育児休業期間中は社会保険免除のルールが厳格化へ。横行していた裏技が封じられる

育児休業期間中は社会保険免除のルールには個人的にちょっとこれどうなんだ?って感じていた裏技がありました。

簡単に言えば1日だけ育休を取って賞与分などの社会保険を免除してしまうってものです。

制度の隙間をついたもので不正ではないのですが、かなり横行していたようで、これが原因で育児休業期間中は社会保険免除のルールが厳格化されそうです。

厚生労働省は26日、育児休業中に社会保険料の支払いが免除される制度について、適用条件を厳しくする方針を決めた。これまでは月末だけの育休取得でボーナスから天引きする保険料が免除されていた。これを連続1カ月超の育休取得者に絞り込む。

出典:日経新聞 育休中の社会保険料、免除要件厳しく 厚労省方針 より

ちょっとわかりにくいニュースですの今回はこの件を解説していきます。

育児休業期間中の社会保険料が免除となるルール

まずは今回の話を理解するために育児休業期間中の社会保険料が免除となるルールから解説しておきましょう。

育児・介護休業法による満3歳未満の子を養育するための育児休業等(育児休業及び育児休業に準じる休業)期間について健康保険・厚生年金保険の保険料は、事業主の申出により、被保険者分及び事業主分とも徴収しません

出所:日本年金機構「育児休業保険料免除制度」より

つまり、育児休業中は社会保険(厚生年金、健康保険)が免除されるのです。

本人だけでなく会社分も免除されますから今回の話は会社主導でおこなっているところも多いです。

例えば東京で協会けんぽ加入の会社に勤めている39歳以下の方の給料(報酬月額)が30万円だったとしましょう。(平成31年4月〜の保険料額表による)

健康保険本人負担:14,850円
厚生年金本人負担:27,450円
合計:42,300円

上記の金額を毎月払っています。

それが免除となるわけですから本人も会社もかなり大きな話ですよね。

社会保険料の免除は月単位

今回の話のポイントは社会保険料の免除は月単位となっており、日割りではないということです。

保険料の徴収が免除される期間は、育児休業等開始月から終了予定日の翌日の月の前月(育児休業終了日が月の末日の場合は育児休業終了月)までです。

出所:日本年金機構「育児休業保険料免除制度」より

育児休業等開始月から終了予定日の翌日の月の前月までが社会保険料免除となります。

ちょっとややこしい書き方ですね(笑)

具体的な日にちを用いてみていきましょう。

たとえば1月20日から1月27日まで育児休業をとった場合には育児休業等開始月(1月)から終了予定日(1月27日)の翌日(1 月28日)の月の前月(12月)までが免除となります。

ん??って思った方も多いかも知れません。実は育児休業を開始した日と職場復帰した日の翌日が同じ月ならば社会保険料免除はないのです。

社会保険はだいたいこのパターンが多いのです。

ポイントは月末なんですよ。

例えば1月27日から1月31日まで育児休業とった場合を考えて見ましょう。

この場合には育児休業等開始月(1月)から終了予定日(1月31日)の翌日(2 月1日)の月の前月(1月)までが免除となります。

1月分の社会保険料が免除となります。

つまり、月末に育児休業しているかどうかがポイントになるのです。

極端な話、1月1日から1月30日まで育児休業をとっても社会保険料は免除になりませんが、1月31日だけ育児休業をとったとしてもルール上、社会保険料免除となるのです。

育児休業はとるタイミングによって大きな差がでてしまうのです。

ボーナスも社会保険料免除の対象

さらに大きなポイントがあります。

育児休業で社会保険料が免除になるのは給料分だけでなくボーナス(賞与)分も対象なのです。

例えば12月にボーナスが支給される会社で12月末に育児休業をとっていればその冬のボーナス部分も免除対象です。

これも考え方は同じです。

12月1日から15日に育児休業をとっても社会保険料は免除されませんが、12月末に育児休業を取っていれば賞与分も含めて社会保険料免除の対象となります。

ボーナスは金額が大きいですから大きな差となってしまいますね。

例えば東京で協会けんぽ加入の会社に勤めている39歳以下の方のボーナスが70万円だったとしましょう。(平成31年4月〜の保険料額表による)

