先日、議員に立候補している方が「お金持ちだけ優遇されている」とおっしゃってました。
「例えばソフトバンクの孫正義さんなんか役員報酬とらずに配当金だけで生活している。役員報酬だと税金高いけど、配当金は20%の税金だから得」とのことでした。
この話には2点ほど間違いがあります。
すぐに気づきましたが大人なので追求しませんでした(笑)
そもそも孫正義さんは役員報酬をもらっています。
また、孫さんのように大株主の場合は配当金の税金は20%ではないんですよ。
そもそも大株主になるのに多額のお金が必要ですからその時点でお金持ちですしね(笑)
今回はよく勘違いされている配当金の税金について解説します。
3%以上の株を保有していると配当金課税ではなく総合課税
それでは配当金の税金について詳しく見ていきましょう。
一般の投資家の配当金の扱い
一般の投資家の配当金の計算方法は以下の3パターンがあります。
申告不要制度
まずは一番一般的な申告不要制度です。
上場株式に対する税率は20.315%(所得税および復興特別所得税15.315%、住民税5%)となります。
配当金の支払い時に源泉徴収(税金が引かれ)され、納税が完了。
あらかじめ税金がひかれて入金されますので特に何も手続き等が不要で楽ですからほとんどの方はこれだと思います。
何もしなくて良いですので確定申告等をされていない方や配当金の金額がそれほど多くない方はこれが楽なので良いですよね。
前述の配当金の税金は20%という話はこの申告不要制度の話をされているんですね。
一般的な方法ですから大きく捉えれば間違いではありません。
総合課税
もう一つが総合課税です。
総合課税とは名前の通り、他の各種所得の金額を合計して所得税額を計算するというものです。
総合課税の場合の税率は所得税は下記のような累進税率となります。
住民税は10%です。つまり、最高で55%の税金ということになります。
出所:国税庁 「所得税の税率」より
また、総合課税では、配当控除を適用することができます。
課税所得が1,000万円以下であれば、所得税については配当所得の10%、
住民税については配当所得の2.8%が控除されます。
課税所得が1,000万円を超える場合は、1,000万円を超えた部分について控除の割合が半分になります。
また、株式や投資信託を借り入れなどで買った場合にはその借り入れの利子を経費として差し引きすることもできます。
ちなみに配当と他の所得を合計した課税所得が695万円以下であるなら総合課税を選択したほうが税金が安くなるのです。
(借り入れ利子等があるならもう少し高い所得の方も得になります)
ただし、総合課税を選択すると扶養など他の要素にも影響を及ぼしますのでお気をつけください。
申告分離課税
もう一つが申告分離課税です。
株式の売却損がある場合などはこちらを選択すると株の売却損と配当所得の損益を合わせて計算することで税金が安くなります。
株が損失がでていても配当の税金を申告不要制度を使っていれば20.315%とられたままですが申告分離課税で申告すればその配当よりも損失が多くなってれば税金は0ということになります。
(売却損と損益通算して配当所得が減少すれば、源泉徴収された税額のうち、減少した配当所得に対する税額が還付されます。)
また、こちらの場合も、株式や投資信託を借り入れなどで買った場合にはその借り入れの利子を経費として差し引きすることもできます。
また、配当と売却損を通算してもマイナスになるようなら3年間繰り越すこともできます。
次の年に利益がでてもそのマイナス分を合わせて計算ができるってことです。
つまり、株で損が出ているならばこちらの申告分離課税を使ったほうが得ってことです。
個人大株主の配当金の扱い
それでは今回の本題、個人大株主の配当金はどうなるのでしょう?
結論から言えば発行済株式総数の3 %以上を所有している株主は所得税20.42%(所得税および復興特別所得税、住民税は別途) を源泉徴収のうえ、総合課税として確定申告が必要となります。(確定申告不要制度は利用できません)
つまり、一般投資家と同じように源泉所得税が約20%引かれますがそこで完結ではなく、別途確定申告で他の所得と合わせて計算されるということなのです。(総合課税)
なお、二重課税回避も目的で配当控除というルールがあり、一定の控除が受けられます。
課税所得1,000万円以下の部分は12.8%(所得税10%、住民税2.8%)、1000万円超の部分は6.4%(所得税5%、住民税1.4%)が控除することが出来ます。
おそらく前述の孫正義さんなど上限に張り付いるでしょうから、配当金についても多くの税金を支払ってみえると思います。
法人が受け取る配当金の扱い
富裕層などは資産管理会社を作ってそこで株の取引などをしているケースもあります。
この場合には配当金の税金の扱いはどうなるのでしょう?
上場株式の場合、法人は源泉所得税として15.315%引かれます。
個人と違って住民税は取られないんですね。
また、非上場株式の場合は20.42%です。
益金不算入
また、法人の場合には二重課税の回避という名目で益金不算入というルールがあります。
ちょっとややこしいですが、益金不算入とは会計上は利益として扱われますが、税金計算上は利益(益金)としないというものです。
これは株の保有割合で異なり以下のようになっています。
※スマートフォンの方はスクロールしてお読みください。
株式の種類 | 保有割合 | 不算入割合 | 負債利子控除 |
---|---|---|---|
完全子法人株式等 | 100% | 100%益金不算入 | なし |
関連法人株式等 | 1/3超100%未満 | 100%益金不算入 | あり |
その他の株式等 | 5%超1/3以下 | 50%益金不算入 | なし |
非支配目的株式等 | 5%以下 | 20%益金不算入 | なし |
5%以下の保有でも20%は益金不算入となりますから個人で配当を受け取る際の配当控除よりも得となる計算ですね。
その他の経費が掛かることになりますので一概には言えませんが、3%超えの株を保有してて多額の配当金がある場合には法人を作ってそこで受け取るというのも手ということです。
配当金で生活したいなら一つの銘柄より分散がよいかも
税金面だけで考えるなら一つの銘柄をたくさんもってしまうより、複数の銘柄に分散したほうがよいかもしれません。
大企業の発行済株式総数の3 %以上を所有というのは現実的ではありませんが、時価総額が小さい銘柄なんかだとありえなくもないですからね。
3%超えてしまうと総合課税となり最高で55%の税金となりますが、広く浅くすべて3%未満の株に抑えておけば申告不要制度で20.315%の税金で完結します。
まとめ
今回は「3%以上の株を保有していると配当金課税ではなく総合課税になることをご存知ですか?」と題して配当金の税金についてみてきました。
それなりに有名人の偉い方がこんな間違えた情報をおおぴらに話しているのを見ても一般的にそういう認識の方が多いのかもしれませんね。
ぜひこの機会に配当金の税金について知っておきましょう。
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最後まで読んでいただきありがとうございました。