財形貯蓄制度と並んで多くの企業で導入されている福利厚生制度に従業員持株会制度(社員持株制度)があります。
会社側には安定株主を手に入れることができるわけですからメリットが高い制度です。
しかし、従業員側からするとそうとも言えない部分があるのです。
会社のルールによりますが、そろそろ4月入社の方が従業員持株会に加入できる時期に来ているでしょう。
今回は従業員持株会について見ていきます。
従業員持株会制度とは
それではまず従業員持株制度とはどのようなものかという点から見ていきましょう。
簡単に言えば持株会という組織を作り、会員がお金を出し合って勤めている会社の株を買う制度です。
持株会によって運営ルールは様々ですが、給料から天引きするケースが多いです。
持株会の参加は任意ですがほぼ強制に近いような会社もあったりします。
上場企業の場合には購入時の時価で買う形となりますが、会社によっては福利厚生の一環として一部補助を出しているケースもあります。
従業員持株会の会社側のメリット
会社側から見れば従業員が持株会に入るメリットは多いです。
分けて見て見ましょう。
安定株主が手に入る
上場企業ならば大きいのが従業員持株会があることでその部分が安定株主となってくれることはありがたい話ですね。
すぐに売られることは想定しなくても良いでしょうから。
敵対的買収なんかがあった際にも安定株主がいることは大きな意味があります。
従業員の会社への忠誠心が上がる
もう一つ大きいのが従業員が会社への忠誠心が上がりやすいというメリットもあります。
株を持っていればその会社を応援したくなりますよね。
単なる従業員としてだけでなく株主としての会社へ忠誠心も出てくるのです。
この辺りは従業員持株会が非上場の会社でも導入されている一つの目的ですね。
資金調達の面
会社としては資金調達としての意味合いもあります。
株を新たに発行している場合には資金調達になるのです。
また、非上場会社ならば将来の株式上場のための布石ともしやすいです。(上場の条件に株主数等があるため)
従業員持株会の従業員側のメリット
次に従業員側のメリットを見ておきましょう。
安く株が買える
会社から補助が出ているケースでは市場で買うよりも安く株が買えます。
これはかなり大きなメリットとなるでしょう。
補助額は持株会によって異なりますが、5%〜10%くらい出しているところが多いようです。
中には100%付与している会社もあります。
これなら従業員側もメリットだけでリスクはありません(笑)
単元未満で買える
通常株は100株単位など売買単位が決まっています。
1000円の株ならば100株で10万円必要になります。
しかし、持株会は会員が出した資金で会がまとめて買いますので、一人一人で考えれば単元未満の代金で買うことが可能ということです。
投資へのハードルは低くなりますね。
最低金額は持株会によって異なりますが千円くらいのところが多いですね。
また、ほとんどの会社は給料天引きが可能となっていますので財形貯蓄と同じく強制的にお金を貯める方法として使いやすくなっています。
IPOで大儲けも
未上場の会社の持株会の場合にはIPO(新規株主上場)することで大きく儲けられる可能性があります。
IPOでは株価がかなり撥ねあがることも多いですから一気にお金持ちなんて話も多いです。
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ただし、新規上場できればね・・・ってところがあり絶対ではありません。
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従業員持株会制度の従業員側から見たデメリット・リスク
前述のように従業員持株会にはメリットがあります。
しかし、従業員側から見ると大きなデメリットやリスクがあります。
加入するにしてもこの辺りはしっかり認識した上で加入したいところです。
リスクが集中してしまう
まず、最大のデメリットと言えるのがリスクがその会社に集中してしまう点が挙げられます。
給料というフローと株式というストック両方が同じ会社に依存してしまうことになるのです。
会社の調子が良い場合は問題ないでしょうが、なにか不祥事が起きた時など会社の業績が悪くなり、賞与はなくなるわ、株の価値は下がるわ。となってしまったら目も当てられませんよね。
過去には大きな会社が倒産しているケースがたくさんあります。
また、JAL(日本航空)のように100%減資をしているようなケースもあります。
