新型コロナウィルスの蔓延で多くの業種が大ダメージを受けています。
その中でも特に大きいのがANA(ANAホールディングス)やJAL(日本航空)といった航空業界です。
海外、国内とも売上が大きく落ち込んでいるのです。本数がそもそも減っていますから当然といえば当然かも知れません。
しかも、航空業界はもともと航空機、人件費など売上に関係なく発生する固定費が多額にかかってしまう業態ですから、売上減少の影響は計り知れないのです。
そこで心配になるのがANAやJALの経営。
もし経営破たんでもしてしまったら貯めたマイルはどうなるのでしょう?
今回はANAやJALの経営状況と倒産の可能性、貯めたマイルの扱いについて見ていきます。
過去の航空会社の経営破綻時のマイルの扱いはどうだったかの?
まずは今回の話しにはいくつか前例があります。
航空会社は前述のように固定費がかなり重たい業態ですから売上の減少に弱いんですよ。
そのため、過去にいろいろな航空会社が経営破綻をしています。
その事例からマイルの扱いを見てみましょう。
2010年JALの法的整理
まずは2010年のJALの法的整理です。
ちょうど今半沢直樹でJALをモデルとしただろう帝国航空編がやっていますがその時の話ですね。
結論から言えばこのときはJALマイレージはそのまま継続となりました。
JALは再生案件でした。
再生させるためには客離れを避けなければなりません。
航空会社は差異が正直それほどありませんので、マイルでの囲い込みで成り立っている部分もあります。
そのマイルを無効にしてしまえば顧客離れな当然起こってしまいます。
そのため、JALマイレージは保護されることとなりました。
JALは再生案件であったことが大きいのでしょうね。
もし、単純に倒産させてお終いという話ならばJALマイレージ廃止や無効という話で終わっていた可能性が高いです。
2005年デルタ航空、ノースウエスト航空の連邦破産法
2005年にはアメリカのデルタ航空、ノースウエスト航空が連邦破産法の適用を受けています。
連邦破産法は日本で言えば「民事再生法」ですね。
こちらもJALと同じく再生案件となります。
そのため、扱いはJALと同じくマイルは継続でした。
それだけ航空会社にとってマイルは再生に必要なピースのひとつなのです。
2019年アドリア航空の倒産
スロベニアのアドリア航空の倒産はちょっと話が違います。
こちらはマイルがすべて無効となりました。
他にも2001年のアンセットオーストラリア航空、2017年のエアベリンも同様の扱いでしたね。
マイルが継続となった航空会社との違いは支援が得られず再生案件ではなくそのまま倒産させてしまったことにあります。
再生案件ならマイルはそのまま有効?
つまり、過去の事例を見る限り再生案件についてはマイルが継続。
倒産させてしまう案件に関してはマイルが無効という傾向にあることがわかります。
再生させるにはマイルを無効としてしまえば客離れに繋がりますからね。
それだけ重要な要素と考えられているようです。
そのため、ANAやJALは業績が悪化しても再生するということになればマイルを無効にするということは考えにくいですね。
ただし、それ以外の方法を選択した場合はどうなるのかは怪しくなります。
すでにANAとJALの合併話なんか報道レベルではでていますしね。
この場合、直接の競合がいなくなるわけでマイルの扱いがどうなるかは読めません。
また、それ以外の中小の航空会社は他で代替えが可能ということで切り捨てされる可能性もあります。
そうなるとマイル無効ということにもありえるでしょう。
マイルの法律上の扱いはどうなっているのか?
それではマイルの法律上の扱いはどうなっているのでしょう?
基本的にマイルはポイントと同じ扱いになると考えられます。
電子マネーやスマホ決済は資金決済法で守られている
EdyやWAONといった電子マネーやPayPayなどのスマホ決済は資金決済法という法律によって守られています。
資金決済法では利用者がチャージしたお金を保全する措置として、利用者全員の未使用残高が1000万円を超えると残高の2分の1以上の額を保証金として供託することが資金決済法で義務付けられています。
つまり、半分は保全されているのです。
ですからもし、その発行会社が倒産することになったとしても未使用残高の半分は保護されていると考えることができます。
逆に言えばそれ以外の部分は必ず保障されるわけではないということなのです。
ちなみに仮想通貨やプリペイドカードは資金決済法、クレジットカードは割賦販売法、デビットカードやキャッシュカードは銀行法の対象でそれぞれルールが定められています。
詳しくはこちらの記事を御覧ください。
ポイントやマイルは資金決済法等の対象外
しかし、ポイントやマイルは資金決済法などの法律の範疇ではありません。
ですからほとんど法律上の後ろ盾はないと思っていただければよいでしょう。
そのため、発行会社にもしものことがあればそのポイント自体が利用できる保障はどこにもないのです。
少し前も、いきなりステーキの不調が報じられると同社の肉マイレージカードにチャージしたお金を使い切ろうとするお客が殺到するという話がでていましたね。
一応、経済産業省が「企業ポイントに関する消費者保護のあり方(ガイドライン)」という指針を出しています。
しかし、内容を見るとほとんどが努力義務となっており、強制力がないんですよ。
ANAとJALの現況
次に、ANAとJALの現況を考えて見ましょう。
直近の決算(2020年4月1日〜6月30日)を見ると新型コロナの影響でかなり業績が悪化してしまっていることがわかります。
2021年3月期第1四半期:売上高(連結)
売上高は以下のとおりです。
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ANA | JAL | |
