よくいただく質問に「親を扶養に入れたほうがよいですか?」ってのがあります。
また、親世代の方から「子供の扶養に入ったほうがよいですか?」って質問もありますね。
ひとくちに親の扶養と言っても所得税法上の扶養と健康保険上の扶養では扱いや条件もかなり違いますのでそれぞれ分けて考えていく必要があります。
また、それぞれメリットもデメリットや考えないといけないポイントがありますので簡単ではないんですよ。
今回は親を扶養にいれるべき?もしくは子の扶養に入るべき?という点について見ていきましょう。
扶養とは
まずは扶養とはどういうものなのかという点から見ていきましょう。
扶養とは「自力で生活できない者の面倒をみ、養うこと」を意味します。
簡単に言えば家族の面倒をみることですね。
この意味合いは所得税でも健康保険でも同じです。
ただし、名称が多少違います。
所得税では「扶養親族」、社会保険(健康保険)では「被扶養者」と呼びます。
また、それぞれ扶養の範囲や条件も違ってきます。
所得税法上の扶養(扶養親族)
まずは所得税法上の扶養から見ていきます。
所得税法の扶養は所得税計算上の扶養控除に影響してきます。たくさん扶養していれば所得から控除され所得税が安くなるということですね。
扶養の範囲
配偶者以外の扶養の条件は以下のすべてに当てはまる人となります。
(2) 納税者と生計を一にしていること。
(3) 年間の合計所得金額が38万円以下であること。
(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
(4) 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと。
意外に引っかかってしまう人が多いのが(4)ですね。
親を事業専従者にしている自営業者の方はお気をつけください。
扶養控除額(親を扶養に入れるメリット)
扶養になると以下の控除が受けられます。
区分 | 控除額 | |
---|---|---|
一般の控除対象扶養親族 | 38万円 | |
特定扶養親族 | 63万円 | |
老人扶養親族 | 同居老親等以外の者 | 48万円 |
同居老親等 | 58万円 |
出典:国税庁「扶養控除」より
親に関係してくるのは老人扶養親族です。老人扶養親族とは控除対象扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が70歳以上の人をいいます。
同居老親とは老人扶養親族のうち、納税者又はその配偶者の直系の尊属(父母・祖父母など)で、納税者又はその配偶者と普段同居している人をいいます。ただし、病院に入院しているなど一時的に家から離れて生活している場合でも仕送りしているなど生計を一にしている場合は同居していなくてもこちらに該当します。
なお、老人ホームへ入所している場合は同居とは扱われません。
また、住民税でも扶養控除は行われます。
ただし、少しだけ控除額が違いますのでご注意ください。
区分 | 控除額 | |
---|---|---|
一般の控除対象扶養親族 | 33万円 | |
特定扶養親族 | 45万円 | |
老人扶養親族 | 同居老親等以外の者 | 38万円 |
同居老親等 | 45万円 |
どれくらい税金が安くなるのか?
たとえば同居老親等がいる場合に58万円が扶養控除の対象となります。
所得税が10%の人ならば5.8万円、20%の人ならば11.6万円が所得税だけで減税されることになります。
また、住民税で4.5万円軽減されます。
合計すると10%の人で10.3万円、20%の人で16.1万円の節税となるのです。
このあたりは大きなメリットとなりますね。
親を扶養に入れるデメリット
所得税の扶養に関してはデメリットというほどではありませんが、考えて起きたいことがあります。
それは住宅ローンやiDeCoなどですでに所得税や住民税が少ない場合にはそれほど効果もないケースがあることです。
そもそも引ける税金がなければ効果がないんです。
またふるさと納税の上限額にも影響がありますので注意が必要です。
社会保険法上の扶養(被扶養者)
次は社会保険(健康保険)上の扶養です。
所得税とは大きくルールが違いますので混同しないようにしておきましょう。
扶養の範囲
被扶養者になれる方の条件は以下の範囲に入っている場合です。
※全国健康保険協会管掌健康保険のルール
・配偶者
・子、孫および兄弟姉妹
・父母、祖父母などの直系尊属
・上記以外の3親等内の親族(伯叔父母、甥姪とその配偶者など)
・内縁関係の配偶者の父母および子(当該配偶者の死後、引き続き同居する場合を含む)
同居しているのかどうかの条件もありますので注意が必要です。
また、この条件は全国健康保険協会管掌健康保険のものですが、健康保険組合によっては多少ルールが違うものがあります。
細かいルールは加入している健康保険組合にご確認ください。
収入要件
次に収入の要件です。
※全国健康保険協会管掌健康保険のルール
同居の場合 収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満
別居の場合 収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満
