最近、業績悪化の影響なのか減資を発表する企業が増えています。
毎日新聞など大きな減資も話題になりましたね。
それではなぜ企業は減資をするのでしょうか?
今回は減資をする目的、メリット、デメリットなどについて解説していきます。
最近話題になった大きな減資
まずは最近の減資事情から見ていきましょう。
大きな話題になったのは毎日新聞です。
毎日新聞社が3月に資本金を現在の41億5000万円から1億円に減資することが19日、分かった。取り崩した資本金は純資産の「その他の資本剰余金」に充てるが、用途は明らかにしていない。
出典:日経新聞 1/19
もともとあった資本金41億5,000万円から1億円まで減資をするというのです。
他にもここ1ヶ月くらいの報道を調べただけでも
- Nagisaが資本金1億3,293万円から3,293万円減資→資本金1億円へ
- GENDAが資本金9億円から資本金8億4500万円減資→資本金5,500万円へ
- ジャパンコンテンツファクトリーが資本金2億5,500万円から1億5,500万減資→資本金1億円へ
- サイバーダインが資本金267億7844万7600円から267億6844万7600円減資→資本金1,000万円へ
- ワンダーコーポが資本金31億8555万908円から30億8555万908円減資→資本金1億円へ
などが話題になっていますね。
スカイマークやシャープ、吉本興業など減資の話題は定期的にありましたが、新型コロナの業績への影響が大きいのかここのところが特に多くなっている感はあります。
また、減資した企業の減資後の資本金にも注目です。
今回紹介した減資企業すべて資本金1億円以下になっています。
実はこの1億円という数字に意味があるのです。
減資とはなにか
そもそも減資とはどういったものなのですしょうか?
かなり簡単に言えば「資本金を減少させること」です。
資本金とは株主から集めたお金のことでそれを減らすということになります。
ただし、減資と言っても大きく「有償減資(実質上の減資)」と「無償減資(形式上の減資)」の2つのパターンがあり、それぞれでやり方も意味合いも大きく違うのです。
有償減資(実質上の減資)とは
有償減資は実際に資金を減少させる減資です。
簡単に言えば株主へ払い戻しをする形ですね。
利益が出ていない状況で配当を出す目的や利益以上に配当を出す目的などに使われることがあります。
無償減資(形式上の減資)とは
無償減資は実際には資金を減少させない(しない)減資です。
例えば過去に大きな赤字を計上しているなど繰越欠損金がでている状況などにその欠損を消す目的で使われます。
あくまでも会計上の項目を変えるだけですから資金は減少しません。
今回の毎日新聞の減資は報道を見る限りこちらの無償減資のようです。
減資をする目的やメリットは?
減資を実施する目的は大きく分けて3つのパターンがあります。
一つは有償減資を実施するときの「配当を出すため」というもの。
配当は利益から行うものですが、利益が出ていないケースで配当を出したいとか利益以上に配当を出したい場合もあります。
資本金からは直接配当が出来ませんので、資本金を剰余金に振り返ることで配当を出せるようにするのです。
もう一つが無償減資をする目的で多い「繰越欠損金を消す」というものです。
大きな赤字を出したり、赤字続きだと貸借対照表に繰越欠損金が蓄積されます。
繰越欠損金があれば過去に赤字を出していたのが丸わかりですから貸借対照表の見栄えがよくありません。
投資を受けようとか銀行から借り入れしようというときに貸借対照表の見栄えは大事なんですよ。
そこで資本金を減らして、繰越欠損金に充てがうことそれを解消するのです。
ただし、実際にお金が動くわけではありませんし、自己資本の総額は代わりません。
3つ目は最近多い減資理由「税務上のメリットを受けるため」というものです。
メリットとしてはこれが一番大きいでしょうね。
最近の減資企業をご紹介しましたがほとんど減資後の資本金は1億円以下となっていました。
これはこの税務上のメリットを受けるためなのです。(詳しくは後述します)
減資のデメリットは?
減資はメリットだけではありません。
デメリットもあります。
まず資本金が減ることによる「信用度の低下」が挙げられるでしょう。
会社の内情が外からわかりにくい未上場企業の場合、その企業の資本金の大きさで安全性を測られやすいです。その部分で減資をすると不利になります。
ちなみに未上場企業の業績を調べるのは下記記事のような方法もあります。
また、企業によっては取引する与信条件に「資本金の大きさ」があるところも多いんですよ。
どことは言いませんが、資本金5億以上ないと直接の取引できませんなんて大手企業も実際にあります。
また、そもそも減資をすると経営が苦しいのでは?というネガティブなイメージがでてしまうってのもあるでしょうね。
それにより、上場している企業なら減資することでイメージが悪くなり「株価の下落」なんてこともありえます。
有償減資なら「現金の流出」という部分も大きいです。
当然、その分だけ資金繰りも悪化しますし、各種経営指標やキャッシュフロー計算書の見栄えも悪化することになります。
ただし、メリットと比較するとデメリットはそれほど大きなものとはなっていません。
そのため、減資を選択する企業が増えているのでしょう。
資本金と税金の関係
今回の毎日新聞もおそらくそうですが、多くの減資する企業の大きな目的が「税務上のメリットを受けるため」というものとなります。
それでは資本金と税金の関係はどうなっているのでしょう?
