なぜ投資家に親子上場は嫌われるのか?ソフトバンクの通信子会社のIPOであらためて考えてみる。

12月にも資金調達額は2兆5000億円規模と言われる過去最大級のIPO(新規上場株式公開)が実施されます。それはソフトバンクグループの子会社にあたるソフトバンク(携帯電話)です。

かなりの規模の上場ですからかなり注目度が高くなっていますね。しかし一方で心配する声もあります。それはソフトバンクグループとの親子上場であることです。

今回はソフトバンクの通信子会社上場であらためて親子上場の問題について考えてみたいと思います。

ソフトバンクの上場について詳しくは下記記事を御覧ください。

関連記事

このサイトでもIPO(新規上場株式)は美味しいよってお話をさせていただきました。しかし、IPOには大きな弱点というか全員が儲かるわけでもない理由があります。それは応募が殺到してなかなか当たらないことです。基本的には抽選となります。それがまず[…]

IPOイベントソフトバンク

親子上場とは


親子上場とはその名前のとおり、親会社も子会社も株式を上場させている状況のことを指します。結構昔からこの方法はありましたね。ライブドアなんかは親子上場をかなり積極的に行っていました。

親子上場をしている主な会社

今日本には親子上場している会社は約260社あります。有名なところをいくつか紹介しましょう。

イオン(東証1・8267)

まずはイオンです。かなりたくさんの子会社が上場しています。確認できるだけで19社あります。もともと上場していた会社を買収したようなケースもおおいですけどね。

イオン九州(JASDAQ・2653)
イオンフィナンシャルサービス(東証1・8570)
イオンディライト(東証1・9787)
イオンファンタジー(東証1・4343)
イオン北海道(東証1・7512)
イオンモール(東証1・8905)
ウエルシアホールディングス(東証1・3141)
コックス(JASDAQ・9876)
サンデー(JASDAQ・7450)
ジーフット(東証1・2686)
ツヴァイ(東証2・2417)
マックスバリュ東海(東証2・8198)
マックスバリュ東北(東証2・2655)
マックスバリュ中部(名証2・8171)
マックスバリュ西日本(東証2・8287)
マックスバリュ北海道(JASDAQ・7465)
マックスバリュ九州(JASDAQ・3171)
ミニストップ(東証1・9946)
ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(東証1・3222)

GMOインターネット(東証1・9449)

次はGMOインターネットです。こちらもかなり昔から親子上場に積極的です。全部名前にGMOがついていますのでわかりやすいですね(笑)

GMOアドパートナーズ(JASDAQ・4784)
GMOペイメントゲートウェイ(東証1・3769)
GMOクラウド(東証1・3788)
GMOメディア(東証マザーズ・6180)
GMOペパボ(JASDAQ・3633)
GMOリサーチ(東証マザーズ・3695)
GMOフィナンシャルホールディングス(JASDAQ・7177)
GMO TECH(東証マザーズ・6026)

RIZAPグループ(札証アンビシャス・2928)

最近目立っているのがRIZAPグループでしょう。新興企業ながらすでに下記の子会社が上場しています。こちらも上場会社を買収しているケースが多いのですが。

ジーンズメイト(東証1・7448)
イデアインターナショナル(JASDAQ・3140)
SDエンターテイメント(JASDAQ・4650)
ぱど(JASDAQ・4833)
HAPiNS(JASDAQ・7577)
夢展望(東証マザーズ・3185)
マルコ(東証2・9980)
堀田丸正(東証2・8105)
ワンダーコーポレーション(JASDAQ・3344)

ソフトバンクグループ(東証1・9984)

ソフトバンクもすでに子会社がいくつか上場しています。中には子会社の子会社が上場している孫会社まで上場していますね。また、子会社という定義にはなりませんが、アリエクスプレスやアリペイのアリババなんかもソフトバンクが筆頭株主となっていますね。

ヤフー(東証1・4689)
ソフトバンク・テクノロジー(東証1・4726)
アイティメディア(東証マザーズ・2148)
ベクター(JASDAQ・2656)

孫会社(ヤフーの子会社)

イーブックイニシアティブジャパン(東証1・3658)
バリューコマース(東証1・2491)

親子上場のデメリット

親子上場については東証も問題があるとしており、平成20年5月27日に東京証券取引所が出した「2008年度上場制度整備の対応について」の中では以下のように述べてらっしゃいます。

親会社を有する会社の上場に関して、東証の考え方を以下のとおり公表するとともに、新規上場の手引きその他の媒体で周知を実施 した。 親会社を有する会社の上場は、上場制度として禁止するのは適切ではない。

しかしながら、(新規上場時から親会社を有する場合であっても、企業再編等を通じて上場後に親会社を有することになる場合であっ ても)少数株主との利益相反のおそれなどの内在する弊害や問題点があること、昨今の経営環境においては上場会社には本格的な連結経営が求められていることを踏まえれば、投資者をはじめ多くの市場関係者にとって必ずしも望ましい資本政策とは言い切れない。

