就業不能保険は本当に必要??加入前に傷病手当金について知っておこう

最近、保険会社がかなり力をいれている保険があります。

就業不能保険です。

いろいろな保険会社から販売されていますね。

しかし、就業不能保険に入る前にぜひ知っておいてほしい制度があります。

それが傷病手当金です。

今回は傷病手当金について解説します。

就業不能保険とは

就業不能保険とは病気やケガで所定の就業不能状態になり働けなくなったときに毎月給付金が受け取れる保険です。

給料のような形で受け取れますから働けなくなったときの経済的な負担に備えることができるのです。

各社が販売しています。

代表的な商品は以下です。

アフラック:給料サポート保険
住友生命保険:1UP Vitality
アクサ:アクサダイレクトの働けないときの安心
日本生命:もしものときの生活費
三井住友海上:&LIFE くらしの応援ほけん
ライフネット生命:働く人への保険2
チューリッヒ:くらすプラス

各社ともテレビCMもガンガン流していますからご存知の方も多いでしょう。

各社保険の内容は多少違いますが、テレビCM効果で知名度の高いアフラックの「給料サポート保険」を例に就業不能保険の仕組みをみてみましょう。


就業不能保険の支給条件

給付は次の条件を満たした時に受けられます。

支給条件は以下のとおりです。

基本的に医師が就労困難状態と判断したときが対象になるということになります。

1回目〜6回目の支給条件

つぎの1.2.両方に該当したとき

1.病気・ケガを原因とした就労困難状態に該当する状態が60日継続したと医師によって診断されたとき
2.つぎのいずれかの日に生存しているとき
1回目:1.に該当した日の翌日
2回目~6回目:2回目~6回目までの支払い基準日

就労困難状態が60日継続した場合、最初の6回分は就労困難状態の継続の有無に関わらず生存を条件に給付金をお受け取りいただけます。

つまり、60日以内の就労困難状態ではもらえないってことですね。

7回目以降

支払基準日に就労困難状態が継続していると医師によって判断されたとき

就業不能保険の保険料

もらえる給付金額は自分で設定できますが、代表例となっている30歳男性で会社員の例を見てみましょう。

短期回復支援給付(1回目〜17回目まで)月10万円
長期療養支援給付(18回目以降)月20万円
長期給付無事故支払金20万円

上記の給付を受けられる設定にすると保険料は月額4,740円です。(60歳満期)

60歳まで30年掛け続けたとすると総額1,706,400円となります。

傷病手当金とは

傷病手当金とは病気休業中に被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度で、被保険者が病気やケガのために会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給されます。

前述の就業不能保険と目的はかなり似ているんですよ。

ただし、支給条件はかなり違います。


傷病手当金の支給条件

傷病手当金は公的な制度であることもあり、就業不能保険と比較すると支給条件は厳しめです。

具体的に見ていきましょう。

業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること

まず1つが業務外である必要があります。

業務上・通勤災害によるものは支給対象外です。

これは業務上・通勤災害は労災保険の管轄になるためです。

ちなみに労災保険には休業補償給付という傷病手当金と病気やケガで労務不能となった方を救済する同じような制度があります。

業務外の事由:傷病手当金
業務上の事由、通勤災害:休業補償給付

労災保険から出すか、健康保険から出すかの違いですね。

なお、ルールや給付内容も多少違います。

労災保険の方が条件は良くなっていますね。

仕事に就くことができないこと

病気やケガで仕事が出来ないってことが条件です。

仕事に就くことができない状態の判定は、療養担当者の意見等を基に、被保険者の仕事の内容を考慮して判断されます。

同じ怪我でも仕事の内容によっては判断が変わってくる可能性があるってことですね。

就業不能保険は医師の判断でしたね。

連続して4日以上仕事に就けなかったこと

傷病手当金には失業保険と同様に「待機期間」が設けられています。

待機期間は3日間で、業務外の事由による病気やケガの療養のため仕事を休んだ日から連続して3日間の後、4日目以降の仕事に就けなかった日に対して支給されます。

ちなみに待機期間には有給休暇や土日・祝日等も含まれます。

前述の給料サポート保険では60日以内の就労困難状態ではもらえないですからここに大きな差があります。

休業中の給料の支払いがないこと

傷病手当金は病気やケガで休業している間の生活保障的な制度です。

そのため、会社から給料等が出ていれば傷病手当金は支給されません

ただし、給料の支払いがあっても通常より減額されている等で傷病手当金より少ない場合にはその差額が支給されます。

就業不能保険は給料の支給は条件になっていませんね。

支給期間は最長1年6ヶ月

傷病手当金が支給される期間は支給開始した日から最長1年6ヵ月です。

ちなみに加入してる健康保険が「組合健保」だと付加給付として期間1年6ヶ月より長い場合もあります。

加入している健康保険の違いについてはこちらの記事を御覧ください。

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健康保険の種類

傷病手当金の保険料

傷病手当金は健康保険の制度ですから、別途保険料を支払う必要はありません。

健康保険に含まれているのです。

もらえる金額はちょっとややこしいです。

1日あたりの金額は以下の計算式で算出されます。

支給開始以前の継続した12ヶ月間の各月の標準報酬月額を平均した額÷30日×2/3

かなり分かりにくいですね(笑)

