全世代型社会保障検討会議の資料を見るだけで日本の社会保障負担のヤバさが分かる件

国は今後社会保障問題をどうしたいと考えているのか?

それでは国は今後、大きな負担となっている社会保障問題をどうしたいと考えているのでしょうか?

骨太の方針2019(令和元年6月21日閣議決定)に記載されている特に注目点をご紹介しましょう。


被用者保険の適用拡大

適用拡大による効果
被用者保険適用拡大による効果

出所:財務省「財政制度分科会(令和元年10月9日開催)提出資料」より

まずは被用者保険の適用拡大です。

簡単に言えば厚生年金など社会保険の対象となる人を増やして加入者を増やそうという話です。

もうすで2016年10月からパートタイマーやアルバイトなども以下の条件を満たせば社会保険の対象となるように改正されています。

1. 1週あたりの所定労働時間が20時間以上
2. 給料が月額8万8000円以上
3. 社会保険の対象となっている従業員(被保険者)数501人以上の企業に勤めていること。
4. 雇用期間が1年以上の予定
5. 学生以外(夜間・定時制は除く)

また、2017年4月からは、500人以下の企業で、労使の合意に基づき、企業単位で短時間労働者への適用拡大も可能とされています。

それをさらに拡大しようということです。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

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主婦パート

社会保険に加入する人が増えれば支える人が増えることに繋がりますから改善が見込まれるというのです。

また、そもそも短時間労働者の方はそこまで高い社会保険を払うわけではありませんから、そこまで大きな影響もないだろ・・・って気もしますが以下のような理屈で改善すると示されています。

短時間労働者が厚⽣年⾦加⼊者となることに伴い、国⺠年⾦の1⼈当たりの年金積⽴⾦が増加
この結果、将来的に、基礎年⾦の給付⽔準は改善。また、定額給付である基礎年⾦⽔準が⾼くなることで、所得再分配機能の維持にも寄与。

出所:財務省「財政制度分科会(令和元年10月9日開催)提出資料」より

繰り下げ受給の柔軟化

現状では年金は65歳からの受給が基本となっており、繰り上げすれば60歳から、繰り下げすれば70歳からと自分で自由に選択できます。

繰り上げの場合は最大30%の月当たりの年金が減額、繰り下げすれば最大42%の月当たりの年金が増額されます。

繰り下げを75歳までできるようにすることが検討されています。

ただし、75歳までの繰り下げは下記記事のように試算してみると受給する側だと結構得するか損するのか微妙なラインなんですよ。

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年金繰下げ75歳

在職老齢年金制度の見直し

年金をもらっている人が働くと年金支給が停止される在職老齢年金という制度があります。

これがあるから高齢者が働きにくいという話もあるため、将来な廃⽌も展望しつつ縮⼩を⾏うことが検討されています。

ただし、これ⾼所得者への年金給付を回復することにもなります

そのため、結果として低中所得者の給付⽔準は低下するため、⾼所得者優遇との批判が⽣じうるこ とも踏まえて検討する必要があるのです。

在職老齢年金について詳しくはこちらの記事を御覧ください。

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高年齢雇用継続基本給付金とは

70歳までの就業機会確保

また、70歳まで就業しやすいような法整備を整える話も出ています。

(a)定年廃⽌
(b)70歳までの定年延⻑
(c)継続雇⽤制度導⼊(現⾏65歳までの 制度と同様、⼦会社・関連会社での継続雇⽤を含む)
(d)他の企業(⼦会社・関連会社以外の企業)への再就職の実現
(e)個⼈とのフリーランス契約への資⾦提供
(f)個⼈の起業⽀援
(g)個⼈の社会貢献活動参加への資⾦提供

個人的にはこの件は慎重に検討してもらいたいと思っています。

定年廃⽌や70歳までの定年延⻑は会社にとってかなり負担が大きいものです。

日本の現在のしくみでは解雇がかなり困難ですから、仕事ができない人でも首を切りにくいのが現状なんですよ。

もしその状況で、これらが導入されてしまえば仕事が出来ない人ややる気のない人でも70歳まで使わないといけなくなります。

そうなれば採用もかなり慎重になってしまうでしょう。

結果としてこれからの日本を背負う若者にとってマイナスとなりかねないかな・・・って感じますね。

個人的には解雇法制の整備も併せて検討してほしいところですね。

予防・健康インセンティブの強化

今までの健康保険は病気になったときの話が中心でした。

それを予防や健康維持に切り替えようという話です。

これはとても良いことですね。

具体的には以下のような点で国民健康保険を評価する仕組みを検討されているようです。

(a)⽣活習慣病の重症化予防や個⼈へのインセンティブ付与、⻭科健診やがん検診等の受診率の向上等については、配点割合を⾼める
(b)予防・健康づくりの成果に応じて配点割合を⾼め、優れた⺠間サービス等の導⼊を促進する

日本の社会保障負担まとめ

今回は「全世代型社会保障検討会議の資料を見るだけで日本の社会保障負担のヤバさが分かる件」と題して現状や今後の日本の社会保障負担について統計資料をもとに見てきました。

かなり厳しい状況であることが分かっていただけたと思います。

個人的には現状の人口減、少子高齢化では焼け石に水の対処療法としか思えない政策だな・・・としか思えません。

財政検証の結果や年金だけだと2000万円足りない問題も基本は同じです。

それらを根本的に解決するためには移民を受け入れることやベーシックインカムを含めた社会保険制度のあり方を根本的に見直す必要があると感じますね。

政党の垣根を超えて検討してほしいところですね。

全世代型社会保障検討会議がその役割となると思われますので期待したいところではあります。

なお、今回の記事の元になった資料は以下からご覧いただけます。

>>首相官邸「全世代型社会保障検討会議
>>財務省「財政制度分科会

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