かなり衝撃の事件が発生しました。
2020年8月に東証マザーズに上場したモダリス(4883)の株主(著名個人投資家)がロックアップ中であったにも関わらず売却していたことが判明したのです。
これはIPOにおいて新興市場を崩壊させてしまったマネックスショックレベルの衝撃であると個人的に捉えています。
今回はモダリスショックと言っても良いかもしれない、今回のロックアップ中の売却について見ていきましょう。
モダリス株のロックアップ中の売却の詳細
今回の件はモダリスが以下のIRを発表したことで判明しました。
>>「第三者割当により割り当てられた株式の譲渡に関する報告書」の提出に関するお知らせ
少々引用させていただくと
上場申請直前事業年度以降に行った第三者割当等により株式の割当てを受けた者は、株式上場日(2020 年8 月3日)以後6ヶ月を経過する日までの間は、当社株式を第三者に譲渡しない旨、また当社株式を第三者に譲渡する場合は事前に当社に書面にて通知をする必要がある旨等の確約(いわゆる、制度ロックアップ)がされておりました。 しかしながら、当社が 2020 年 12 月期の決算作業として株主名簿の確認を行ったところ、当社株主であった 片山晃氏(以下、片山氏といいます。)が、上記の確約に違反して、当社に事前通知をしないままに譲渡制限期間に下記の通り所有株式の全部を市場で売却していたことが判明致しました。
出典:モダリス 「第三者割当により割り当てられた株式の譲渡に関する報告書」の提出に関するお知らせ
簡単に言えば上場前に株を保有していた片山晃氏には6ヶ月は売らない、もしくは第三者に譲渡する場合は事前にモダリスへ通知をするという確約(ロックアップ)をしていたのに売却をしていたことが判明したというのです。
具体的には以下の通りの株が売却されています。
出典:モダリス 「第三者割当により割り当てられた株式の譲渡に関する報告書」の提出に関するお知らせ
上場が8月3日で売却された時期が9/1〜9/16ですから比較的早い時期で売却していたことになります。
60万株(約18億円)ですからモダリスの時価総額を考えるとかなりの規模です。
当然、株価にも大きな影響を与えているはずです。
ロックアップとは
ロックアップという言葉に馴染みのない方もみえるでしょうから簡単に解説しておきます。
ロックアップとは上場前から株を保有していた株主と株を売らないと決める制度のことです。
それにより上場後に買う投資家に大きな売りが飛んでこない安心感を与えることになります。
多くの場合、上場後6ヶ月とか株価1.5倍とか条件が付けられていますね。
その条件を満たすまでは売却できないというものなのです。
今回は片山晃氏に6ヶ月のロックアップがついていたようなのですが・・・
片山晃氏の釈明
片山晃氏は自身のブログで今回の件について釈明しております。
一部引用させていただきます。
まず確約書について、私が2019年4月に株式の割当を受けた際、上場日以後6ヶ月を経過する日までの間に売却しないことなどを内容とする確約書をモダリスと締結しています。しかし、モダリス上場の時期にはこの確約書の存在について、本当に完全に失念してしまっていました。その後、2020年8月のモダリス上場後、自分の持ち株がロックアップ対象であるかどうかを確認するため、有価証券届出書の13ページにある「ロックアップについて」の箇所を参照しました。この当時、私はこの上場直前に割り当てを受けた株主の短期利得行為を規制する制度ロックアップというルールに関して認識しておらず、ロックアップといえば、有価証券届出書の「ロックアップについて」の箇所に株主名が記載された任意ロックアップのことのみを指すものと誤解していました。そのため、「ロックアップについて」の箇所に自分の名前の記載がなかったことから、今回はロックアップ対象外であると早合点をしてしまいました。
出典:株と競馬と企業経営 より
つまり、ロックアップの確約書の存在を失念していたということのようです。
参考:片山晃氏とは
ちなみに片山晃氏は相場の世界では有名人です。
五月という名前でツイッターなどもやられてますね。
23歳から株式投資をはじめて7年半で12億円へ増やします。
その後、13年にひふみ投信で有名なレオス・キャピタルワークスに入社。
14年には再び個人投資家に戻って活動しています。
下記のような本も出していますね。
決算で判明したのが怖い・・・
個人的にかなり怖いと感じたのが今回の売却が判明した経緯です。
2020 年 12 月期の決算作業にあたり、名簿管理人から受領した 2020 年 12 月末時点の株主名簿を当社で確認 していたところ、片山氏の名前が株主名簿のしかるべき位置にないことに気がつきました。そのため、当社は 制度ロックアップ違反が発生しているのではないかと思慮し、直接片山氏に確認を行いました。その結果、片山氏より制度ロックアップの譲渡制限期間中に対象株式を全部売却されたということの報告を受け、当社は 2021 年3月に初めて認識することとなりました
出典:モダリス 「第三者割当により割り当てられた株式の譲渡に関する報告書」の提出に関するお知らせ
つまり、決算作業で名簿を確認して気づいたというのです。
この話が怖いところは例えば、途中で一旦売却しておいて、決算の締め(今回なら12月末)までに買い戻していれば名簿に載っているでしょうからバレなかった可能性があるということです。
バレてないだけで他でもロックアップ中の売却はあったのか?
