配当利回りが高いことや日本政府が大株主であることから安定性が高いと個人投資家の人気が高いJT(日本たばこ産業)
2020年1月〜12月の決算が発表されました。
売上は前年比3.8%減、営業利益6.6%減、税引前利益が9.7%減、四半期利益が13.7%減、四半期包括利益63.7%減とかなり厳しい状況となっています。
それに伴い2021年12月期の年間配当金(予想)を1株あたり130円と上場来はじめて減配しています。
2020年は154円でしたから大幅な減配ですね。
もともとJTは配当性向が高すぎて無理が生じていつか減配になるとは予想はされていましたけどね。
しかし、決算を見るとさらなる減配の可能性が高そうな予感しか。。
今回はJTの今後の配当について見ていきましょう。
JTの株主還元方針が変更
今回JTは株主還元方針の変更を発表しています。
減配する根拠でしょうね。
新しい株主還元方針は業績連動型へ
具体的には以下のような株主還元方針となります。
- 強固な財務基盤を維持しつつ、中⻑期の利益成⻑を実現することにより株主還元の向上を⽬指す
- 資本市場における競争⼒ある⽔準として、配当性向75%を⽬安とする
- ⾃⼰株式の取得は、当該年度における財務状況及び中期的な資⾦需要等を踏まえて実施の是⾮を検討
出典:JT 経営計画2021より
ちなみに今までは下記のとおり、「1株あたり配当⾦の安定的/継続的な成⻑」としていました。
- 1株当たり配当⾦の安定的/継続的な成⻑
- ⾃⼰株式取得は、事業環境や財務状況の中期的な⾒通し等を踏まえて実施の是⾮を検討
- 引き続きグローバルFMCG4の還元動向をモニタリング
出典:JT 経営計画2020より
つまり、配当金額を中心の考えた方から、利益に応じた配当を出す業績連動的な考え方にシフトするということです。
とくに明確に配当性向の目安数字を75%と提示したのは大きいですね。
JTは今まで配当性向が高すぎた・・・
実はJTは前述のような「1株あたり配当⾦の安定的/継続的な成⻑」という株主還元方針であったために明確な配当性向目安を提示していませんでした。
つまり、配当金の金額が前提とある形だったのです。利益の◯%を配当に回すって決めてなかったんですよ。
それが今回業績に応じてという形に変更になった形です。
配当性向とは
配当性向とは簡単に言えば会社が事業稼いだ利益のうちどれだけ株主に還元しているのかを示す指標です。
つまり、配当性向が高い会社はそれだけ株主に利益を還元していると言えるのです。
それだけ聞くとは配当性向が高いほうが良いと考える方が多いでしょうが、一概にはそうとは言い切れないのです。
配当性向の計算方法
配当性向の計算は簡単です。
つまり、配当が利益のどれだけを占めるのかを計算しているのです。
JTの場合には1株あたりの配当金(通期予想)が154円なのに対して2020年12月期の1株あたりの当期利益は174.88円ですから約88.1%の配当性向ということになります。
利益の88.1%を株主に還元しているということですね。
つまり、JTはほとんど株主のために頑張っているようなものってことです。
配当性向が高すぎるとなにが問題?
それでは配当性向が高すぎるとどういった問題があるのでしょう?
最大の問題は利益の多くを株主に還元することで自社が将来に向けて投資をする資金が不足するという点になります。
株価というのは会社が成長すれば理論的に考えれば上がります。
しかし、配当性向が高く株主へ還元をしすぎた結果、将来への投資をあまりできないとなると会社が成長しにくいんですよ。
当然、成長が止まったり、衰退していけば株価は下がります。
実際、JTの業績はずっと右肩下がりです。
株価もそれに連動する形ですね。
たくさん配当をもらってもその分以上に株価が下がってしまえばあまり意味はありませんよね。
そこで今回、JTは株主還元方針を現実的な業績連動路線に変更したんのでしょう。
他にも配当性向が高すぎるといろいろな弊害があります。
詳しくはこちらの記事を御覧ください。
半年前のJTの決算発表時に書いたものになります。
JTのさらなる減配が予想される理由
今回の決算発表を見る限り私はJTのさらなる減配の可能性はかなりあると見ています。
その理由を見ていきましょう。
2021年の予想配当性向は96.1%
出典:JT 2020年12月期決算短信 より
まず、一番大きな理由は現在予想される2021年の配当性向が96.1%もある点です。
この配当性向はあくまでも今の時点で予想される業績に基づくものですけどね。
前述したようにJTは今後の株主還元方針として75%の配当性向を目安としています。
つまり、今の時点で株主還元方針の目安よりかなり高い水準の配当金となっているのです。
もし、この予想を逆算して配当性向75%の場合の配当は
JTは一株あたりの利益は右肩下がり
出典:JT 業績、財務ハイライト 1株あたり当期利益より
また、そもそもJTは業績も芳しくありません。
上記はJTはの一株あたりの当期利益(EPS)ですが、ずっと右肩下がりなのです。
上記グラフではまだ2020年度は反映されていませんが、一株あたり利益は174.88円とここでも下がっています。
さらに2021年の一株あたり利益は135.3円と予想しています。
これに配当性向75%をかけると101円です。
この流れで一株あたりの利益がどんどん下がっていけば、さらに配当は少なくなって当然なんですよ。
2020年の投資CFはプラス
この手の企業はどこで業績の落ち込みが止まるのかがポイントとなります。
しかし、今までJTは配当性向が異様に高く投資などにお金をあまり回せてませんから回復もすぐには期待薄と個人的には見ていますね。
2020年なんて投資活動によるキャッシュフローがプラスなんですよ。。。
投資活動のキャッシュフローは将来に対してどれだけ投資をしているかを表している項目で、それがプラスというのはあまりよくないのです。
簡単に言えば投資に全然お金を回せてないどころか、投資資産の売却などでお金を得ているって状況ってことです。
なお、キャッシュ・フロー計算書の詳しい見方はこちらの記事を御覧ください。
まとめ
今回は「JTが減配を発表。配当性向は高すぎてさらなる減配の可能性も高い件」と題してJTの減配について見てきました。
まとめると以下のとおり。
- JTが上場来はじめての減配
- JTは元々配当性向が高すぎた
- JTは株主還元方針を変更
- 新しい株主還元方針に沿うとさらなる減配可能性が大
配当の高さだけで目を奪われて投資をしてしまうと、株価が下がって結局マイナスということになりかねません。
配当金や株主優待の内容ばかり見るのではなくその企業の将来性を含んで分析をする必要があるってことですね。
また、配当性向についても一時的に高くなってしまっているだけなのか、恒常的にその状況なのかという点についても確認しておきたいところですね。
とくにJTは業績もずっと下がってきていますので将来性も合わせて判断すべきでしょう。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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