現在、日本では3組に1組が離婚していると言われています。最近は熟年離婚も増えており他人事ではありませんね。ちなみに私も離婚経験者です(笑)
そんな離婚の際に考えなければならないことはたくさんありますが、特に財産分与も含めてお金については大きなウエイトを占めるでしょう。しかし、意外な盲点があります。それは年金です。実は夫婦であった期間に掛けた年金を分割することができる制度があるのです。
今回はそんな年金分割制度についてご紹介しましょう。
年金分割制度とは
年金分割制度とは、名前の通り、離婚する時に夫婦が加入していた厚生年金や共済年金を分割する事ができる制度です。
例えば、サラリーマンの妻で専業主婦の方は第3号被保険者という立場で厚生年金などに加入しています。保険料を払っていないのに将来もらえますのである意味優遇されているのですが、問題となるのが離婚したときです。元夫と比較してもらえる年金が少なくなってしまうのです。また、片方が給料が比較的低めの仕事をしている場合も同様です。年金は給料額をベース(標準報酬月額)に支払う年金が決まります。また、もらえる年金もそこから決まりますからバリバリ働いていないほうは不利なんですね。
しかし、この年金分割という制度を使うとそれを分割することができるのです。専業主婦だった方はもちろん、共働きでも給料に差があった場合には有効な方法となります。
年金分割のやり方は二つあります。順番に見ていきましょう。
合意分割制度
まずは合意分割制度です。
具体的には下記のようなルールとなっています。
離婚等をした場合に、以下の条件に該当したとき、当事者の一方からの請求により、婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を当事者間で分割することができる制度です。
- 婚姻期間中の厚生年金記録※(標準報酬月額・標準賞与額)があること。
- 当事者双方の合意または裁判手続により按分割合を定めたこと。(合意がまとまらない場合は、当事者の一方の求めにより、裁判所が按分割合を定めることができます。)
- 請求期限(原則、離婚等をした日の翌日から起算して2年以内)を経過していないこと。
出所:日本年金機構 年金分割
分割割合
合意分割制度を簡単に言えば二人で合意するもしくは裁判で按分割合を決め、それを元に年金を分ける方法です。ですから割合は双方で決めることができます。ただし、合意できなければ裁判所に決めてもらいます。なお、分割の上限は50%までとされています。
ちなみに裁判になると多くの場合は50%と決められるそうです。
分割のやりかた
分割の対象となるのは婚姻期間中の標準報酬月額と標準賞与額の合計額を二人分合算した上で按分割合に応じて分割します。
たとえば結婚10年。その間、旦那さんの標準報酬月額は40万。標準賞与額は年100万、奥さんの標準報酬月額は10万。標準賞与額は0円としましょう。
この場合に夫婦であった期間中の標準報酬と賞与の総額は旦那さんは5,800万円、奥さんは1,200万円となります、これを合計すると7,000万円です。
これを50%で按分すると3,500万円ずつとなります。
つまり、奥さん側に旦那さん側から2,300万円分が移ることになります。双方とも対象期間の標準報酬の総額は3,500万円となるのです。
なお、年金分割の効果は、厚生年金の報酬比例部分(厚生年金基金が国に代行して支給する部分を含む。)に限られ、国民年金の老齢基礎年金等には影響はありません。
手続きは日本年金機構に標準報酬改定請求書を提出することにより行います。その際に年金手帳や戸籍謄本、合意分割を定めた公正証書もしくは家庭裁判所が発行した調停調書などが必要となります。かなりややこしい書類ですから分からない部分があれば年金事務所の担当者に聞くのが早いかもしれませんね。
請求期限は離婚後2年
合意分割は離婚と同時でなくても構いません。離婚等をした日の翌日から起算して2年以内が期限となります。離婚後にもめないように離婚時の財産分与の時にこの年金についても話し合いをしておきたいところですね。
3号分割制度
合意とか関係なく分割できる制度もあります、3号分割制度です。ただしこちらは第3号被保険者(専業主婦・主夫)であった期間がある方のみが対象です。
平成20年5月1日以後に離婚等をし、以下の条件に該当したときに、国民年金の第3号被保険者であった方からの請求により、平成20年4月1日以後の婚姻期間中の3号被保険者期間における相手方の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を2分の1ずつ、当事者間で分割することができる制度です。
・婚姻期間中に平成20年4月1日以後の国民年金の第3号被保険者期間中の厚生年金記録※(標準報酬月額・標準賞与額)があること。
・請求期限(原則、離婚等をした日の翌日から起算して2年以内)を経過していないこと。
出所:日本年金機構 年金分割
分割割合
分割割合は合意分割と違いはじめから決まっています。2分の1ずつです。つまり半分ですね。
ただし、平成20年5月1日以後の婚姻期間部分についてのみです。(合意分割はすべての婚姻期間が対象)
なお、3号分割の場合には相手の同意は必要ありません。ただし分割される方が障害厚生年金の受給権者で、この分割請求の対象となる期間を年金額の基礎としている場合は、「3号分割」請求は認められません。
分割のやりかた
分割のやり方は合意分割と同じです。
こちらも手続きは日本年金機構に標準報酬改定請求書を提出することにより行います。詳しくは日本年金機構にお訪ねください。
請求期限は離婚後2年
請求についても合意分割と同じですね。離婚等をした日の翌日から起算して2年以内が期限となります。
まとめ
今回は「離婚で年金も分けることができるって知っていますか?【年金分割制度(合意分割、3号分割)】」と題して年金分割制度についてみてきました。
まとめるとこんな感じです。
夫婦であった期間の年金(厚生年金、共済年金)は分けることができる
やり方は合意分割と3号分割の二つ
合意分割は合意もしくは裁判で按分割合を決める
3号分割は2分の1ずつ
離婚後2年以内に請求が必要
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