「節分天井、彼岸底」という格言をご存じでしょうか。
「2月の節分頃に株価が天井を付け、3月の彼岸頃に底を打つ」
日本の投資家の間で長く語り継がれてきた相場の経験則です。
「昔からの格言だから、きっと当たっているのだろう」
そう思っている方も多いかもしれません。
しかし、実際にデータを検証してみると、この格言に従って投資判断をすることは非常に危険であることがわかります。
本記事では、2008年から2025年までの18年分の日経平均株価データを使い、「節分天井、彼岸底」の真実を明らかにします。
結論から言えば、この格言の的中率はわずか44%。コインを投げるより少し悪い程度なのです。
格言を鵜呑みにせず、冷静にデータを見ることの重要性をお伝えします。
※2025年までの検証データを加えました
節分天井、彼岸底とは何か
まず「節分天井、彼岸底」の意味を整理しましょう。
この格言は、日本の株式市場における季節的なパターンを示したものです。
節分(2月3日頃)に株価が高値を付け、その後下落して春の彼岸(3月17日〜23日頃)に底を打つ、という経験則を表しています。
なぜこのような格言が生まれたのでしょうか。
もともとの由来は、もともとコメ相場の季節性に基づく格言が株式市場へ転用された、という説明が一般的です。
コメ相場では“彼岸”が春ではなく秋彼岸を指す点など、転用のズレも含めて注意喚起しています
また、年末から年明けにかけての「新春相場」で株価が上昇し、2月頃に一服するという見方があります。
また、3月は日本企業の決算期末であり、機関投資家のポジション調整や配当落ちなどで株価が下押しされやすいという説明もあります。
しかし、こうした「もっともらしい説明」が本当に事実と合致しているのかは、データで確認する必要があります。
2026年の節分と彼岸はいつ?
2026年の節分は2月3日(火)です。
2025年は2月2日(日)でしたが、2026年は例年通り2月3日となります。
これは立春の日付が変動するためです。
春の彼岸は、春分の日を中日として前後3日間の計7日間を指します。
2026年は3月17日(火)〜23日(月)が該当します。
つまり、格言通りならば、2026年は2月3日に天井を付け、3月17日〜23日に底を付けるということになります。
では、本当にそうなるのでしょうか。
過去のデータを見てみましょう。
18年分の検証データ:節分天井、彼岸底は当たっているのか
2008年から2025年までの18年間について、節分時点と彼岸時点の日経平均株価を比較しました。
節分は株式市場が休場の場合は翌営業日、彼岸は期間内の最終営業日の終値を使用しています。
検証結果一覧
| 年 | 節分の株価 | 彼岸の株価 | 騰落幅 | 節分天井彼岸底? |
|---|---|---|---|---|
| 2008年 | 13,859.70 | 12,480.09 | -1,379.61 | 的中 |
| 2009年 | 7,825.51 | 8,488.30 | +662.79 | 外れ |
| 2010年 | 10,404.33 | 10,815.03 | +410.70 | 外れ |
| 2011年 | 10,431.36 | 9,435.01 | -996.35 | 的中 |
| 2012年 | 8,831.93 | 10,011.47 | +1,179.54 | 外れ |
| 2013年 | 11,260.35 | 12,338.53 | +1,078.18 | 外れ |
| 2014年 | 14,619.13 | 14,475.30 | -143.83 | 的中 |
| 2015年 | 17,335.85 | 19,713.45 | +2,377.60 | 外れ |
| 2016年 | 17,191.25 | 16,892.33 | -298.92 | 的中 |
| 2017年 | 18,918.20 | 19,262.53 | +344.33 | 外れ |
| 2018年 | 22,682.08 | 20,617.86 | -2,064.22 | 的中 |
| 2019年 | 20,831.90 | 21,627.32 | +795.42 | 外れ |
| 2020年 | 22,971.94 | 16,552.83 | -6,419.11 | 的中 |
| 2021年 | 28,207.48 | 29,174.15 | +966.67 | 外れ |
| 2022年 | 27,330.96 | 27,693.77 | +362.81 | 外れ |
| 2023年 | 27,509.46 | 27,419.61 | -89.85 | 的中 |
| 2024年 | 36,158.02 | 40,888.43 | +4,730.41 | 外れ |
| 2025年 | 38,520.09 | 37,677.06 | -843.03 | 的中 |
的中率はわずか44%
18年間のうち、「節分天井、彼岸底」が当たったのは8回。
的中率は44%(8勝10敗)です。
これはコイントスの確率(50%)よりも低い数字です。
つまり、この格言を信じて「節分に売って彼岸に買う」という投資行動をとると、むしろ損をする可能性の方が高いのです。
