月末退職だと2ヶ月分の社会保険料が天引き。転職を考えるなら「退職日」と「社会保険」の関係を押さえておこう。

最近、慢性的な人手不足から転職市場が活気づいています。

私もだいぶ前に転職活動していたときに登録した複数の転職エージェントから毎日のように求人が送られてきます。会社勤めをする気はないと断っているのに送ってくるのはそれだけ応募がなくて困っているんでしょうね。(最近は迷惑メール行きにしてます)

また、おそらく転職エージェント経由で情報が出ていると思われるヘッドハンティングの会社から電話が直接掛かってくることもあります。(個人情報保護法とは・・・)

このように転職活動していない人にすら仕事のお誘いがあるくらい市場が活気づいているとも言えます。

そんな状況ですから転職を考えている方も多いと思いますが、ちょっと待ってください。

「退職日」と「社会保険」の関係は退職を決める前に知っておいていただきたいのです。

ちなみにここで言う社会保険とは給料から控除されている厚生年金や健康保険のことを指します。

今回はそんな退職日と社会保険の関係をみていきましょう。

社会保険における退職日と実際の退職日の違いを理解しよう

まず押さえておきたいのが社会保険における退職日と実際の退職日が違うという点です。このあたりは社会保険の手続き等をしたことないかただとあまり馴染みがない話だと思います。

詳しく見ていきましょう。

社会保険の退職日(資格喪失日)の扱いとは

社会保険の退職日にあたるのは社会保険の資格喪失日です。これは退職日と同じではありません。

社会保険の資格喪失日は退職日の翌日とされているのです。

例えば9月30日に退職すれば社会保険の資格喪失日は10月1日となります。

退職月の社会保険の取扱い

社会保険は原則として、翌月に支払う給料から天引きする仕組みとなっています。

また、社会保険は原則として、資格喪失日が属する月の前月分まで分給料から天引きされます。

具体的に見ていきましょう。

月末に退職すると2ヶ月分の社会保険料が天引き

例えば9月30日に退職した場合を例に見ていきましょう。

この場合、社会保険の資格喪失日は10月1日となります。

そして社会保険は資格喪失日が属する月の前月分まで分給料から天引きされますので、資格喪失日の属する月(10月)の前月分まで天引きされることになります。

つまり、月末に退職をすると8月分(9月の給料で天引き予定)と9月分(10月の給料で天引き予定)の2ヶ月分が1度に天引きされるのです。

最後の給料の手取りはかなり少なくなってしまうんですね。

最後の給料からは住民税も天引き

ちなみに、最後の給料の手取りは退職のタイミングによってはかなり少なくなることを覚悟しておいてください。前述の社会保険料以外にも住民税が下記のような扱いとなるのです。

1月1日~4月30日に退職する場合には、退職月から5月までの住民税を一括して天引きされます。最後の給料で足りなければ退職金から控除されることになりますね。これは従業員の意思は関係ありません。

5月1日~5月31日に退職する場合には、通常どおり、従業員の最後の給与から1ヶ月分の住民税を天引きされます。

6月1日~12月31日に退職する場合には、以下の3つの方法どれかを選択することになります。

退職月から翌年5月までの未徴収の住民税をまとめて、最後の給与から天引きします。給料で足りなければ退職金からも天引きも可能です。(現在の会社に申し出が必要)
転職先が決まればそちらの会社での給与から住民税を天引きしてもらうための手続きも可能です。(転職先の会社に申し出が必要)
一般的にはこちらとなります。退職月後、翌年5月までの未徴収納税額は本人請求とするやり方です。市役所から納付書が届きますのでそちらで支払うことになります。

月末前に退職した場合は1ヶ月分の社会保険料が天引き

例えば前述の1日前、9月29日に退職した場合はどうなるのでしょうか?

この場合、社会保険の資格喪失日は9月30日となります。

そして社会保険は資格喪失日が属する月の前月分まで分給料から天引きされますので、資格喪失日の属する月(9月)の前月分まで天引きされることになります。

つまり、月末に退職をすると8月分(9月の給料で天引き予定)に1ヶ月分天引きされるのです。こちらの方がだいぶ手取り金額は増えますね。

1ヶ月分の社会保険料の負担が違ってきますので退職日はよく考えないといけないのです。

月末退職は損なのか?

