ジュニアNISAの週間買付金額、出来高とも1位はなんと「日本たばこ産業(JT)」。本当にそれでいいのかJTを分析してみた

8月最終週のSBI証券ジュニアNISAのランキングがなんとも微妙な事になっています。週間買付金額の1位が先週に続いて日本たばこ産業(JT)。また、週間出来高ランキングも日本たばこ産業(JT)が1位になりました。それにより保有残高ランキングでも日本たばこ産業(JT)は5位まで浮上しています。(1位はすかいらーくホールディングス)

私自身がたばこ嫌いなのもありますし、ジュニアNISAという未成年口座という性質上それでいいのか・・・と思うところもあります。今回は日本たばこ産業(JT)について考えていきます。

なお、今回の記事はたばこ嫌いな私の偏見も入っているでしょうからたばこ(JT)好きの人はここで退散されるのをおすすめします。

※加筆修正を加えました。

ジュニアNISAで日本たばこ産業が大人気


まずはジュニアNISAをご存じない方もお見えでしょうからジュニアNISAの概要から説明していきたいと思います。

ジュニアNISAとは

ジュニアNISAとは2016年度から始まった未成年者を対象とした少額投資非課税制度です。未成年者(0~19歳)を対象に、年間80万円分の非課税投資枠が設定され、上場株式、株式投資信託等の配当・譲渡益等が非課税対象となります

通常NISAと同じく非課税期間は最長5年間となります。枠は通常NISAが120万であるのに対して80万円と少し少なくなっています。

ジュニアNISA概要
出所:金融庁「ジュニアNISAの概要」より

つまり、未成年者の将来のために長期投資を行う制度です。基本的には親権者が子どもや孫のために運用を行います。

別にお金に色はついていませんし、どこに投資をしても儲かればよいではないか?と考える方もおみえでしょう。しかし、個人的にはあまり勧めたくないたばこというものに若い頃から接したり、親近感を覚える可能性が高い子供の証券口座に日本たばこ産業(JT)を入れるのにとても違和感を感じます・・・

ちなみにジュニアNISAは他のNISA口座やつみたてNISA口座と違い取扱する証券会社や銀行を一度決めると変更できませんので慎重に決めたいところですね。おすすめはSBI証券や楽天証券のようなネット証券会社ですね。

なぜ日本たばこ産業(JT)が人気なのか?

日本たばこ産業(JT)がなぜこれほどまでに買われているのかを考えてみましょう。まず人気となっている最大の理由は配当にあります。予想配当利回りが5.11%とかなり高くなっているのです。(出所:四季報)

また、日本たばこ産業(JT)は下記の日本たばこ産業株式会社法という法律で守られている点も大きいでしょう。

第2条 政府は、常時、日本たばこ産業株式会社(以下「会社」という。)が発行している株式(株主総会において決議することができる事項の全部について議決権を行使することができないものと定められた種類の株式を除く。以下この項において同じ。)の総数の3分の1を超える株式を保有していなければならない。 出所:日本たばこ産業株式会社法

つまり、日本政府は日本たばこ産業が発行している株の3分の1を超えて保有しなくてはならないのです。実際、四季報のデータによると日本たばこ産業(JT)の筆頭株主は66,692万株(33.3)を保有する財務大臣(日本政府)となっています。そのため浮動株も少ないため大量に売られて大きく下がるようなことが考えにくいのです。また、半国営といってもよいでしょうから潰れにくいというのもポイントかもしれません。

このあたりが人気の理由だと想像します。


今後の日本たばこ産業(JT)について考えてみる

前述のように日本たばこ産業(JT)は配当は高いですし、半国営企業で潰れにくいという特徴があります。そのため長期投資に最適と思ってジュニアNISAで買っている人が多いのでしょう。それでは日本たばこ産業(JT)の今後の見通しはどうなのでしょうか?まずは株価の推移から見ていきます。

日本たばこ産業(JT)の株価の推移

下記は日本たばこ業(JT)の株価チャート20年月足です。長期的スパンで見ると結構波があるのがわかりますね。2003年くらいまではかなり動きが少ない状況でしたがその後大きく伸ばし、また大きく下げ、2011年をそこに2015年くらいまで大きく上げています。これ日経平均の上げよりもかなり大きくなっています。しかしその後2016年ごろをピークに下げに転じています。

