1年の株式投資で得た利益や損失は「損出し」や「益出し」というテクニックを使うことで少しでも節税できる可能性があります。
「損出し」は利用している方が多いですが、「益出し」も人によっては有効なんですよ。
2023年から始まる新しいNISAもあるのでその資金調達したい方にもおすすめですね。
今回は「損出し」、「益出し」について、やり方、注意点などをわかりやすく解説していきます。
株式投資の利益に掛かる税金は20.315%
株式投資で得られる利益には売却益、配当金がありますがこれらについては20.315%(所得税15%+復興特別税0.315%+住民税5%)の税金が掛かります。
かなり大きいですよね。。。
特定口座、源泉徴収ありの場合は予め引かれて入金されますのであまり意識してない方も多いかもしれませんが・・・
損出しとは
まずは損出しからみていきましょう。
損出しとは年末に含み損のある銘柄し売却し精算。
そこで損失を出すことを指します。
すでに他の株式売買(配当金を含む)で利益が出ていれば源泉徴収されているはずです。
それ損失を出すことで払いすぎた税金が戻ってくるのです。
損切りと損出しの違い
これじゃあ損切じゃんと思われるかもしれません。
ちょっと違うのが損出しは主に長期投資銘柄で行われるもので売却したあとに同一銘柄を同一価格で買い戻すのです。
つまり、長期投資銘柄の保有はそのままに税金だけ減らすことができるのです。
損出しをできる条件
損出しはすべての方ができるわけではありません。
一定の条件をクリアしている場合しかできないのです。
具体的には以下の2つの条件となります。
- 株式投資で確定利益がでている。(配当金含む)
- 保有株に含み損銘柄がある。
逆に言えば上記の2つの条件を満たしているならば損出しをやらないのはもったいないのです。
損出しのメリット
損出しのメリットは持ち株を買えることなく節税することができるってことです。
株式投資の税金は前述の通り、20.315%ですからかなり大きな節税となるんですね。
長期で株を持つのはその企業に愛着がある。応援している場合や、配当金目的、長期的に成長すると信じているなど色々あると思います。
それを手放すとなるとなかなか決断ができないものです。
しかし、損だしならまた買い直すことができるため節税メリットだけを享受できます。
また、含み損の投資が整理することができますので気持ちの面でもスッキリします。(同じ銘柄は持っていますが所得価格が変わる)
損出しでどれくらい節税できるのか?
それでは実際に損出しするとどれくらい節税できるのでしょう?
具体例でみてみましょう。
例えば100万円の利益、損出しを50万を計上していたとします。
※スマートフォンの方はスクロールしてお読みください。
損出しする場合 | 損出ししない場合 | |
利益 | 100万円 | 100万円 |
税金(20.315%) | 203,150円 | 203,150円 |
損出しを50万 | -50万円 | – |
還付金 | 101,575円 | – |
トータルの税金 | 101,575円 | 203,150円 |
このケースの場合は203,150円掛かる税金が、 損出しをすることで101,575円に圧縮することができました。
差額は101,575円。
含み損が出ている持ち株を一旦精算して買い戻すだけでこれだけ節税できるのです。
かなり大きいですよね。
損出しのデメリット
夢みたいなテクニックに見える損出しですが当然デメリットもあります。
本質的には税金の先送り
まず、買い直しをしていますのでその銘柄が高騰して売却すれば税金がたくさん取られることになる点があります。
例えば1,000円で買った銘柄が800円に落ちていて、800円で損出しをしたとします。
その後、1,200円に高騰して売却したとしましょう。
元々は1,000円で買ったものですが、800円で買い戻しをした形となりますので、1,200円で売却した際には1,200円から800円の差である400円分の利益に対して税金が掛かります。
損だししなければ1,000円のものを1,200円で売っていますので200円分の利益に対して税金でした。
つまり、損出しは長い目で見れば節税というよりも税金の先送りというのが近いかもしれません。
長期保有の株主優待特典が・・・
もう一つ銘柄によってはデメリットが生じるケースがあります。
株主優待の長期保有特典がある場合です。
一旦売却することで株主番号が変わってしまい長期保有特典が受けられなくなる可能性があるのです。
可能性としているのは株主名簿の更新タイミングによって損出ししても長期保有特典が受けられることもあれば、そうでないケースもあるんですよ。
ですから絶対ではありませんが、損出しすると株主優待の長期保有特典が受けられなくなる可能性があるということは知っておきましょう。
詳しくはこちらの記事ご覧ください
損出しを実行する際のポイント
損出しは一旦含み損が出ている銘柄を売却して、買い戻すだけですからやり方は難しくありません。
しかし、ちょっとした注意点を知っていないと上手く機能しない可能性があります。
特定口座利用しているなら同一営業日に買い戻すな
多くの先人たちがミスが同一日に売りも買いもやってしまうことです。
特定口座を利用している人が同一の営業日で買い戻しをしてしまうと損出しの効果が半減してしまうんですよ。
詳しくみていきましょう。
例えば1,200円で買った株が800円に落ちたので損出しをするとしましょう。
通常であれば800円で売りますので400円分の損が計上されます。
しかし、同一日営業日に買い戻すと計算が変わってしまうのです。
1,200円で買った株と800円で買った株が平均化されて1,000円の株を売ったとされてしまうのです。
損失は200円ですよね。つまり、損出しの効果が半減してしまうのです。
これは特定口座の性質で先に売却しても同じ日に買った株があれば平均する形となってしまうために発生するのです。
