先日、国民年金や厚生年金の繰下げや繰上げについての記事を書いたところかなりの反響となっています。
そこで今回はそれら記事の続編として現在、政府で検討されている年金繰下げ制度を75歳まで延長した場合に何歳まで生きれば得するのかについて検証してみたいと思います。
※追記:75歳まで年金受給開始年齢を遅らせる事ができる法案が、70歳まで就労可能な環境整備を進める法案もセットで、「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律案」として国会に提出されます。
国会で承認されると75歳まで繰り下げすると84%毎月の年金額が割増されることになりました。
国民年金・厚生年金の【繰下げ制度】が75歳まで可能に
繰下げ制度を75歳まで可能とする件は、まだ検討段階ですが下記のような記事も出てきていますね。
厚生労働省は公的年金の受給開始年齢を75歳まで繰り下げられるようにする検討に入った。毎月の年金額は65歳開始に比べて2倍程度とする方向だ。いまは70歳開始が上限だが、一段と高齢になってから年金をもらう選択肢をつくる。働く高齢者を増やす呼び水にし、元気な高齢者に社会保障を支える側に回ってもらうのが狙いだ。
出所:日経新聞2019年1月26日
75歳まで繰下げするとどれだけ年金が増えるのか
75歳まで繰下げが可能になる話はまだ検討段階のため具体的な計算方法はでていません。
仮に現状の繰下げ制度と同様に計算する場合でまずは計算してみましょう。現状の繰下げの計算式は下記の通りとなります。
簡単に言えば1月遅らせると0.7%増額するってことになります。1年遅らせれば8.4%増えます。
現状は70歳までで上限が42%増となっていました。それが75歳までとなると84%の増となります。
損益分岐点は87歳
それでは75歳まで繰下げたときの損益分岐点について考えてみましょう。
例えば月に10万円年金がもらえる予定の方が75歳まで繰り下げした場合には、もらえる年金額は84%増え月に18.4万円もらえるようになることになります。
このケースの場合は年金の受給は10年間遅らせています。仮にそのまま受給していれば10年間で1,200万円の年金を受け取れました。繰下げで増えた金額がこの1,200万円の差を超えるのが143ヶ月で約12年です。
つまり、12年受給する87歳以上生きることができれば得をするってことになります。
満額繰下げした場合の損益分岐点は約12年ということです。
男性は損、女性は得の可能性が大
ちなみに標準生命表によると65歳男性の平均余命は19.53歳です。
つまり、84.53歳まで生きるのが平均となります。
また65歳女性の平均余命は24.27歳です。
つまり、89.27歳まで生きるのが平均となります。この数字で比較すると男性は75歳まで繰下げしてしまうと損をする可能性が高く、女性は得をする可能性が高いということがわかりますね。
もちろん個人差はありますが・・・
平均余命についてはこちらの記事を御覧ください。
自分があと何年生きられるか(寿命)がわかっていれば、それまでいくらお金がかかり、いくら準備しておけばよいのか分かれば計画も立てやすくなりますね。しかし、実際にはそんなことはわかりません。早くに亡くなってしまう方もいれば予想以上に長く[…]
ただしこれ考え方次第なんです。もちろん87歳より早くに亡くなってしまったら金銭的に損をするってことになります。
しかし、自分が亡くなってしまってからはもうお金は使えませんから、老後に使える資金を増やす長い生き保険と割り切って考えることもできるでしょう。
繰下げの増額率が増やしたらどうなるのか?
