少し前まで高級なステーキが安く美味しく食べられるということでどの店舗も大行列だった「いきなり!ステーキ」が苦境となっているようです。
2019 年 12 月期の業績予想の大幅な下方修正と配当予想を無配当に変更。合わせて出店計画の見直しや、既存店舗の閉鎖も発表。
また、さらに店頭には下記の社長からの直筆ポスターが貼られて話題となっています。
社長からのお願いでございます
従業員、皆元気良く笑顔でお迎えいたします。いきなりステーキは日本初の格安高級牛肉の厚切りステーキを気軽に召しあがれる食文化を発明、大繁盛させて頂きました。今では店舗の急拡大により、いつでも、どこでもいきなりステーキを食べることができるようになりました。
しかし、お客様のご来店が減少しております。このままではお近くの店を閉めることになります。
従業員一同は明るく元気に頑張っております。お店も皆様のご希望にお応えしてほぼ全店を着席できるようにしました。メニューも定量化150g、200gからでも注文できオーダーカットも選べます創業者一瀬邦夫からのお願いです
ぜひ皆様のご来店を心よりお待ちしております
つまり、お客さん来てくれないとお店閉じなきゃいけなくなるよって話です。
内容も情に訴える感じですし、かなり追いつめられていますよね・・・・
今回はそんないきなり!ステーキ(ペッパーフードサービス)の決算データなどを分析し、本当にやばいのか?潰れてしまうのかについて考えてみたいと思います。
先に書いておきますと私も話題になっていたときに2度ほどいきなり!ステーキに行きましたが、あまり好きではありませんでした。客席がやけに狭くて(元々は立ち食い)落ち着かないですし、サラダが絶望的ですし・・・チェーン店でステーキをたべるならサラダバーが充実している「ブロンコビリー」か「あさくま」にいきますね・・・そのためちょっとバイアスが掛かっているかもしれませんがご了解ください。
ペッパーフードサービスの2019 年 12 月期(第三四半期)の経営成績
まずは前提となる今回発表された経営成績の内容を1年前の同期間で比較してみましょう。
ちなみに「いきなり!ステーキ」はペッパーフードサービスの一部門となります。他にペッパーランチというステーキ店も運営しているんですよ。(むしろそちらが先)
なお、経営成績の見方についてはこちらの記事も合わせて御覧ください。
2019年12月期3四半期:売上高(連結)
売上高は以下のとおりです。
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2019年12月期第3四半期 | 51,857百万円 |
2018年12月期第3四半期 | 45,023百万円 |
増減 | 6,834百万円 |
出所:株式会社ペッパーフードサービス「2019年12月期第3四半期決算短信」より
意外かもしれないですが、なんと昨年同時期よりも大きくプラスとなっているのです。
セグメントごとの売上内訳
セグメントごとの売上の内訳は以下のとおりです。
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いきなり!ステーキ事業 | ペッパーランチ事業 | レストラン事業 | 商品販売事業 | |
2019年12月期第3四半期 | 44,222百万円 | 6,473百万円 | 1,006百万円 | 155百万円 |
2018年12月期第3四半期 | 38,113百万円 | 5,628百万円 | 1,144百万円 | 136百万円 |
増減 | 6,109百万円 | 845百万円 | △138百万円 | 19百万円 |
出所:株式会社ペッパーフードサービス「2019年12月期第3四半期決算短信」より
売上の内訳をみても「いきなり!ステーキ事業」はかなり順調に売上を伸ばしているのがわかりますね。前年同月比16%増ですから悪くないのです。
客数と客単価の推移
かなり気になるのが客数と客単価の推移です。特にいきなりステーキの落ち込みが異様なのです。
今年になってからの客数と客単価の推移は以下のとおりです。
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1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | |
全店売上(%) | 163.3 | 147.6 | 134.3 | 126.2 | 125.4 | 122.5 | 108.1 | 95.4 | 93.3 | 80.1 | 87.9 |
既存店売上(%) | 80.5 | 75.1 | 73.3 | 75.2 | 73.4 | 76.2 | 70.4 | 64.8 | 66.4 | 58.6 | 67.2 |
既存店客数(%) | 81.4 | 82.8 | 75.1 | 73.5 | 73.5 | 77.7 | 72.8 | 64.1 | 72 | 59.5 | 72.2 |
既存店客単価(%) | 98.8 | 90.8 | 97.6 | 97.8 | 99.8 | 98.1 | 96.8 | 101.1 | 92.1 | 98.5 | 93 |
出所:株式会社ペッパーフードサービス「2019年12月期11月度実績のお知らせ」より
