先日、衝撃のニュースが流れました。厚生労働省が毎月発表している賃金や労働時間の動向を示す「毎月勤労統計」の調査が不適切だった件です。これはかなり多くの方に影響を与える話です。
平成16年以降に雇用保険、労災保険、船員保険の給付を受給した方の一部及び雇用調整助成金など事業主向け助成金を受けた事業主の一部に対し、追加給付が必要となったのです。
特に一部の人は自ら申し出ないと追加給付を受けられませんので自分が該当か否かを確認しておく必要があります。
今回は厚生労働省の毎月勤労統計の不正の追加給付について現在の情報をまとめてみました。
※3/7:新情報が入りましたので追記しました。
※2020/6/24:私の元にも資料がようやく届きましたので追記
厚生労働省の毎月勤労統計の不正とは
まずは今回の厚生労働省の毎月勤労統計調査の不正とはどういったものなのかを見ていきます。
毎月勤労統計調査とは
毎月勤労統計調査とは統計法に基づく基幹統計調査で雇用、給与及び労働時間について、全国調査にあってはその全国的の変動を毎月明らかにすることを、地方調査にあってはその都道府県別の変動を毎月明らかにすることを目的とした調査です。
この統計データを元に様々な社会保険の金額や、今後の政策が決められているのです。つまり、かなり重要な統計データの一つであるってことですね。
その統計データの調査に不正があり適切なデータでなかったということなのです。
毎月勤労統計調査の不正内容
今回の毎月勤労統計調査の不正は3つあります。
全数調査するとしていたところを一部抽出調査で行っていた
まず、大きな問題となっているのが「全数調査するとしていたところを一部抽出調査で行っていた」点です。
具体的には、東京都における「500 人以上規模の事業所」の平成30 年の調査対象として抽出した事業所数は、全数調査であれば 1,464 事業所でしたが、実際に平成 30 年 10 月分の調査対象事業所数は概ね3分の1の 491 事業所でした。
出所:厚生労働省 プレスリリース
つまり、本来は500 人以上規模の事業所は全数調査とするとしていたのに、実際は3分の1程度の抽出調査となっていたということです。
統計的処理として復元すべきところを復元しなかった
また、「全数調査するとしていたところを一部抽出調査で行っていた」により統計的処理に問題が生じてしまっています。
一方、毎月勤労統計調査の平成 29 年までの集計は、同一産業・同一規模では全国均一の抽出率という前提で行われており、前述の異なる抽出率の復元が行われない集計となっていました。このため東京都分の復元が行われていませんでした。
なお、東京都における「499 人以下規模の事業所」等についても平成 21 年から平成 29 年までについて、一部に、異なる抽出率の復元が行われない集計となっていました。
これらの結果、平成 16 年から平成 29 年までの調査分の「きまって支給する給与」等の金額が、低めになっているという影響がありました。
出所:厚生労働省 プレスリリース
つまり、これにより「きまって支給する給与」(簡単に言えば固定給分)が低めの金額になってしまっていたのです。この統計データを元に様々な社会保険の金額が決まっていましたのでそれら社会保険の給付金額が低くなっていたということになります。
調査対象事業所数が少なくなっていた
また、調査対象事務所として公表した数字が前述の影響で少なく発表されているということもあります。
出所:厚生労働省 プレスリリース
毎月勤労統計調査の不正により追加給付の可能性がある方
今回の毎月勤労統計調査の不正により少ない社会保険が払われていた方については追加給付が行われることになりました。
どういった方が追加給付となるのかを見ておきましょう。
雇用保険
まずは雇用保険です。「基本手当」、「再就職手当」、「高年齢雇用継続給付」、「育児休業給付」、「介護休業給付」、「傷病手当金」、「就業手当」、「教育訓練支援給付金」、「訓練延長給付」などの雇用保険の給付を平成16年8月以降に受給された方
また、雇用保険と同様又は類似の計算により給付額を決めている「政府職員失業者退職手当」(国家公務員退職手当法)、「就職促進手当」(労働施策総合推進法)を受けている方です。
15年近くの間ですからこれらの給付を受けている方も多いと思います。この間に失業や転職、休業をした方は要チェックです。基本手当ってのが俗にいう失業保険のことですね。
私もこの間に「再就職手当」を受けています。
労災保険
次に労災保険です。 「傷病(補償)年金」、「障害(補償)年金」、「遺族(補償)年金」、「休業(補償)給付」、「葬祭料(給付)」、などの労災保険給付や特別支給金等を平成16年7月以降に受給された方
労災保険とは仕事中(通勤中)の怪我や病気が発生したときにもらえる給付です。この間に仕事中の怪我などが合った方は要チェックです
船員保険関係
船乗りの方の船員保険制度にも影響があります。
船員保険制度の「障害年金」、「遺族年金」などの船員保険給付を平成16年8月以降に受給された方
事業主向け助成金
会社をやっている方の助成金にも影響があります。
