株や為替が大きく動いています。
いくつか要因がありますが、特に大きなものがアメリカの中央銀行にあたるFRBが利下げに踏み切ったことです。
政策金利を0.25%引き下げたのです。
政策金利の動向は株、債券、為替にかなり大きな影響を与えます。
とくにアメリカは経済においても世界の中心的な部分がありますので、今回の利下げは世界経済全体に影響があるといっても過言でないでしょう。
そこで利下げとはなにか。
利下げすることにより株、債券、為替がどうなるのか?について考えて見たいと思います。
なお、利下げの逆である利上げの株や債券への影響はこちらの記事をご覧ください。
金利と株の関係はかなり深いものになります。実際株式市場で大きな暴落があった時期には金利の上げの影響であったことも大きいですね。直近だと2018年2月の暴落はそこが大きかったと言われています。そこで気になるのが金利が上[…]
利下げとはなにか?
まずは利下げとはなにかについて見ていきましょう。
利下げとは簡単に言えば政策金利を引き下げる金融政策のことを指します。
利下げをよく理解するために事前に知っておきたいちょっとややこしい用語がいくつかありますので合わせ知っておきましょう。
FRBとは
今回利下げを発表したFRB(The Federal Reserve Board)とはどういったものなのかについてもみておきましょう。
FRBとは中央銀行の最高意思決定機関。日本語では「連邦準備理事会」と言います。
FRBは年に8回、FOMC(連邦公開市場委員会)という会合を開催、そこで景況判断を行い、アメリカの金融政策やFFレートの金利誘導目標などを決定しています。
今回は政策金利を0.25%引き下げたのです。
日本で言えばFRBが日本銀行。FOMCが金融政策決定会合ですね。
政策金利とは
政策金利とは中央銀行が一般の銀行に融資をする際の金利のことです。
日本では日本銀行が民間銀行へ貸し出す金利のことを2006年まで公定歩合と呼んでいました。この言葉には馴染みがある方も多いかもしれません。
なぜ政策金利を上げ下げするのか?
それではなぜ政策金利を引き上げたり(利上げ)、引き下げたり(利下げ)と上げ下げするのでしょうか?
これは簡単に言えば景気を調整するためです。
景気が良い時
政策金利は基本的に景気が良いときは高く設定されます。(昨今の日本はちょっと特殊な状態です)
景気の過熱を抑えるために行われるのです。(バブルを防ぐということです)
政策金利が高くなれば金融機関は高い金利でしかお金を調達できません。
そうなるとお金を貸す先も絞るようになりますし、高い金利で貸し出すことになります。
企業や個人がお金が借りにくくなりますから、企業であれば設備投資、個人であれば住宅の購入が抑えられます。
つまり、経済活動が抑制されることで景気の過熱感が抑えられるのです。
また、経済活動が抑制されることで物価を押し下げる効果もあります。
景気が悪い時
逆に景気が悪くなってくると政策金利は低く設定されます。
政策金利が低ければ低いほど金融機関は低い金利でお金を調達できますから、貸し出し金利も低くなります。
そうなれば企業や個人がお金を借りやすくなりますからお金が回りやすくなります。
会社であれば金利が低くなれば設備投資が活発化します。
個人であれば住宅や車を買ったりといった経済活動が生まれ経済が活性化するのです。
つまり、お金が回る様になります。
そうすることで景気が上向くのを狙っているのです。
今回のアメリカは世界経済全体の景気の先行きが不透明とのことで予防的な意味も込めての利下げ(予防的利下げ)とのことです。
本音はトランプが選挙対策で景気をあげるために圧力を掛けたのも大きいと思われますが・・・
利下げすると株、債券、為替はどうなる?
それでは利下げすると株、債券、為替はどう影響あるのでしょうか?
利下げによる株への影響は?
利下げは株にとっては基本的にプラスです。
今回利下げをしたのはアメリカですからアメリカの株にとってはプラスってことですね。
ただし、アメリカの株が動くと日本もかなりつられますからアメリカの株が調子が良ければ日本の株にもプラス要因といってもよいでしょう。(後述する為替の影響がありますのでなんとも言えないところもあります)
大きな理由としては企業要因と投資家要因があります。
企業要因
まず企業側の話です。
これは簡単です。
会社は新規事業に必要な資金のために借入などを行いますが、その際に金利が低くなれば金利負担が減りますから業績が回復します
また、業績の向上したりや利息が低いなれば会社はそもそもの設備投資を積極化するようになります。
設備投資が積極化すれば将来的に会社の業績へ反映しますし、給料の増加にも繋がり、社会全体としての経済活動が活発化する可能性が高いのです。
つまり、金利が低くなると将来の企業業績が良化する可能性が高いため株が上がるのです。
(日本はこれを狙ってマイナス金利をやっていたりします)
投資家要因
次に投資側の話です。
投資家はより有利なところに投資をしたいと考えます。
金利が下がれば相対的に預金や債券の魅力が下がります。
そのため、比較してより有利と思われる株への投資を増やします。
つまり、金利が下がることで資金が預金などから株へ流れることで株が上がるのです。
利下げによる債券への影響は?
