先日、金融政策決定会合で大規模緩和を修正する方針を発表して大きな話題となりました。
固定金利の住宅ローンの金利が高くなることは確実でしょう・・・
短期プライムレートとは
まずは今回の話の前提となる「短期プライムレート」とはなにかという点から見ていきましょう。
銀行が最優良の企業(業績が良い、財務状況が良いなど)に貸し出す際の最優遇貸出金利(プライムレート)のうち、1年以内の短期貸出の金利を「短期プライムレート」(略して「短プラ」)といいます。
出典:SMBC日興証券 初めてでもわかりやすい用語集 より
短期とは1年以内、プライムは「最優遇」を示します。
つまり、金融機関が優良な貸付先に1年以内の短期貸付をする際の金利ってことですね。
なお、この「短期プライムレート」は日銀の政策金利にほぼ連動する形となっています。
短期プライムレートの推移
短期プライムレートは日銀のマイナス金利政策もあり2009年以降ほとんど変わっていません。
- 最頻値:1.475%
- 最高値:1.725%
- 最低値:1.475%
ほとんどの金融機関で1.475%となっています。
住宅ローンを検討している方はあれ?っておもったかもしれません。
住宅ローンの一般的な変動金利より高いんですよ。
詳しくは後述しますが、住宅ローン(特に変動金利)は金融機関側のリスクが低いので政策的に値引きを入れているケースが多いんです。
住宅ローンの変動金利はどう決められているか
それでは住宅ローンの変動金利はどう決まっているのでしょう?
実は金融機関によって異なるのです。
ここが冒頭に書いたネット銀行の住宅ローンの怖い点なんですよ。
多くの銀行の場合(短期プライムレート連動)
まず、前述した短期プライムレートに連動している銀行の場合です。(ほとんどの銀行がこちらです)
この場合は短期プライムレートに少し上乗せした金利で各金融機関が住宅ローンの基準金利を設定します。
例えば三菱UFJ銀行なら年2.475%です。
三菱UFJ銀行の短期プライムレートは年1.475%なのでちょうど1%を乗せたものとなっていますね。
商品で言えばこれが定価です。
そこから独自に定める優遇金利(値引きみたいなもの)である金利引下げ幅を引いて、借入金利を提示・決定しているのです。
ここは各社の方針が大きく左右するところです。
安くして顧客獲得狙うかどうかってところですね。
前述の三菱UFJ銀行(WEB申し込み)なら店頭表示金利より 年-2.00%としていますので適用金利は年0.475%ですね。(2022年12月時点)
独自ルールの金融機関も
短期プライムレートではなく独自ルールで決定している金融機関もあります。
例えば、JAは拠点によりルールや金利が異なり、変動利率の住宅ローンでも「長期プライムレート」を採用している拠点があったりします。
※長期プライムレートはマイナス金利下の短期プライムレートと違いよく変動します。
その他、各社決定方法が異なっているケースがあるんですよ。
詳しくは後述します。
優遇金利の期間に注意
なお、優遇金利の期間は金融機関や商品によって異なりますのでご注意ください。
返済まで全期間のものもあれば、期限が決められたものもあります。
そのあたりも借りる際はしっかり確認しましょう。
各社の住宅ローンの決定方法
それでは各社の住宅ローン決定方法を見てみましょう。
ちなみにメガバンクはすべて短期プライムレート連動ですね。
三菱UFJ銀行の住宅ローン:短期プライムレート
当行の「短期プライムレート連動長期貸出金利」を基準とする変動利率となります。
※借入時の適用利率は、当行の3月1日・9月1日の「短期プライムレート連動長期貸出金利」(以下、「基準金利」という)を基準に、おのおの4月1日・10月1日より変更いたします。ただし、基準金利が年0.5%以上変動した場合、変動した日から1ヵ月後の応答日より適用利率を変更する場合があります。出典:三菱UFJ銀行 Q&A より
三井住友銀行の住宅ローン:短期プライムレート
新規ご融資利率は、当行所定の短期プライムレートに連動する長期貸出金利を基準とする利率にて決定します。
ご融資期間中は毎月金利の見直しを行います(ご返済金額は、お借入後5回目<以降は5年ごと>の10月1日を基準日とする金利の見直しに合わせ、前回ご返済金額の1.25倍を限度として見直します)出典:三井住友銀行 ご融資利率 より
こちらも基準金利が2.475%。引き下げ幅が2%で年0.475%となっています。
みずほ銀行の住宅ローン:短期プライムレート