前半から既存店の売上高はかなり減っていました。
しかし、店舗が増えていることでそれが目立たないくらい全店の売上はふえていました。
その後、既存店の売上はどんどん減っています。
特に後半の客数の落ち込みはかなり深刻になっていますね。
特に消費税増税後の10月などは前年比の客数59.5%ですからね・・・
社長があのようなメッセージを出すのはわかります。
他の外食チェーンも消費税増税後は苦労しているところもありますが、いきなりステーキほどの落ち込みをしている外食チェーンはありません。。。
同じ外食チェーンでもケンタッキーやモスバーガー、吉野家などは 10月も大幅プラスで推移していますし、消費税増税のせいとは言い切れません。
いきなりステーキの場合には店舗を出店しすぎて近隣でカニバニ(共食い)になってしまった部分や、急激な店舗拡大に間に合わず人が育たないため、接客がおろそかになり客離れを招いてしまった部分などがあると思われます。
また、前年はどんどん出店しましたので近所にできたため一度行ってみたいという需要があったた客数が膨れ上がっただけという可能性もあります。
2019年12月期3四半期:営業利益(連結)
次に営業利益です。
ここからがちょっと問題となってきます。
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2019年12月期第3四半期 | 44百万円 |
2018年12月期第3四半期 | 2,394百万円 |
増減 | △2,350百万円 |
出所:株式会社ペッパーフードサービス「2019年12月期第3四半期決算短信」より
かろうじてプラスとなっていますが、前年と比較して大幅に下げていますね。
セグメントごとの営業内訳
セグメントごとの営業利益の内訳は以下のとおりです。
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いきなり!ステーキ事業 | ペッパーランチ事業 | レストラン事業 | 商品販売事業 | 調整額 | |
2019年12月期第3四半期 | 1,758百万円 | 937百万円 | 37百万円 | 20百万円 | △2,710百万円 |
2018年12月期第3四半期 | 3,657百万円 | 1,002百万円 | 82百万円 | 14百万円 | △2,362百万円 |
増減 | △1,899百万円 | △63百万円 | △45百万円 | 6百万円 | △348百万円 |
出所:株式会社ペッパーフードサービス「2019年12月期第3四半期決算短信」より
セグメントごとに見ると全般的に下げているのがわかります。特に今回話題となっている「いきなり!ステーキ事業」のマイナス幅が大きな比率を占めています。前年同期比51.9%減です。
理由としてペッパーフードサービスが挙げているのが、「一部地域において、いきなり!ステーキの店舗同士の競合などによる既存店不振の影響」とのこと。
新規出店が99店舗ありますから、売上は増えましたが、既存店が振るわず利益は大きく落としたということになります。
2019年12月期3四半期:親会社株主に帰属する四半期純利益(連結)
次に四半期純利益です。
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2019年12月期第3四半期 | △1,922百万円 |
2018年12月期第3四半期 | 1,156百万円 |
増減 | △3,078百万円 |
出所:株式会社ペッパーフードサービス「2019年12月期第3四半期決算短信」より
大きなマイナスを計上しています。
これはいきなり「いきなり!ステーキ」の店舗撤退で特別損失を計上したことが大きく響いていますね。
業績予想の修正及び配当予想の修正(無配)並びに特別損失の計上
上記のように、売上は伸びているのですが、利益が大きく減って(四半期決算はマイナス)しまっています。
そこで業績予想の修正及び配当予想の修正が発表されました。
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売上高 | 営業利益 | 親会社株主に帰属する当期純利益 | |
前回発表予想 | 76,423百万円 | 2,061百万円 | 2,012百万円 |
今回修正予想 | 66,536百万円 | △731百万円 | △731百万円 |
増減額 | △9,887百万円 | △2,792百万円 | △2,743百万円 |
出所:株式会社ペッパーフードサービス「2019年12月期第3四半期決算短信」より
これは前述のように201店舗を予定していた出店計画を115店舗まで見直したこと、既存店44点店舗を退店させることなどによる予想との相違になります。
また、それにともない1株15円を予定予定していた配当が0円と予想が修正されました。
かなり厳しい状況にあるのがわかります。
次は財政状態を見ていきましょう。
ペッパーフードサービスの2019 年 12 月期(第三四半期)の財政状態
なお、財政状態の見方についてはこちらの記事も合わせて御覧ください。
2019年9月30日:資産
まずは資産です。
2019年9月30日 | 26,031百万円 |
2018年9月30日 | 25,993百万円 |
増減 | 38百万円 |
