先日、知り合いから以下の質問をいただきました。
こういう話は多いのですが、実は大きな問題があります。
同じような方も多いと思いますから今回は記事にしたいと思います。
ちなみにこの会社、少し前まで業績はよく、上場準備をしており寸前まで行ってるという話を聞いてたんですよ。(業績が悪化してお流れ?)
IPOって怖いな。。。って思わせる出来事でもありましたね。
一方的な給料の減額は無効だが。。。
まず、結論からお話しておきましょう。
会社側から一方的に給料を減額することは無効です。
簡単に言えば、労働契約の変更には基本的に同意が必要だからです。
具体的には労働契約法に以下のような条文があります。
第8条 労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。
第9条 使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。出典:労働契約法 e-gov(法令検索)
従業員の同意がある減額
給料の金額等は労働契約に含まれています。
つまり、給料を下げる場合には従業員の同意が必要ってことです。
従業員側の同意があれば変更も可能ですが、なければ基本的にはできないってことですね。
なお、ここでいう給料とは基本給だけでなく様々な手当も含みます。
例えば家族手当を会社側が一方的になくしたりはできないということですね。
労働組合が同意をする減額
ただし、本人が同意していなくても減額の場合が認められるケースがあります。
まずは労働組合が合意をする場合です。(労働協約による変更)
一般的に個別に従業員と減額の合意するのは大変ですから、労働組合がある会社だとこちらのパターンが取られるケースが多いですね。
ただし、この場合でも労働組合が形骸化しており会社の言いなりであるとか、労働組合の一部の方が勝手に決める(意思形成に瑕疵がある)ようなパターンだと認められず無効となるケースもあります。
就業規則の改定に伴う減額
また、給料の減額を伴う就業規則の変更が合理的であると認められるパターンも考えられます、
合理的と認め得られるかは具体的には以下のような要件ですね。
第10条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。
出典:労働契約法 e-gov(法令検索)
ちょっとややこしいですが
- 労働者の受ける不利益の程度
- 労働条件の変更の必要性
- 変更後の就業規則の内容の相当性
- 労働組合等との交渉の状況
- その他の就業規則の変更にかかる事情
などが妥当かどうか。
そして変更後の就業規則を従業員に周知させる必要があります。
特に「労働者の受ける不利益の程度」は厳しく見られますので、一方的な減額は基本的には難しいですね。
メリハリを付けるようなパターンだと認められるケースが多いです。
人事評価に伴う減額
次は人事評価に伴う減額です。
例えば人事評価の結果、降格となり給料が下がるというパターンですね。
これも法的に問題はありません。
ただし、この場合は賃金体系や人事評価の方法などが就業規則等にあらかじめ定めてあるなど、公平かつ透明性が必要となります。
特に定めがないのに「評価の結果、給料を下げました」と一方的に通告するのは無効とされる可能性が高いでしょう。
懲戒処分等での減額
職務怠慢や不適切な行為を働いたなどの理由に報酬の減額を発表する市長とか社長を見たことがあると思います。
このような場合はどうでしょう。
これは有効です。
ただし、減額できるのはあらかじめ就業規則にその旨が定めてある場合です。
また、定めてあっても労働基準法第91条で以下のように定められているため減額できる限度額は決まっています。
第91条 就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。
出典:労働基準法 e-gov(法令検索)
まず、1回のミスや問題行動で減給できるのは平均賃金の1日分の半額。
つまり、だいたい半日分の給料までということです。
例えば平均賃金が10,000円の人ならば5,000円が減給できる上限ということですね。
(平均賃金は3ヶ月間の賃金総額と総日数で計算します)
また、いくつかのミスや問題行動で減給を受ける場合もあるでしょう。
この場合は1ヶ月の上限が給料総額の10分の1までとなります。
例えば給料30万円の方が、ミスや問題行動10回して5,000円✕10回受けたとしましょう。
この場合は給料総額の10分1の3万円を減給が超えてしまいますからそこまでが上限となります。
賞与(ボーナス)の減額
また、賞与(ボーナス)は出す、出さないは会社の一定の裁量権があります。
ですから査定の結果、賞与が大幅に少なくなるというのは問題ないということです。
ただし、罰則として賞与をカットする場合は前述の通り限度額1割となります。
詳しくはこちらの記事を御覧ください。
インセンティブ、歩合給の減額
会社や業種、職種によっては業績連動給やインセンティブ、歩合給が給料に組み込まれているケースもあります。
この場合には実績に応じた支払いとなりますので、実績が伴われければ減額も問題ありません。
ただし、その場合も明確な評価基準等をあらかじめ定めて置く必要はあります。
なお、インセンティブ、歩合給の金額や率そのものを変更する場合は前述した就業規則の改定に伴う話となってきます。
欠勤続きの場合の減額
また、ノーワークノーペイという考え方もあります。
言葉の意味そのままですが働かなけれが給料もないってことで、例えば欠勤続きのようなケースでは欠勤分を減給するのは問題ないってことになりますね。
まとめ
今回は「給料を下げるのは違法??限度額はあるの?等を解説」と題して給料を下げられた場合の話を見てきました。
基本的に一方的に給料を下げるのは無効ですが、様々な抜け道的な話もあります。
まずは自社の就業規則を確認してみましょう。
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最後まで読んでいただきありがとうございました。