日銀が異次元緩和で株価下支えのために大量に買ってきたETF。
そのETFをどうするのか?というのは長年の課題でしたが、とうとう売却方針が決定しました。
今回は日銀のETF売却をわかりやすく解説していきます。
日銀ETFとは?わかりやすく(なぜ買い入れ、どれだけ持っているか)
それでは今回の日銀ETFの話を順番にみていきましょう。
ETFとは上場している投資信託のことです。
それを日銀(日本銀行)が買い入れていたんですよ。
出発点:物価安定目標2%と逆風(デフレ)への対応
日銀は2010年にETF買い入れを開始、2013年以降の異次元緩和で規模を拡大。
背景にあるのは「物価安定の目標2%」です。
また、日本株の下支えとなっていたのは事実です。
日経平均が暴落したときに買い入れてましたからね。
残高の規模感:簿価・時価・市場シェア
2025年6月末の簿価残高は約37.2兆円、時価は約76.2兆円(推計)。
昨今の株高で倍くらいになっているんですよ。
なお、この金額は東証プライム時価総額の約8%に相当する規模です。(報道集計)
かなり大きいですね。
買い入れ額の推移(ピークアウトと停止)
2020年の年間買い入れがピーク(約7.1兆円)。以後は減速し、2024年は新規ゼロ、2025年は売却フェーズへ
これを経て2024年3月に買い入れ終了、2025年9月に売却方針が決定という流れです。
日銀ETF売却とは何を・どう売る?
それでは今回の日銀ETFの売却について詳しく見ていきましょう。
日銀のETF売却:超スローペース・市場撹乱の回避を最優先
日銀は2025年9月19日、保有するETF・J-REITの市場売却開始を決定しました。
売却ペースはETFが簿価ベース年3,300億円(時価約6,200億円)、市場全体の売買代金に対する売却割合は0.05%程度と明示。
時期の分散・各銘柄の保有割合に概ね比例した売却を原則とし、市場撹乱や日銀の損失発生の極力回避を基本方針に据えています。
必要に応じ、一時的な調整・停止やペース見直しも可能としています
すべて売り切るのに100年はかかる計算となります。
約14年で買ったETFを100年で売却というかなりスローペース・・・
さらにこのペースだと株価が上がれば減らなくなる可能性すらあります。
売却の方法とルール
売却方法をまとめると以下の通り。
- 市場価格に基づく取引所売却(基本)。
- 年間ペース:ETF簿価3,300億円(時価6,200億円)/J-REIT簿価50億円(時価55億円)。
- 市場売買代金の約0.05%目安、時期分散、保有割合に比例。
- 一時停止・調整・見直しのオプションあり。
ポイント
・「適正な対価」「損失の極力回避」「市場の攪乱回避」を明文化
・市場売買代金比0.05%という極小シェアでの運用設計
・売却の一時停止・調整や見直し余地を確保(裁量の担保)
規模が大きいのになぜゆっくり?
市場機能の維持・撹乱回避・損失回避が最優先。
さらに、日銀は「金融機関から買い入れた株式」売却の実務経験(2025年7月完了)を参照し、同程度のスケールに調整しています。
報道の整理:100年超の計算
残高規模と今回の年間ペースを素朴に割り算すると、100年以上かかるとの試算報道。
“短期で売り浴びせる”設計ではないことが読み取れます。
どのETFが対象?
日銀の保有はTOPIX連動型が中心(直近年は日経平均型を事実上停止しTOPIX偏重)。
したがって、指数ウェイトの重い大型株ほど相対的に売り圧力を受けやすいとの見方が出ます。
発表当日は指数寄与度の大きい銘柄が大きく下落しました。
個人投資家の実務対応(NISAやiDeCoはどう対応?)
それでは今回の日銀ETF売却に個人投資家はどのように動けばよいのでしょう?
「慌てて解約」より“粘り強い”基本動作
基本的に大きな影響を与えないレベルの売却に押さえていることから長期・分散・積立の原則を維持するのがよいでしょう。
0.05%ペースは日々の需給に埋もれるレベルなんですよ。
指数自体の稼ぐ力(EPS成長・配当)に沿うことが中核戦略。
売却は保有比率に比例が基本。
日経平均やTOPIXなどの指数偏重リスクを点検しておくとよいです。
また、NISAやiDeCoの非課税メリットは変わりありません。
売却ニュースだけでポジションを大きく崩す合理性は薄いですね。
セクター・銘柄の“体感差”に注意
指数寄与度の高い超大型株はヘッドラインの影響を受けやすい一方、売却の裁量停止・調整もあり、需給ショックの連鎖は管理される設計です。
短期はボラ拡大→戻りの振れも想定が必要かも。
よくある質問(FAQ)
それではみなさんが疑問に思いそうなことを見ておきましょう。
Q1. 「日銀ETFの売りがやばい」って本当?
数字で見ると影響は大きくありません。
売却は市場売買代金の0.05%目安。
調整・停止の余地も言及されています。
超長期の出口戦略であり、短期の一方向圧力には設計上なりにくいです。
Q2. ETFはいつから売る?どのくらい続く?
受託者選定後、準備が整い次第開始。
現時点の年ペースが続けば超長期。
必要に応じて見直しもあります。
Q3. どの銘柄が売られる?
保有割合に概ね比例、時期分散で売却。
TOPIX連動が中心。
個別の恣意的売りは想定されません。
Q4. 発表の日に株が急落したのはなぜ?
サプライズ要素とヘッドラインの心理反応。
ただし引けにかけては下げ幅縮小。数量設計は限定的です。
Q5. 金利や為替には?
0.5%据え置きだが、2名の利上げ主張でタカ派シグナル。
今後の追加利上げ観測がクロスアセットに波及。
まとめ
今回は「日銀のETF売却をわかりやすく解説。年間3,300億円の“超スローペース”は株価に影響する?」と題して日銀のETF売却についてみてきました。
超スローペース(0.05%)×裁量停止可”という需給影響の限定設計となっています。
過去の日銀砲(買い支え)はかなりパワーがありましたが、これは逆に影響が少ないように設計されているんですよ。
ですからそこまで怖がりすぎないというのが正解でしょうね。
それよりも金利や為替の動向が注目となってきそうです。


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