2020年4月1日から120年ぶりに民法が改正されます。
「契約や金銭の支払いに関するルールを定めた民法の規定(債権法)を見直す改正法案」です。
200近くの項目が見直されていますが、特に一般消費者に大きな影響があるのが「敷金」の話でしょう。
今まで揉めることが多かった敷金についてルールが明確に。
知ってるか知ってないかで大きな差がでるのが敷金のルールです。
今回はこの敷金ルール改正についてみていきます。
※最近、新型コロナの影響もあるのか敷金トラブルが増えているという話もありますのでお気をつけください。
敷金とは
まずは今回の前提となる「敷金」とはなにかについておさえておきましょう。
敷金とは保証金のようなもので、借り主が家賃等を支払えなくなったときのために大家が入居時に預かるお金のことです。
金額はアパートやマンションにより決められており、家賃の1ヶ月分〜3ヶ月分くらいが相場ですね。
会社が借りる場合などだと半年〜1年分くらい取るケースもあります。
ただし、この敷金は不動産業界の慣習にすぎず、法律で定められているものではありません。
そのためトラブルが非常に多いお金なんですよ。
敷金トラブルが多発
実際に国民生活センターに敷金を返してくれないという相談が毎年多く寄せられています。
2019年9月30日時点の相談件数は以下のとおりです。
※スマートフォンの方はスクロールしてお読みください。
年度 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 |
---|---|---|---|---|
相談件数 | 13,905 | 13,210 | 12,489 | 5,147(前年同期 5,761 |
出所:国民生活センター「賃貸住宅の敷金・原状回復トラブル」より
本来であれば退去するときに返してもらえるはずなのですが、壁紙の補修や清掃代など理由を付けて返してくれないケースが後を絶たないのです。
後述しますが、私も同様のトラブルにあったことがあります。
そのようなことが後を絶たないため、今回ルールが明確化されることになったのです。
今回の改正で明確化されたルール
それでは今回の改正で明確化されたルールについて見いきましょう。
敷金の定義の明確化
まずは敷金の定義が明確化されました。
敷金はいままで法律に明記されているものではなかったため、地域や不動産屋、大家によって名称が違うケースも多かったんですよ、「礼金」、「権利金」、「保証金」などですね。
2020年4月1日以降は名称は関係なく賃料の担保目的ならば敷金として定義されることになります。
借りるときにこのお金はなんの目的なのかを明確化しておくと後々のトラブル回避に繋がるかもしれませんね。
敷金の返還時期
また、敷金の返還時期についても明確化されました。
敷金の返還範囲
合わせて敷金の返還の範囲も明確化されました。
出所:法務省民事局「民法(債権関係)の改正に関する説明資料」より
払った敷金から未払い債務額を引いたものが返還されると明記されました。
未払い債務額とは損害賠償、未払いの賃料、原状回復費用などがそれにあたります。
ちゃんと賃料を払っていて下記の原状回復負担分がないならば全額返ってくるってことですね。
原状回復ルールの明確化
一番トラブルが多い原状回復についての考え方についても明確化されました。
通常損耗・経年変化に当たる例
・家具の設置による床、カーペットのへこみ、設置跡
・テレビ、冷蔵庫等の後部壁面の黒ずみ(いわゆる電気ヤケ)
・地震で破損したガラス
・鍵の取替え(破損、鍵紛失のない場合)
通常損耗・経年変化に当たらない例
・引っ越し作業で生じたひっかきキズ
・タバコのヤニ・臭い
・飼育ペットによる柱等のキズ・臭い
・日常の不適切な手入れもしくは用法違反による設備等の毀損
原状回復をめぐるトラブルとガイドラインを知っておこう
今回の法改正は2020年4月となります。
そのため、それより前に契約している場合については改正前の民法が適用となります。
つまり、現状入居している方や4月前に入居する方は今回の改正が適用されないということになります。
しかし、国土交通省が出している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を知っておくことで上記のルール改正と同様の扱いを受けられる可能性もあります。(私がそうでした)
原状回復をめぐるトラブルとガイドラインとは
原状回復をめぐるトラブルとガイドラインとは国土交通省が退去時における原状回復をめぐるトラブルの未然防止のため、賃貸住宅標準契約書の考え方、裁判例及び取引の実務等を考慮のうえ、原状回復の費用負担のあり方について、妥当と考えられる一般的な基準をまとめたものです。
ちなみに今回の民法の改正は「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に則ったものとなっていますね。
ただし、以下のような扱いとなります。まずは契約書を確認することが大事ですね、
ガイドラインのポイントは下記の部分です。特に減価償却の考え方を知っておくとよいでしょう。
原状回復とは
原状回復を「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義し、その費用は賃借人負担としました。
そして、いわゆる経年変化、通常の使用による損耗等の修繕費用は、賃料に含まれるものとしました。
つまり、借りた当時に戻すのが原状回復ではないよってことです。
経過措置の考慮
賃借人の負担については、建物や設備の経過年数を考慮し、年数が多いほど負担割合を減少させる考え方を採用しています。(このことを減価償却といいます)
例えばクロスなどはどんどん時間が経てば経年劣化していきます。
よくクロスの新品への張り替え費用を借り主に全額負担させようとする不動産屋がいますが、それはおかしな話なのです。
ちなみに新築で入居した方は6年経過でクロスの価値は1円となります。
前入居者が3年住んでいてそこから入れば3年でクロスの価値は1円です。
ガイドラインはあくまで指針だが・・・
ぜひ変な請求された場合には「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」と「減価償却」という魔法のコトバを唱えてみてください(笑)
私の経験・・・
私も実は敷金トラブルの経験者です。
1回目:魔法のコトバをとなえたら全額返却
まず1回目のトラブルです。
3ヶ月分敷金を預けていてました。
退去時に不動産管理会社から敷金分はすべて原状回復費などに充てられてまったく返ってこないとの査定・・・
前述のようにクロスの全額張替え費用、畳張替え費用、ハウスクリーニング代などが入っていましたね。
しかし、納得いきませんので「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」と「減価償却」の話をしたところ、顔色が一瞬で変わり翌日には全額返金の連絡を受けました。
まったくごねてはいません。「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」と「減価償却」の言葉を出しただけ。
つまり、なにも言わなければ3ヶ月分取られていたのですが、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」と「減価償却」を言ったことで「こいつ知っている」、「騙せない」となり全額返してくれたのでしょう。
2回目:訴訟で和解
まとめ
今回は「2020年4月から「敷金」のルールが変わる。敷金返還義務、原状回復の負担割合が明確化」と題して敷金の話をみてきました。
敷金はトラブルが本当に多い話ですし、すでにぼったくられている方も多くいるでしょう。
今回の民法改正はそのようなことを防ぐ意味で意味のあるものです。
改正でそのようなトラブルが減ると良いですね。
ただし、今までの経験から不動産屋も急には変わらないと思われます。
ですから消費者側も民法改正の知識を得ておくことが必要ですね。
また、もうすでに入居している方も「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」で理論武装しておくことで敷金の返却を有利に進めることも可能でしょう。
ぜひある程度の知識は得ておきたいものです。
敷金以外の民法変更項目や民事執行法の改正は下記記事を御覧ください
なお、原状回復をめぐるトラブルとガイドラインはこちらからご覧いただけます。
私が敷金裁判をしてわかった敷金トラブルにならないために契約時、退去時にしておきたいチェックポイントを下記記事でまとめております。
これらを参考に対策してもらえばトラブルの未然防止につながるはずですのでぜひ参考にしてみてください。
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