倒産したり、100%減資をすれば当然ながら持株の価値は0になってしまいます。
倒産したり、リストラされれば給料もなくなります。給料もなくなるわ、株の価値もなくなるわとそんなこともあり得るのです。
そんなリスクもあることは知っておきたいところです
売却できないリスク
特に未上場会社の持株会は注意が必要です。
会社が上場しなければ株の売却が容易ではないからです。
特にベンチャー企業が上場を目指して持株会を立ち上げているケースは要注意です。
前述のようにIPOに成功すれば大きく儲けることが可能性が高いです。
しかし、上場できなければ会社に出資をしたというだけに過ぎないのです。
最近上場基準も昔と比べ厳しくなっているようですからこれを期待して買うのはちょっとギャンブル的なところもあります。
非上場の会社の株は売買も容易ではありませんからね・・・
100万円損した友人の話
私の友人も上場を目指すベンチャー企業に勤めていて100万円ほど自社株を買っていました。
IPOができれば大きく儲かることになるはずでした。
しかし、役員に問題(反社会的勢力との関係)が発覚し上場が不可となってしまったのです。
100万円は結局戻ってくることはなく今も持っていると思われます。
配当もない会社とのことで100万円が完全に死に金となり大損となってしまったのです。
持株会によっては会社を退職するときに株を買い取ってくれる制度がある場合もあります。
特に未上場会社の場合にはその辺りの制度の有無を確認しておきたいところですね。
上場企業でも自由に売買できるかと言えばそうでないケースが多いです。
そもそも株は持株会の持分ですからね。
この辺りの制度は加入前に確認しておきたいところでしょう。
株主優待がもらえない
株主優待を発行している会社の場合には配当落ち日に株を持っていれば株主優待がもらえます。
しかし、持株会の場合には基本的にありません。
何故ならば株は持株会の持分だからです。
ただし、積み立て金額が一単位以上になっている場合には株式を出庫して自分名義の証券口座に移すことができる持株会が多いですからそうすれば株主優待ももらえるようになります。
この辺りは持株会のルールによって異なりますのであらかじめ確認しておくと良いでしょう。
従業員持株会の加入の是非
それでは従業員持株会の加入はどうするのが良いのでしょうか?
これは制度をよく考えて検討してください。
有利と判断できる場合
例えば会社から補助がでているケースの場合には市場よりも安く株を買うことができますからかなり有利です。
会社の先行きが明るいと思うのなら積極的に参加しても良いでしょう。
また、未上場会社でも将来的にIPOが可能と判断できるなら新規上場が実現したときには大儲けの可能性があります。
ですから参加したいところですね。
ただし、これらはあくまで予想です。
ですから1点勝負的に大きくいれるのはやめましょう。
すでにその会社から給料をもらっています。
さらに資産もその会社の株となるとリスクが大きくなってしまいますからね。
あくまで分散投資の一つのアセットアロケーションだという程度で考えて無理のない程度で始めるのが良いでしょう。
退職時の株の扱いについて
また、必ず確認しておきたいのが退職時の株の扱いです。
退職したら今まで積み立てた金額がどうなるのかは必ず確認しておきましょう。
特に未上場の会社の株は売買が容易でありませんからね。
退職時に買い取ってもらえないなら買わないほうが良いかもしれませんね。
魅力を感じない場合
会社からの購入補助がない。
会社の先行きがあやしい、
IPOの可能性が低い未上場企業
などの場合にはかなり慎重に検討してくださいね。
基本的にあまりおすすめましませんね。
他の会社の株や投資信託を買ったほうが良いかもしれません。
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まとめ
今回は「従業員持株会の加入は慎重に。実は大きなリスクがあることを知っておこう」と題して従業員持株会について見てきました。
従業員持株会といっても会社や持株会によって制度が様々です。
まずはその制度の内容をしっかり確認して加入の是非をご検討くださいね。
上司から勧められるからとか流されて入るのはやめておきましょう。
従業員持株会と並んで導入されている企業が多い財形貯蓄についてはこちらの記事をご覧ください。
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