75歳以上の医療費負担2割とする条件が所得基準200万円に。所得基準は意味がないからやめるべきと考える理由

75歳以上の医療費窓口負担を現在の1割から2割へ引き上げる制度改革について、所得基準を年間200万円以上とすることで合意したのと報道が出ていました。

なにかしらの線引が必要なのでしょうが、この所得基準には反対です。

今回は75歳以上の医療費負担2割とする条件を所得基準とすべきでないと考える理由をみていきます。

75歳以上の医療費を2割にする話の概要

まずは今回の話の前提となる75歳以上の医療費を2割にする話の概要から見ていきましょう。

2022年度から75歳以上の医療費負担2割へ

75歳以上の医療費負担を2割へ引き上げることが決まったようです。

ただし、その対象条件で揉めていましたが、自民党と公明党の話し合いで所得基準を年間200万円以上とすることで合意したとのこと。(詳細はまだ出ていません)

つまり、所得が年間200万円以上ない場合は現状維持の1割負担ということになります。

個人的にこの線引方法には反対なんですよ。

現在の75歳以上(後期高齢者)は1割負担が原則

ちなみに現状の75歳以上(後期高齢者)の医療費の自己負担は以下の通りとなっています。

現役並所得者3割
一般1割

75歳以上で現役並所得者の方はそれほど多くありませんので、多くの方が1割負担となっています。

ちなみに現役並所得者の条件は「世帯内に課税所得の額が145万円以上の被保険者がいる場合」とされています。

なお、課税所得ですから各種控除後の話です。

ただし、複数世帯なら被保険者全員の収入の合計額が520万円未満だったり、単身世帯なら収入が383万円未満の場合は1割負担です。

70歳以上75歳未満は2割負担が原則

ちなみに70歳以上75歳未満の方の場合はすでに2割負担となっています。

現役並所得者3割
一般2割

ちなみに現役世代は3割負担です。

日本の健康保険制度はかなりのピンチ

年金問題はよくテレビなどでも報道されていますが、同じか、それ以上に厳しいのが健康保険制度です。

戦後のいわゆるベビーブームで生まれた世代(約800万人)が75歳の後期高齢者に達する2025年にはかなり厳しい状況になることが予想されているんですよ。

国民の20%近くが後期高齢者という。。。。65歳以上も含めれば国民の3割が該当します。

その方たちの健康保険を若者が支えなければならないわけですからかなり厳しいのは当然と言えるでしょう。

ちなみにこれ「2025年問題」と呼ばれてます。

健康保険の団体であるけんぽれん(健康保険組合連合会)では「あしたの健保プロジェクト」で専用ページまで用意して2025年問題を問題視しています。

国民医療費の大幅増加

まず超高齢化により国民医療費は大幅に増加する予定となっています。

2015年では42.3兆円(うち後期高齢者15.2兆円)が2025年には57.8兆円まで膨れ上がります。

またそのうち後期高齢者分は25.4兆円と67.7%も増加するのです。

国民医療費の推移
出所:けんぽれん「あしたの健保プロジェクト」健康保険の2025年問題より

支えても減る・・・

高齢者は増えますが、支えては減る予定となっており、2000年には3.9人で1人を支えていたのが1.9人で1人を支える様になる状態となってしまいます。

つまり、高齢者の医療費の多くは現役世代が負担をするということになります。

今までも年金を中心に世代間ギャップがすごいことになっていたのに健康保険でもこういう状態なのです。

高齢者の負担増
出所:けんぽれん「あしたの健保プロジェクト」健康保険の2025年問題より

高齢者の医療負担が半分を超える・・・

また、健康保険料のうち高齢者への負担分が半分を超えるという異常事態自体となります。

2015年でも46.4%もあるんですけどね・・・

医療費が高い
出所:けんぽれん「あしたの健保プロジェクト」健康保険の2025年問題より

健康保険も大幅増加

上記のような状況ですから健康保険も大幅増加が予想されます。2020年には17%増、2025年には38%増となります。

健康保険大幅増加
出所:けんぽれん「あしたの健保プロジェクト」健康保険の2025年問題より