新規お借入時の金利は年2回、3月1日・9月1日の短期プライムレート連動長期貸出金利のみずほ銀行最優遇金利(期間3年超)の水準を基準として、各々4月1日・10月1日からの適用金利を決定します。ただし、基準日(3月1日、9月1日)以降、次回基準日までに短期プライムレート連動長期貸出金利(期間3年超)が年率0.5%以上乖離した場合は1ヵ月後の応当日より適用金利を見直しさせていただきます。
出典:みずほ銀行 お借入金利 より
みずほ銀行は基準金利が2.475%。
引き下げ幅が1.8%〜2.1%となっており、その方の条件により年0.375%〜0.675%となっています。
住信SBIネット銀行(ネット専用)の住宅ローン:短期プライムレート
次はネット銀行の住信SBIネット銀行(ネット専用住宅ローン)です。
お借入後の金利は、毎年4月1日、10月1日の三井住友信託銀行の短期プライムレ ートを基準として年2 回金利の見直しを行い、6 月、12 月の約定返済日の翌日からそ れぞれ新しい金利の適用となります。ただし、基準金利が大幅に変動した場合には、 それ以外の日に適用している金利を見直すことがあります。
出典:住信SBIネット銀行 金利タイプ
こちらも短期プライムレートとなっています。
実は住信SBIネット銀行の住宅ローン(ネット専用専用住宅ローン)は三井住友信託銀行の銀行代理業者として「ネット専用住宅ローン」の契約締結の代理をおこなっているんですよ。
ですから三井住友信託銀行の短期プライムレートが基準となっているのです。
なお、住信SBIネット銀行の住宅ローン(ネット専用専用住宅ローン)の基準金利は2.775%。(2022年12月時点)
と他社より少し高めです。
その分金利引下げ幅が大きく年-2.335%で金利は年0.44%となっています。
SBIマネープラザの住宅ローン:短期プライムレート
次はSBIマネープラザです。
こちらも住信SBIネット銀行の商品なんですが、金利が違うんですよ。
毎年4月1日、10月1日の住信SBIネット銀行短期プライムレートを基準として年2回金利の見直しを行います。
出典:SBIマネープラザ 住宅ローン 商品概要
こちらは住信SBIネット銀行の短期プライムレートなんですね。
基準金利は住信SBIネット銀行(ネット専用住宅ローン)と同じく2.775%。(2022年12月時点)
と他社より少し高めです。
実は住信SBIネット銀行の短期プライムレートが他社より高く設定してあり、1.675%なんですよ。(2008年11月17日より適用)
金利引下げ幅は年-2.385%で年0.39%となっています。
同じSBIですが、SBIマネープラザのほうが少し低い金利となっています。
なお、SBIマネープラザは対面型となっています。
auじぶん銀行の住宅ローン:独自ルール
実は住信SBIネット銀行以外のネット銀行は短期プライムレート連動としていないケースがほとんどなんですよ。
まずは現在(2022年12月時点)でもっとも金利が安く表記されているauじぶん銀行からみてみましょう。
金利プランにおいて、基準となる金利(基準金利)を定めており、市場金利をもとに下記事項を勘案してauじぶん銀行独自の判断で決定します
- auじぶん銀行が住宅ローンの貸出資金を調達するためのコスト
- auじぶん銀行が住宅ローンの審査・販売に必要な事務および営業コスト
- auじぶん銀行の収益および金融情勢など
出典:auじぶん銀行 基準金利より
つまり、auじぶん銀行の場合には短期プライムレートではなくauじぶん銀行独自の判断で決定しているということです。
決めているのは自社の収益などですからちょっと怖いところがあります・・・
ですから今の時点では顧客を集める段階として他よりも安く金利を提示できているのかもしれませんね。
なお、auじぶん銀行独自の判断で決定している基準金利が2.341%。(2022年12月時点)
ここがそもそもメガバンクより安いんですよ。
引き下げ幅は-1.952%となっており、条件により年0.389%となっています。
さらにauサービス利用していると-0.1%がありますので年0.289%とやばいくらい低い金利となります。
ちなみにauじぶん銀行は仮審査通過のまま放置しておくと本審査申し込むと○○万ポイントをあげますという連絡がきたり、ハピタス経由して申し込むと2万ポイント(2022年12月時点)くれるなど、かなりばら撒いていますので更に実質的な金利は安くなっています。
PayPay銀行の住宅ローン:独自ルール
次はPayPay銀行です。
こちらもauじぶん銀行とほぼ同じですね。
市場金利を考慮し、当社における貸出金(ご融資金)の調達コスト、営業コスト(お申込受付や 審査体制にかかる人員コストなど)、収益状況を勘案し、当社において基準金利を決定いたします。
