在宅勤務(テレワーク)で通勤手当や交通費がでないのは問題か?

在宅勤務(テレワーク)についてご質問をいただきましたのでこの場を借りて解説したいと思います。

ご質問内容は以下です。

2ヶ月近くテレワークで仕事をしていましたが、給料明細をみたらその間の通勤手当が出ませんでした。
これは問題ないのでしょうか?

結論から言えば就業規則等の定めによるということになります。

実は通勤手当や交通費は支給する義務があるものではないんですよ。

通勤手当は労働基準法に規定がありません。

つまり、通勤手当は会社が出すか出さないのか、出すとしてもいくら出すのか、どういうルールで出すのかを決めれるのですね。

支給されている場合には通常、就業規則等にそのルールが定められます。

そのため、就業規則等の定めがどうなっているのかで判断が変わってくるのです。

最近ではホンダが通勤手当をやめて実費精算に切り替えるという話がでていますね。

なお、通勤手当がでなかったことによる労働者側のデメリットもありますのでその点は知っておく必要があるでしょう。

詳しく解説していきます。

就業規則等の定めがどうなっているのか?

前述のように通勤手当や交通費は会社が負担しなければいけないと法律で決まったものではありません。

しかし、多くの会社では通勤手当等を支給しています。

その場合に就業規則等に支給の根拠が定められているはずです。

その書き方によって今回のテレワークの際の支給の有無が決まってくるのです。

まずは就業規則を読んでみましょう。

1ヶ月の通勤定期券代を支給

例えば1ヶ月の通勤定期券代を支給するという単純な定めとなっていたとしましょう。

この場合、基本的にはテレワークの場合でも支給する必要があります

出勤の有無による定めがありませんからね。

出勤日数による区切り

また、パートさんやアルバイトが多い企業だと出勤日数による区切りがある場合があります。

会社に◯日以上出勤する場合は1ヶ月分の通勤定期券代を支給、それ以下は日割りで支給するという感じですね。

この場合ならばテレワークは会社に出勤してませんので、会社は通勤費を支給する必要はなくなります

日割り規定

また、出張や直行直帰が多いような職場だと通勤手当を日割り支給できる規定が入っていることもあります。

この場合は出社した日数分しか会社は通勤手当を支給しなくてもよくなります

現物支給

会社によっては定期券を現物支給している会社もあります。

この場合は就業規則の書き方によっては一旦払い戻しを受けて返金する必要もでてきます

現物で定期券を渡しているようなケースでは、こういうイレギュラーなことが発生すると実は違うところに住んでいるとかですでに払い戻しを受けてしまっている人がいたりして問題が露呈したりするんですよ。

そうならないように気をつけましょう。

問題になりますし、結構バレるんですよ。詳しくはこちらの記事を御覧ください。

実費精算

通勤手当の実費精算が就業規則に定められている会社の場合もあります。

この場合にはテレワーク期間は実費が発生しませんから従業員側も会社側もなにもしないということになります。


通勤手当がでないことによるデメリット

今まで見てきたようにテレワークの際に通勤手当が出るか出ないのかは就業規則によって異なってきます。

従業員側から見れば通勤しなくても通勤手当が出たらラッキーぐらいな感覚かもしれませんね、

しかし、この通勤手当の有無によって他にもデメリットがあるのです。

平均賃金の計算に通勤手当は含まれる

まずひとつ目に労働基準法で定められた様々な手当などの支給の計算根拠となる「平均賃金」の計算に通勤手当が含まれているという問題があります。(出張交通費は含みません)

つまり、通勤手当が支給されないと「平均賃金」が下がり、それらの手当が少なくなってしまうのです。

具体的には以下のような手当があります。

(1)労働者を解雇する場合の予告に代わる解雇予告手当… 平均賃金の30日分以上
(2)使用者の都合により休業させる場合に支払う休業手当… 1日につき平均賃金の6割以上
(3)年次有給休暇を取得した日について平均賃金で支払う場合の賃金
(4)労働者が業務上負傷し、もしくは疾病にかかり、または死亡した場合の災害補償等
(5)減給制裁の制限額 … 1回の額は平均賃金の半額まで、何回も制裁する際は支払賃金総額の1割まで
(6)地方労働局長が作業転換の勧奨または指示を行う際の転換手当… 平均賃金の30日分または60日分

これらをもらうときに通勤手当が入っていないと損になるんですね。

とくに今回、解雇予告手当、休業手当が多く支給されていると思いますのでそちらにも影響が出ているのです。

失業保険への影響

次は失業保険(雇用保険の基本手当)への影響です。

失業保険の計算の元となるのは離職前の6ヶ月間の給料額です。

ここには通勤手当が含まれます

ですから通勤手当がでるかでないのかで失業保険のもらえる金額にも影響が出てくるのです。

将来の年金や傷病手当への影響

もう一つ社会保険への影響もあります。

こちらはデメリットであり、メリットにもなりえますが・・・

簡単に言えば社会保険の計算につかう報酬月額の算定にも通勤手当は含まれるのです。(出張交通費は含みません)

届け出する報酬月額は以下のように3ヶ月の平均報酬で決まります。

標準報酬月額
出所:日本年金機構「定時決定」

そこに給料はもちろん、残業代休日出勤手当て家族手当住居手当などの各種手当と合わせて通勤手当も足されているのです。

つまり、テレワークで通勤手当がでなければその分社会保険の算定に使う報酬が減ることになりますから、社会保険が少なくなるのです。

少なくなった方がいいじゃんと思われる方が大半かもしれません。

確かに短期で見ればそうなのですが、社会保険料が高くなれば将来もらえる年金額(老齢厚生年金)が増えるのです。

また、病気などで会社を休んだときにもらえる傷病手当金などの金額にも影響を与えます。

ですからデメリットにもなり得るということですね。

通勤手当と社会保険の関係について詳しくはこちらの記事を御覧ください。



まとめ

今回は「在宅勤務(テレワーク)で通勤手当や交通費がでないのは問題か?」と題して在宅勤務で通勤手当がでない場合の話をみてきました。

まとめると以下の通り

●在宅勤務で通勤手当が出るかどうかは就業規則の定めによる。

●通勤手当がでないと様々な手当や将来の年金などに影響がある

まずは会社の就業規則を読んでみてくださいね。
また、通勤手当の代わりに在宅勤務手当が出るケースも増えているようですが、その場合の話はこちらの記事をご覧ください。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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