2021年3月期第1四半期 | 121,608百万円 | 76,391百万円 |
2020年3月期第1四半期 | 500,508百万円 | 348,808百万円 |
増減 | △378,900百万円 | △272,417百万円 |
出所:ANAホールディングス株式会社「2021年3月期第1四半期報告書」、日本航空株式会社「2021年3月期第1四半期報告書」より
どちらもマイナス幅がやばいですね。
新型コロナの影響をもろに受けてしまっている業態ですから仕方ない部分も大きいのでしょうが・・・
今後はGo Toトラベルでどれくらい回復しているのかというところも注目ですね。(今回の結果はGo To実施前)
2021年3月期第1四半期:利益(連結)
次は親会社の所有者に帰属する四半期利益です。
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ANA | JAL | |
2021年3月期第1四半期 | △156,544百万円 | △131,010百万円 |
2020年3月期第1四半期 | 17,038百万円 | 19,961百万円 |
増減 | △173,582百万円 | △150,971百万円 |
出所:ANAホールディングス株式会社「2021年3月期第1四半期報告書」、日本航空株式会社「2021年3月期第1四半期報告書」より
利益も当然ながら大きくマイナスとなっています。
前述のように航空会社は固定費負担が大きく、売上の大きな落ち込みは死活問題になってしまう難しい業態なんですよ・・・
2021年3月期第1四半期:営業活動によるキャッシュフロー(JAL)
次に倒産に直結する資金面を見ていきましょう。
ちなみに2021年3月期第1四半期の四半期決算でJALはキャッシュフロー計算書を公開していますが、ANAは公開していません。
そのため、ここではJALのキャッシュフロー計算書について詳しく見ていきましょう。おそらくANAも同じような結果になっていると思われます。
まずは本業でのお金の動きを示す営業活動によるキャッシュフローです。
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2021年3月期第1四半期 | △130,211百万円 |
2020年3月期第1四半期 | 56,648百万円 |
増減 | △188,859百万円 |
出所:日本航空株式会社「2021年3月期第1四半期報告書」より
営業活動によるキャッシュフローが大きくマイナスに転じています。
つまり、本業でうまくお金が回っていない状況となってしまっているということです。
売上が大幅に下がって固定費負担が重い業態ですから当然の結果かもしれません。
2021年3月期第1四半期:投資活動によるキャッシュフロー(JAL)
投資活動によるキャッシュフローです。
将来への投資などにどれだけお金を回しているのかを示します。
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2021年3月期第1四半期 | △25,122百万円 |
2020年3月期第1四半期 | △48,491百万円 |
増減 | 24,369百万円 |
出所:日本航空株式会社「2021年3月期第1四半期報告書」より
投資活動のキャッシュフローのマイナス幅は減っています。
業績が悪くなったことで将来への投資も当然減らさざる得ない状況ですからね。
2021年3月期第1四半期:財務活動によるキャッシュフロー(JAL)
次はは財務活動によるキャッシュフローです。
財務面(借入や投資)でお金の出入りはどうだったかを示します。
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2021年3月期第1四半期 | 220,455百万円 |
2020年3月期第1四半期 | △37,121百万円 |
増減 | 257,576百万円 |
出所:日本航空株式会社「2021年3月期第1四半期報告書」より
財務活動によるキャッシュフローはプラスに転じています。
これは借入金でお金を調達してきたことが大きいですね。
つまり、JALは本業で足りなくなった分を借り入れでなんとかまかなってお金を回しているのが現状です。
2021年3月期第1四半期:現金及び現金同等物の期末残高
次は最終的に残った期末の現金残高です。
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2021年3月期第1四半期 | 394,315百万円 |
2020年3月期第1四半期 | 491,702百万円 |
増減 | △97,387百万円 |
出所:日本航空株式会社「2021年3月期第1四半期報告書」より
1年で現金等の残高が97,387百万円が減っています。
大幅に借り入れを増やしているのにも関わらずです。
現状はお金を借りられていますので回っていますが、この経営状況が続いて借り入れが止まってしまうと営業CFのマイナス分だけでも1年程度でお金が尽きてしまう計算です。
かなり資金繰りが厳しいのは確かでしょう。
ちなみにANAの6月末時点の現金及び預金は516,916百万円となっています。
まとめ
今回は「ANAやJALが倒産したら貯めたマイルはどうなるのか?」と題してANAやJALにもしもの事があった時のマイルの扱いについて見てきました。
結論としては
ということです。
ただし、ANAやJALを再建せず合併させるとかどちらかを切り捨てるなんて選択をした場合にはマイルがどうなるのかは怪しいです。
また、中小航空会社の場合には再建とならない可能性もありますのでその際もちょっと不安がありますね。
リスクを考えるとある程度のところで適度にマイルは消費していくのがよいのかもしれませんね。
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