配当利回りが高く個人投資家の人気が高いJT(日本たばこ産業)
2020年1月〜6月の決算が発表されました。
新型コロナウィルスの影響や為替相場の影響が大きく、売上が前年比2.7%減、営業利益が19.1%減、税引前利益が22.2%減、四半期利益が27.3%減、四半期包括利益91.3%減とかなり厳しい状況となっています。
そんな中、注目されているのが配当金は1株あたり154円を据え置きしたことです。
配当金は基本的に利益の株主への分配ですから利益が下がれば減らすのが定石・・・
しかし、据え置きしたことで1株あたりの利益161.21円(通期予想)なのに対して配当金が154円(通期予想)という配当性向95.5%というトンデモない状況となりました。
JTに限らず配当性向が高すぎる会社って結構あるんですよ。
私が記憶している中では配当性向1000%という会社までありました。
そこで今回は配当性向が高すぎるとなにが問題なのかを考えてみましょう
※JTが2021年配当の減配を発表しました。詳しくはこちらの記事を御覧ください。
配当性向とは
まずは今回の話の前提である配当性向についてから見ていきましょう。
配当性向とは簡単に言えば会社が事業稼いだ利益のうちどれだけ株主に還元しているのかを示す指標です。
つまり、配当性向が高い会社はそれだけ株主に利益を還元していると言えるのです。
それだけ聞くとは配当性向が高いほうが良いと考える方が多いでしょうが、一概にはそうとは言い切れないのです。
配当性向の計算方法
配当性向の計算は簡単です。
つまり、配当が利益のどれだけを占めるのかを計算しているのです。
JTの場合には1株あたりの配当金(通期予想)が154円なのに対して1株あたりの当期利益(通期予想)は161.21円ですから約95.5%が配当性向ということになります。
利益の95.5%を株主に還元しているということですね。ほぼJTは株主のために頑張っているようなものってことです。
配当性向が高すぎるとなにが問題なのか?
それでは配当性向が高すぎるとなにが問題なのでしょうか?
利益を株主に還元してくれているというのは良さそうに見えますよね。
成長がとまり株価が下がる
まず最大の問題は利益の多くを株主に還元することで自社が将来に向けて投資をする資金が不足するという点になります。
株価というのは会社が成長すれば理論的に上がります。
しかし、配当性向が高く株主へ還元をしすぎた結果、将来への投資をあまりできないとなると会社が成長しにくいんですよ。
当然、成長が止まってしまえば株価は下がります。
たくさん配当をもらってもその分以上に株価が下がってしまえばあまり意味はありませんからね。
実際にJTの株価は右肩下がりの傾向となっています。
配当性向が高い会社は将来の成長があまり期待できない会社が多くなっていますね。
配当を出さずに将来へ投資をする企業も
成長性が高い会社などは一切配当を出さずに利益の大半を将来への投資に回しさらに成長して株主には株価で還元するというケースもあります。
一時期のAppleなんかもそうでしたね。IT系の成長企業に多いパターンです。
理論上はそちらの方が有利なんですよ。
内部留保の問題
日本の企業は内部留保が多すぎると度々問題になります。
そのため、内部留保はあまりよいイメージを持たれませんが、企業が成長したり、安定的に継続するためにはとても重要なものなのです。
配当を出すと当然内部留保は減ります。
JTの場合は利益の95.5%が会社からお金が出ていってしまうわけでほとんど内部留保されないんですよ。
企業が安定的に経営をするという意味では配当性向が高すぎるというのは問題があるケースもあるんですね。
ただし、勘違いしている政治家や評論家までいますが、内部留保=現金ではありませんのでお気をつけください。
内部留保について詳しくはこちらを御覧ください。
配当性向が高すぎるのは異常な状況
また、配当性向が高すぎるのは一時的であれば問題ありませんが、基本的には異常な状況ですから長くは続きません。
業績が回復して配当性向が自然と低くなるか、どこかで資金面などで無理が生じて減配に踏み切らざる得ないのです。
一時的に配当性向が高くなっただけなのか、恒常的に配当性向が高くなっているのかは注意が必要です。
一次的な話であれば業績が回復して配当性向的にも通常の状況になるケースが多いですが、恒常的に配当性向が異常に高い場合にどこかで無理が生じて減配となる可能性が大きいです。
年金くらしのおばあさんが孫に無理してプレゼント