健康保険本人負担:35,140円
厚生年金本人負担:56,730円
合計:91,870円
以上が社会保険料です。これが免除となるのです。
さらに前述の給料分がありますので合わせれば134,170円もの違いが生まれてしまうのです。
知ってるか知ってないかの差ですよね・・・
詳しくはこちらの記事をご覧ください。

賞与月の月末に1日だけ育児休業とっても免除

つまり、賞与日の月末に1日だけ育児休業の手続きを取っていればその月の給料分もボーナス分も社会保険の免除対象になります。

かなり大きな金額の社会保険料が免除となりますが、これは本来の趣旨とはずれています。

別に制度の穴を突いているだけで不正ではないのですがなんだかな・・・って感じですね。

厚生労働省としては、このあたりを勘案して公平性の観点から見直す必要があるということで今回の話がでてきたのです。

育児休業期間中は社会保険免除のルール変更内容

それでは今回出ている育児休業期間中は社会保険免除のルール変更内容を見ておきましょう。
まだ、正式に決まったものではありませんが、報道ベースですが以下のような内容となっています。
2つの変更が加えられるようです。

賞与の社会保険料免除ルール変更

まずは賞与の社会保険料免除のルールが以下のようになるようです。

賞与にかかる保険料の支払いを免除する対象を、連続して1か月、育児休業を取得した場合に限るよう、厳格化する方針

出典:NHK 育休中の社会保険料支払い 公平性確保で対象厳格化へ 厚労省へ より

つまり、今まで月末1日だけ育児休業とっても賞与にかかる社会保険料が免除されていましたが、対象となるのが連続して1ヶ月育児休業を取得した場合とかなり厳格化されます。

月末に育児休業をとっていなくても対象に

また、社会保険料免除の判定のタイミングも変わるようです。

これまでは、月末に取得していなければ、社会保険料の支払いが免除されなかったことから、時期にかかわらず、1か月のうち2週間以上取得した場合に免除するよう見直す

出典:NHK 育休中の社会保険料支払い 公平性確保で対象厳格化へ 厚労省へ より

月末に育児休業を取っていたかどうかではなくその月に2週間以上取っていた場合が対象となるようです。

日経新聞の報道だと月末時点の育児休業状況という従来の基準に加えとなっていますので、月末に育児休業をとっているもしくはその月に2週間以上育児休業を取っているという形になるようです。

毎月の給与の保険料免除については、月末時点の育休取得状況という従来の基準に加え、同じ月に2週間以上の育休を取得したかどうかも新たに判断基準とする

出典:日経新聞 育休中の社会保険料、免除要件厳しく 厚労省方針 より<

まだ報道ベースですから確定ではないでしょうが。

変更のスケジュール

なお、今回の変更は法改正が必要となりますのですぐに変わるわけではありません。

日経新聞の報道だと2022年度からの見直しとなりますのでまだ期間がありますね。

法改正のうえ2022年度にも見直す。

出典:日経新聞 育休中の社会保険料、免除要件厳しく 厚労省方針 より

つまり、今の時点ではまだ利用が可能ということです。


まとめ

今回は「育児休業期間中は社会保険免除のルールが厳格化へ。横行していた裏技が封じられる」と題して育児休業期間中は社会保険免除のルール変更についてみてきました。

月末の1日だけで判定するというルールが変わるのは実態に即していますので良いことですね。

現在は育児休業以外にも会社を退職する際にも退職日が月末なのか、その前日なのかによって社会保険料が1ヶ月分変わってきますが、このあたりも合わせて見直ししてほしいところはありますけどね。

ただし、その分制度が複雑化しそうで実務担当者は大変そうですが(笑)

最後まで読んでいただきありがとうございました。

「シェア」、「いいね」、「フォロー」してくれるとうれしいです

育児休業期間中は社会保険免除のルールが厳格化へ。横行していた裏技が封じられる
最新情報をチェックしよう!