出所:株式会社ペッパーフードサービス「2019年12月期第3四半期決算短信」より
資産は前年よりも少し増えていますね。
ちょっと気になるのが流動資産の減りです。
流動比率
2019年9月30日 | 61.1% |
2018年9月30日 | 77.6% |
出所:株式会社ペッパーフードサービス「2019年12月期第3四半期決算短信」より
流動比率が16.5%も悪化しているのです。
流動比率とは流動資産(すぐお金に変えられる資産)と流動負債(近々支払う負債)の比率のことでこれが高ければ高いほど直近の支払いに問題がないことを表します。つまり、資金繰り上問題ないことを示します。
一般的な流動比率の安全性の目安は100%でペッパーフードサービスはそれを割ってしまっています。
ただし、ペッパーフードサービスのように現金商売ならばある程度低くても資金繰り上ですぐに問題になることは少ないのですが・・・ちょっと気になるところです。
2019年9月30日:負債
次は負債です。
2019年9月30日 | 24,638百万円 |
2018年9月30日 | 22,247百万円 |
増減 | 2,391百万円 |
出所:株式会社ペッパーフードサービス「2019年12月期第3四半期決算短信」より
負債は増えていますね。
特に長期借入金が2,931百万円から5,828百万円と大幅に増えているのが気になるところです。
2019 年 12 月期(第 2四半期)のキャッシュフロー
流動比率が悪化していますのでちょっと気になるのが資金繰りです。
倒産するかどうかで一番大事なのはこちらです。
極論から言えば万年大赤字でもお金さえ回れば倒産しません。
このあたりは私が元々ボロ株の中の人だったこともありますのでよく分かります(笑)
なお、キャッシュフローの見方についてはこちらの記事も合わせて御覧ください。
2019年12月期第2四半期:営業活動によるキャッシュフロー
まずは本業でうまくお金が回っているのかを示す営業活動によるキャッシュフローです。
2019年12月期第2四半期 | 3,669,190千円 |
2018年12月期第2四半期 | 2,153,145千円 |
増減 | 1,516,045千円 |
出所:株式会社ペッパーフードサービス「2019年12月期第2四半期決算短信」より
営業活動によるキャッシュフローは前期よりもかなり増えていますね。ただし、これは業績が良かった2019年12月期第2四半期ですから参考程度に御覧ください。
2019年12月期第2四半期:投資活動によるキャッシュフロー
次は投資活動によるキャッシュフローです。
2019年12月期第2四半期 | △3,707,837千円 |
2018年12月期第2四半期 | △955,063千円 |
増減 | △2,752,774千円 |
出所:株式会社ペッパーフードサービス「2019年12月期第2四半期決算短信」より
かなり積極的に投資をしているのがわかりますね。
本業で得たキャッシュフローをそのまま将来への投資に回している計算となります。
2019年12月期第2四半期:財務活動によるキャッシュフロー
次は財務活動によるキャッシュフローです。
2019年12月期第2四半期 | 1,672,892千円 |
2018年12月期第2四半期 | 446,261千円 |
増減 | 1,226,631千円 |
出所:株式会社ペッパーフードサービス「2019年12月期第2四半期決算短信」より
借り入れを積極的にしているのもわかります。
ちょっと気になるのが営業活動によるキャッシュフローから投資活動によるキャッシュフローを引いたものをフリーキャッシュフローといいますが、株式会社ペッパーフードサービスはこれがマイナスとなっています。
つまり、一般的に見ると投資に回す金額が身の丈に合っていないのが気になります。
成長を急ぎすぎていない??ってのがこの時点のキャッシュフロー計算書でもわかるのです。
今回のように既存店に急ブレーキが掛かってしまうとこのような投資をしている企業は一気にピンチとなってしまう可能性があります。
まとめ
今回は「社長が切実なメッセージを発表した「いきなり!ステーキ」は潰れるのか?。決算データなどを分析してみた」と題していきなりステーキの決算書についてみてきました。
結論から言えばすぐに潰れることはないでしょうが
ペッパーフードサービスとしてはいきなりステーキの客単価はそれほど減っていませんのでお客さんさえ戻ってきてくれれば・・・ってところがあるのでしょう。
しかし、どちらかというとニッチな業態だと思われるいきなりステーキを大量出店をしてしまっていますのでそれも望みが薄い気がします。既存店の客数の落ち込みを見ていると需要を超えて出店してしまっているのは否めないのです。
そのため、今後は大きな店舗再編が余儀なくされる可能性があります。
そもそものビジネスモデルや経営戦略を含めて検討する段階にきているのではないでしょうか?
考えられる方向性としては2つのパターンかな。
○客層を広げて客数を増やして店舗数を維持する
最後まで読んでいただきありがとうございました。
なお、決算書や四季報はどのように読めばよいのかわからない方はこちらの記事をどうぞ。
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