「上場廃止が決まった株は、とりあえず持ち続ければいい」。
そう考えていませんか。
実は2025年、上場廃止は過去最多の123社。
しかも、その大半は倒産ではありません。
本記事では、株主が「持ち続ける」を選べないケースがほとんどである理由と、最も損をしない手放し方を、私自身が上場廃止株を握り続けた経験を交えてお伝えします
あなたに「持ち続ける」という選択肢はない
検索窓に「上場廃止 株 持ち続ける」と打ち込んだあなたは、おそらくこう考えています。
売りそびれたけれど、塩漬けにして待っていれば、いつか何とかなるかもしれないと。
残念ながら、その前提は崩れています。
今の日本市場で起きている上場廃止のほとんどでは、株主が「持ち続ける」という選択をしても、その意思とは無関係に株は強制的に現金へ換えられます。
つまり、あなたに残されている問いは「持つか、売るか」ではありません。「いつ、どの方法で手放すか」だけなのです。
そして、ここが本記事で最もお伝えしたい点です。
「何もしない」を選ぶと、あなたは自動的に、いちばん損な手放し方を選んだことになります。
なぜそう言い切れるのか。順を追って解き明かしていきましょう。
「上場廃止=価値ゼロ」はもう古い 。 2025年に何が起きたか
上場廃止と聞くと、多くの方が「倒産」「紙くず」「ボロ株」を連想します。
かつての私もそうでした。
ところが、2025年の現実はまったく違いました。
2025年に東京証券取引所で上場廃止となった企業は、12月初旬の時点で年内予定を含め123社。
東証と大阪証券取引所が経営統合した2013年以降で過去最多を記録しています(出典:日経ビジネス、2025年)。
注目すべきは、その「中身」です。廃止理由の内訳は次のとおりでした。
- 他社による買収:49社
- 支配株主などによる買収:27社
- MBO(経営陣が参加する買収):26社
- 完全子会社化:17社
お気づきでしょうか。
倒産や業績不振による「後ろ向きの退場」は、ごく一部にすぎません。
別の調査でも、2025年に上場廃止を前提としたTOB(株式公開買付け)は80社、MBOは32社、合計112社にのぼり、件数も金額も過去最高でした(出典:東京商工リサーチ、2026年)。
つまり今の上場廃止の主役は、倒産ではなく「攻めの非上場化」なのです。
なぜこんなことが起きているのか。
背景には、東証が2023年からPBR(株価純資産倍率)1倍割れ企業に改善を強く要請していること、
そして「物言う株主」と呼ばれるアクティビストの活発化があります。
割安に放置された会社は、買収のターゲットになりやすい。
だから経営陣は、標的にされる前に自らMBOで市場から降りる。そういう時代に入ったのです。
ここから導かれる、本記事の核となる視点はこうです。
上場廃止株を持っているあなたが本当に問うべきは、「上場廃止するかどうか」ではありません。
「なぜ上場廃止するのか」です。
理由が違えば、株主の運命はまったく変わるからです。
上場廃止には「3つの入口」がある
上場廃止の理由は、大きく3つに分けて考えると整理しやすくなります。
基準割れ型
上場を続けるには、証券取引所が定めた「上場廃止 基準」をクリアし続けなければなりません。
株主数、流通株式の比率や時価総額、売買高などが一定ラインを下回れば、改善期間を経て監理銘柄・整理銘柄に指定され、最終的に上場廃止となります。
ここで多くの方が見落としているのが、2025年に起きた「ルールの厳格化」です。
東証は2022年に市場区分をプライム・スタンダード・グロースの3つに再編しましたが、その際、旧基準で上場していた企業には緩い「経過措置」が認められていました。
この経過措置が2025年3月で終了し、本来の上場維持基準が全面適用されています(出典:日本取引所グループ)。
本来の基準では、流通株式時価総額がプライム市場で100億円以上、スタンダード市場で10億円以上、グロース市場で5億円以上などが求められます。
