投資信託などの投資先を選択する際に過去の結果を参考にする人は多いでしょう。
これは当然ですし、有効な方法です。
しかし、ちょっと注意が必要な論点があります。
それが「生存者バイアス」です。
実は生存者バイアスによって数字が歪められているケースも多いのです。
今回は「生存者バイアス」と投資の数字について見ていきます。
生存者バイアスとは
生存者バイアスとは生存者(成功者)のみを基準として判断されてしまい、生存できなかった者(失敗者)には注意が向けられれないことによりバイアス(偏り)が生じることです。
そのためそのような偏った数字などに基づいて判断されることは間違いとなりやすいのです。
この生存者バイアスは様々な場面で生じます。
生存者バイアス「飛行機」の例
生存者バイアスで有名なのは飛行機の例でしょう。
第二次世界大戦時に戦闘機の改良を加えるために様々な研究が行われました。
その一つが帰還した戦闘機を分析し銃撃された部分の装甲を厚くする改良でした。
それにより墜落の確率を下げようとしたのです。
これだけ聞くとなんら間違えていないように感じる方も見えるかもしれません。
しかし、この判断には大きな間違いがあるのです。
それは生存者バイアスによるものです。
分析したのが帰還した戦闘機のみであるんです。つまり、生存者ですね。
撃ち落とされてしまった戦闘機(失敗者)の分析が行われていないんですよ。
本来はその撃ち落とされてしまった戦闘機の銃撃箇所が一番改良すべき点であるのに関わらずです。
努力は必ず報われる
よく「努力は必ず報われる」的な発言をされる方が見えます。
これもある意味、生存者バイアスが掛かった発言です。
このような発言をされる方はほとんどの場合は生存者(成功者)によるものです。
そのため、生存できなかった者(失敗者)が努力しても報われなかった話は聞こえてこないんですよ。
社員が仲良い会社
また、生存者バイアスでよく例にだされるのが社員がみんな仲がよいという会社です。
本当に社員みんなが仲が良いのかもしれません。
しかし、過去に入社して会社に馴染めず辞めていった人などは含まれていないのです。
つまり、仲の良い人だけが残った会社と言えるかもしれないんですよね・・・
就職率100%
また、このような話もあります。(実際に聞いた話です)
ある学校が卒業生の就職率100%を大きく謳っています。
しかし、これ生存者バイアスが思いっきり掛かっています。
実は就職が決まらない人は卒業させず無償で次の年も学校に残れるようにしてあるのです。
つまり、卒業が決まる=就職が決まっているので就職率100%なんですよね。
このダイエットでの平均体重減○○キロ
ダイエット関連の商材のCMや広告もこの生存者バイアスがよく使われています。
たとえばこのダイエット法を利用した人の平均体重は○週間で○○キロです。
といったような感じの広告を見たことある人も多いでしょう。
しかし、多くの場合はこれも生存者バイアスが掛かっています。
よく注意書きを見るとダイエット法を最後まで継続しつつ、食事制限、運動を続けた人の平均ですと書いてあるケースが多いんですよ。
つまり、そのダイエットに挑戦した人全体の平均ではなく、実際にダイエット法を最後まで実践できたつまり、成功できた人の平均なんです。
そりゃあ痩せるわな・・・って感じですよね。
投資の世界は生存者バイアスが多い・・・
生存者バイアスを最も悪用されてしまっているのは投資の世界かもしれません。
生存者バイアスをしっかり理解していないと騙されてしまう、かなりあくどい数字が使われていたりするんですよ。
投資商品の顧客平均リターン
よくあるパターンが顧客平均リターンなどを使ったものです。
うちの商品の顧客平均リターンはこんなにも高いですよと提示するケースが良くあります。
ただし、初心者が間違えがちなかなり危険な数字だったりします。
多くの場合には顧客平均リターンの元となるデータは○年以上利用しているなどといった条件が付いているはずです。
損をして解約したり、同値撤退、多少のプラスで撤退などといった人の数字が含まれなくなるのです。
当然数字は高くなりますね・・・
新しい株価指数
この生存者バイアスは株価指数でも影響があります。
例えば最近設立されて話題になった「新経連株価指数」です。
「新経連株価指数」は楽天の三木谷さんが代表を務める「一般社団法人 新経済連盟」に加盟する一般会員のうち、東京証券取引所の主要市場に上場する企業を対象にした株価指数です。
ちなみに「新経連株価指数」の過去の上昇率はTOPIXや日経平均を大きく上回る過去7年の平均上昇率は約4倍となっています。
すごい指数じゃんって思われる方が多いでしょう。
しかし、これにも生存者バイアスが掛かっているんですよ。
「一般社団法人 新経済連盟」に加盟している企業はすでにある程度成功を収めた新興企業が多いです。
同じように始めて淘汰された企業はまったく含まれていないんですよね。
つまり、生存者(成功者)のみで過去にさかのぼって時価総額加重平均すればそりゃあ指数はよくなるでしょ。。。って話に過ぎないのです。
投資信託の平均リターン
また、投資信託なんかでもよくこの「生存者バイアス」を使ったトリックがあります。
うちの扱う投資信託の平均リターンは○○%です。
といった感じの売り方ですね。
これも生存者バイアスが絡んできます。
今、販売している投資信託のみの平均だったりするんですよ。
リターンが良くて人気のある投資信託だけを残せば当然平均の成績はよくなりますからね。
過去に扱いを取りやめた不人気だったりする投資信託のリターンも合わせてみないと本来の姿は見えてきません。
小型株効果
よく投資の世界では小型株の方がリターンが良いという話があります。
確かに過去のデータをみるとそのような傾向があるのです。
しかし、これも生存者バイアスが無視できません。
データに入っているのは基本的に生き残った小型の会社のみです。
そのような企業は生き残るわけですから成長も大きいと思われます。
逆に倒産した会社などは基本的に含まれなくなっていきます。
そうなれば当然、小型株のリターンは数字だけを見れば良くなるんですよね。
生存者バイアスに騙されないためにどうしたらよいのか
それでは生存者バイアスに騙されないためにはどうしたらよいのでしょう。
実はこれかなり難しいのです。
頭の良い方でも簡単に引っかかってしまうんですよ。
私は以下の点を意識していますね。
データの前提を確認する
まずはそのデータの前提をしっかり確認することです。
生存者(成功者)のみのデータになっていないか
生存できなかった者(失敗者)が含まれているのかをしっかり考えてみることが大事となります。
データの前提の見方についてはこちらの記事を御覧ください。
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期待値を考えよう
何事も期待値で考える癖をつけると生存者バイアスにひっかかりにくくなります。
期待値とは、確率変数の実現値を確率の重みで平均した値である。とされています。
もう少し噛み砕いて投資に例えると掛金に対していくら戻ってくるかの「見込み」の金額のことです。
期待値について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
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生存者バイアスまとめ
今回は「【生存者バイアス】騙されるな!!投資をする際の数字にはたくさんの罠が仕掛けられている」と題して生存者バイアスについて見てきました。
統計の世界に有名な言葉があります。
って言葉です。
統計データはいくらでも自分たちの有利なように利用できてしまいますからね。
その前提を知ることが大事なのです。
統計データについてはこの辺りの記事も合わせて御覧ください。
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