全国の取引所と協調して、実質的に一体の親会社及び子会社による上場を認めないことを明確にした

出所:東京証券取引所「2008年度上場制度整備の対応について

また、平成26年4月24日に東京証券取引所が出した「東京証券取引所への上場について」の中では以下のように触れています。ちなみにこれは日本郵政の子会社上場についての問題が前提としてのものです。

親子上場の一般について
日本郵政及び金融2子会社が親子関係を維持したまま上場すれば、親子上場となる。
 親子上場を認めていない取引所は、国際的にみても皆無。
 欧州・アジアでは盛んに行われており、米国・英国ではスピンオフの前段階として行われることが一般的。東証では、現在322件の親子上場が存在。
 親子上場は、親会社にも子会社にも少数株主が存在することとなり、少数株主間での利益相反が避けられないため、上場時(上場審査時)には以下のとおり対応。
 子会社の少数株主保護…子会社は、支配権を持つ親会社によって不当に利益を搾取されるおそれがあるため、子会社の親会社からの独立性を確認。
 親会社の少数株主保護…親会社は、日常的な監視が行き届かない子会社の不祥事等により、不利益を被るおそれがあるため、企業集団としての内部管理体制が適切に機能していることを確認。
 上場後は、株主の監視による未然防止を目的として、開示や内部統制に関する制度を整備。 ⇒ 会社法制の見直しも進行中だが、社外取締役による監視の強化などガバナンスの充実を通じて、少数株主の利益を適切に保護することが重要。

中核的な子会社の上場について
上場している親会社が、グループ内の中核的な子会社を上場させる場合、その状況によっては、①証券市場にとって新しい投資物件といえず、②親会社が子会社を上場させて新規公開に伴う利得を二重に得るような結果となるおそれあり。 ⇒「中核的な子会社」の上場については、各企業グループ、子会社の事業の特性、事業規模、過去の業績の状況、将来の収益見通し等を総合的に勘案しながら慎重に判断。
 典型的には、親会社の上場後に子会社を設立して、親会社の中核的な事業を移転し、子会社を新たな 投資物件のように装うような、詐欺的なケースを想定。 取引所 A社上場① B社取引所 A社上場② ⇒ 金融2子会社のケースは、親会社の上場前から子会社としてその事業を営んでおり、加えて法により株式 の早期処分の方針が明確になっているため、想定していた詐欺的なケースとは異なる。 ⇒ しかしながら、子会社株の処分は、親会社の企業価値に大きな影響を与えるので、最終的には、日本郵政の上場時における情報開示の内容や、金融2子会社株の処分スキーム・スケジュールなどを踏まえ、 金融2子会社の上場の際に行う上場審査で判断。 ⇒ 日本郵政の上場を考える際は、金融2子会社の上場に差支えがないよう、主幹事証券会社と相談のうえ十分な配慮を払っていくことが必要。

出所:東京証券取引所「東京証券取引所への上場について

つまり、子会社の少数株主が不利ってことです。つまり私達一般投資家のことです。

例えば実際にやるかどうかやれるかどうかは別として、親会社の業績が悪かった時に子会社の利益を親会社に付け替えるなんて可能性もあります。そうなれば親会社の株主はよいでしょうが、子会社の株主は損してしまいますよね。。。この辺りは開示や内部統制に関する制度を整備としていますが、実際にはなかなか会社内部でしかわからないことが多く難しいですしね。

また、実際は証券市場からして新しい投資物件でもなく新規公開を実質2度して資金を2重取りするのが目的が大きいということもあります。

このあたりが親子上場のデメリットであり投資家に不人気な理由でしょう。

他にもデメリットとしては上場することによる管理コストの負担が増えたりなんてことも考えられますね。

親子上場のメリット

もちろん親子上場にもメリットはあります。ただし、これは子会社の投資家からみるとデメリットの大きさと比べるとかなり小さなメリットですね・・・。

親会社側のメリット

親会社側の一番大きなメリットは資金調達ができることです。今回のソフトバンクも2兆5000億円規模の資金調達が行えそうです。これはかなり大きなメリットとなるでしょう。

また、子会社が上場することにより子会社の市場価値が増加することも上げられます。子会社の市場価値が上がれば子会社の株をもっている親会社の価値もあがります。その価値の上がった株を使った資金調達や株式交換なども有利に運べるはずです。

子会社側のメリット

子会社側のメリットとすれば親会社からの独立性が高まることが上げられます。そうなれば経営に対しての裁量権が高まったり、従業員のモチベーションやモラール(士気)向上につながることになります。(上場したことで本当に独立性が高まることが条件ですけどね。この辺りがなかなか難しいところでありますが・・・)

まとめ

今回は「なぜ投資家に親子上場は嫌われるのか?ソフトバンクの通信子会社のIPOであらためて考えてみる。」と題して親子上場について考えてみました。

たしかに親会社側から見れば資金調達という大きなメリットがありますが、子会社側からみればちょっと微妙と言わざる得ません。ですから子会社に投資をする際にはこの辺りのデメリットをしっかり理解した上で判断したい所ではありますね。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

フェイスブックページ、ツイッターはじめました

「シェア」、「いいね」、「フォロー」してくれるとうれしいです

親子上場
最新情報をチェックしよう!