前述の配当性向が1000%の会社を例に考えてみましょう。
この状況は「年金生活をしているおばあさんが孫に無理してプレゼントをしている」ようなものなのです。
年金が10万円入ってくるとしましょう。(会社で言えば利益)
孫が可愛いがあまり貯金を取り崩して100万円あげた(会社で言えば配当)という状況が配当性向1000%です。
入ってくる以上にお金を使ってしまっているんですね。
この状況が長く続くわけがありません。
どこかで無理が生じてしまうのです。
なにか理由があって配当を維持しているケースも
実は配当性向が異常に高いケースは何かしらの理由があり、配当を減らせないということが多いです。
例えば社長や親族が大株主だったりで自分たちの懐にお金を入れるために配当を出しているケースです。
これ意外と多いんですよ。
また、「やばい人」や「やばい会社」が株主にいて逆らえずに配当を維持しているようなことも・・・
このようなケースだと配当を出すために粉飾決算までしているようなこともあります。
ちなみにJTは筆頭株主が財務大臣(日本政府)で配当が減らしにくいという政治的な話もありそうな感じがありますね。
高配当株が配当見送りや減配するとやばい
配当性向が高すぎる状況というのは前述したように長く続けることは難しいです。
しかし、多くの個人投資家が配当金目当てで株を買っています。
そのようなケースで減配や配当を見送りした場合、株価に大きな影響が生じてしまうんですね。
日産の場合(配当見送り)
例えば2020年2月13日に期末の配当を見送りと発表した日産自動車の例を見てみましょう。
日産自動車といえばゴーン氏の問題でゴタゴタしていましたし、業績も悪化しているとの話がでていました。
そのため、株価も下がり気味でした。
2019年年末終値は636.1円
それが期末の配当を見送り発表をする2月13日の終値では568.5円まで下がっていました。
期末の配当を見送りが発表された翌日2月14日には513.7円と1割近くの暴落。
そこから新型コロナウィルスの問題が本格する前の2月末の終値は463.6円とさらに1割近く落ちています。
新型コロナウィルスの問題が本格化した現在3月30日時点では384.9円と2割近くの減。
年末と比較して半値近くまで下がっているのです。
2019年の同時期は900円前後でしたし、2018年の同時期は1,100円前後でしたから恐ろしい限りですね。
配当をいくらもらっても株が下がってしまった部分でペイは難しいと思われます。
2月14日513.7円→
3月30日384.9円→
7月31日361円
つまり、配当金や株主優待狙いで株を買っている人が多い銘柄はその前提が崩れてしまうと大きく株価も下がってしまうリスクがあるのです。
その点をしっかり認識しておきましょう。
キャノンの場合(減配)
次はキャノンです。
キャノンは33年近くに渡り減配することなく配当を出してきました。
キャノンの業績は思わしくなく配当性向も100%を超える年もある状況でしたが、なんとか配当金を減配することなく出し続けてきたのです。
ちなみに2019年の配当性向は134.7%と異常な状況でした。
しかし、新型コロナウィルスの影響もありさすがに無理が生じたようで減配することになりました。
株価は大きく反応しています。
7月29日1,797.5円→
7月31日1,679円
配当金の減配が発表されたから20%近く株価が下がっていますね。ちなみに年初来高値は3,099円です。
日産と同じく高配当という前提が崩れてしまうとその上で成り立った株価は保てないのです
まとめ
今回は「JTが減益なのに配当据え置きで配当性向が95.5%へ。配当性向が高すぎるとなにが問題なのか?」と題して配当性向についてみてきました。
まとめると以下のとおりです。
- 配当性向は高ければ良いというものではない
- 配当性向が高すぎると将来の投資ができないなど問題がでてくる
- 配当性向が高すぎる状況は続かない
- 高配当株が減配は配当見送りすると株価がやばい
配当の高さだけで目を奪われて投資をしてしまうと、株価が下がって結局マイナスということになりかねません。
配当金や株主優待の内容ばかり見るのではなくその企業の将来性を含んで分析をする必要があるってことですね。
また、配当性向についても一時的に高くなってしまっているだけなのか、恒常的にその状況なのかという点についても確認しておきたいところ。
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