引っかかってしまうケースが多いのが同居の場合の収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満というルールや別居の場合の収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満ですね。
こちらには注意しておきましょう。
また、所得税の場合は年間トータルの所得で考えますが、社会保険の場合には月々の収入ベースで判断されます。
例えば130万円未満は月にすると108,333円未満です。ずっと扶養に入っているには毎月108,333円未満である必要があるってことですね。
また、こちらの条件も全国健康保険協会管掌健康保険のものですが、健康保険組合によっては多少ルールが違うものがあります。
細かいルールは加入している健康保険組合にご確認ください。
とくに仕送りや年収の扱いが微妙に健康保険組合によって異なります。
親を扶養にいれるメリット
社会保険(健康保険)上で扶養親族と認められれば親については75歳以上で後期高齢者医療制度の被保険者になるまでは健康保険料を納めなくてもよくなります。健康保険はそれなりに高いですからこのメリットはかなり大きいです。
また、子が健康保険組合に加入している場合には国民健康保険と比較して福利厚生などの優遇措置(健康保険組合による)がありますのでそれらが受けられるのもメリットになるでしょう。
ただし、子が自営業者などで国民健康保険の被保険者の場合は扶養家族という概念はありません。そのため、保険料は世帯収入に基づいて計算され保険料を納めることが必要となります。
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親を扶養にいれるデメリット
社会保険に関しても扶養にいれる際に考えておかなければならないことがあります。
まずは高額療養費制度や高額介護合算療養費、高額介護サービス、特定入所者介護サービス費の問題です。
これら費用に影響があるんですよ。
例えば高額療養費を例に見ていきましょう。
高額療養費とは医療費の家計負担が重くならないよう、医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が1か月で上限額を超えた場合、その超えた額を支給する制度です。
所得によって自己負担額の限度額が変わってくるんですね。
扶養に入っていなければ親のみの所得で判断されますが、扶養に入ると、扶養している人の所得で判断になるのです。
ただし、高額療養費には世帯で合算して適用できる世帯合算の仕組みもあります。
ですからどっちが金銭面で得なのかは状況で変わってきますのでよく考える必要があるのです。
親を扶養に入れる方法
親が扶養に入れるためには手続きが必要です。
所得税も社会保険も基本的には同じで会社の担当者を通して行う必要があります。
所得税の扶養に入れる
所得税の扶養に入れるのは基本的に年末調整もしくは確定申告で行います。
会社員の方なら一般的に年末調整ですね。
年末調整の際に給与所得者の扶養控除等(異動) 申告書に記載をするだけです。
健康保険の扶養に入れる
健康保険の扶養手続きも会社の担当者を通して行います。
「被扶養者(異動)届」を日本年金機構(全国健康保険協会管掌健康保険)や健康保険組合に提出するのです。
その際に必要な添付書類がいくつかあります。
全国健康保険協会管掌健康保険の場合には状況により以下の書類が要求されます。
・収入要件確認のための書類
・仕送りの事実と仕送り額が確認できる書類
・内縁関係を確認するための書類
・海外にお住まいのご家族について扶養認定を受けるための書類
続柄確認のための書類
続柄確認のための書類は被保険者の戸籍謄本や住民票のことを指しています。
収入要件確認のための書類
収入要件確認のための書類は以下のものを指しています。
退職したことで要件を満たす→退職証明書または雇用保険被保険者離職票の写し
失業保険終了で条件を満たす→雇用保険受給資格者証の写し
年金受給中→年金額の改定通知書などの写し
自営業者→直近の「確定申告書の写し」
上記に該当しない→課税(非課税)証明書
仕送りの事実と仕送り額が確認できる書類
仕送りの事実と仕送り額が確認できる書類は以下のとおりです。
「送金の場合は、現金書留の控え(写し)」
内縁関係を確認するための書類
内縁関係を確認するための書類は内縁関係にある両人の戸籍謄(抄)本及び「被保険者の世帯全員の住民票)」 などとされています。
海外にお住まいのご家族について扶養認定を受けるための書類
海外にお住まいのご家族について扶養認定を受けるための書類は以下のとおりです。
被保険者と同居していることが確認できる公的証明書
生計維持関係の確認が取れる書類、仕送り額等が分かる書類 など
親を扶養にいれるべきか まとめ
今回は「親を扶養にいれるべきか、メリットとデメリットを考える」と題して親を扶養に入れたほうがよいのかについて考えてきました。
基本的には扶養にいれた方がお得です。しかし、高額療養費なんかにも影響がありますのでそのあたりも予め考慮の上検討してみてくださいね。
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最後まで読んでいただきありがとうございました。