会社員が加入する厚生年金制度には自営業者などが加入する国民年金にはないお得な制度がいくつかあります。
あまり知られていませんが、その中に年の差夫婦だとかなりオトクな制度があります。
それが「加給年金」です。
ただし、支給されるためにはいくつか条件もあります。また、加給年金を受給するためには手続きも必要です。
そのため、特別支給の老齢厚生年金と同じくもらい忘れる方も多いという話もあります。
今回はこの「加給年金」について見ていきましょう。
老齢厚生年金の加給年金とはどんな制度か
日本の年金制度はかなり複雑です。そのため他の国にはあまりない社会保険労務士なんて専門の資格もあるくらいです。
その中でも特に複雑なのか厚生年金です。
いろいろな制度があり、いろいろなルールがあってかなりややこしいんですよ。
その中のややこしい制度の一つに今回ご紹介する「加給年金」があります。
加給年金を簡単に言えば年金の「家族手当」のようなものです。
詳しく見ていきましょう。
加給年金の対象者
加給年金は老齢厚生年金がもらえる様になった時点で条件を満たした生計を維持されている配偶者または子がいる場合に加算されます。まさしく「家族手当」ですね。
基本的な条件は以下の2つとなります。
出所:日本年金機構「加給年金と振替加算」より
出所:日本年金機構「加給年金と振替加算」より
加給年金の対象となる配偶者の年齢条件
対象となる配偶者の条件を見ておきましょう。
配偶者の年齢条件はシンプルです。
年の差夫婦がオトクな理由
加給年金は対象者が65歳到達時点から配偶者が65歳になるまでもらえます。
つまり、年の差があったほうが長い期間もらえるのです。
詳しくは後述しますが、昭和18年4月2日以後に生まれた方で配偶者がいる場合には加給年金が年間約40万円もらえます。
それが配偶者が65歳になるまでですから、20歳年の差があれば約800万円支給されることになります。
年の差がない方だとそもそも配偶者分の加給年金はもらえませんから、年の差婚は年金だけ考えればオトクなんですね。
加給年金の対象となる子の年齢条件
子の年齢条件は以下のとおりです。
このあたりは他の年金制度と同様のルールとなっていますね。
こちらも配偶者と同様で加給年金は対象者が65歳到達時点から子が18歳(20歳)になるまでもらえます。
つまり、高齢になってからの子の方が加給年金だけのことを考えればお得なんですね。
加給年金の対象となる生計維持の条件
もう一つ押さえておく必要があるのが生計維持の条件です。配偶者も子も対象となるのは生計維持をされていないと対象とはなりません。
では生計維持とはどのように判断されるのでしょうか?
生計維持の所得要件
まずは所得に関する条件です。
出所:日本年金機構「所得要件」より
条件を満たした配偶者や子がいてもその方たちが上記の条件を超えていると生計を維持しているとみなされなくなるため、加給年金を受給できなくなります。
生計同一
もう一つの条件が被保険者の方と配偶者や子が生計を同一にしている必要があります。
出所:日本年金機構「生計維持とは」より
基本的には住民票上でどういう住所が必要ですが、別居の場合でも仕送りをしていたり、健康保険の扶養親族となっていて証明できる場合には生計が同一であるとみなされます。
結婚してるけど別居してて、仕送りもなくそれぞれ別に生活しているような場合には対象外となり、加給年金を受給できなくなります。
その他加給年金の対象外となるケース
他にもいくつか加給年金の対象外となる場合があります。
年収の条件
年金を受け取る方の年収が
配偶者の条件
また、配偶者の方については以下の年金等を受け取っている間は支給されません。(支給停止)
加給年金でもらえる金額
それでは加給年金はいくらもらえるのでしょうか?
まずは基本は以下の金額となります。
対象者 | 加給年金額 | 年齢制限 |
---|---|---|
配偶者 | 224,500円 | 65歳未満であること (大正15年4月1日以前に生まれた配偶者には年齢制限はありません) |
1人目・2人目の子 | 各224,500円 | 18歳到達年度の末日までの間の子 または1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子 |
3人目以降の子 | 各 74,800円 | 18歳到達年度の末日までの間の子 または1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子 |
出所:日本年金機構「加給年金と振替加算」より
配偶者加給年金金額の特別加算
さらに配偶者分については老齢厚生年金を受けている方の生年月日に応じて、配偶者の加給年金額に33,200円~165,600円が特別加算されます。
ちょっとややこしいのが配偶者の生年月日ではなくて受給権者(年金をもらっている方)の生年月日で決まってくることですね。
受給権者の生年月日 | 特別加算額 | 加給年金額の合計額 |
---|---|---|
昭和9年4月2日~昭和15年4月1日 | 33,200円 | 257,700円 |
昭和15年4月2日~昭和16年4月1日 | 66,200円 | 290,700円 |
昭和16年4月2日~昭和17年4月1日 | 99,400円 | 323,900円 |
昭和17年4月2日~昭和18年4月1日 | 132,500円 | 357,000円 |
昭和18年4月2日以後 | 165,600円 | 390,100円 |
出所:日本年金機構「加給年金と振替加算」より
昭和18年4月2日以後生まれの方だと配偶者分だけで年間390,100円ですからかなり大きい金額となってきますね。
加給年金の申請方法
加給年金の受給をするためには手続きをする必要があります。
該当される方は最寄りの年金事務所または年金相談センターにご相談ください。
必要な書類は以下のとおりです。
住民票の写し(世帯全員)
加給年金の対象となる配偶者や子の所得証明または非課税証明書
配偶者が65歳になったら振替加算も
前述のとおり、配偶者が65歳になると配偶者分の加給年金は終わってしまいます。
しかし、そのかわりに配偶者の年金にその分が上乗せされる制度があります。
それが振替加算です。
配偶者の生年月日が、大正15年4月2日から昭和41年4月1日である場合には加給年金の代わりに「振替加算」が加算されるのです。
こんな感じのイメージですね。
出所:日本年金機構「加給年金と振替加算」より
なお、振替加算でもらえる金額は配偶者の生年月日により異なり年額15,042円〜224,500円となっています。
一番多いのが昭和2年4月1日までの方で年額224,500円、一番少ないのが昭和40年4月2日~昭和41年4月1日の方で年額15,042円です。
つまり、年齢が高い人のほうがたくさんもらえるということです。なお、生年月日が昭和41年4月2日以降の方はもらえません。
加給年金まとめ
今回は「【加給年金】年の差夫婦だとお得な年金制度があるのをご存知ですか?」と題して加給年金について詳しくみてきました。
特別支給の老齢厚生年金と同様にもらい忘れている方がかなりいるそうですから該当する方は早めに手続をしておきましょう。
このあたりはマイナンバーもできたことですからお役所の方で自動で手続きしてくれるべきなんですしょうけどね・・・
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