「雇用調整助成金」の支給決定の対象となった休業等期間の初日が平成16年8月から平成23年7月の間であったか、平成26年8月以降であった事業主
これも意外に多いと思います。一時期かなり盛り上がった助成金ですから・・・私も会社勤めしていたときにこの雇用調整助成金の申請していますのでそれも関係してきますね。
毎月勤労統計調査の不正により追加給付の規模
ではこの追加給付どれくらいの規模なのでしょうか。
【雇用保険】
一つの受給期間を通じて一人当たり平均約1,400円、延べ約1,900万人、給付費約280億円
【労災保険】
年金給付(特別支給金を含む):一人当たり平均約9万円、延べ約27万人、給付費約240億円
休業補償(休業特別支給金を含む):一人一ヶ月当たり平均約300 円、延べ約45万人、給付費約1.5億円
【船員保険】
一人当たり平均約15万円、約1万人、給付費約16億円
【事業主向け助成金】
雇用調整助成金等:対象件数延べ30万件、給付費約30億円
出所:厚生労働省「毎月勤労統計調査に係る雇用保険、労災保険等の追加給付について」
結構な金額となります。ここに乗っているのはあくまでも平均ですからそれぞれもらっていた金額や期間によって変わってきます。該当している方は要チェックです。特に労災保険などは結構大きな金額となりますね。
毎月勤労統計調査の不正により追加給付を受ける方法
追加給付の方法については以下のように発表されています。
(現在受給されている皆様にも対応します。)
○追加給付が必要な方には、平成16年以降追加給付が必要となる時期に遡って追加給付を実施します。
○本来の額よりも多くなっていた方には、返還は求めないこととします。
○ 関係のコンピュー タシステムの改修や住所等の確認など正確な支給のための最低限の準備を経て、対象者の特定、給付額の計算が可能なケースから、できる限り速やかに順次追加給付を開始することを予定しています。
出所:厚生労働省「毎月勤労統計調査に係る雇用保険、労災保険等の追加給付について」
雇用保険・労災保険・船員保険
○一方、住所データがない受給者の方(推計延べ1,000万人以上)及び転居等で住所が不明となった受給者の方が多数おられます。こうした方々については、記者発表やホームページ等を通じて、追加給付の可能性がある給付の種類や受給時期等をお示しし、国民の皆様にお申し出いただくようご協力を呼びかけ、受給者の方からお申し出をいただき、 受給実績やご本人であることの確認、追加給付額の計算を行った上で、追加給付を行うという流れを想定しています。
○また、正確な給付のため、対象者の特定、追加給付額の計算のためのシステム改修や、旧システム時代のオフライン管理データを現行システムに戻す作業等に相当の期間が必要となります。お申し出の呼びかけや追加給付の開始はシステム対応後となることをご理解いただきますよう、お願い申し上げます。
出所:厚生労働省「毎月勤労統計調査に係る雇用保険、労災保険等の追加給付について」
上記のように基本的には該当者にお手紙にてご連絡が来ることになっています。(詐欺の手紙なんかも出そうですから要注意です)
しかし、住所データがない受給者の方(推計延べ1,000万人以上)及び転居等で住所が不明となった受給者の方が多数おられるとのことです。この方は受給者の方から申し出をしないともらえないということになりますので自分が該当している可能性がある方は問い合わせをしてみるとよいかもしれませんね。
雇用関係助成金
○一方、所在地データがない又は移転等で所在地が不明となった事業主が多数おられます。こうした場合についても、記者発表やホームページ等を通じて追加給付の可能性がある受給時期等をお示しし、お申し出を呼びかけ、事業主の皆様からお申し出をいただき、必要な確認・計算の上で、追加給付を行うという流れを想定しています
出所:厚生労働省「毎月勤労統計調査に係る雇用保険、労災保険等の追加給付について」
雇用関係助成金も基本的に対応は同じですね。基本的には手紙にて連絡がきます。
しかし、向こう側でデータを持っていないようなケースや廃業してしまっているようなケースの場合にはこちらから申し出をしないともらえませんので確認が必要ですね。
追加給付に必要となるだろう書類
上記のようにこちらから申し出をするケースなどではそれが本当なのかを厚生労働省側で確認をする必要があります。その際に必要となる書類が以下のとおりですから探しておく必要があるかもしれませんね。かなり昔も含まれていますので厳しい要求な気もしますが・・・
- 受給資格者証、被保険者証
【労災保険】
- 支給決定通知・支払振込通知 、年金証書、変更決定通知書
【船員保険】
- 支給決定通知・振込通知、年金証書、改定通知書
【政府職員失業者退職手当】
- 失業者退職手当受給資格証等
【就職促進手当】
- 就職促進手当支給決定通知書など支給の事実が確認できる書類
【事業主向け助成金】
- 支給申請書類一式、支給決定通知書
出所:厚生労働省「毎月勤労統計調査に係る雇用保険、労災保険等の追加給付について」