出典:PayPay銀行 金利変動リスク等に関する説明書より
つまり、自社都合で決めていますよってことです。
こちらも怖い書き方です・・・
なお、PayPay銀行独自の判断で決定している基準金利が2.28%。(2022年12月時点)
引き下げ幅は-1.931%となっており、年0.349%となっています。
こちらもそもそもの基準金利が低くなっていますね。
イオン銀行の住宅ローン:独自ルール
ネット銀行としては珍しく店舗もあるイオン銀行は以下の通り。
店頭表示利率は、資金コスト(住宅ローンの貸出資金をイオン銀行が調達するため に必要なコストをいいます。)や営業コストおよび収益を加味して決定します。
出典:イオン銀行 イオン銀行住宅ローン 商品概要説明書 より
こちらも自社で決めますよってことですね。
なお、イオン銀行独自の判断で決定している基準金利が2.37%。(2022年12月時点)
引き下げ幅は-1.900%となっており、年0.47%となっています。
こちらもそもそもの基準金利が低くなっていますね。
ちなみにイオンは金利引き下げ戦争には参入せず、住宅ローン完済までイオンでの買い物(イオンカードの場合)は5%オフになるサービスで他社と差別化していますね。
ソニー銀行の住宅ローン:独自ルール
次はソニー銀行です。こちらも似た感じですね。
- ソニー銀行では、市場での金利スワップ手法を活用し、毎月基準金利を決定します。
- ソニー銀行で毎月決定する基準金利は、資金コスト(住宅ローンの貸し出し資金をソニー銀行が調達するために必要なコスト)や営業コスト、および収益を加味して決定されます。最も大きな変動要因は資金コストで、このコストは変更日前数ヶ月における銀行間で取引されている金利の動向や、国債の利回りの動向など、該当する期間の指標と連動して上下します。
出典:ソニー銀行 金利変動リスクなどに関する説明書
なお、ソニー銀行独自の判断で決定している基準金利が1.807%。(2022年12月時点)
引き下げ幅は-1.36%となっており、年0.397%(自己資金10%以上)となっています。
ソニーは基準金利がかなり低くなっていて、逆に引き下げ幅が少なくなっていますね。
SBI新生銀行の住宅ローン:独自ルール
次は社名が新しくなったSBI新生銀行です。
当行の「当初借入金利」および「住宅ローン基準金利」は、指標とする市場金利があるものではなく、特定の市場金利には必ずしも連動しており ません。原則として毎月見直しを行い、ローンの貸出資金を当行が調達するために必要な資金コスト、当商品の審査・販売に必要な営業コスト、 収益および金融情勢等を勘案し、当行独自の判断で決定しております。したがって、市場金利の変動がなくとも、適用利率が上昇し、返済額 が増加するリスクがありますので、ご注意ください。ただし、金利動向によっては月中に見直す場合もあります。
出典:SBI新生銀行 <パワースマート住宅ローン> 商品説明書
こちらもSBI新生銀行独自ですね。
なお、SBI新生銀行独自の判断で決定している基準金利が1.55%。
引き下げ幅は〜1.13%となっており、住宅ローン金利は年0.42%となっています。
さらにキャンペーン適用で-0.1%とかなり低くなっています。
楽天銀行の住宅ローン:独自ルール
最後は楽天銀行
新規ご融資基準金利は、市場金利等をもとに楽天銀行が決定し、毎月15日以降に、翌月分の基準金利を楽天銀行ウェブサイトでお知らせします。
出典:楽天銀行 商品詳細説明書
こちらも楽天銀行独自ですね。
なお、楽天銀行独自の判断で決定している基準金利が1.185%。(2022年12月時点)
引き下げ幅は〜0.65%となっており、住宅ローン金利は年0.535%〜1.185%となっています。
こちらもかなり独自色が強いですね。
まとめ
今回は「ネット銀行で住宅ローンを借りるのは危険???変動金利が短期プライムレートに連動していないってホント?」と題してネット銀行の変動金利の決まり方についてみてきました。
住信SBIネット銀行以外のネット銀行は短期プライムレートではなく独自のルールで変動金利を決めていることがわかりました。
短期プライムレートなら日銀の動きで予想が可能ですが、独自のルールだと怖いところがあります。
ある意味リスクとなるでしょう。
その分金利が安いのでどう考えるかはなかなか判断が難しいところではあります。
どちらにしても今後は変動金利で借りるならそのリスクが爆発しても対処できるように、資金を確保するなど準備はしておく必要はあると思いますね。
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