それでは月末退職は損なのでしょうか?これはその人その人の状況によってどちらとも言えません。総合的に考える必要があるのです。

詳しく見ていきましょう。

年金の扱い

まずは年金の扱いです。

退職して厚生年金の対象者(第2号被保険者)でなくなると国民年金に加入する義務が生じます。月末に退職をすると9月末退職ならば9月分までの厚生年金を支払っていることになりますので国民年金は10月分から負担が必要となります。

一方、月末の前に退職したらどうでしょう。この場合には8月分までの厚生年金を支払っていませんので国民年金は9月から負担が必要となります。

現在の国民年金は月16,340円です。負担額だけを考えると報酬月額が17万5000円を超えていると国民年金の方が安くなります。

ただし、配偶者の方を第三号被保険者としている場合は少し違います。第三号被保険者は優遇されており、年金を負担を免除されているのです。それが退職して国民年金の対象(第一号被保険者)となると配偶者の方も国民年金の負担が必要となりますので、夫婦で月16,340円×2の年金の支払いが必要となります。この場合、報酬月額35万円までは厚生年金の方が安くなりますね。

ちなみに社会保険の計算の元となる報酬月額は4月〜6月の平均額で決まります。これには残業手当や通勤手当なんかも含んで計算することになりますのでお気をつけください。

社会保険料の計算についてはこちらの記事を御覧ください。

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将来もらえる年金も変わる

もう一つ考えなくてはならないのが将来もらえる年金への影響です。前述のように支払う金額は月末退職の方が増えるケースが多いでしょう。しかし、長期的な観点からみるとそうとばかりは言えません。

月末退職の場合には厚生年金に1ヶ月だけ余分に入ることになります。1ヶ月分だけですからそこまで大きな差にはならないですが、将来もらえる年金が増えるのです。

影響があるのが報酬比例金額で、計算式は以下のとおりです。

平均標準報酬月額×7.125/1000×平成15年3月までの被保険者期間の月数+平均標準月額×5.481/1000×平成15年4月以降の被保険者期間の月数

つまり、平成15年4月以降の被保険者期間の月数が1増えるってことですね。計算すると平均標準月額30万の方で1600円ちょっととたいしたことはありませんが、死ぬまでもらえる金額が増えることを考えるとどちらとも言えない感じにはなります。

今余分に払うか、将来余分にもらうかの違いといえばそうなりますね。

すぐ転職する場合には注意

すぐ転職する場合には月末前退職だと1月だけ国民年金の対象となる期間が生じることになります。払いわすれないようにお気をつけくださいね。(納付書が来るので大丈夫だと思いますが・・・)

健康保険の扱い

健康保険も基本的に年金と同様です。特に国民健康保険は高いですからちょっと注意が必要です。金額は市町村によりことなりますので一度市町村のWEBページなどで確認してみてください。

また、特に扶養家族が多い方などは国民健康社会保険に切り替わると負担が大きく増えてしまう可能性が高いです。このあたりも加味して考えましょう。

国民健康保険の詳しい点については下記の記事を御覧ください。

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このあたりを考えると扶養家族が多い方は会社が半分負担してくれる月末退職のほうがお得になるケースが多いでしょうね。

健康保険や国民年金の免除制度の利用も考えよう

会社の辞め方(倒産や解雇など)やその他の条件によっては国民健康保険の免除や軽減を受けられることもあります。健康保険は年金と違って免除を受けてもデメリットは基本的にありませんので使えるのなら積極的に利用したいところです。

このあたりの細かい対応は市町村によってマチマチですので窓口で一度相談されるとよいと思います。

国民年金にも同様の免除制度があります。こちらは将来もらえる年金に多少影響がありますが、あとから補填することも可能です。

これら免除制度を使える場合には月前退職の方が有利となるケースが多そうです。

配偶者の扶養に入る

もう一つ方法としては配偶者の扶養に入る方法があります。こちらの方法でも社会保険の負担が大きく減らすことができます。

詳しい扶養に入れる条件等は下記の記事を御覧ください。

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配偶者の扶養に入れる場合には月前退職の方が有利となるケースが多そうです。

まとめ

今回は「月末退職だと2ヶ月分の社会保険料が天引き。退職を考えるなら「退職日」と「社会保険」の関係を押さえておこう。」と題して退職日と社会保険の関係をみてきました。

まとめるとこんな感じです。

基本的には短期に見れば月末前に退職した方が得となるケースもありますが、長期にみたら月末退職にして会社負担を半分受けた方が得となるケースの方が多そうです。

ただし、配偶者の扶養に入れたり、各種免除が受けられるケースの場合は月前退職とした方がお得になりそうですね。

このあたりはケースバイケースですからよく検討してみてくださいね。

会社は月末前退職してくれたほうが1ヶ月分社会保険の負担が減りますのでそちらをおすすめするでしょうが・・・

また、退職を決める際には以下の知識ももっておきたいですね。
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