※厚生労働省のサイトに下記のコメントが入りました。とりあえずなくても問題はなさそうです。
必須の書類はありませんが、念のため書類をお持ちの方は、今後、手続きの際に役立つ可能性がありますので、そのまま保管するようお願いします。
毎月勤労統計調査の不正により追加給付の相談窓口
すでに今回の追加給付についての相談窓口ができていますので該当する可能性があるかたは一度相談してみると良いでしょう。
★雇用保険追加給付問い合わせ専用ダイヤル 0120-952-807
(※事業主向け助成金の問い合わせも含む。)
★労災保険追加給付問い合わせ専用ダイヤル 0120-952-824
★船員保険追加給付問い合わせ専用ダイヤル 0120-843-547 又は 0120-830-008
受付時間 平日8:30~20:00
※1月12日(土)~14日(月)の間もお問い合わせを受け付けます(8:30~17:15)。
※1月13日(日)、14日(月)に限り、以下の番号は全ての問い合わせに対応します。
★0120-952-807、★0120-952-824、★0120-843-547
※全国どこからでも通話料無料でお電話いただけます。
※ご相談の期限は、当面、設けません。
出所:厚生労働省「毎月勤労統計調査に係る雇用保険、労災保険等の追加給付について」
追記:お支払いの時期目安
お支払いの時期は以下の目安となっています。システムの改修が必要なようで結構な時間がかかっているようです。
現在受給中
お知らせ開始時期 | お支払い開始時期 | ||
雇用保険 | 3月中~ (一部の方の過去分は 10月頃~) | 将来分:3月中~ 過去分:4月~ (一部の方は11月頃~) | |
労災保険 | 労災年金 | 将来分:4月 過去分:5月~ (一部の方は9月~) | 将来分:6月(4・5月分)~ 過去分:6月~ (一部の方は10月~) |
休業補償 | 過去分:6月~ (一部の方は7月~) | 将来分:5月(4月分)~ 過去分:7月~ (一部の方は8月~) | |
船員保険 | 4月~ | 4月~ | |
事業主向け助成金 | 3月中~ | 3月中~ |
過去に受給
お知らせ開始時期 | お支払い開始時期 | ||
雇用保険 | 育児休業給付:8月頃~ 上記以外:10月頃~ | 11月頃~ | |
労災保険 | 労災年金 | 9月頃~ | 10月頃~ |
休業補償 | 8月頃~ (一部の方は11月頃~) | 9月頃~ (一部の方は12月頃~) | |
船員保険 | 4月~ | 6月~ | |
事業主向け助成金 | 4月~ | 4月~ |
追記:受け取るための手続き
受け取るための方法は以下です。住所が変更になってお知らせがこない場合が問題となりそうでうですね。
現在受給されている方 | 過去に受給された方 | |
雇用保険 | 原則として新たな手続きは不要。 過去に受給した分について、追加のお支払いがある場合には、ハローワークの窓口でご説明した上で順次お支払い。 | 今後、お知らせを郵送し、振込先などの回答をいただいた上で順次、お支払いすることを予定。 |
労災保険 | 原則として新たな手続きは不要。 過去に受給した分について、追加のお支払いがある場合には、労働基準監督署に登録された連絡先に「お知らせ」を郵送し、その後、順次、お支払い。 | 今後、「お知らせ」を郵送し、振込先などのご回答をいただいた上で順次、お支払いすることを予定。 |
船員保険 | 特段の手続きは不要。 4月上旬に給付額を改定する「お知らせ」を郵送した上で、4月15日に、現在ご利用中の口座にお支払い。 | 4月から順次、「お知らせ」を郵送し、振込先などのご回答をいただいた上で、6月から順次、お支払いすることを予定。 |
※私のもとにも書類が届きました。
「雇用保険の追加給付に関する回答票」に記入する形となっており、下記のどれかを記載することで調査するようです。
合わせて振り込み金融機関を記入する「払渡希望金融機関届」を返信用の封筒で送れば手続き完了です。
入金までの時間は未定とのこと・・・
●手当受給時の振込口座
●お勤め先
まとめ
今回は「ここ15年で失業保険などをもらっていたら要チェック。厚生労働省の毎月勤労統計の不正で追加給付を受けられる対象者と受給方法まとめ」と題して厚生労働省の毎月勤労統計の不正についてみてきました。
約15年の間ですからかなり多くの方が対象となっていると思います。こちらから申し出ないと確認できないケースもかなり多いようですから該当していないか確認してみてくださいね。
今回はあくまでも金銭的な部分だけを見ましたが厚生労働省の毎月勤労統計で方針が決まっていた政策なんかはどうするんでしょうかね・・・また、厚生労働省の毎月勤労統計を元にベースアップなんかを決めている会社もあります。そのあたりにも影響を与えそうで今回の不正は本当に罪深いなって感じてしまいます。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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