前述の記事では「毎月の年金額は65歳開始に比べて2倍程度とする方向」とあるように70歳以上の繰下げについては増額率を増やすという話もあります。
そこで繰下げの増額率が増えた場合もシュミレーションしてみましょう。
70歳以上は0.8%増額の場合
まずは70歳以上は増額率を0.1%増やした0.8%の場合をみてみましょう。
この場合、1年で9.6%増える形となりますので5年間で48%、70歳までの42%合わせて90%の増額となります。
例えば月に10万円年金がもらえる予定の方が75歳まで繰り下げした場合には、もらえる年金額は90%増え月に19万円もらえるようになることになります。
このケースの場合は年金の受給は10年間遅らせています。
仮にそのまま受給していれば10年間で1,200万円の年金を受け取れました。繰下げで増えた金額がこの1,200万円の差を超えるのが134ヶ月で約11年2ヶ月です。
つまり、11年2ヶ月受給する86歳2ヶ月以上生きることができれば得をするってことになります。
70歳以上は0.9%増額の場合
まずは70歳以上は増額率を0.2%増やした0.9%の場合をみてみましょう。
この場合、1年で10.8%増える形となりますので5年間で54%、70歳までの42%合わせて96%の増額となります。
例えば月に10万円年金がもらえる予定の方が75歳まで繰り下げした場合には、もらえる年金額は96%増え月に19.6万円もらえるようになることになります。
このケースの場合は年金の受給は10年間遅らせています。仮にそのまま受給していれば10年間で1,200万円の年金を受け取れました。
繰下げで増えた金額がこの1,200万円の差を超えるのが125ヶ月で約10年5ヶ月です。つまり、10年5ヶ月受給する85歳5ヶ月以上生きることができれば得をするってことになります。
70歳以上は1%増額の場合
まずは70歳以上は増額率を0.3%増やした1%の場合をみてみましょう。
この場合、1年で12%増える形となりますので5年間で60%、70歳までの42%合わせて102%の増額となります。約2倍になる計算です。
日経新聞の記事では2倍程度とする方向とありますのでこの線あたりが濃厚なのかもしれません。
例えば月に10万円年金がもらえる予定の方が75歳まで繰り下げした場合には、もらえる年金額は102%増え月に20.2万円もらえるようになることになります。
このケースの場合は年金の受給は10年間遅らせています。仮にそのまま受給していれば10年間で1,200万円の年金を受け取れました。繰下げで増えた金額がこの1,200万円の差を超えるのが118ヶ月で約9年と10ヶ月です。つまり、9年10ヶ月以上受給する84歳10ヶ月以上生きることができれば得をするってことになります。
この辺りになると前述したような65歳男性の平均余命84.53歳とかなり近づいてきますので男性も75歳まで繰下げが選択肢にはいるかもしれませんね。
まとめ
今回は「国民年金・厚生年金の【繰下げ制度】が75歳まで可能に。75歳まで繰下げた場合に何歳まで生きれば得なのかを検証してみた。」と題して年金の繰下げ制度が75歳まで利用できるようになった場合を検証してみました。
今回検証した結果をみると女性は75歳まで繰下げ制度が始まったら選択しても得する可能性が高いです。しかし、男性の場合は損する可能性の方が高いですからその辺りも踏まえて検討する必要がありますね。また増額率がどれだけ増えるのかにの注意しておきましょう。
また、所得税の件も考える必要があります。年金をもらえる金額が増えればそれだけ所得税が掛かる可能性があるのです。
もらえる時期の税制がどうなっているのかによるでしょうが、現状では公的年金控除は削減方向にあります。
このあたりも考える必要が出てきますね。
もちろん繰下げればその間は年金が入ってきませんのでそれまでの生活資金も必要ですからその点もしっかり考えておきましょうね。
繰上げ制度、繰下げ制度についてはこちらの記事を御覧ください。
先日、厚生年金や国民年金の繰下げ制度についての記事を書いたところかなり反響がありました。そこで今回は繰下げの逆である厚生年金や国民年金の繰上げについて考えてみましょう。繰下げ制度については下記記事を御覧ください。[s[…]
先日、年金の平均支給額の記事を書いていて気づいたことがあります。それは厚生年金や国民年金の受給を遅らせて受給額を増やす繰下げ制度を利用している方がかなり少ないということです。下記記事にも書きましたが、繰下げは平均余命が伸びている昨今[…]
読んでいただきありがとうございました。
フェイスブックページ、ツイッターはじめました。
「シェア」、「いいね」、「フォロー」してくれるとうれしいです