基準に満たない状態が続けば、改善期間ののち上場廃止です。
実際、2025年時点で200社を超える企業が基準未達のまま経過措置や改善期間に入っており、淘汰はこれから本格化します(出典:日本取引所グループ公表資料)。
つまり、倒産していなくても、静かに基準割れで退場する会社は今後増えていきます。
あなたの保有銘柄が小型株なら、決して他人事ではありません。
買収・TOB型
親会社が上場子会社を完全子会社化する、あるいは同業他社やファンドが買収する。
こうしたケースでは、買い手がTOBで市場外から株を買い集め、その結果として上場廃止に至ります。
このとき株主には、市場価格より20〜50%ほど高い「TOBプレミアム」が乗った価格が提示されるのが一般的です。
「廃止なのに株価が上がる」という一見不思議な現象は、これが理由です。
戦略・MBO型
経営陣自身が資金を集めて自社株を買い取り、非上場化するのがMBOです。
四半期ごとの業績プレッシャーから解放され、上場維持にかかるコストや開示負担を減らし、長期目線で改革に集中する。これが狙いです。
3つの入口を一覧にすると、こうなります。
| 入口 | 典型的なきっかけ | 株主が受け取るもの | 件数の傾向 |
|---|---|---|---|
| 基準割れ型 | 倒産・業績不振・基準未達 | ほぼ無価値になることが多い | 少数だが今後増加 |
| 買収・TOB型 | 親子上場の解消・同業の買収 | TOB価格(プレミアム付き) | 最多 |
| 戦略・MBO型 | 経営陣による非公開化 | TOB価格(プレミアム付き) | 過去最多ペース |
「持ち続けたらどうなる?」シナリオ別の現実
それでは本題です。上場廃止が決まると株価はどうなるのか。
そして売らずに持ち続けたら、どうなるのか。
入口ごとに見ていきましょう。
倒産・基準割れ型:整理銘柄、そして無価値へ
倒産や基準割れによる上場廃止では、廃止のおよそ1か月前に「整理銘柄」に指定され、投資家に最後の売却機会が与えられます。
この時期、株価はしばしば乱高下します。
10円の株が11円になるだけで10%の利益ですから、デイトレーダーが大量に参入し、マネーゲームの舞台になりやすいのです。
しかし、ここで持ち続けても良いことはまずありません。
倒産で民事再生に進めば、多くは「100%減資」となります。
これは資本金をゼロにする処理で、平たく言えば、既存株主の持ち株の価値がすべて消えるということです。
一度リセットして再出発する、その代償を株主が丸ごと引き受ける形になります。
整理銘柄になったら、まず「なぜ廃止されるのか」を確認する。
理由が倒産や債務超過なら、わずかでも売れるうちに手放す判断が現実的です。
買収・TOB型/戦略・MBO型:「持ち続ける」は実現しない
ここが、本記事でいちばんお伝えしたい部分です。
TOBやMBOによる上場廃止では、「TOBに応募せず、持ち続ける」という選択は、ほとんどの場合かないません。
理由は「二段階買収」という仕組みにあります。
買い手はまずTOBで大半の株式を買い集めます。
そして所定の比率を確保したあと、第2段階として「スクイーズアウト(少数株主の締め出し)」を実行します。
具体的には、特別支配株主による株式売渡請求や、株式併合という会社法上の手続きが使われます。
株式併合とは、たとえば1万株を1株にまとめるような処理です。
こうすると、買い手以外の株主の持ち分はすべて「1株未満の端数」になります。
端数は会社が買い取り、株主には金銭が交付されます。その金額は、TOB価格と同額です。
つまり、あなたが「応募しない」「放置する」を選んでも、結末は変わりません。
最後はTOBと同じ価格で、強制的に現金へ換えられるのです。
違うのは、現金を受け取るタイミングと、後述する税金の扱いだけです。
「持ち続ける」という塩漬けの戦略は、TOB・MBO型の上場廃止では成立しない。
