岸田政権が鳴り物いりで導入することを決めた定額減税。
所得税と住民税を一定額減税する制度です。
これだけ聞くと悪くなさそうですが、給料計算、経理担当者側からみると手間暇が異様にかかり、1年こっきりという歴史的な愚策なんですよ。
もう一つの愚策である「子育て支援金」の問題もあるためか、あまり報道されないので今回はこの定額減税がどれほど大変なのかをまとめてみたいと思います。
定額減税とはなにか
まずは定額減税とは何かを簡単に解説しておきましょう。
定額減税の概要
定額減税とは所得税と住民税を一定額減税する制度です。
名前のとおり、定額で減税されますってことですね。
具体的には以下の方が対象となります。
対象者
- 日本の居住者
- 合計所得金額が1,805万円以下
まず、日本国内に住所を有する個人または現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人が対象となります。
日本人でなくてももらえるってことですね。
また、合計所得金額にも制限があります。
合計所得金額が1,805万円以下である必要があります。
なお、所得税は令和6年分、個人住民税は令和5年分の合計所得金額をもとに定額減税対象が判定されます。
時期がズレるので人によっては所得税は対象だけど、住民税は対象外ってことも有りえますね。
このあたりもかなりややこしいです・・・
なお、合計所得金額は給与収入のみの場合、年収2,000万円以下となります。
子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除の適用を受ける方は、2,015万円以下です。
減税額
減税額は以下のとおり。
※スマートフォンの方はスクロールしてお読みください。
税目 | 種別 | 減税額 |
---|---|---|
所得税 | 本人 | 3万円 |
同一生計配偶者 | 3万円 | |
扶養親族 | 3万円/人 | |
個人住民税 (所得割) | 本人 | 1万円 |
控除対象配偶者 | 1万円 | |
扶養親族 | 1万円/人 | |
控除対象配偶者を除く同一生計配偶者 | 1万円 |
ちょっとややこしいですが、基本的に1人辺り所得税3万円、住民税1万円の合計4万円の減税ということです。
ちなみに所得税や住民税の額が少なく、減税額に満たない方は、別途給付措置が設けられています。
具体的には
- 住民税非課税世帯:世帯主に1世帯あたり7万円と18歳以下の児童1人あたり5万円
- 住民税均等割のみ課税世帯:世帯主に1世帯あたり10万円と18歳以下の児童1人あたり5万円
- 定額減税しきれない場合:定額減税しきれない差額を給付
となります。
ですから住民税非課税世帯以外の一般の方は基本的には1人4万円ってことですね。
ですからこんなややこしいことするなら、マイナンバーで紐づけた公金受取口座に4万円配ればよいだけなんですよ。
おそらく「増税メガネ」とか「増税クソメガネ」という愛称が広まったことで減税としてどうしてもやりたかったのでしょう・・・
ちなみに住民税均等割のみ課税世帯が多くなっているのは、住民税非課税世帯にはまた別の給付があるからです。
給料計算、経理担当者泣かせな定額減税の手続き
それでは本題。
今回の定額減税はかなり面倒な手続きが必要です。
今後続くならシステムなどで対応と考えれるかもしれませんが、今年1回限りというから見れば最悪な施策なんですよ。
それではどのように処理するのかみていきましょう。
定額減税の実施方法
まずは定額減税の実施方法からです。
給与所得者については以下のように減税されます。
- 令和6年6月1日以後最初に支払われる給与等につき源泉徴収をされるべき所得税から控除
- 控除をしてもなお控除しきれない部分の金額は、以後、令和6年中に支払われる給与等につき源泉徴収されるべき所得税等の額から順次控除
つまり、6月1日の源泉徴収される所得税から差し引きますよってことですね。
公的年金の方も基本的に同じ流れです。
事業所得の方は
- 令和6年分の所得税の確定申告から特別控除の額を控除
- 予定納税がある方は令和6年6月以後に通知される、令和6年分の所得税に係る第1期分予定納税額からの控除
源泉所得税も予定納税も仮に所得税を支払っているものですが、そこから差し引きするってことですね。
この時点でもかなりややこしい・・・
月次の給料計算はかなり大変
それでは給料計算、経理担当者が具体的になにをしなければいけないのかを見ていきます。
対象者の選別
まず、対象者の選別が必要です。
対象外のパターンも結構あるんですよ。
具体的には以下の通り。
- 令和6年6月2日以降に入社
- 2箇所以上で働くひと
- 令和6年5月31日以前に退職した
- 令和6年5月31日以前に出国して非居住者となった
まずはこちらを確認する必要があります。
さらに合計所得金額の関係も勘案が必要ですね。
各人別控除実績簿の作成
月次減税事務において、各人別でいくら控除したのかを管理が必要となります。
扶養者の数によって必要な減税額もかわりますから、その辺りも含めて確認が必要となります。
例えば12万円控除する方は以下のような感じですね。
出典:国税庁 令和6年分所得税の定額減税のしかた
6月分で一回で引ければ簡単でしょうが、そうでない場合はいくら引いて、いくら控除しきれていないかの把握が必要です。
そのため、「各人別控除事績簿」の作成が要求されるんですよ。
出典:国税庁 令和6年分所得税の定額減税のしかた
社員数が多ければかなり大変となります。
さらに給料明細の記入も変わるでしょうし、源泉徴収分の納付書の記載も変わってきます。
前述したようにこれがこれからも毎年発生するならシステム化も検討されるでしょうが、今年だけという・・・
年末調整時の対応
なお、さらに年末調整時の対応も必要です。
そもそも月次で引いている源泉徴収所得税は仮の金額ですからね。
出典:国税庁 令和6年分所得税の定額減税のしかた
年末調整は例年より確認する事項が増える感じとなりそうです。
月次の処理が間違えていたり、扶養者の数が変わったりすれば年末調整でお金を徴収(給料の手取りが減る)が必要になるなんてことが多発しそう・・・
給料計算、経理担当者の負担はかなりのものとなりそうです。
まとめ
今回は「歴史的な愚策。所得税の定額減税は給料計算、経理担当者泣かせな理由」と題して定額減税についてみてきました。
かなり給料計算、経理担当者の負担を無視したひどい政策であることが分かってもらえたと思います。
インフレ対策なら一人4万円マイナンバーで紐づけた公金受取口座に給付するだけで済むのに、わざわざこんなややこしい仕組みにして負担を増やす。
歴史的な愚策としか言いようがありません。
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最後まで読んでいただきありがとうございました。