金融所得の税率が25%〜30%になったら株式市場はどうなるのか?

岸田総理大臣が次の自民党総裁選に立候補しないことを表明したことにより次期総理大臣(自民党総裁)が誰になるのかがわからなくなってきました。

個人的に注目しているのは金融所得課税についてです。

まず、高市早苗氏が2021年9月に金融所得の税率を現状の20%から30%に引き上げる話をしています。

また、次総理になって欲しい人的なアンケートをすると常に上位になる石破茂氏も同様に最近の発言として金融所得の課税を強化するという話をしています。

さらに経済同友会の新浪剛史代表幹事も金融所得課税は「25%くらいあってもいい」と述べるなど金融所得を上げる地ならしをしている感があります。

逆に小泉進次郎氏や小林鷹氏は金融所得課税の強化に否定的です。

今回は金融所得の税率が30%になったら株式市場はどうなるのか?について考えてみましょう。

格差の是正を目指して金融所得の税率が30%に

まずはそれぞれの発言を拾ってみましょう。

高市早苗氏の金融所得についてのコメント

高市早苗氏は以下のように語っています。

  • 金融所得税制については、「逆進性」が大きい。不満は出ると思いますが、この時期には増税をさせていただきたい。マイナンバーを活用して金融所得(配当所得と譲渡益)を名寄せして、50万円以上の金融所得の税率を現状の20%から30%に引き上げると、概ね3,000億円の税収増になります
  • 低所得の方に対しては、勤労税額控除である「給付付き税額控除」を導入して支援したい

出典:月刊Handaプラス 【わが政権構想】日本経済強靭化計画|高市早苗より

つまり、金融所得の税率を既存の20%から30%に引き上げる。

そして低所得者の方には「給付付き税額控除」を導入するということです。

ただし、高市氏が語ったのは2021年9月なので考え方が変わっている可能性もありそうですが・・・

石破茂氏の金融所得についてのコメント

また、石破茂氏は以下のように語っています。

自民党の石破茂元幹事長は2日のBS日テレ番組で、首相に就任した場合の金融所得課税の強化について「実行したい」と述べた。岸田文雄首相も課税強化を掲げていた経緯に触れ「後退してしまった感がある。お金持ちが外に行ってしまうということで(主張を)抑えたのかもしれない」と指摘した。
課税強化をする場合は投資が海外に移らないような対応策もあわせて検討する必要があるとも言及した。

経済同友会の新浪剛史代表幹事氏の金融所得についてのコメント

経済同友会の新浪剛史代表幹事氏は以下ですね。

富裕層向けの話かと思えば50万円以上というレベルですからかなり幅広い方に影響のある話・・・
経済同友会の新浪剛史代表幹事は3日の記者会見で、株式の配当や売買にかかる金融所得課税は「25%くらいあってもいい」と述べた。現在の一律20%から「少し上げてもいい」と語った。
個人の金融資産を増やす流れに「水を差すようなレベルの増税であってはいけない」とも話した。

給付付き税額控除とは

「給付付き税額控除」ってあまり聞き慣れないものですが、一定額を下回る所得層に対して還付金を給付するものということです。

低所得者は税金を払うのではなく、逆に還付をもらえるということですね。

たしかに格差是正にはつながるでしょうが、それ以上に株式投資の税率が上がることによる経済への影響が大きいと思いますが・・・

増税はすぐには実現できない?

まだ、今の時点では次期総理大臣(自民党総裁)候補の一意見に過ぎません。

そのため、実際にもし総理になったとしても実現するのかは不透明です。

実際、金融庁では「貯蓄から投資へ」というスローガンの元に投資を喚起する政策を取ってきました。

大きな話題となった年金だけでは2000万円足りないということを指摘したレポートなんかもその一端なんですよ。

もし、金融所得に関する増税が実現すればその方針に逆行する流れとなりますので簡単には容認できないでしょう。

実現するにはかなりハードルがあるのです。



税率が25%〜30%になったら株式市場はどうなるのか?

それでは税率が30%になったら株式市場はどうなるのでしょうか?

これは単純に考えれば株式投資が今までより不利になりますから、やる人が減ることが予想されます。

そうなれば株価が下がるかというとそう簡単な話ではないのです。

短期的にみれば実行される直前(20%から30%に変わる時期)には手仕舞いする人が増えて株は下がると考えますが、過去の動きをみるとそうでもないんですよ。

10%から20%に上がったときはどうだったか?

