%以下に設定されています。
特別控除50万円の範囲内に収まる返礼品相当額を逆算すると、167万円(50万円÷30%)の寄附が課税ラインの目安となります。
ただし、一時所得には他の収入も合算されます。
生命保険の満期返戻金、懸賞の当選金、競馬の払戻金なども一時所得です。
ふるさと納税だけでは課税ラインに届かなくても、他の一時所得と合算して50万円を超えれば、申告が必要になります。
こちらも今まで野放しになっている気がしますが、ふるさと納税はマイナンバーで連動するようにもなりましたし、自治体が国税庁に情報を出すなら把握も容易ですから今後は取り締まりが行われる可能性も高そうです。
返礼品の「時価」はどう考える?
国税庁は返礼品を「特産品の時価」と表現します。
では時価の目安はどうやって調べればよいのでしょう?
具体的なやり方を国税庁が公開しているわけではありませんが、実務では「同等品の一般的な販売価格」「寄附サイト上の参考価格」を根拠として使うケースが多いようです。
ワンストップ特例の罠
また、特別控除額(最高50万円)内であったとしてもワンストップ特例を利用している方には注意が必要です。
前述の株主優待や医療費控除など別の理由で確定申告を行うと、それまでに申請していたワンストップ特例はすべて「無効」になります。
確定申告で寄附金控除を申請していなければ、その年のふるさと納税による節税効果は「ゼロ」になります。
ただ高い肉や米を買っただけ、という悲しい結末です。
これは忘れずに対応しておく必要があります。
保有する外国通貨の日本円への交換などによる為替差益があった方
次は為替差益です。
最近の円安で為替差益を得ている方は多いと思いますが、そちらも明記されています。
これも盲点なんです。
「こんな収入の申告漏れにご注意」の該当項目の詳細をクリックすると以下の説明があります。
為替差益については、原則、雑所得(その他)として確定申告が必要です。
ただし、外国通貨を保有している際に生じる含み益については、利益が確定していないため確定申告の必要はありません。
こちらも雑所得です。
ですから年末調整で所得税の計算が完了する方は為替差益とその他雑所得合計で年20万円を超える場合に確定申告が必要となります。
米国株などの売買をよくしている方は要注意です。
株式取得時から売却時までの為替変動は特定口座の源泉徴収ありなら反映されますので申告は不要です。
しかし、しばらくドルでお金をおいている方は要注意です。
例えば1ドル120円のときに円をドルにしたとします。
しばらくドルのままおいていて、1ドル160円になってくらいに米国株を買ったら、その間の1ドル40円分は為替差益が発生するものの、源泉徴収の対象になっていないんですよ。
当然円転しても同じですね。
ですからその場合は為替差益として処理が必要となります。
それが面倒な方はドルにしたらすぐ売買するか、すこし割高となりますが、円決済にしましょう。
太陽光発電設備により売電収入がある方
次は太陽光発電の売電収入です。
こちらについても下記のように明確に課税対象として明記されています。
太陽光発電設備を家庭用として使用し、その余剰電力を売却しているような場合には、雑所得(業務)として確定申告が必要です。
太陽光発電の売電収入は基本的に雑所得ですから、前述の株主優待や為替と同様に所得が年20万円を超えると課税対象となるってことですね。
ただし、太陽光発電は契約が10kWを超えていると産業用として事業所得として扱われますのでご注意ください。
詳しくはこちらの記事でまとめております。

申告漏れのペナルティ——「少額だから」は言い訳にならない
次に申告漏れの場合のペナルティを見ていきましょう。
加算税の種類と税率
申告漏れが発覚した場合、本来の税額に加えてペナルティが課されます。
令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来する分については、以下の税率が適用されます。(出典:国税庁「No.2024 確定申告を忘れたとき」)
| 状況 | 税率 | 備考 |
|---|---|---|
| 調査通知前に自主申告 | 5〜25% | 50万円超部分は税率上昇 |
| 調査後に期限後申告 | 15〜30% | 300万円超部分は30% |
| 仮装・隠蔽あり | 40% | 重加算税 |
延滞税も忘れずに
加算税に加えて、延滞税も課されます。延滞税は納期限の翌日から納付日までの日数に応じて計算されます。
- 納期限から2ヶ月以内:年2.4%〜2.8%(令和4〜8年)
- 納期限から2ヶ月超:年8.7%〜9.1%(令和4〜8年)
「知らなかった」「少額だから」は税務署には通用しません。
無申告の期間が長くなるほど、ペナルティは膨らんでいきます。
「バレない」は通用しない。監視の目はデジタル化している
「そうは言っても、株主優待やふるさと納税なんて現金じゃないし、税務署もいちいち調べないでしょ?」
そう思いたくなる気持ちはわかります。
しかし、時代は変わりました。
「マイナンバー制度」と「支払調書のデジタル化」、AI を活用した次世代システム「KSK2」が、包囲網を狭めています。
「法定調書」という密告者
上場企業は、誰にどのような配当や株主優待などの権利を与えたかという情報を当然ながら管理しています。
税務調査の現場では、企業側のお金の動き(交際費や優待費用の出金)と、個人の受取情報との突合(突き合わせ)が、AIやシステムによって年々容易になっています。
特に、富裕層や大口投資家への監視強化は国税庁の重点施策です。
「これくらい誤魔化してもいいだろう」という姿勢は、税務調査官に対し「他にも何か隠しているのではないか?」という疑念を抱かせ、調査を徹底的に厳格化させる呼び水となってしまうのです。
まとめ
株主優待もふるさと納税の返礼品も、「タダでもらえるお得なもの」という認識が広まっています。
しかし、税法上は明確に課税対象です。
国税庁のAI を活用した次世代システム「KSK2」の本格稼働し、申告漏れの可能性が高い納税者を効率的に抽出できるようになった今、「少額だからバレない」「みんなやっていないから大丈夫」という考えは、もはや通用しません。
正しい申告は、ペナルティを避けるためだけでなく、将来にわたって安心して投資を続けるための土台です。
「知っている」ことが、最大の防御になります。