今回は片山氏がロックアップを失念していたという売却であったため判明していますが、確信犯ならバレずに実行できる可能性があるのです。
前述のように一旦売却して、決算の締め前に買い戻せばいいということですからね。
つまり、バレてないだけで同じようなロックアップ中の売却が行われている可能性があるのです。
私もIPO株の売買をしていておかしいな??ってのを何度か感じたことがあります。
ロックアップがガチガチで流動株数が多くないのに売りが無限に湧いてくる銘柄があること・・・
このようなチェック体制だけならロックアップ中の売却は他にもある可能性を個人的には感じています。
過去のロックアップ違反:ソレイジア・ファーマ
実は過去にもロックアップ違反が問題になったことがあります。
東証マザーズ上場のソレイジア・ファーマ(4597)です。
2017年に以下のようなIRを出しています。
JBIr社により当該売却がなされた当社株式合計21,058,018株のうち308,182株は、JBIr 社が、当社の新規上場申請日の直前事業年度の末日から起算して1年前より後において、当 社がJBIr社に対して第三者割当の方法により割り当てた新株予約権の行使等によって取得 したものであるため、当社とJBIr社との間では、有価証券上場規程第217条及び有価証券上 場規程施行規則第257条に基づき、JBIr社が、当該株式につき、当社株式上場日(2017年3月 24日)以後6か月間を経過する日までの間、第三者に売却等を行わない旨、仮に当該株式に つき第三者に売却等を行う場合には、JBIr社は事前に当社に対して書面による通知を行う必 要がある旨等が確約(いわゆるロックアップ合意)されております。しかしながら、当社は、 JBIr社から、当該確約に基づく事前の通知を受けないまま、2017年6月30日に、JBIr社から、 当該株式について売却を行った旨の通知を事後的に受けたため、当該売却は当該確約に違反するものであったとして、当社は、MPM Capital及びJBIr社に対して厳重な抗議を行ってまいりました。なお、当社は、MPM Capital及びJBIr社とのやり取りに時間を要したため、本 日付けで、有価証券上場規程第217条及び有価証券上場規程施行規則第257条に基づき、東京 証券取引所に対して当該確約違反の譲渡に関する報告書を提出しております
出典:ソレイジア・ファーマ 2017年8月22日IR ベンチャーキャピタルによる当社株式の所有割合の低下に関するお知らせより
ちょっとわかりにくいですが、今回と似た感じですね。
ロックアップ中に売却してたけど事前に連絡なかったぞって話です。
こちらは海外のベンチャーキャピタルが起こした話だったのでそこまで大きな話題にはなっていないなかったですが・・・
ロックアップは単なる紳士協定?
もしロックアップが今回判明したような紳士協定レベルの話なら既存株主はいくらでも儲けることができます。
例えば株価がいい感じであがったときに売り浴びせて暴落したところで買い戻し。とかですね。
いくらでも儲ける方法が思いつきますね・・・
多くの投資家はロックアップの状況をみてIPOの売買をしていると思いますが、その前提が一気に覆されるという事になりかねません。
これでIPO相場が大きく冷え込むことになったとしても不思議ではないでしょう。
マネックスショックが新興市場を冷え込ませたようなことにならないと良いのですが・・・
ロックアップ中の売却には規制を
前回のソレイジア・ファーマの件でも今回のモダリスの件でもそうですが、罰金などの罰則があったという話は聞こえてきません。
おそらくロックアップは単なる口約束や紳士協定レベルの話になっているのでしょう。
今回の話をきっかけに厳しい罰則などを用意してほしいものです。
そもそもロックアップ中に売れる?
また、ロックアップ中の株主が売れる仕組みになっているのがおかしなわけです。
これも驚きました。
そもそも売れないものだと思っていましたので・・・
単に株主たちがロックアップを守って売らないだけというのは。。。
システム的に売れないようにしてほしいところです。
ソレイジア・ファーマ、モダリスとも主幹事はみずほ証券
もうひとつ気になるのがソレイジア・ファーマ、モダリスとも主幹事は「みずほ証券」であることです。
判明しているのが2件だけですからみずほ証券に問題があったとまでは言い切れませんがちょっと気になる点ですね。
ぜひ主幹事のみずほ証券もなにかコメントを発表してほしいところですが・・・
まとめ
今回は「モダリスショック来るか?IPOのロックアップは単なる紳士協定?ロックアップ中に売却したことが判明」と題してIPOのロックアップについて見ていきました。
今回露呈したようにロックアップされている株でも普通に売れて、決算作業で確認するレベルであればいくらでもバレずにロックアップ破りは可能でしょう。
システム面や罰則面でこのあたりを規制してもらわないとIPOの売買にかなり支障が生じる事態になりかねないと思います。
今回のモダリス、片山氏の件でIPO相場が大きく揺れないことを祈りますが・・・
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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