特に注目すべきは、2012年、2013年、2015年、2024年のように、節分から彼岸にかけて日経平均が1,000円以上も上昇した年が複数あることです。
これらの年に格言通りの行動をとっていれば、大きな上昇相場を逃すことになりました。
なぜ格言は当たらなくなったのか
「節分天井、彼岸底」という格言がなぜ的中しなくなったのか。
いくつかの理由が考えられます。
市場環境の変化
かつての日本株市場は、国内投資家が中心でした。
しかし現在は、海外投資家の売買比率が7割を超えています。
彼らは日本の節分や彼岸といった暦を意識して投資判断をすることはありません。
情報伝達速度の向上
インターネットの普及により、市場参加者全員が同じ情報をリアルタイムで共有できるようになりました。
かつては「季節的なパターン」として機能していたものも、皆が知っている以上、裁定取引によって効果が打ち消されてしまいます。
マクロ経済要因の影響力拡大
2020年の新型コロナショック、2022年以降の米国利上げ、2025年のトランプ関税など、グローバルな経済イベントが日本株に与える影響は年々大きくなっています。
こうした要因の前では、季節的なパターンは埋もれてしまいます。
自己成就的予言の限界
かつては「節分天井、彼岸底」を信じる投資家が多く、その行動が実際に相場を動かしていた可能性があります。
しかし、データが蓄積され、格言の信頼性に疑問が呈されるようになると、この「自己成就的予言」効果も薄れていきます。
2020年と2025年:偶然の一致に惑わされない
「でも、2020年と2025年は当たっているじゃないか」と思われた方もいるでしょう。
確かに2020年は、新型コロナウイルスの世界的流行により、3月19日に日経平均が16,552円まで急落。
まさに「彼岸底」となりました。節分から彼岸にかけての下落幅は6,419円と、検証期間中最大でした。
2025年も、節分(38,520円)から彼岸(37,677円)にかけて843円下落し、格言は「的中」しています。
ただし、これはトランプ政権による相互関税政策への警戒感が主因であり、「節分」や「彼岸」という暦とは無関係です。
重要なのは、「たまたま当たった」ことと「因果関係がある」ことを区別することです。
18年間で8回しか当たっていない格言を信じて投資判断をすることは、科学的な根拠に欠けます。
格言との正しい付き合い方
では、「節分天井、彼岸底」のような投資格言は完全に無視すべきなのでしょうか。
必ずしもそうではありません。格言との正しい付き合い方を考えてみましょう。
知識として持っておく価値はある
投資格言は、市場参加者の一部が意識している「相場観」を反映しています。
完全に無視するのではなく、「こういう見方をする人もいる」という情報として頭の片隅に置いておくことには意味があります。
特に、節分や彼岸の時期にメディアがこの格言を取り上げると、一時的に相場に影響を与える可能性があります。
そうした「ノイズ」を理解しておくことは、冷静な投資判断に役立ちます。
投資判断の根拠にはしない
一方で、格言を投資判断の主要な根拠にすることは避けるべきです。
「節分だから売ろう」「彼岸だから買おう」という判断は、データに基づかない感覚的なものです。
投資判断は、企業のファンダメンタルズ、マクロ経済環境、金融政策の動向など、より確かな根拠に基づいて行うべきです。
検証する習慣を持つ
「昔から言われているから」「みんなが信じているから」という理由で、何かを鵜呑みにしない姿勢が大切です。
本記事で行ったような検証を、自分でも行ってみることをお勧めします。
データを自分の目で確認する習慣を持つことで、市場の「常識」に惑わされない投資家になれるでしょう。
他の投資格言も検証してみよう
「節分天井、彼岸底」以外にも、日本の株式市場には多くの格言があります。
例えば、海外で有名な「セル・イン・メイ(株は5月に売れ)」。これも検証してみると、必ずしも当たっているわけではありません。
また、「辰年は跳ねる」「午年は尻下がり」といった干支にまつわるアノマリーもあります。
2026年は午年ですので、「尻下がり」を心配する声もあるかもしれません。
しかし、こうした暦に基づく投資判断が長期的なリターンを向上させるという証拠はありません。
投資格言やアノマリーに興味がある方は、ぜひご自身でデータを検証してみてください。
その過程で、市場の仕組みや自分の投資スタイルについて、より深い理解が得られるはずです。


まとめ
「節分天井、彼岸底」について、18年分のデータで検証しました。
結果は8勝10敗、的中率44%。コイントスより当たらない格言を信じて投資することは、合理的とは言えません。
もちろん、2026年の相場がどうなるかは誰にもわかりません。
たまたま「節分天井、彼岸底」になる可能性もあります。しかし、それは格言が正しいからではなく、偶然の結果に過ぎないでしょう。
投資において大切なのは、「なんとなく」ではなく「データで」考えることです。
格言や常識を疑い、自分の目でデータを確認する。
そうした姿勢を持つことで、市場の「雰囲気」に流されない、自分なりの投資判断ができるようになります。
本記事が、皆様の投資判断の一助となれば幸いです。
季節性などのアノマリーについて勉強したい方は下記の本はおすすめですよ。