長期投資と考えるにはちょっと波が大きい株なんですよね。底で拾えれば美味しいのでしょうが・・・前述した浮動株がすくない影響もあると思われます。

日本たばこ産業株価推移
出所:SBI証券 日本たばこ産業株価チャート20年月足

日本たばこ産業(JT)の財務分析

日本たばこ業(JT)の業績はどうなんでしょう?少しずつ落ちている感じですね。例えば直近の年度決算(平成29年12月期)では売上は0.2%減、営業利益5.4%減、当期利益6.8%減とすべて減少と微妙な感じになっています。

しかし、ROE15%、R0A7.5%とそれなりに高いですし、自己資本比率も53.1%とかなり高くなっていますね。

キャッシュフロー計算書上も営業CFがプラスで投資CF、財務CFがマイナス。フリーキャッシュフローもプラスという理想的な状況で問題点は見当たりませんでした。

ただし、株主的な観点からいうとROEがこれだけ高いのに配当性向が8割もあることはあまり望ましい状況ではないですね・・・売上が伸び悩んでいるのもこのあたりに原因がありそうな気もします。ただし、政府が大株主ですから配当性向が高い状況は今後も変わらないでしょう。そういう点を考えるとこの会社の将来性には疑問を感じます。

配当が高い弊害についてはこちらの記事を御覧ください。

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日本たばこ産業(JT)の売上構成

日本たばこ業(JT)はいろいろなことをやっているイメージがかなり強いですが、売上構成は下記のとおりになっています。(2017年)

売上の57.8%を海外のたばこ事業で稼いでいるんですよね。需要がどんどん落ちている国内たばこは29.3%しかありません。また、買収したテーブルマークの冷凍食品や医薬品事業はまだまだかなり比率は少なくなっています。売上の87.1%はたばことたばこ産業にまだまだ依存している状況なんですね。

日本タバコ産業売上構成
出所:日本タバコ産業「アニュアルレポート」より

今後のたばこ産業

まずは今後のたばこ産業について考えてみましょう。下記は日本の性別・年代別喫煙率の推移です。年々低下しているのがわかると思います。昭和40年には男性の82.3%、女性の15.7%が喫煙者でした。しかし、平成30年の現在では男性27.8%、女性8.7%まで低下しています。つまり、たばこ産業自体が大幅に縮小しているのがわかるとおもいます。

喫煙率推移
出所:厚生労働省「最新たばこ情報」より

たばこ税の値上がり

さらにたばこは今後値上がりする計画があります。たばこ税が上がっても日本たばこ産業(JT)にプラスはありませんが、たばこの需要は確実に落ちます。そのためさらに国内たばこの売上は下がる可能性が高そうです。

※加筆。たばこ税が上がっても日本たばこ産業(JT)はプラスになりませんが、たばこ税があがるタイミングで日本たばこ産業(JT)は便乗値上げも同時に行っているそうです。そのためプラスも見込まれますね。

たばこ税推移-min
出所:財務省「平成30年度税制改正」たばこ税の見直しより

世界的な喫煙者数

先進国を中心に喫煙率は下がっています。(日本は高めの国)しかし、下記のグラフをみてわかるように中国が急激にタバコの消費が増えています。また、人口の伸びがすごい新興国を中心にこの傾向は続くと予想されます。

世界のたばこ喫煙人口-min
出所:tobaccoatlas.org

ただし、全体を見ると今後は微減の予想がされています。日本たばこ業(JT)は海外たばこ売上の比率が57.8%とかなり高いですが、今後もこの傾向は続くでしょうね。特に新興国のたばこ事情及びシェア獲得が日本たばこ産業(JT)の業績の鍵をにぎると言っても過言ではないでしょう。現在はシェア3位となっていますね。ここ数年そんなに比率が変わっていませんので今後大きく伸ばすことは期待しにくそうです。

海外タバコシェア-min
出所:日本タバコ産業「アニュアルレポート」より

まとめ

今回は「ジュニアNISAの週間買付金額、出来高とも1位はなんと「日本たばこ産業(JT)」。本当にそれでいいのかを考えてみた」と題して日本タバコ産業(JT)について見てきました。

ジュニアNISAは未成年の口座であるという道義的な点から日本たばこ産業(JT)の株を買うのは違和感を感じます

また、道義的な点を抜きにしても配当が高く政府が3分の1を持っているという潰れにくいという安心感こそありますが、業績の伸びは期待しにくく(国内は元より世界的にたばこの需要は増えない)、利益の8割を配当に回して将来の投資を行いにくい仕組みも考えて投資対象として微妙な気がしますね・・・。そのあたりも考えて判断をおすすめします。目先の配当だけを考えるのはやめましょうね。

意外に株の上げ下げも過去からみるとありますしね。。。

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