金融所得課税を見直しする根拠となっている1億円の壁とは。わかりやすく解説

石破内閣の政策で大変注目されているのが「金融所得課税の見直し」です。

現在の金融所得は分離課税(他の所得と分けて考える)で20.315%(所得税、住民税、復興特別所得税)。

それを変えようとしているのです。

実は岸田内閣でもこの話があり、その時も暴落してフィナンシャル・タイムズなんかは「岸田ショック」なんて呼ばれていました笑

その金融所得課税を見直しの根拠となっているのが「1億円の壁」と言われる状態の解消

今回は1億円の壁について解説していきましょう。

所得税は累進課税制度なのだが・・

所得税は基本的に累進課税制度となっています。

累進課税とは簡単に言えば収入が多ければ多いほど高い税率となり、高い税金払ってもらいますってことです。

具体的には7段階に区分され年間の課税所得195万円未満だと5%ですが、同4,000万円以上だと最高税率45%となっており、かなりの差があるんですよ。(住民税等は別途)

しかし、一部例外となっている所得があるのです。

それが金融商品の所得税です。

金融所得は分離課税で一定率

金融商品で得た売却益や配当に対する所得に掛かる税金は累進課税となっていないのです。

分離課税(他の所得と別でカウント)となっており、20.315%(所得税、住民税、復興特別所得)の一定率となっています。

これは株式投資等を普及されたいというのもあるでしょうし、株などの取引は他の国でもできますのでその兼ね合いもあります。

あと特定口座という制度で簡単に計算、申告できるようにしているというのもあるでしょう。

つまり、特別扱いされてきたのです。

この金融所得の税率が優遇されているのが今回やり玉に上がっている部分となります。

1億円で所得税負担割合が頭打ち。

所得が多ければ多いほど税率が高くなる通常の所得税と税率が一定の金融所得の所得税。

この2つの影響がでてくるのがちょうど1億円くらいの所得のからとなります。

そのため「1億円の壁」と言われているのです。

国税庁の統計資料「申告所得税標本調査」でそれがわかります。

一部抜粋すると以下のとおりです。

※スマートフォンの方はスクロールしてお読みください。

所得階級所得税及び復興特別所得税の負担割合
100万円以下1.3%
100万超200万円以下2.2%
200万超300万円以下2.8%
300万超500万円以下4.1%
500万超1,000万円以下8.3%
1.000万超2,000万円以下16.1%
2.000万超5,000万円以下24%
5.000万超1億円以下27.9%
1億円超23.2%
総平均14,7%

出典:国税庁 「申告所得税標本調査」所得税及び復興特別所得税の負担割合の負担割合より一部抜粋

本来であれば累進課税ですから所得税及び復興特別所得税の負担割合の負担割合も所得が増えるにつれて高くなるはずです。

しかし、もっとも負担割合が高いのは5.000万超1億円以下の27.9%となっています。

1億円超だと23.2%と大きく負担割合が減っているのです。

これは1億円超くらいになってくると給与所得や事業所得ではなく、税率が一定の金融所得の部分の割合が大きくなって来るからと言われています。

これが「1億円の壁」なのです。

このデータだと1億円超までしかデータはありませんが、そこからは所得が増えるに連れどんどん負担割合が減ってくるとのこと。

元の所得は大きいので当然所得税も多くは払っているのですが、実質的な税率は下がっているのです。

この歪な状況を打破するために金融所得課税を見直しなんて話がでてきているのです。

金融所得課税を上げれば当然、1億円超の人の所得税も増えますからね・・・

役員報酬を取らず配当だけの方が得は間違い

ちなみに「ソフトバンクの孫正義さんなんか役員報酬とらずに配当金だけで生活している。役員報酬だと税金高いけど、配当金は20%の税金だから得」というような例を出して1億円の壁を解説している方を複数みましたが、それは間違いです。

詳しくはこちらの記事を御覧ください。




金融所得課税の見直しについて考える

金融所得課税を見直しという話は出ていますが、石破内閣の政策として具体的な方策はでていません。

もう一人の総裁候補だった高市早苗氏は2021年に総裁選に出馬したときには税率30%にするとしていましたね。

そうなれば当然、株式市場への影響も避けては通れません。

以前に、軽減税率を適用して10%としていた金融所得税を20%に戻す時は一緒にNISAを導入して影響を緩和していましたのでそのような方策も必要になるかもしれません。

私見

単純に金融所得課税を見直しということで現在、約20%の税率を30%に上げれば所得1億円超以外の人にも大きな影響を及ぼしてしまいます。

当然、株式市場が冷え込むきっかけにもなりかねないでしょう。

ですから私ならこの2つのどちらかにしますね。

金融所得も累進課税へ

本当に「1億円の壁」の打破が目的なら金融所得を現在の一定率から累進課税制度にすればよいと思うのです。

たくさん儲けた人はたくさん税金。

そうでもない人はそれなり。

一律に上げるよりはそちらのほうが納得性が高いですし、投資の裾野も広げやすいと思うのですが・・・

金融庁では「貯蓄から投資へ」というスローガンの元に投資を喚起する政策をとっていますしね。

ただし、そうなると特定口座の仕組みを見直す必要が出てくる可能性が高そうですけどね。

NISAを拡充

もう一つの案が税率引き上げと合わせて一般の人の投資を促すためにNISA枠の枠を大きくするのもよいでしょう。

NISAは年間の利用金額は決まっていますが、その枠内なら非課税で投資できる制度。

それを拡充することで一般の方の納税負担はそれほど増やさないようにできます。

これが現実的かもしれません。

そうすれば一般の方はそれら制度をうまく活用することで負担割合がそこまで増えないと思われます。

逆に1億円超稼いでいる方たちからするとその枠が拡充されたところで影響は少ないですから、負担割合をあげることもできます。



まとめ

今回は「金融所得課税を見直しの根拠となっている1億円の壁とは。わかりやすく解説」と題して1億円の壁についてみてきました。

まとめると

金融所得の税率が一定額のため、所得税の累進性が1億円で壁となっている
ということです。
その解消のためにただ単に金融所得の税率を上げるというのは勘弁してほしいところ・・・

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最後まで読んでいただきありがとうございました。

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