先日、金融庁が投資信託を販売する銀行・証券会社に対して比較可能な共通KPIと考えられる3つの指標を公表することを発表しました。
3つの指標は以下の通り。
・ 投資信託預り残高上位20銘柄のコスト・リターン
・ 投資信託預り残高上位20銘柄のリスク・リターン
これは顧客本位の業務運営を客観的に評価できるようにするための成果指標(KPI)を公表することで銀行や証券会社が自社だけが儲かる地雷商品を売りつけていないか外部からチェックしやすくするのが狙いです。
また、今回の3つの指標を公表に合わせて主要行等9行、地域銀行20行の投資信託販売を今回導入された指標で見た場合のデータも公開しています。
これがあまりに強烈でしたので記事にしたいと思います。
※追記しました。
銀行のそれと比較すると良心的なのがわかりますね。詳しくは下記記事を御覧ください。
先日ネット証券大手4社(SBI証券、楽天証券、マネックス証券、カブドットコム証券)が統計情報(共通KPI)を発表しました。これが大変興味深いものでしたので詳しく見ていきたいと思います。ちなみに同様の統計情報(共通KPI)は金融庁が銀[…]
なお、2019年9月時点の資料はこちらを御覧ください。
銀行が売る投資信託は地雷商品だった・・・
いくつか資料がありますので順番にみていきましょう。
かなりひどい内容です。
銀行で投資信託を買った顧客の半数弱がマイナス
まずは主要行等9行、地域銀行20行が販売した投資信託の顧客別損益別の比率を表した資料からみていきましょう。
半数強の顧客の運用損益率がプラスである一方、35%の顧客が-10%以上0%未満であるなど、半数弱の顧客の運用損益率がマイナスとなっています。
つまり、簡単に言えば半分近くの方は儲けようとして投資信託を買ったのにマイナスとなっているのです。
昨今の株高を考えてこんなにもマイナスが多いのが結構異常な状況といえるでしょう。
出所:金融庁「投資信託の販売会社における比較可能な共通KPIを用いた分析」
顧客の7割近くがマイナスの銀行も・・・
次にこちらは運用損益率0以上の顧客割合別の販売会社数(銀行数)です。
各販売会社について、運用損益率が0以上の顧客の割合が7割台の販売会社がある一方で、3割台に留まる販売会社もあることがわかります。
運用損益率0以上が30%以上40%未満が0以上ってことは逆に言えば60〜70%の顧客がマイナスってことです。
それが2行もあります。
昨今の株高を考えれば地雷商品ばかりを売っていたとしか言いようがありませんね。
地雷商品でも株高のおかげでプラスになっているのが多いというのに・・・・
顧客の半分がマイナスの銀行が29行中9行もあります・・・・
逆に1行は70%以上80%未満がプラスとなっていますね。
出所:金融庁「投資信託の販売会社における比較可能な共通KPIを用いた分析」
平均運用損益率がマイナスの銀行まで
次に平均運用損益率別の販売会社数(銀行数)です。
各販売会社について、平均運用損益率を試算すると、10%以上の販売会社がある6行ある一方で、0%未満に留まる販売会社もあります。
0%未満とは顧客の運用損益率を平均でみてもマイナスということです。
どこなのかはわかりませんが主要行9社のうちの1社です。
名前を公表してほしいところですね・・・
出所:金融庁「投資信託の販売会社における比較可能な共通KPIを用いた分析」
コストとリターンに関係性はない
また、各販売会社の投資信託預り残高上位20銘柄のうち設定後5年以上の投資信託について、コスト・リターンを検証したところ、両者に明瞭な関係が認められず、コストに見合ったリターンは必ずしも実現していないことも資料として提示されています。
この辺りはウォール街のランダム・ウォーカー〈原著第11版〉 ―株式投資の不滅の真理でもうたわれている話ですが、投資初心者の方だと認識がないところでもあります。
銀行からすればコストが高い商品を売ったほうが儲かりますのでコストとリターンに相関性がなくてもコストが高い商品を売りたくなってしまうのでしょうね・・・顧客本位とはいえません。
出所:金融庁「投資信託の販売会社における比較可能な共通KPIを用いた分析」
リスクとリターンの関係性はそれなりに
リスクとリターンの関係も今回の資料にありました。
一応リスクが増えればリターンも増えている傾向にありますね。
出所:金融庁「投資信託の販売会社における比較可能な共通KPIを用いた分析」
シャープレシオ別の販売会社数
これも面白い資料です、投資信託(預かり残高上位20銘柄の加重平均)のシャープレシオ別の販売会社数(銀行数)です。
シャープレシオとはリスク(標準偏差)1単位当たりの超過リターン(リスクゼロでも得られるリターンを上回った超過収益)を測るものでこの数値が高いほどリスクを取ったことによって得られた超過リターンが高いことを意味します。
同じリスクならどちらのリターンが高いかを考えるときに役立ちます。
しかし、銀行の販売状況を見ると0.8台の販売会社がある一方で、0.3台に留まる販売会社が多くあります。
つまり、これらの指標を無視して販売しているとも考えられるでしょう。
出所:金融庁「投資信託の販売会社における比較可能な共通KPIを用いた分析」
まとめ
今回は「銀行から投資信託を買うのはやはり危険だった」と題して金融庁の資料を紐解いてみました。
今後はこれらの指標は銀行が自主的(強制的に近いかな)に公表することになります。
金融庁がこのような3つの指標を公表したことで、それら指標を良くしないと顧客が離れることにも繋がります。
そのため銀行も3つの指標を意識した取り組みを行うでしょう。
そうなれば顧客本位の投資信託販売につながるというのが金融庁の狙いなのでしょうね。
今回の取り組み自体はとてもよい取り組みだと思います。
しかし、今回の件だけでなく他の件も含めてすぐに銀行の方針や考えが変われるとは思えませんし、自分たちが騙されないように金融知識をつけるのが一番だとは思いますけどね。
こちらの統計資料を見てもそうですが、日本人の金融知識が不足しているなって感じます。
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ぜひ金融知識をつけていっていってくださいね。
読んでいただきありがとうございました。
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