安倍総理大臣を議長とする「全世代型社会保障検討会議」の資料が先日公表されました。
また、それに応じるように開催されている財務省の「財政制度分科会」の資料も公表されています。
これらの資料を見るだけで日本の社会保障負担の状況がかなり厳しい状況にあるのが分かってきました。
今回は「全世代型社会保障検討会議」と財務省の「財政制度分科会」の特に注目すべき資料を抜粋し、日本のおかれている社会保障負担の状況について解説していきましょう。
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社会保障負担がどんどん膨れ上がっている
出所:財務省「財政制度分科会(令和元年10月9日開催)提出資料」より
まずは19年前の1990年と直近2019年の予算(一般会計歳出・歳入)の比較です。
着目すべきは歳出です。少しずつどの項目も増えているのですが、際立って増加しているのが2つあります。
社会保障と国債費です。
社会保障は19年前と比較して11.6兆円が34兆円まで膨れてしまっています。実に2.9倍です。
また、国債費は14.3兆円が23.5兆円と1.6倍となっています。
一方、歳入の中心的な税収については58兆円が62.5兆円ですから7%くらい増えているだけなんですよね。
歳出は大きくなっているのに税収が追いついていないのです。
どうしても足りませんから、その部分は特例国債で補っているのです。
国債とは簡単に言えば国の借金ですから、簡単に言えば支出が多すぎて回らないから借金しているような状況なんですよね。
借金ですから将来は当然に返す必要があります。
つまり、将来世代へ負担を先送りしているだけなんですよね。
それがどんどん膨れ上がっており、国債費の伸びにつながっています。
国民所得額と比較して伸びが社会保障給付費の伸びがすごい
出所:財務省「財政制度分科会(令和元年10月9日開催)提出資料」より
また、社会保障制度の多くは社会保険方式となっており、加入者から集めた保険料と国の税金である公費で運営されています。
そのうち公費の負担は1990年47.4兆円だったのに対して2017年は120.2兆円と2.5倍まで膨れ上がってしまっているのです。
一人あたりの社会保障給付費は38.4万円だったものが94.9万円まで大きくなっているのです。
国民所得額は1990年346.9兆円、2017年404.2兆円と16%程度の伸びなのに社会保険給付費は2.5倍ですから一人あたりの負担が伸びるのは当然ですね。
社会保障給付費が伸びがすざましい
出所:首相官邸「全世代型社会保障検討会議第一回配布資料」より
社会保障給付費の伸びはかなり大きいです。
上記図は1950年から2019年までの社会保障給付費の推移ですが、年金はもちろん、医療、介護も含めてこのところの伸びがかなり大きいことが分かるでしょう。
これは少子高齢化の影響がでているのです。
制度を支える人が減ればそれだけ国の負担が増えてしまいますからね・・・
社会保障給付費の将来見通しがやばい
出所:首相官邸「全世代型社会保障検討会議第一回配布資料」より
前述のようにすでに社会保障の負担は大きく膨れ上がっていますが、これは今後も続いていきます。
全世代型社会保障検討会議第一回配布資料によると2018年度は121.3兆円だった社会保障給付費ですが、2025年には140.2〜140.6兆円。
2040年度には188.2〜190兆円まで膨れ上がるのです。
上記資料ではGDPが564,3兆円→645.6兆円→790.6兆円と順調に増加する計画で保険料負担や公費負担割合を計算してあります。
しかし、人口がマイナス成長の現状でGDPがこれだけ増えていくのかは疑問ではあります。
もし、GDPが増えなくても制度が変わらなければ社会保障給付費は同様の金額掛かるはずです。
ですから保険料負担や公費負担はさらに大きくなる可能性があるでしょう。
世界的に見て給付と負担のバランスが悪い
出所:財務省「財政制度分科会(令和元年10月9日開催)提出資料」より
それではこの状況は世界的に見てどうなのでしょう?
上記の図は国民負担率(対GDP比)と一般政府の社会保障支出(対GDP比)を表したものです。
日本だけバランスが悪くなっているのが分かるでしょう。
この表の意味することは社会保障給付が急激に伸びてしまって、国民負担ではなく国の負担でやってますよ。
バランス悪くなってますよってことが言いたいのだと思われます。
つまり、他の国と同様なバランスにするにはもう少し国民負担を増やしたいな・・・って財務省の意向が見え隠れする資料です。
原因となっているのは少子高齢化社会
出所:財務省「財政制度分科会(令和元年10月9日開催)提出資料」より
これだけ社会保障の財政が厳しくなっている理由は少子高齢化社会の到来に尽きるでしょう。
上記表のように全人口はと20歳〜74歳は減り続け75歳以上の後期高齢者は増えていくのです。
つまり、支える人は減るけど支えられる人が増えていく計算なんですよね。
しかもこの資料では支える側の分母(20歳〜74歳)に75歳までの人が加えられているのが恐ろしいです・・・
医療費の大部分は高齢者が利用
出所:首相官邸「全世代型社会保障検討会議第一回配布資料」より
年金はもちろん高齢者がもらう形となりますが、医療費も同様です。
上記のように年齢が行けばいくほど医療費を使っています。
今後、20歳〜74歳の人口が減り続け75歳以上の後期高齢者は増えていけばどうなるのか容易に予想できますよね。
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