ただでさえ健康保険の負担は大きいのにさらに増えるとは・・・

特に加入者の層を考えると国民健康保険はさらに厳しくなりそうです。

所得基準は健康保険の線引に適していない理由

医療費負担に所得基準を設けるのは生活が困窮しないようにするという措置だと思いますが、高齢者の生活を所得で線引して意味があるのか?というのが私個人の意見です。

悠々自適な高齢者ほど1割負担

高齢者資産

出典:内閣府 「高齢者の状況」より

上記は全世帯と世帯主が高齢者の貯蓄状況です。

全体的に高齢者が世帯主の世帯の方が貯蓄残高が大きいのがわかりますね。

貯蓄が多いなら高齢になって働く必要も少ないでしょう。

逆に貯蓄が少ない高齢者は働く必要があります。

今回の所得基準で線引するなら働かなければ生きていけない高齢者は所得基準を超えてしまって健康保険が2割

貯蓄などで悠々くらしている高齢者の健康保険は所得が年金だけで1割ということも多くなるでしょう。

つまり、1割負担を用意した目的を考えれば逆の方がよくない?って状況になってしまう可能性が高いのです。

また、株などでかなり多くの配当金がある方なんかも特定口座(源泉あり)であれば所得に含まれませんから1割負担となりますね。

今まで蓄えてなかったほうが悪いという意見もあるのでしょうが・・・

高齢世帯は2極化

ジニ係数

出典:内閣府 「高齢者の状況」より

実際、高齢世帯が2極化しているというデータもあります。

上記は年齢階級別のジニ係数です。

ジニ係数とは所得などの不平等さを測る係数で高くなればなるほど不平等なのを表します。

年齢階級が上がれば上がるほど高くなり一番高いのが75歳以上の階級なんですよ。

つまり、高齢世帯は2極化しているのです。

そもそも75歳で区切る必要ある?

高齢者の暮らし

出典:内閣府 「高齢者の状況」より

上記図は内閣府の高齢者の経済状況を示した図です。

75歳以上の高齢者の方がお金を使うことも少なくなるのか60歳〜74歳までより生活にゆとりがあるのがわかります。

75歳以上は年金もたくさんもらえる世代ですから75歳以上を優遇する理由がそもそも見えてきません。

資産基準もしくは全員一律、届け出により減免とすべき

私が考える線引は「資産」を基準とするのか、全員一律として届け出により減免という方法を取る方法です。

資産基準で線引

まず考えられるのが資産基準で線引するパターンです。

ある意味一番理想に近いと思いますが、現実的に難しいでしょう。

全資産を把握するのが困難でしょうし、いくらでも抜け道ができてしまうからです。

マイナンバーで全資産の紐付けができるようになれば可能なのでしょうけどね・・・

マイナンバーの資産紐付けに反対しているのも高齢者が多いんですよ。

全員一律3割として届け出により減免

個人的な意見としてはまず、そもそも現役世代と高齢者との線引も必要ない気がします。

無駄に制度を複雑化しているだけになっているような・・・

ですから

全員一律3割負担

生活困窮の条件に応じて2割負担、1割負担などと減免

とすればよいのです。

生活困窮の条件をどうするのかで結局揉めそうな気もしないでもありませんが・・・

生活保護などでは預貯金、保険、不動産等の資産調査があります。

そういった部分も含めて基準を設けるべきでしょう。

すでに現役を退いた方が多い高齢者の線引を所得にしても意味ありませんからね。

まとめ

今回は「75歳以上の医療費負担2割とする条件が所得基準200万円に。所得基準は意味がないからやめるべきと考える理由」と題して75歳以上の医療費負担2割とする条件が所得基準200万円になった件を見てきました。

選挙の話などもあるのでしょうが、高齢者ばかりを見るのではなく現役世代にも目を向けて意味のある改革をしてもらいたいものです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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75歳以上の 医療費負担2割 とする条件が 所得基準200万円に
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