2019年10月1日の消費税増税と同時に始まったキャッシュレスで支払うと5%もしくは2%が消費者にポイント還元される「キャッシュレス・消費者還元事業」。
当初の予定どうり、2020年の6月末で終了することになりました。消費がかなり落ち込んでいますので延期するのでは?という希望的観測もありましたが延期の話し合いもなかったようです。
ほとんどの支払いをキャッシュレスで行っている私としては終了するのは非常に残念ですね・・・
消費者への還元だけでなく、店舗へのキャッシュレス決済端末導入代などかなりの金額が動いたキャッシュレス・消費者還元ですが、実際にどの程度意味があった事業だったのでしょうか?
今回はキャッシュレス・消費者還元事業でキャッシュレス決済はどれだけ浸透したのかを経済産業省の統計データから読み解いていきます。
キャッシュレス・消費者還元事業の効果はあった
まずはキャッシュレス・消費者還元事業が始まったことでどれだけキャッシュレス決済が使われたのかを見ていきましょう。
加盟店でのキャッシュレス決済比率は大きく伸びた
2019年10月1日~2020年3月31日までの半年のキャッシュレス・消費者還元事業の利用状況は以下の結果となっています。
還元額は約3290億円
出所:経済産業省「キャッシュレス決済の中小店舗への更なる普及促進に向けた環境整備検討会」事務局説明資料より
加盟店登録数も想定の倍が参加
キャッシュレス・消費者還元事業の登録加盟店は当初50万店舗程度と想定していたそうです。
しかし、蓋を開けてみたら115万店の参加と当初想定していた倍の参加となりました。
ちなみに今までクレジットカードなどのキャッシュレス決済を扱っていなかった店舗も27%あったそうです。
それら企業にキャッシュレス決済を導入できたといいのは意味のあった話です。
ただし、対象となりうる中小・小規模事業者は約200万店舗あるとのことで半数はまだキャッシュレス決済を導入していないということになりますね・・・
出所:経済産業省「キャッシュレス決済の中小店舗への更なる普及促進に向けた環境整備検討会」事務局説明資料より
キャッシュレス決済利用の大半は小口支払い
また、キャッシュレス決済の利用の大半は小口支払いであることもわかってきました。
2019年10月1日~2020年3月31日のポイント還元事業における決済金額別の決済回数の割合は以下の通り。
※スマートフォンの方はスクロールしてお読みください
500円未満 | 500円〜1,000円未満 | 1,000円〜3,000円未満 | 3,000円〜5,000円未満 | 5000円以上 | |
対象決済回数の割合 | 約13.8億回(約37%) | 約9.0億回(約24%) | 約9.2億回(約25%) | 約2.5億回(約7%) | 約2.8億回(約8%) |
出所:経済産業省「キャッシュレス決済の中小店舗への更なる普及促進に向けた環境整備検討会」事務局説明資料を元に著者作成。
1,000円未満で過半数超えの利用となっているんですね、これはちょっと意外でした。
QR決済の利用はそれほど多くない
また、ちょっと興味深いのがPayPayなどのQR決済が多量のCMやキャンペーンを実施するなど目立ってはいましたが、まだまだ多くの利用はクレジットカードやスイカなどの電子マネーである点です。
2019年10月1日~2020年3月31日のキャッシュレス・消費者還元事業における対象決済金額・対象決済回数に占める各決済手段の内訳は以下のとおりとなっています。
※スマートフォンの方はスクロールしてお読みください
クレジットカード | QRコード | その他電子マネー等 | |
対象決済金額 | 約5.0兆円(約64%) | 約0.6兆円(約7%) | 約2.3兆円(約29%) |
対象決済回数 | 約10.9億回(約29%) | 約5.9億回(約16%) | 約20.4億回(約55%) |
決済単価 | 約4,600円 | 約1,000円 | 約1,100円 |
出所:経済産業省「キャッシュレス決済の中小店舗への更なる普及促進に向けた環境整備検討会」事務局説明資料を元に著者作成。
決済金額で見ると64%がクレジットカード、決済回数でみてもスイカなどのその他電子マネーが55%とQRコードはどちらの面でも3位なんですよ。
つまり、QR決済は大型キャンペーン連発して目立ってはいましたが、普及や利用はそれほど進んでいないというのがこのデータからわかりますね。
PayPayが加盟料も手数料も無料だったのもあり、PayPayのみ扱いをしている店舗も多かったんですけどね・・・
今後はキャッシュレス決済はどうなるのか?
それでは今後キャッシュレス決済はどうなっていくのでしょう?
キャッシュレス・消費者還元事業が終わっても継続するか?
私が最も気になるのがキャッシュレス・消費者還元事業が終わってもこれら加盟店がキャッシュレス決済を継続してくれるかということです。
店舗側からするとキャッシュレス決済を導入することで、レジが速くなる、小銭が減る、キャッシュレス決済を使いたい客が来るなどのメリットはありますが、資金繰りの問題(入金が遅くなる)や手数料の問題があります。
今までは店舗側の手数料が優遇されていましたが、それも終わることになりますからね。
近所の寿司屋はキャッシュレス決済を辞めた
実際に私がたまにいく近所の寿司やさんはテレビCMでお馴染みのリクルート「AirPay」と「Airレジ」を導入しPayPayなど多くのキャッシュレスを扱っていたのですが、先日いったところ現金決済オンリーになっていました。
Airレジ等はそのまま使っていましたので手数料の問題なのか、資金繰りの問題なのかでやめてしまったようです。
今後このような話も増えてくる可能性もあります・・・
手数料の開示?
今回の「キャッシュレス決済の中小店舗への更なる普及促進に向けた環境整備検討会」ではポイント還元事業で得られた加盟店や決済に関するデータを、中小店舗等が利用しやすい形で開示することを検討しているとのこと。
今までは手数料や入金サイクルなどがわかりにくいこともあり、かなり不利な契約をしてしまっている店舗も多かったのでそのあたりはよい方向性だとは思います。
手数料引き下げ?
また、手数料を引き下げるために以下のような議論を今後していくようです。
- 多頻度小口決済の拡大を踏まえて、ネットワーク利用料や端末利用料のあり方について検討することが必要で はないか
- 加盟店手数料を構成する各要素について、引下げに向け、コスト構造の変革 を検討する必要があるのではないか。
まとめ
今回は「意味あるバラマキ?ポイント還元でキャッシュレス決済はどれだけ浸透したのかをデータから読み解く」と題してキャッシュレス・消費者還元事業におけるキャッシュレス決済についてみてきました。
キャッシュレス・消費者還元事業は、劇的なキャッシュレス普及とはなりませんでしたがそれなりに効果は見えているのかなって感じがあります。
現在、特に小売店、飲食業などキャッシュレス決済を導入した店舗も厳しい状況が続いていますので再度の実施も検討していただきたいところですね。
マイナポイントは魅力が薄い・・・
政府としてはキャッシュレス・消費者還元事業の代わりとしてマイナンバーカード保有している方向けのマイナポイントなる制度を導入するとしています。
ただ、最大25%というとかなりの還元率ですが、上限が5,000円なのはなんとも魅力が薄いですね。
本音としてはマイナンバーカードを発行してほしいから5,000円配るっていうだけなような・・・
詳しくはこちらの記事を御覧ください。
せっかく、多くの事業者がキャッシュレス決済を導入してくれたのですからそれをなんとか生かしていただきたいですね。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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