これを知らずに「とりあえず放置」を選ぶと、何のメリットもないまま、最も不利な手続きに巻き込まれることになります。

戦略型で「持ち続ける価値」が生まれる稀なケース
ごく稀に、株を持ち続ける意味があるケースもあります。
業績は良好で、戦略上の理由から非上場化し、かつ完全子会社化せず一定の少数株主を残す会社です。
この場合、議決権や配当を受け取る権利はそのまま継続します。
ただし注意点もあります。
上場廃止後は売買が極端に難しくなります。
証券会社の画面で売り注文を出すことはできず、買い手や売り手を自分で探し、手続きも自前で行う必要があります。
非上場会社にとって、少数株主が多数いることは招集通知や株主総会のコスト増につながり、歓迎されません。
だからこそ、少数株主を整理する方向へ進む会社が多いのです。
「業績が良いから持ち続ける」という判断は、出口の見えにくさを覚悟したうえでの選択になります。
見落とされがちな本当の落とし穴。税金とNISA
上場廃止の議論は株価ばかりに集まりますが、本当の落とし穴は「税金と手取り」にあります。
ここを知らない投資家が、あまりに多いのです。
スクイーズアウトで交付される金銭は、上場廃止後の支払いであるため、「非上場株式の譲渡」として扱われます。
これが何を意味するか。
まず、NISA口座で保有していた銘柄も、上場廃止に伴ってNISA口座から払い出されます。
非課税のメリットは失われます。
さらに、非上場株式の譲渡には次の制約がかかります。
- 上場株式の譲渡損益や配当との「損益通算」ができない
- 翌年以降3年間の「繰越控除」も使えない
- 取得価額との差で利益が出れば、原則として確定申告が必要になる
そして確定申告で所得が増えれば、国民健康保険料や、後期高齢者の医療費窓口負担割合に影響が及ぶこともあります。
配偶者などの扶養から外れる可能性も出てきます。
これが、「何もしない」が一番損になる理由です。
整理銘柄やTOB期間中に市場で売れば、それは上場株式の譲渡として、損益通算も繰越控除も使えます。
ところが放置してスクイーズアウトを待つと、同じ金額を受け取るのに、税制上は不利な「非上場株式の譲渡」に切り替わってしまうのです。
受け取る金額が同じでも、手取りと手間がまるで違う。
ここに、行動した人としなかった人の差が生まれます。

私の経験
理屈だけでは伝わりにくいので、私自身の経験を4つお話しします。
ライブドア
まずは皆さんご存知「ライブドア」です。
2006年、有価証券報告書の虚偽記載が発覚し、ライブドアは上場廃止となりました。
私は上場廃止の寸前に、記念としてライブドア株とライブドアマーケティング株を数株、合計1,000円もしない金額で買いました。
当時は上場廃止で紙の株券が発行されるルールだったため、その株券が欲しかったのです。
上場廃止後は何度か書類のやり取りをして株券を入手し、その後の減資や買収の過程で、いつの間にか株主としての権利は消えていました。
手続きを踏めば何かあったのかもしれませんが、金額が金額なので放置しました。
要するに、1,000円で株券という記念品を買った、という結末です。
ちなみにライブドアとライブドアマーケティングの株券は今でも記念に取ってあります。(付箋は株主番号)

なお、ライブドアの株券のヤフオクの入札をみると平均落札価格が1,800円とのことです。
売りませんが、売ってもぜんぜん元が取れたんですね(笑)
レントラックジャパン
もう一つはレントラックジャパンという会社の株です。
これは私が国内株を初めて買った株(株自体は中国株のレノボが一番はじめ)でしたが、カルチャコンビニエンスクラブ(CCC)の子会社化したことで上場廃止となりました。
もともとCCCの社長が別で始めた会社で大口取引先がCCCという感じでしたので想定内の流れでしたけどね。
詳細の流れは覚えていませんが、レントラックジャパンの株がCCCの株に株式交換で変わったような気がします。
レントラックジャパンはそれまでにテンバーガー(10倍)になって半分くらいは処分していましたし、ぜんぜん損はない上場廃止でした。
