投資のアノマリー(経験則)の一つに「小型株効果」というものがあります。
簡単に言えば小さい株の方が大型株よりも上がりやすいぜってことなんですね。
いろいろな方が昔から検証していますが、確かにデータをみればその傾向があります。
しかし、ちょっと考えなくてはならないことも・・・・
今回は小型株効果について解説していきます。
ちなみに投資のアノマリーを意識される方は以下のようなカレンダーを持っておくとよいですよ。
小型株とは
それではまず今回の話の前提となる小型株について見ていきましょう。
小型株とは名前の通り、小さい規模の会社の株のことです。
会社の大きさ(規模)はどこで判断する?
会社の大きさをはかる基準はたくさんありますが、一般的には時価総額が多く使われています。
時価総額とは以下の計算式で計算されるものでその会社の評価されている価値の大きさがわかります。
他にも売上や利益、資本金などで比較されるケースもあります。
詳しくはこちらを御覧ください。
ちなみによく勘違いしている方が見えますが。株価の高さは会社の規模とはあまり関係ありませんのでご注意くださいね。
小型株の定義
それではどのくらいの時価総額ならば小型株にあたるのでしょうか?
実は小型株に数字上の定義というものはありません。
いくら未満の時価総額だからとか売上高だからといった具体的数字はないんですよ。
2005年より前は「発行済株数が6千万〜2億株」、「時価総額700億円〜6,000億円」という小型株の定義もありましたが今は撤廃されているんですよ。
ただし、東京証券取引所では東証一部の銘柄を時価総額の流動性が高い上位100銘柄を大型株、次いで高い400銘柄を中型株、それ以外を小型株と分類していますね。(TOPIX Small)
また、ジャスダックやマザーズと行った新興市場や東証二部も小型株に分類されることがあります。
ただし、日本マクドナルドホールディングスのようにそれなりに大きい規模の会社がジャスダック上場してたりしますから単純にはいえないところがありますが・・・
小型株効果の検証結果
それでは実際に小型株効果に意味はあるのでしょうか?
小型株効果についての論文を元に見てみましょう。
以下は1986年から2010年の日本株の時価総額、資本金、売上高を大きい順に1分位→10分位まで分けて平均リターンを比較したグラフです。(10分位は異常な数字となってしまったようなのでそれを除いてあります)
時価総額でみても売上高でみても資本金でみても小型になればなるほど平均リターンが高いのがわかりますね。
つまり、小型株効果は実際にあることを示しています。
出所:住友信託銀行 パッシブ・クオンツ運用部 副調査役 岡田賢悟氏 「小型株効果と企業規模」より
なぜ小型株の方が株価が上がりやすいのか
上記のように実際のデータでも小型株効果はでていることがわかります。
それではなぜ小型株の方が株価が上がりやすいのでしょうか?
いろいろ理由は考えれます。
まず、上記論文では
売上・ 資本の小さい企業の株式の流動性が低く裁定を行うには高コストであることによる「流動性プレミアム」
があることで割安で放置されやすいことを理由として挙げていますね。
信用リスクプレミアム
リスクプレミアムとはリスクのある資産の期待収益率から無リスク資産の収益率を引いた差のことです。
株式投資は大きな利益が得られる可能性もありますが、損する可能性もあります。
同じリターンなら株と無リスクの商品ならほとんどの方は無リスクのものを選ぶでしょう。
その無リスク商品にいくら金利を上乗せすれば買う気になるのかというのがリスクプレミアムなのです。
たとえば無リスク商品の国債の利回りが1%でリスクプレミアムが4%だったとします。
このパターンの場合は5%以上のリターンが期待できなければだれもその商品を買わないということになるのです。
小型株の場合
小型株の場合には規模の大きい会社よりも倒産リスクが高くなります。
ですから通常の大型株よりもリスクプレミアムが高くなります。(信用リスクプレミアム)
将来のリターンがより期待できないと買われないんですよね。
そのため、大型株と比較して割安で放置されやすくなります。
この部分が小型株効果の一つの要因と考えれます。
流動性プレミアム
流動性プレミアムとは流動性が低い金融資産に対して投資家が要求する上乗せの期待収益率のことです。
流動性とは売買しやすいとか動かしやすいとかと考えればよいでしょう。
動かしにくいならそれだけリターンちょうだいよってことですね。
分かりやすい例が普通預金と定期預金の金利の差です。
定期預金は基本的に途中で辞められませんのでその分金利が高くなっています。
その上乗せ部分が流動性プレミアムですね。
小型株の場合
小型株の場合も同様です。
基本的に小型株の場合は出回っている株式数が少ないですし、売買も少ないです。
そのために売るに売れない、買うに買えないということが起こりやすいのです。
つまり、大型株よりも流動性リスクが高いため少しプレミアムがないと株を買っていただきにくくなるのです。
流動性リスクがあるため、小型株にはあまり機関投資家が入ってこれないんですよ。
例えば一時期成績が抜群に良かったSBI小型成長株ファンド「ジェイクール」という小型株に投資をする投資信託がありました。