次に利下げと債券の関係はどうでしょう?
これはちょっとややこしいのです。
金利が下がると債券の金利も下がるからマイナスに働きそうな気がしますね。
でも逆なんです。
債券にとってもプラス要因なんです。
簡単な流れを紹介しましょう。
例えば元本が100円の債券年利率2%を買っていたとしましょう。
償還は5年後です。
つまり、5年後には100円返ってきますし、利率は年2%もらえるということです。
2年後に年利率は1%になったとしましょう。
新しい債券だと年1%しか利率がないのに、2年前に発行された債券は年2%の利率がある。
それならば多少高くても2年前に発行された債券が欲しくなりますよね。
つまり、すでに発行されている債券の価値が上がっているのです。
金利が下がったことで債券の価格は上がるのはこういうからくりなのです。
ちょっとややこしいかもしれません。
iDeCoなんかで海外の債券の投資信託を買っている方はこの辺りも知っておきたいところです。
利下げによる為替への影響は?
最後は利下げと為替の関係です。
資金は基本的に金利が低いところから高いところに流れます。
そのためアメリカが利下げを行うとドル安が進行します。
つまり、日本から見れば円高、ドル安ですね。
実際にFRBが利下げを発表して以降かなりの円高、ドル安となっていますね。
ただし、為替は必ずそう動くわけでもないのが難しいところです。
為替の変動は日本企業の業績に大きな影響あり
日本の会社の業績は為替の変動で大きな影響が及びます。
円高になれば輸出関連企業の業績は大きく悪化します。
輸入企業は業績が上がることになります。
為替の影響を受けて業績に変化が生じるならば株にも影響があります。
特に日本は輸出関連企業の方が強いですから、今回の利下げで円高に大きく振れれば日本の株にとってはマイナス要因ですね。
例えば1ドル110円のときに110万円(1万ドル)の車をアメリカで売っていたとしましょう。
為替が1ドル106円に円高になってしまうと同じ1万ドルで売っていても日本円にすると106万円しかなくなってしまいます。
結構大きな差ですよね。
もし同じ利益を出そうと値上げすれば売上数量を下げてしまう可能性が高いですから輸入関連企業にとってはかなり不利なのが円高なのです。
アメリカの株や債券をもっていても円高になると・・・
前述のようにアメリカ株や債券は利下げすることはポジティブ要因です。
そのため株価が上がったとしても為替の影響で日本円で考えると円高になって対して儲からない、マイナスになる可能性も注意しておく必要があります。
例えば100ドルのアメリカ株は110ドルまで上がったとしましょう。
10%の上げですね。
しかし、円高ドル安が進行して110円だったのが100ドルになった場合には日本円に換算すれば11,000円で買ったものが、11,000円になっています。
つまりプラスマイナスゼロですね。
外国籍の株や債券を買う場合にはこのような為替の部分も考える必要があります。
この辺りは投資信託でもETFでも同じですね。
投資信託の中には為替の影響を無くした「為替ヘッジ」というタイプもあります。
為替を考えたくない方は為替ヘッジを選択するのも一つですね。
詳しくはこちらの記事を御覧ください。
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逆に言えば円高が進行すれば日本からはアメリカ株が買いやすくなるというのもありますけどね。
まとめ
今回は「利下げとはなにか?株、債券、為替などがどうなるのか影響をわかりやすく解説」と題して利下げをすると株、債券、為替にどのような影響があるのかをみてきました。
まとめると以下のとおりです。
・利下げすると株にはプラス要因(アメリカ株)
・利下げすると債券にもプラス要因(アメリカ発行の債券)
・利下げすると円高・ドル安の傾向
・円高になると日本の会社にとってはマイナス(日本の株はマイナス要因)
これら内容を勘案するとアメリカ株へはプラス要因が大きい。
逆に日本の株へは円高の影響からあまり良くなさそうってことがわかると思います。
ただし、必ずしも定説どうり動くとか限らないのが株や為替の世界です。
理論を知った上で動きを注視することが重要ですね。
また、下記記事のように日本からもアメリカの株やETFに投資しやすい環境は整いつつあります。
日本に住んでいるから日本株という古い認識は捨てて、より有利なところに投資をすることも大事ですね。
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