参考になるのは2013年から2014年の株価の動きでしょう。

長いこと10%であった株式投資などの譲渡益や配当が軽減税率を廃止し、本来の20%に戻したということがあったためです。

2014年(平成26年)1月から上場株式等の配当・譲渡所得等に係る軽減税率が終了して税率10.147%から20.315%となりました。

元々20%であったとはいえ長いこと10%でしたから感覚的には10%あがったのと同じですね。

このときは株価は下がると予想されましたが、ちょっと変則的な動きとなっています。

2013年12月はじめの日経平均は15,659.74

12月末には16,291.31まであがります。631も上がったんですよ。

その後、1月に入り株価は下がり1月末には14,914.53まで下がります。

1,376.78の下げですね。

2013年12月始め15,659.74→12月末16,291.31→1月末14,914.53

つまり、軽減税率が終わる12月末にかけてなぜか株価はあがり、軽減税率が終わって20%になった1月から株価が下がったということです。

株が動くのは1つの要因だけではありませんのでなんともいえませんが、ちょっと不思議な動きとなっています。

普通に考えれば軽減税率が終わる前に売りたいという人が多かったと思いますけどね。

ちなみに当時の楽天証券がどうするのが良いのかということで下記のチャートをだしていますね。

軽減税率廃止で株価どうなった

出典:楽天証券:いま売るべき?2014年から税率が変わります。~軽減税率終了~ より

ちなみに私はその時、一旦10%の時点で売って利益確定しておき、長期投資用の株は2014年になってから買い戻した記憶があります。

2014年はNISAを同時スタートさせていた

ちなみに2014年時は軽減税率を終えることの影響を少なくするためなのか、同時に少額の非課税制度であるNISAをスタートさせています。

もしかしたら新NISAやiDeCoの拡充とセットしてくる可能性もありそうです。

FIREの人は計算を考え直す必要があるかも

最近話題のFIRE(経済的に独立した早期リタイア)の方はより影響が大きいかもしれません。

多くのFIREの方は配当金などで生活をしていますので税率が10%あがれば影響は大きいですね。

総合課税で計算すれば問題ないなのか、改定されることにより配当金税制が実際どうなるのかはわかりませんが、、、

日本はFIREもやりにくい感じになりそうな予感・・・

iDeCoの特別法人税もちょっと心配に・・・

個人的にちょっと心配なのがiDeCoの特別法人税の存在です。

特別法人税とは企業年金(厚生年金基金、確定給付年金、確定拠出年金)の積立金(拠出金+運用益)に対して年率1.173%(国税1%、地方税0.173%)を課税するという税金です。

これは確定拠出年金が対象となっていますので個人型だろうが、企業型だろうが関係なく課税される仕組みです。つまりイデコも対象なのです。

ただし、この特別法人税は日本経済がバブル崩壊の影響により企業年金の運用環境が悪化したことにより、1990年から課税凍結されています。

確定拠出年金制度は2001年10月からスタートしていますのでこの特別法人税を課税されたことは過去一度もありません

イデコ公式にあるパンフレットにもかなり小さくではありますが記載がありますね。

特別法人税-min
「※運用資産には、別途、特別法人税が課せられますが、現在、課税が凍結されています。」と書いてあります。

高市早苗氏が就任したらこのあたりにも目をつけそうで怖いですね。

金融所得の税率が30%にするのは税率を変えないといけないのでハードルはかなり高いです。

しかし、特別法人税は凍結しているだけですから実施のハードルは低いんですよ。

ただし、下記記事に書いたように多くの方が預金で運用している現状を考えれば実施はしないと思いたいところですけどね・・・




まとめ

今回は「金融所得の税率が30%になったら株式市場はどうなるのか?」と題して次期総理大臣(自民党総裁)候補の高市早苗氏の金融資産課税についての考えをみてきました。

かなり大きな影響のありそうな話ではありますね。

他の方が総理になった場合も含めて注目しないといけません。

なお、高市早苗氏や石破茂氏の政策は本を読むとより理解できそうです。

他の自民党総裁候補も本を出していますから一度読んでおくと参考になるでしょう。

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最後まで読んでいただきありがとうございました。
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