これも人気となって資金が集まりすぎたために新規買付け申し込み受け付けの停止なんてことになったりしましたね。
成長余地が高い
また、単純に小型株の方が成長余地が高いというのもあるでしょう。
例えばすでに売上1兆円規模の会社が今から売上2兆円になるのかかなり大変です。
しかし、売上100億円の企業が売上200億円は普通にある話です。
さらに売上1000億円なんてこともありえます。
つまり、まだ成長しきっていない会社ですからこれから大きく化けるという可能性が小型株の上がりやすい理由の一つでしょう。
小型株効果には疑問も
しかし、小型株効果を考える上で知っておかなければならないことがあります。
小型株効果を全面的に信用できない部分もあるのです。
また、小型株には固有のリスクがあります。
小型株効果には生存者バイアスがかかっている
まずは生存者バイアスの存在です。
生存者バイアスとは生存者(成功者)のみを基準として判断されてしまい、生存できなかった者(失敗者)には注意が向けられれないことによりバイアス(偏り)が生じることです。
生存者バイアスについて詳しくはこちらの記事を御覧ください。
前述のように小型株効果はたしかにデータでみれば実証されます。
しかし、データに入っているのは基本的に生き残った会社のみです。
そのような企業は生き残るわけですから成長も大きいと思われます。
逆に倒産した会社などは基本的にデータに含まれなくなっていきます。
そうなれば当然、小型株のリターンは数字だけを見れば良くなるんですよね。
そもそも小型の会社は倒産するリスクは大型の企業と比べれば高いですから生存者バイアスが掛かってしまっているという話も無視できないのです。
生き残った企業でも・・・
私は昔、小型株に含まれる「ボロ株」の中の人(経理責任者)でした。
そのため小型株の会社の内情はよく分かりますが、小型の会社には本当にやばい会社も多かったりします。
例えば株価を上げるためだけに嘘の業績発表をしたり、ありもしない新商品や新技術の発表をしたりもよくある話なんですよ。
大型株でもこのような話はありえますが、小型株の場合はそのリスクがより高くなると思っていただければよろしいでしょう。
ですから小型株のリスクは予想以上に高いということを認識しておきましょうね。
小型株を買う際のポイント
小型株効果がありますから小型株を買いたいと考える人も多いでしょう。
しかし、前述のようなリスクがつきまといます。
ですから小型株を買う際には押さえてほしいポイントがあります。
1点集中しない
株の分析などをしているとこれは絶対来る!!って思ってしまうことがよくあります。
当然当たれば大きいですし、気持ち良いものなのですが、小型株にはかなり危険が伴います。
ですからできれば分散投資をオススメします。
私も一番はじめに日本株で買ったのは「レントラックジャパン」という小型株でした。
(一番初めに買った株は株は中国株というかなりギャンブラーな相場生活のスタートです)
その株は予想どうりにあがり、最終的にはテンバーガー以上(10倍株)となりました。
そのため、それ以降も小型株ばかり買っていましたがハズレが多かったですね。
かなり業績が悪くなり逃げるように売った株もたびたび・・・
そもそもレントラックジャパンも途中で上場廃止していますしね。(カルチュア・コンビニエンス・クラブの子会社化)
それだけハイリスクハイリターンだと言えるでしょう。
新商品や新技術は話半分に聞いておく
小型株の出す新商品情報や新技術などは話半分に聞いておくのがおすすめなんですよ。
完全な嘘ではありませんが実際にはほとんど動いていないような話を大きく発表するなんてことはよくある話です。
ある会社なんかは新技術の発表で株価がかなり上がりました。
しかし、そのIRで発表された新技術で売上を1円も産まなかったなんてこともありましたね(笑)
キャッシュフロー計算書を見よう
また、財務情報を見るときも損益計算書や貸借対照表ではなくキャッシュフロー計算書を中心にみましょう。
損益計算書などはいくらでも粉飾が可能です。
しかし、キャッシュフロー計算書はごまかしにくいですからね。
小型株の投資信託という手も・・・
小型株への個別投資はどうしてもリスクが伴います。
ですから小型株全般に分散投資をする意味でも小型株へ投資をするタイプの投資信託なんかを買うのも手ですね。
前述したSBI小型成長株ファンド「ジェイクール」などは最近はちょっと不調気味ですが、2019年10月31日時点の3年間の平均リターンは26.18%、設定来66.18%とかなりの成績となっていますね。
また、ジェイクールのアメリカ株版??のSBI米国小型成長株ファンド「グレート・スモール」なんてもものももうすぐ登場します。
小型株効果まとめ
今回は「小型株効果とはなにか。小型株の方が株価が上がりやすいのは本当なのかについて考える」と題して小型株効果について見てきました。
小型株はどうしてもリスクが高めですから注意しなければならない点は多いです。
しかし、リターンを考えると魅力的なのも事実です。
今回の記事が小型株へ投資をする際の参考になれば幸いです。
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