簡単に言えば資本金の小さい企業は中小企業だから緩和してあげようと税務上優遇されているんですよ。
具体的に見ていきましょう。
資本金1億円以下にするメリット
資本金1億円以下になると税務上様々なメリットがあります。
主なものは以下のとおりです。
- 法人税の税率に所得金額800万円まで軽減税率15%が適用(資本金1億円超だと23.2%)
- 特定同族会社の留保金課税不適用
- 年間800万円まで全額交際費を損金算入可能(1億円超だと50%など)
- 10年間欠損金を所得と相殺可能(1億円超だと50%〜80%)
- 少額減価償却資産の一括損金算入可能(30万円未満)
- 設備投資の特別償却可能
- 貸倒引当金の計上
- 外形標準課税の適用除外
- 法人住民税の均等割が少なくなる
- 各種補助金、助成金の対象となる
とくに外形標準課税の部分が大きいですね。
外形標準課税は道路整備や治安確保といった行政サービスの費用は赤字企業も負担すべきだろうという考え方に対応した税金で、所得金額だけでなく付加価値や資本金額も課税対象となります。
そのため、赤字でも発生してしまう税金となります。
それが適用除外となるのはかなり大きなメリットになるでしょう。
黒字企業なら法人税率が低くなることや800万円まで交際費の全額損金算入、欠損金の相殺、少額減価償却資産の話なんかも大きな話です。
また、補助金や助成金、給付金によっては資本金縛りなどがあるケースがあります。
それらを受けられるかどうかも変わるケースが出てきますね。
これだけのメリットがありますから税金の面を考えれば資本金を1億円以下にするという判断になるのは理解できますね。
資本金1,000万円以下にするメリット
サイバーダインは資本金267億7844万7600円から267億6844万7600円減資して資本金1,000万円としていました。
1,000万円とするのにも下記のメリットがあります。
資本金等の額、従業員の数 | 法人住民税均等割 |
1千万円以下(従業員50人以下) | 70,000円 |
1千万円以下(従業員50人超) | 140,000円 |
1千万超〜1億円以下(従業員50人以下) | 180,000円 |
1千万超〜1億円以下(従業員50人超) | 200,000円 |
1億円超〜10億円以下(従業員50人以下) | 290,000円 |
1億円超〜10億円以下(従業員50人超) | 530,000円 |
10億円超〜50億円以下(従業員50人以下) | 950,000円 |
10億円超〜50億円以下(従業員50人超) | 2,290,000円 |
50億円超(従業員50人以下) | 1,210,000円 |
50億円超(従業員50人超) | 3,800,000円 |
出典:東京都主税局
法人住民税の均等割は資本金と従業員の数で決められますので、資本金を1,000万以下にするとこの部分を節税できるメリットがあります。
例えば従業員数50人以下の企業なら資本金1億円超だと290,000円、資本金1千万超〜1億円以下なら180,000円、資本金1千万円以下なら70,000円となっています。
資本金1億円超から資本金1千万円以下げ減資をするだけで220,000円の節税ができるのです。
サイバーダインの従業員数はわかりませんが、仮に従業員50人超だった場合を考えると当初の資本金は267億7844万7600円ですから50億円超で法人住民税の均等割は3,800,000円でした。
それが1千万円以下(従業員50人超)の枠となりますので140,000円となり、3,660,000円均等割が小さくなります。
かなり大きいですね・・・
まとめ
今回は「毎日新聞など減資をする企業が続出中。資本金を減らすメリットはどこにある?」と題して減資をするメリットについて考えてみました。
とくに減資をすると税金面で大きなメリットがあることがわかっていただけたと思います。
どうしても減資というとネガティブなイメージしか湧きませんが、こういった部分もあることは知っておきたいところですね。
また、会社を起こす方も安易に資本金額を決めずにこのあたりの税金面も考えて決めたいところ・・・
ただし、大企業が節税目的として続々減資してしまうと国や自治体の減収に繋がりますので、今後は何かしらの対応策なんかも生まれてきそうですけどね。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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