ですから買い戻しは同日にするのは避けましょう。
おすすめはクロス取引
前述のように同日に売って、買ってをすると損出しの効果が半減してしまいます。
しかし、後日売買となると株価の変動するリスクもあります。
そこでおすすめは信用取引を使ったクロス取引です。
信用取引とは証券会社から借金して株を買ったり、株を借りて売ったりする取引方法です。
クロス取引はよく株主優待をもらうために利用している人が多いやつですね。
損出しのクロス取引は具体的には以下の方法で行います。
- 含み損のある銘柄を売却
- 同じ銘柄を信用買い
- 翌営業日以降に信用買いした銘柄を現引き
前述の特定口座を使っていると所得単価が平均されてしまうのは、現物と信用取り引きでは行われません。
そのため、この方法であれば同じ日に損出しが行えるのです。
また、寄り付き前の場が始まる前に現物の売りと信用の買いを成行で注文を出しておけ同価格で行なえますので価格変動をリスクを受けることもありません。
現引きとは信用買いした銘柄を代金を払って現物(株式)を引き取る方法です。
つまり、現物買いと同じ状況に戻すってことですね。
クロス取引を行えば所得価格を平均されず、価格変動リスクもなく損出しが行なえます。
なお、クロス取引は証券会社からお金を借りて取引していますので金利が多少掛かりますので早めに現引きしましょう。
ただし、あまりに株数が多い場合などは仮装売買といって相場を活況に見せていると判断されてしまうことがあります。場中の注文は避けるなどクロス取引をする際はお気をつけください。
損出しは最終営業日の2営業日前まで
なお、損出しはその年分の取引として扱われる必要があります。
そのためには最終受け渡し日までに売買を終える必要があります。
基本的に最終営業日(大納会)の2営業日前がその締切りとなります。
2020年であれば大納会は12月30日です。
ですから2日前の12月28日(月)が損出しの締め切りですね。
米国株など外国株でも扱いは同じ
なお、よく質問をいただきますが、米国株など外国株でも基本的に扱いは同じです。
ただし、米国株の信用取引は日本国内では一般的でないためあまり利用している人はいないでしょう。
ですからクロス取引による方法は取れません。
翌日に買い戻すしかないでしょう。
また、前述のように損出しは最終受け渡し日までに売買を終える必要があります。
米国株など外国株は最終受け渡し日のタイミングが異なりますのでご注意ください。
NISAやiDeCoは損出しに適さない
なお、NISAやつみたてNISA、iDeCoなどは口座内での売却益はそもそも課税対象ではありません。
そのため、損出しに適しません。
NISAやつみたてNISAの場合は一旦売却してしまえばそこで枠が終わってしまいますからお気をつけください。
益出しとは
損出しとは逆に益出しというのもあります。
益出しとは損出しの逆で年末に含み益のある銘柄し売却し精算。
そこで利益を出すことを指します。
特に2020年の場合は株価が大きく暴落してその後、高騰していますので益出しをやったほうが良いかたも多いでしょう。
新型コロナ渦で損切り。その後に買った株が上がっているようなケースですね。
益出しの目的は売却益に税金が掛からず確定できるところにあります。(益出しは買い戻しをする場合としない場合があります)
詳しく見ていきましょう。
益出しをできる条件
益出しはすべての方ができるわけではありません。
一定の条件をクリアしている場合しかできないのです。
具体的には以下の2つの条件となります。
- 株式投資で損失を出している
- 保有株に含み益銘柄がある。
つまり、損失が出ていて利益に対して税金がかからない枠を利用してその部分を利確してあげるのです。(損出しと同じように買い戻してもOK)
ただし、当然のことながら損失分以上の利益確定してしまえば税金が掛かりますのでお気をつけくださいね。
配当金なども考慮していくら益出しするのかを検討してください。
益出しのメリット
益出しのメリットは税金を払わず利益を100%受け取ることができることです。
次の年に利確をすれば20.315%を払わないといけないことを考えれば節税できたことになります。
益出しでどれくらい節税できるのか?
それでは実際に損出しするとどれくらい節税できるのでしょう?
具体例でみてみましょう。
例えば100万円の損失がでている状況で、50万円の利益を確定したケースを見てみましょう。
※スマートフォンの方はスクロールしてお読みください。
益出しで売却 | 翌年に売却 | |
利益 | 50万円 | 50万円 |
損失分 | 100万円 | – |
税金 | 0円 | 101,575円 |
損失が出ている状況で売却すれば税金は掛かりません。
しかし、翌年に利益を確定してしまうと20.315%の税金が掛かるのです。
このケースでは101,575円の差となりました。
かなり大きいですね。
デメリット・注意点・期日は損出しと同じ
デメリットや注意点は損出しと基本的に同じです。
益出しして再度その銘柄を買い戻す場合には株主優待の長期保有特典がなくなってしまう可能性があります。
また、同一日に売買すると平均化されて効果が半減します。
ですから益出しも信用口座を開いているならクロス取引がおすすめですね。
まとめ
今回は「損出し、益出しはお済みですか?年末の株式取引で節税する方法を解説」と題して損出しと益出しについてみてきました。
まとめると以下です。
- 利益が出ていて、含み損銘柄を持っている→損出しで節税
- 損失が出ていて、含み益銘柄を持っている→益出しで節税
- 同日の売買は所得価格が平均化されて効果半減
- クロス取引を利用すると安全に損出し、益出しできる
年末は損出しと益出しのチャンスです。まだ実行していない方は検討してみてくださいね。
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最後まで読んでいただきありがとうございました。