ちなみにレントラックジャパンに目をつけたのは四季報を読みまくったことによるものです。
ROEの異様な高さと事業の内容的に社長が同じCCCが大口顧客で儲からないわけないじゃんという部分でしたね。
四季報の読み方はこちらの記事を御覧ください。

ワーサンガス
次は中国株のワーサンガスです。
こちらは厳密には上場廃止ではありませんが、5年間売買停止にされていたんですよ。
結論を言えば、売買を開始するまでに株を大量発行したため株価がかなり低くなりました。
しかも日本人を含む海外株主は、規制があるため新しい株券をもらうこともできなかったんですよ。
つまり、外国株主は泣き寝入りするしかないという・・・
詳しくはこちらの記事でまとめております。

ボロ株の中の経験
ボロ株の中の経験は語れないことも多いですが、株を持ったまま上場廃止になってしまった方は大きく損をしていますね。
前述のように上場していない会社としては株主がたくさんいても良いことはあまりありませんからどうしても排除の方向に舵をとりがちなのです。
中の人達も株主に対しては腫れ物やクレーマーに触るような扱いで少数株主対策はかなり話し合われました。
そのため、上場廃止後の株主総会はかなり大変でしたね。。。
なお、私のボロ株会社勤務時代の話はこちらを御覧ください。

では、どうすればいいのか ── 後悔しない3つの判断軸
最後に、上場廃止に直面したときの行動指針をまとめます。
廃止理由を調べる
整理銘柄や監理銘柄に指定されたら、株価を見るより先に「廃止理由」を調べましょう。
適時開示やニュースリリースで、倒産なのか、TOBなのか、MBOなのかを必ず確認してください。
すべての判断はここから始まります。
早めに決める
TOB・MBO型だと分かったら、「市場で売る」か「TOBに応募する」かを早めに決める。
放置してスクイーズアウトを待つのは、税制上いちばん不利な選択肢です。
受け取る金額が同じなら、損益通算の使える方法を選ばない手はありません。
マネーゲームに乗らない
倒産・基準割れ型なら、マネーゲームに乗らない。
整理銘柄の乱高下は魅力的に見えますが、本質は、誰かが最後に紙くずをつかむチキンレースです。
プロでない限り、わずかでも価値が残るうちに静かに手放すのが賢明です。
そして、上場廃止は「特別な事故」ではなく、これからは誰の保有銘柄にも起こりうる出来事です。
経過措置の終了で基準割れ退場は増え、TOB・MBOによる非公開化も過去最多ペース。
だからこそ、いま持っている銘柄について「もし上場廃止になったら、自分はどの入口に当たるか」を一度想像しておくこと。それが、いちばんの備えになります。
まとめ
今回は「上場廃止する会社の株を、そのまま持ち続けたらどうなるのか」をテーマに、最新の状況を踏まえて整理しました。要点は次のとおりです。
- 2025年の上場廃止は過去最多の123社。倒産はごく一部で、主役はTOB・MBOによる「攻めの非上場化」
- 経過措置の終了で「上場廃止 基準」は厳格化。基準割れによる静かな退場も今後増える
- TOB・MBO型では「持ち続ける」は実現しない。二段階買収のスクイーズアウトで、TOB価格と同額で強制的に現金化される
- 本当の落とし穴は税金。放置すると非上場株式の譲渡扱いになり、損益通算も繰越控除も使えず、確定申告や国保・扶養への波及まで起こりうる
- だからこそ「なぜ廃止されるのか」を最初に確かめ、入口に応じて手放し方を選ぶことが大切
私がこのブログを続けているのは、「知らなかった」というだけで損をする人を、ひとりでも減らしたいからです。
上場廃止は、知っていれば慌てずに対処でき、知らなければ静かに損を重ねる。その分かれ目は、いつも「事前に調べたかどうか」にあります。
本記事が、その一歩になればうれしく思います。
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