予算が1兆円超ついて大きな話題となった事業再構築補助金。
かなり応募者が殺到したようです。
当初4月末が第一回目の応募締切でしたが、応募者が殺到したことによりシステム障害が起きたようで申請期限が1週間伸びるというトラブルも発生しています。
事業再構築補助金は私の元にも昔関わったことがある事業者さんをはじめ、税理士、行政書士、飛び込みの方と何十件も問合せがきましたね。
こんなに問合せがあったことははじめてです。
それだけ多くの方が注目した補助金ということでしょう。
今回はそんな事業再構築補助金の採択された後の税金の扱いについて解説しておきます。
あまりこのあたりを考えていない方も多いようですが、意外な落とし穴なんですよ。
事業再構築補助金ってなんだ?って方はこちらの記事から御覧ください。
事業再構築補助金の所得税・法人税の扱い
それではまず、事業再構築補助金の所得税(個人事業)、法人税(法人)の扱いについてみていきましょう。
事業再構築補助金の申請時
まず事業再構築補助金の申請時についてです。
事業再構築補助金は要件を満たせばもらえるというものではありません。
予算の範囲内で事業計画を採点されて採択された事業者がもらえる補助金なのです。
ですから申請時点ではなにかもらえるものが確定したわけではありませんから、当然に仕訳は不要ですし、所得税(個人事業)、法人税(法人)は掛かりません。
これは事業再構築補助金に限らずものづくり補助金など他の補助金も同様となっています。
事業再構築補助金の支給決定通知時
次に採択されて支給決定通知書を受け取ったタイミングです。
法人税の所得金額の計算上、ある収入の収益計上時期は、原則として、その収入すべき権利が確定した日の属する事業年度となります(法人税法22条2項、4項)
出典:国税庁 Q&A
支給決定通知書を受け取ったタイミングで支給が決定しているわけですから仕訳を計上します。
例えば6月30日に支給決定通知書を受け取ったならば以下の仕訳となります。
※スマートフォンの方はスクロールしてお読みください。
日付 | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
6/30 | 未収入金 | ✗✗ | 雑収入(補助金収入) | ✗✗ |
つまり、その年度に所得税(個人事業)、法人税(法人)の計算に反映されるってことですね。
基本的に補助金は所得税、法人税の課税対象となります。
ただし、補助金をもらって支出するものは当然経費となりますのでそれを差し引いた分だけが課税対象となるということにはなります。
補助金受け取り時
それでは補助金を受け取ったときはどうなるのでしょう?
これはすでに雑収入に計上されていますのであらかじめ未収入金として計上していたものを消し込む仕訳をするだけです。
※スマートフォンの方はスクロールしてお読みください。
日付 | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
12/31 | 現金預金 | ✗✗ | 未収入金 | ✗✗ |
つまり、受け取った時点は関係なく支給決定通知書を受け取った時点の期に益金が乗ってくるってことですね。
この部分がちょっと厄介です。
補助金は基本的に事業が済んだ後に使ったお金を明確化してからの後払いなんですよ。
まず、補助事業に必要なお金を支払って、さらに所得税や法人税の支払いが補助金の受け取りより先に来てしまう可能性があるのです。
つまり、そのあたりの部分も含めた資金繰りの問題も考えておく必要があるということです。
特に今回の事業再構築補助金は金額も大きいですから、多額の補助金の申請をした場合は所得税、法人税の存在は大きな落ちし穴となりそうな部分となります。
圧縮記帳というテクニックも
前述のようにせっかく補助金の採択されたのに法人税や所得税で一気にお金を持っていかれてしまってはあまり意味がありません。
そのため、圧縮記帳という緩和措置が使えます。
圧縮記帳とは補助金などで固定資産を購入する際に、その購入金額から補助金などの金額を控除して帳簿価格として記帳する方法です。
そうすることで補助金が決定した年だけ大きく利益がでて法人税が多くなってしまい、翌年以降は減価償却が発生して法人税が少なくなるという歪な状況を是正することができます。
補助金事業でトータルで掛かる法人税の金額は変わりませんが、圧縮記帳を使うと税金を繰り延べる効果があるのです。
なお、個人事業の方については所得税法の国庫補助金等の総収入金額不算入の規定で圧縮記帳と同様の効果を得られます。
ただし、ものづくり補助金は圧縮記帳の対象と明記されていますが、今の時点では事業再構築補助金については圧縮記帳について明記されていないんですよ・・・
事業再構築補助金ははじめて実施される補助金で、ただ明記してないだけなのか、方針が定まっていないのか、対象外と考えているのかはわかりませんが・・・
普通に考えて圧縮記帳の対象から外すとは考えにくいですけどね。
なお、圧縮記帳は前述のように税金の繰り延べにすぎません。
中小企業経営強化税制が使える方は効果が下がってしまう部分がありますのでそのあたりも踏まえて検討してみてください。
事業再構築補助金の消費税の扱い
次に事業再構築補助金の消費税の扱いについて見ていきましょう。
受け取った補助金の扱い
受け取った補助金は消費税の課税対象となりません。
不課税取引となります。
補助金で消費税分はもらえない
また、事業再構築補助金の消費税分については補助金の対象外です。
事業再構築補助金は使ったお金に対して条件に応じて1/2、2/3、3/4補助されますが、消費税分は除いたぶんで算定されます。
これは下記のような理由からです。
交付申請書提出の際、消費税及び地方消費税額等仕入控除税額を減額して記載しなければなりません。
※補助事業者が課税事業者(免税事業者及び簡易課税事業者以外)の場合、本事業に係る課税仕入に伴い、消費税及び地方消費税の還付金が発生することになるため、この還付と補助金交付が重複しないよう、課税仕入の際の消費税及び地方消費税相当額について、原則としてあらかじめ補助対象経費から減額しておくこととします。この消費税及び地方消費税相当額を「消費税等仕入控除税額」といいます。出典:事業再構築補助金 公募要項より
消費税は原則として(本則課税)預かった消費税から支払った消費税の差額を納付します。
補助金の場合、受け取った補助金は不課税。支払った経費が仕入税額控除の対象となれば補助金の事業だけ考えれば消費税の還付を受けられることになります。
これでは2重にお金を受け取ることになりおかしな話となりますからこのようなルールとしているようです。
まとめ
今回は「応募者殺到の事業再構築補助金に落とし穴?税金の扱いはどうなるのかを解説」と題して事業再構築補助金も税金の扱いについて見てきました。
ついつい、補助額や補助率だけに目が行きがちですが税金面や資金繰りの面も考えて申請をしましょうね。
ちなみに事業再構築補助金はそろそろ第二回目の公募が始まるようですよ。
なお、その他の補助金、助成金、給付金などの税金の扱いはこちらの記事を御覧ください。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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