簡単に言えば1日あたりの給料額の2/3です。

2/3は傷病手当金で最長1年6ヶ月はカバーができるのです。

ちなみに傷病手当金には税金が掛かりませんから実質的な手取りはそれほど大きく下がらないと思われます。

つまり、傷病手当金が支給される期間はそれほど生活に困ることはないのです。(医療費が掛かるなどの問題は別途ありますが)

ですからこの期間は就業不能保険の必要性はそれほどありません。

業務上ならば8割

ちなみに業務上で発生したケガや病気の場合に支給される休業補償給付は給料の6割(給付基礎日額の60%)です。

併せて休業特別支給金が別途2割(給付基礎日額の20%)が支給されますので合計で給料の8割がもらえます。

こちらも税金は掛かりません。

自営業者の加入する国民健康保険

ちなみに前述まで紹介してきたのは会社員やその扶養者が加入する健康保険の話です。

自営業者が加入する国民健康保険の場合には傷病手当金は任意給付となっており、ほとんどの自治体で支給されませんのでお気をつけください。

一部支給される場合もありますのでお住まいの市町村や国民健康保険組合にお尋ねください。

就業不能保険は必要なのか?

今まで見てきたように就業不能保険と傷病手当金は目的が同じものです。

ですから傷病手当金があるから就業不能保険は不要と考える人も多いです。

しかし、一概にはそうとも言えないケースもあります。

就業不能保険が必要な方とそうでない方も考えてみましょう。


就業不能保険が必要な人

まずは就業不能保険があった方がようパターンから見ていきましょう。

前述のように健康保険の傷病手当金で休業4日目から最長1年6ヶ月までは給料の2/3は給付を受けることが出来ます。

ですからこの期間は就業不能保険が無くてもそれほど困ることはないと思われます。

しかし、それ以降も働けず、障害にも該当しない場合が問題です。

入ってくるお金がなにも無くなってしまいますからね。

もしそうなっても大丈夫な備えがない方は就業不能保険も選択肢に入ってくるでしょう。

また、自営業者やフリーランスのように国民健康保険に加入している方の場合には、そもそも傷病手当金がでない場合が多いですから有力な選択肢となってきますね。

1年6ヶ月以上働けなくなる病気やケガになり、障害にもならない確率は?

ただ、ちょっと考えなくてはならないのが多くのケガや病気は1年6ヶ月あれば働けるくらいまでには治るということです。

それ以上掛かるような病気やケガならば障害と判断されるパターンが多いでしょう。

障害と判断されれば障害年金や業務上なら労災の傷病(補償)年金が支給されますのでそちらでカバーが可能となります。

また、前述の給料サポート保険では60日以内の就労困難状態ではもらえないですからそもそも給付を受けられる方はかなり少ないんですよ。

なお、交通事故にあって働けなくなったらどうするの?って不安を煽っている保険の外交員の話を聞いたことがありますが、この場合には自動車保険から出ますから就業不能保険はそもそも必要ありません。

つまり、実際に就業不能保険が必要となるようなケースはかなり限られるんです。

就業不能保険はそれなりに保険料が高いですから、その確率とリスクを考えて検討しましょう。

就業不能保険が不要な人

逆に就業不能保険が不要な人のパターンも見ていきましょう。

すでに貯蓄や不労所得などがあったり、共働きなどで1年6ヶ月以上就業が不能になっても問題がない人は就業不能保険を検討する必要はないでしょう。

そもそも保険は期待値だけを考えれば損なものです。

ただ、突発的に大きなリスクが発生する可能性があるものにみんなでお金を出し合って備えましょうという仕組みです。

ですから自分でヘッジ(回避)できる程度のリスクなら保険不要なんです。

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逆に言えば自分だけではヘッジできないリスクならば保険で備えておくのも一つの選択肢となります。

まとめ

今回は「就業不能保険は本当に必要??加入前に傷病手当金について知っておこう」と題して就業不能保険と傷病手当金についてみてきました。

就業不能保険も傷病手当金も働けなくなったときのサポートという目的は同じものです。

考え方としては就業不能保険は傷病手当金や休業補償給付の補完的なものと考えるのが正解でしょうね。

大きな怪我や病気の場合には傷害年金もありますから、実際に就業不能保険が活躍するケースはそれほど多くないと思われます。

ですから就業不能保険に加入するにしても傷病手当金でもらえる金額と自分の生活で必要となる金額を加味して保険額を考えましょうね。

個人的に傷病手当金や休業補償給付がでない自営業者やフリーランスの方を除くとそれほど必要性がない保険だと考えています。

また、今回の傷病手当金でもそうですが、日本の社会保険制度はかなり充実しています。

ですからまずは保険に入る前に社会保険制度の給付内容を知った上で検討してください。

保険会社や保険の営業の方は高い保険に入ったくれたほうが儲かりますから不安だけを煽ってきますので・・・

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